
2025年行政書士法の改正点まとめ|実務・試験への影響を一挙紹介
基本情報
2025年09月04日


2025年(令和7年)6月6日、「行政書士法の一部を改正する法律」が成立しました。(2026年1月1日施行)
全体として行政書士の可能性を広げる方向に変わっており、これから行政書士を目指す人にとって間違いなくプラスになる改正です。
具体的な改正点は、大きく次の5つです。
◉2025年 行政書士法の改正点
①「行政書士の使命」の明記
②「職責」の新設とデジタル社会への対応
③特定行政書士の業務範囲の拡大
④業務の制限規定の趣旨の明確化
⑤両罰規定の整備・強化
実務上、最も影響があるのは、「③特定行政書士の業務範囲の拡大」です。2025年改正の目玉とも言われており、特定行政書士になるメリットが一気に拡大しました。
一方、試験対策上も、「基礎知識科目(諸法令)」では改正点を踏まえた出題が予想されます。
(※出題は「2026年度(令和8年度)試験から」となりますのでご注意ください。)
本記事では、主に行政書士を目指す方に向けて、2025年の法改正のポイントを取り上げました。試験にどのような影響があるのか、合格後どのように業務が広がっていくかという視点を、今から押さえておきましょう。
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【目次】
1.2025年|行政書士法改正の5つのポイント
2025年の行政書士法改正では、以下の5つの改正が行われました。
①「行政書士の使命」の明記
②「職責」の新設とデジタル社会への対応
③特定行政書士の業務範囲の拡大
④業務の制限規定の趣旨の明確化
⑤両罰規定の整備・強化
それぞれの改正点について、詳しく見ていきます。
1-1.「行政書士の使命」の明記|第1条の法改正
1つ目の改正点は、行政書士の「使命」が明記されたことです。
今まで、弁護士・司法書士・社労士などの他士業では「使命」が法律に書かれていましたが、行政書士には「使命」の規定がありませんでした。
それが今回の改正でハッキリと示されたのです。「目的」が「使命」に改められて、行政書士が果たす社会的意義(役割)がより大きくなったとも言えるでしょう。
ちなみに、改正の対象となった「目的」規定は、基礎知識科目の「諸法令」でも出題されるポイントです。2026年度(令和8年度)以降の試験を目指している方は、押さえておきましょう。
◉改正のポイント
・「行政書士法の目的」が、「行政書士の使命」に変更された
(参考)行政書士法第1条
改正前 | 改正後 |
(目的)第一条 この法律は、行政書士の制度 を定め、その業務の適正を図 ることにより、行政に関する 手続の円滑な実施に寄与する とともに国民の利便に資し、 もつて国民の権利利益の実現 に資することを目的とする。 | (行政書士の使命)第一条 行政書士は、その業務を通じ て、行政に関する手続の円滑 な実施に寄与するとともに国 民の利便に資し、もつて国民 の権利利益の実現に資するこ とを使命とする。 |
1-2.「職責」の新設とデジタル社会への対応|第1条の2の法改正
2つ目の改正点は、行政書士の「職責」が明記されたことです。前述した「使命」とあわせて、行政書士が果たす社会的な役割が大きくなったイメージです。
あわせて、士業のなかで初めて「デジタル社会への対応」が努力義務として設けられました。行政手続きのデジタル化などの面で、行政書士が果たす役割がさらに大きくなっていくでしょう。
◉改正のポイント
・行政書士の「職責」が新設された
・士業としてはじめて、デジタル社会への対応が努力義務として定められた
(参考)行政書士法第1条の2
改正前 | 改正後 |
※新設のため 記載なし | (職責) 第一条の二 行政書士は、常に品位を保持し、 業務に関する法令及び実務に精通 して、公正かつ誠実にその業務を 行わなければならない。 2 行政書士は、その業務を行うに 当たつては、デジタル社会の進展 を踏まえ、情報通信技術の活用そ の他の取組を通じて、国民の利便 の向上及び当該業務の改善進歩を 図るよう努めなければならない。 |
1-3.特定行政書士の業務範囲の拡大|第1条の4の法改正
3つ目の改正点は、特定行政書士の業務範囲が拡大したことです。
改正前の特定行政書士は、「行政書士が作成した書類」しか不服申立ての代理ができませんでした。たとえば、申請者本人が許認可申請を行って却下・棄却されたようなケースでは、後から相談を受けても不服申立てを代理できなかったのです。
しかし今回の改正により、行政書士が作成できる書類なら、実際に作成していなくても、不服申立ての代理ができるようになりました。
■不服申立ての範囲拡大のイメージ
具体的なケース | 不服申立ての 代理(改正前) | 不服申立ての 代理(改正後) |
行政書士が申請し て拒否された場合 | 〇 できる | 〇 できる |
本人が自分で申請 して拒否された場合 | ✕ できない | 〇 できる |
民間のコンサルが 無償で申請して、 拒否された場合 | ✕ できない | 〇 できる |
家族や友人などの 第三者が代理で申 請して拒否された 場合 | ✕ できない | 〇 できる |
つまり、より多くの場面で特定行政書士が関与できるようになったということです。
これから行政書士を目指す方にとっても、活躍の場が一気に広がったといえるでしょう。
※特定行政書士については、以下の記事で詳しく解説しているので、合わせてご確認ください。
◉改正のポイント
・本人が行った許認可申請への不利益処分も、不服申立ての代理ができるようになった
・特定行政書士になるメリットが一層大きくなった
(参考)行政書士法第1条の4
改正前 | 改正後 |
第一条の三 行政書士は、前条に規定する 業務のほか、他人の依頼を受 け報酬を得て、次に掲げる事 務を業とすることができる。 ただし、他の法律においてそ の業務を行うことが制限され ている事項については、この 限りでない。 一 〈略〉 二 前条の規定により行政書 士が作成した官公署に提出す る書類に係る許認可等に関す る審査請求、再調査の請求、 再審査請求等行政庁に対する 不服申立ての手続について代 理し、及びその手続について 官公署に提出する書類を作成 すること。 | 第一条の四 行政書士は、前条に規定する 業務のほか、他人の依頼を受 け報酬を得て、次に掲げる事 務を業とすることができる。 ただし、他の法律においてそ の業務を行うことが制限され ている事項については、この 限りでない。 一 〈略〉 二 前条の規定により行政書 士が作成することができる官 公署に提出する書類に係る許 認可等に関する審査請求、再 調査の請求、再審査請求等行 政庁に対する不服申立ての手 続について代理し、及びその 手続について官公署に提出す る書類を作成すること。 |
1-4.業務の制限規定の趣旨の明確化|第19条の改正
4つ目の改正点は、業務の制限規定の趣旨が明確化されたことです。
具体的には、無資格者による業務の制限規定に、「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が付け加えられました。特にポイントとなるのが、「いかなる名目によるかを問わず」の箇所です。
これまで、一部の業態で「許認可申請を無償でやります」としつつ、実態として「手数料・会費・コンサルタント料」などの名目で対価を受領しているケースがありました。
◉イメージ例
書類作成 料金 | コンサル 料金 | 合計 報酬額 | 違法性 の有無 | |
表向きの説明 (形式) | 0円 | 100万円 | 100万円 | 表面上 はなし |
実際の内訳 (実態) | 30万円 | 70万円 | 100万円 | 行政書士 法違反 |
しかし、どのような名目でも、行政書士以外が報酬を受け取って、官公署に提出する書類等を作成してはいけません。
そこで、条文に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言を追記して、違反行為に対する抑制が図られたのです。
(出典:総務省|総行行第281号 行政書士法の一部を改正する法律の公布について(通知))
◉改正のポイント
・「手数料」「会費」「コンサルタント料」などの名目で、許認可申請の報酬(対価)を受け取ることが明文で禁止された
(参考)行政書士法第19条
改正前 | 改正後 |
(業務の制限)第十九条 行政書士又は行政書士法人で ない者は、業として第一条の 二に規定する業務を行うこと ができない。 | (業務の制限)第十九条 行政書士又は行政書士法人で ない者は、他人の依頼を受け いかなる名目によるかを問わ ず報酬を得て、業として第一 条の三に規定する業務を行う ことができない。 |
1-5.両罰規定の整備・強化|第21条〜の法改正
5つ目の改正点は、両罰規定が整備・強化されたことです。
両罰規定とは、社員が法律違反をした場合、本人だけではなく会社(法人)も責任を問われるという規定です。これまでは、「調査記録簿の記載等」についてのみ両罰規定がありました。
2025年の改正によって、「無資格者による業務の制限」や、「名称の使用制限」まで両罰規定が拡大されました。前述した「業務の制限規定の趣旨の明確化」と同じく、無資格者が行う行政書士業務への抑制という意味合いが大きいといわれています。
◉改正のポイント
・「業務の制限」や「名称の使用制限」の違反も両罰規定の対象になった。
(参考)行政書士法第23条の3
改正前 | 改正後 |
第二十三条の三 法人の代表者又は法人若しくは 人の代理人、使用人その他の従 業者が、その法人又は人の業務 に関し、前条第一号(調査記録 簿等の記載・記録・保存など) の違反行為をしたときは、その 行為者を罰するほか、その法人 又は人に対して同条の刑を科す る。 | 第二十三条の三 法人の代表者又は法人若しくは 人の代理人、使用人その他の従 業者が、その法人又は人の業務 に関し、第二十一条の二(業務 の制限)、第二十二条の四(名 称の使用制限)、第二十三条第 二項(帳簿の備付及び保存)又 は前条(調査記録簿等の記載・ 記録・保存、立ち入り検査な ど)の違反行為をしたときは、 その行為者を罰するほか、その 法人又は人に対して各本条の罰 金刑を科する。 |
2.「2025年法改正」による行政書士試験への影響は?
2025年法改正の対象となった「行政書士法」は、行政書士試験でも「基礎知識科目(諸法令)」として出題されます。改正された内容は試験でも狙われやすい傾向があるため、試験対策上のポイントも押さえておきましょう。
2-1.2025年度(令和7年度)試験で法改正は出題されない
まず、2025年法改正の内容が出題されるのは、2026年度(令和8年)試験からです。これは、行政書士試験の問題は、試験年度の4月1日現在で施行されている法律に関して出題されるからです。
2025年改正法の施行日は「2026年(令和8年)1月1日」となるため、2025年度(令和8年度)試験では改正を前提とした内容は出題されません。
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2-2.2026年度(令和8年度)試験からは対策が必要
2026年度(令和8年度)以降の試験からは、2025年改正点の出題も考えられます。
特に、「行政書士の目的」(第1条)は、平成17年以前の試験でも頻出だった条文です。改正後の「行政書士の使命(第1条)」が問われる可能性は十分にあるでしょう。新設された職責規定、両罰規定の対象なども狙われやすいポイントです。過去問はないため、答練や模試などで対策を進めましょう。
法改正に対応した学習を進めるには、市販のテキスト・問題集を参考にするのもよいですが、効率よく学びたいなら、受験指導校の講座をオススメします。次章では、本コラムを運営する伊藤塾の「行政書士試験合格講座」を紹介します。
3.行政書士試験を目指すなら伊藤塾
当コラムを運営する伊藤塾は、1995年の開塾から今日まで、5,800人を超える行政書士合格者を送り出してきた法律資格専門の受験指導校です。
2024年度行政書士試験での伊藤塾受講生の合格報告数は368人、多くの方々が伊藤塾で学び、行政書士試験に見事合格しています。(※合格報告数は伊藤塾有料講座を受講して合格された方の人数。受講生でも合格のご報告が無い方は計上していません。)
他の受験指導校にはない、伊藤塾の大きな特長の一つが「合格後を考える」という理念です。
伊藤塾では、合格のための指導に留まらず、「実務家として考える力」を養うための指導と機会の提供に努めています。これこそが、多くの伊藤塾出身者が実務で活躍できる理由です。
さらに、合格後のサポート体制にも力を入れています。
2,800名以上が参加する「同窓会「i.total(秋桜会)」、入管業務・相続・成年後見などの第一線で活躍する行政書士から話を聞ける「明日の行政書士講座」など、実務家として成長できる環境が整っています。
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4. 2025年行政書士法の改正点:まとめ
本記事では、2025年(令和7年)6月6日に成立した「行政書士法の一部を改正する法律」(2026年1月1日施行)における改正点について解説しました。以下に内容をまとめます。
◉主な改正点は以下の5つです。
①「行政書士の使命」の明記
これまで他士業にはあった「使命」が行政書士法に初めて明確に記され、第1条の「目的」が「行政書士の使命」に改められました。
②「職責」の新設とデジタル社会への対応が努力義務に
行政書士の「職責」が新たに明記され、さらに士業としては初めて「デジタル社会への対応」が努力義務として設けられました。
③特定行政書士の業務範囲の拡大
改正前は、行政書士が作成した書類のみ不服申立ての代理が可能でしたが、改正後は、行政書士が作成できる書類であれば、実際に作成していなくても不服申立ての代理が可能となりました。
④業務の制限規定の趣旨の明確化
無資格者による業務の制限規定に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が追加されました。これは「手数料」「会費」「コンサルタント料」などの名目であっても、無資格者が報酬を受け取って許認可申請の書類作成等を行うことを明確に禁止し、違反行為を抑制する狙いがあります。
⑤両罰規定の整備・強化
社員が法律違反をした場合に会社(法人)も責任を問われる両罰規定が、「調査記録簿の記載等」に加え、「無資格者による業務の制限」や「名称の使用制限」に関する違反にも拡大されました。これは無資格者が行う行政書士業務への抑制を強化する意味合いがあります。
以上です。
今回の法改正の内容は、2026年度の行政書士試験で出題される可能性があります。
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