行政書士に試験科目の免除はある?最短で行政書士になる方法も紹介
試験詳細
【記事のポイント】
- 科目免除:行政書士試験に科目免除はなく、実務経験や前年の成績に関係なく、全科目を一度の試験で受ける必要がある。
- 試験免除:弁護士・弁理士・公認会計士・税理士の有資格者と公務員の特認制度の5つは、行政書士試験を受けずに登録できる。
- 特認制度:公務員として行政事務を通算20年以上(高校卒業者などは17年以上)担当すれば、試験免除の対象になる。
- 廃止の噂:2026年(令和8年)現時点で特認制度を廃止する法改正はなく、制度は引き続き利用できる。
- 取得後:行政書士になると、弁理士試験の選択科目が免除され、社会保険労務士試験の受験資格も得られる。
「行政書士試験に科目免除の仕組みはある?」
「試験を免除される人はいる?」
こんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
残念ながら、行政書士試験に「科目免除」の仕組みはありません。前年の成績や実務経験は一切関係なく、全ての科目を受験することが必要です。
一方、「試験免除」の仕組みは用意されています。
・弁護士や公認会計士などに合格している
・公務員として、一定期間働いた経験がある
上記のようなケースでは、試験を受けなくても行政書士になることができます。ただし、いずれもハードルは高く、万人におすすめできる方法ではありません。
基本的には、試験に合格することが、行政書士になるための最短ルートだと考えて良いでしょう。本記事では、次の点を取り上げました。
・行政書士試験が免除されるケース
・公務員の特認制度の内容や注意点
・最短で行政書士になる方法
・行政書士になることで、試験が免除される資格
行政書士試験に興味がある方は、是非ご一読ください。
【目次】
1. 行政書士に「試験科目」の免除はない
行政書士試験には、一部の科目が免除される仕組みは存在しません。
これは、他の資格試験と大きく異なる特徴です。例えば、弁理士試験では特定の資格を取得すると一部の論文科目が免除されます。税理士試験、中小企業診断士試験でも、前年の成績によって、翌年の科目が免除される仕組みがあります。
しかし、行政書士試験にはこのような制度はありません。実務経験や前年の試験結果に関わらず、全ての科目を受験しなければなりません。他の資格を取得して試験科目を減らしたり、複数年に分けて受験したりといった戦略を取ることはできないのです。
つまり、行政書士試験に合格するためには、1回の試験で全科目に合格することが求められます。科目免除制度がないことは、行政書士試験の大きな特徴であり、受験生にとっても重要なポイントの1つです。
2. 行政書士の「試験」が免除される方法は2つ
科目免除の仕組みはありませんが、行政書士試験そのものが免除される方法は2つあります。
1つは他士業の資格試験に合格すること、もう1つは公務員の特認制度を利用することです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1. 他士業の資格に合格する
弁護士、弁理士、公認会計士、税理士の資格を持つ人は、行政書士試験に合格しなくても、行政書士として登録することができます。
【行政書士法 第2条(資格)】
次の各号のいずれかに該当する者は、行政書士となる資格を有する。
1.行政書士試験に合格した者
2.弁護士となる資格を有する者
3.弁理士となる資格を有する者
4.公認会計士となる資格を有する者
5.税理士となる資格を有する者
ただし、いずれも難関資格であり、合格には長期間の勉強が必要です。
行政書士になることを目的に、これらの資格取得を目指すのは得策とは言えません。
2-2. 公務員の特認制度をつかう
もう1つの方法は、公務員として一定期間勤務した後に、特認制度を利用する方法です。国や地方公共団体などで「行政事務」を20年以上(高卒の方は17年以上)担当していれば、試験に合格しなくても行政書士の資格を得ることができます。
ただし、公務員として働いていた期間が全て「行政事務」として認められるとは限りません。行政書士会の事前審査があるため、20年(または17年)勤務したからといって、必ず行政書士になれるわけではないのです。
あくまでも選択肢の1つ程度として考え、頭の片隅に置いておくのがよいでしょう。
特認制度の詳細については、4章で詳しく解説します。
3. 試験が「免除される=実務ができる」ではない
前述のとおり、弁護士や公認会計士などの資格を持っていると、行政書士試験が免除されます。こう聞くと、これらの資格が行政書士の上位資格のように感じる人もいるかもしれません。
しかし、決してそうではありません。なぜなら、「法律上で業務を行えること」と「実際に業務ができること」は全く別の話だからです。
例えば、弁護士と行政書士では、担当する職務領域が大きく異なります。
弁護士は、法律に基づいて紛争を解決することを得意としています。法律上は、許認可申請もできますが、行政書士ほどの専門的なノウハウは有していません。
一方、行政書士は行政手続きのスペシャリストです。行政の裁量が大きい手続きになるほど、行政書士のノウハウがないと対応が難しくなります。ここ数年急増している入管業務などは、その典型例です。行政の裁量幅がとても大きいため、担当する行政書士によって結果が大きく変わってきます。
つまり、試験が免除されるからといって、すぐに行政書士の実務ができるわけではないのです。
行政書士の仕事は、単に法律知識があれば良いというものではありません。行政庁との調整力、許認可申請に関するノウハウ、依頼者とのコミュニケーション能力など、実践的なスキルが求められます。試験免除で行政書士になったとしても、実務経験を積まなければ、依頼者の期待に応えることは難しいでしょう。
4. 公務員の勤務経験による免除の注意点
行政書士の免除制度の中で、特に興味を持つ人が多いのが、公務員の特認制度です。
「特認制度があるので、公務員は行政書士試験を受ける必要はない」
こう思っている人も多いかもしれません。
しかし、特認制度は決して万人にオススメできる制度ではありません。特に次のような点には、注意が必要です。
・必ず利用できるわけではない
・法律知識が不足する場合がある
それぞれ見ていきましょう。
4-1. 必ず利用できるわけではない
特認制度を利用するためには、公務員として20年(高卒の方は17年)以上、行政事務を担当した経験が必要です。しかし、20年以上働いたからといって、必ずしも特認制度が利用できるわけではありません。特認制度を利用するには、事前に行政書士会の審査を受ける必要があるからです。
この審査では、公務員として働いた期間が「行政事務」として認められるかが判断されます。一例として、大阪府行政書士会が公表している「行政事務」の基準を紹介します。
★行政事務を担当する者であるかどうかは、基本的には次の基準によります。
(1)文書の立案作成、審査等に関連する事務であること。(文書の立案作成とは、必ずしも自ら作成することを要せず、広く事務執行上の企画等も含む。)
(2)ある程度その者の責任において事務を処理していること。
⇒すなわち、単に職務の一部に書類の作成等が含まれているだけでは足りず、その者の職務の内容が、全体として上記(1)(2)に該当することが必要です。(引用:新規登録のご案内|大阪府行政書士会)
例えば、技術職の公務員として働いていたようなケースでは注意が必要です。
文書の立案作成、審査等に関連する事務ではないため「行政事務」として認められない可能性が高いです。また、事務職であったとしても、裁判所職員として働いていたようなケースでは「行政」事務ではないため、特認制度は利用できません。
4-2. 不足する法律知識の勉強が必要
特認制度を利用する場合も、行政書士として必要な法律知識については、しっかりとした勉強が必要です。公務員の実務経験は大きな強みになりますが、法律知識として十分とは言えないからです。
公務員は、それぞれの分野における特別法や自治体の規則については詳しいですが、行政法全体を体系的に学ぶ機会は多くありません。異動する度に、それぞれの業務で必要な知識を、部分的に勉強しているのが実情でしょう。
つまり、特認制度を利用するからといって、勉強が不要になるわけではないのです。行政書士として必要な知識を身につけるためには、試験対策と同じような勉強が必要です。
5. 最短ルートで行政書士になる方法は?
結局のところ、行政書士になる最短ルートは、行政書士試験に合格することです。
もちろん簡単ではありませんが、公務員の特認制度を利用したり、他の資格試験を経由するよりも、はるかに早く行政書士になることができます。必要な期間が短いのはもちろん、試験対策で身につけた知識は実務でも大いに活用できます。勉強に充てた時間は、行政書士になった後も決して無駄にはなりません。
因みに、行政書士試験に対して「長時間の勉強が必要」というイメージを持つ人も多いですが、必ずしもそうとは言い切れません。例えば、公務員試験の受験経験があったり、法律を勉強した経験があれば、比較的短期間で合格できる可能性があります。法律を初めて学習する人でも、受験指導校を利用すれば、数ヶ月の勉強で合格する人も多いです。
6. 行政書士になることで試験が免除される資格は?
行政書士になることで、試験が免除されたり、受験資格を得られる資格もあります。例えば「弁理士試験の科目免除」や「社労士試験の受験資格」が挙げられます。
6-1. 弁理士試験の論文式筆記試験(選択科目)が免除になる
行政書士の資格を持っていると、弁理士試験の一部が免除されます。具体的には、論文式筆記試験(選択科目)が免除されるため、短答式と論文式(必須科目)のみで、筆記試験に合格できます。
弁理士試験は、知的財産に関する高度な専門知識が要求される難関試験です。行政書士の資格があれば、試験対策が進めやすくなるでしょう。
6-2. 社会保険労務士の受験資格が得られる
行政書士になると、社会保険労務士(社労士)の受験資格を得ることもできます。
社労士試験を受けるためには、一定の学歴が必要です。具体的には、短大卒・高等専門学校卒などの学歴が求められており、中卒・高卒の場合、学歴要件を満たすことができません。しかし、行政書士試験に合格すると、学歴に関わらず、受験資格を得られます。
学歴要件を満たさない状態から社労士になりたい方は、最初に行政書士試験を目指すことも一案です。
社労士と行政書士は、ダブルライセンスの相性も抜群なので、独立開業する際も強力な武器になります。
※社労士試験について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
※社労士と行政書士の難易度の違いやダブルライセンスについて詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
7. 行政書士の免除に関するよくある質問(FAQ)
-
公務員の特認制度で行政書士になるには、何年の勤務経験が必要ですか。
-
国または地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間が、通算20年以上(高校卒業者などは17年以上)あれば、行政書士試験を受けずに資格を得られます。行政書士法第2条第6号で定められた要件です。
ただし年数を満たすだけでは足りません。担当業務が「行政事務」と認められるか、所属する行政書士会の事前審査を通る必要があります。
-
行政書士試験を受けずに資格を得る方法は、何通りありますか。
-
行政書士法第2条は、試験合格のほかに5つの資格ルートを定めています。弁護士・弁理士・公認会計士・税理士の資格を持つ人と、公務員として一定期間行政事務を担当した人(特認制度)の5つです。
いずれも取得や勤務年数のハードルが高く、行政書士を目指す近道は試験合格です。試験には学歴や年齢の制限がありません。
-
行政書士試験の「科目免除」と「試験免除」は何が違いますか。
-
行政書士試験に科目免除の制度はありません。実務経験や前年の成績にかかわらず、全科目を一度の試験で受ける必要があります。一方で、特定の資格保有者などが試験そのものを受けずに登録できる「試験免除」の仕組みはあります。
税理士試験や中小企業診断士試験のように、前年の合格科目を翌年へ持ち越す科目免除は、行政書士試験には存在しません。
-
弁護士や税理士の資格で試験免除を受ければ、すぐに行政書士の実務ができますか。
-
法律上は行政書士として登録・業務ができますが、すぐに実務をこなせるとは限りません。許認可申請のノウハウや行政庁との調整力は、試験免除では身につかないためです。
特に入管業務など行政の裁量が大きい手続きは、行政書士としての実務経験が結果を左右します。免除は実務能力の保証ではありません。
-
行政書士試験に受験資格や年齢制限はありますか。
-
行政書士試験に受験資格や年齢・学歴の制限はなく、誰でも受験できます。科目免除がないぶん、受験そのもののハードルは低く設定されています。
受験資格が関わるのは試験ではなく、他資格による試験免除や特認制度を使う場面です。外国籍の方も試験を受けられます。
-
警察官や自衛官として働いた経験でも、特認制度は利用できますか。
-
警察官や自衛官であっても、担当業務が行政書士法上の「行政事務」と認められれば、特認制度の対象になり得ます。職種名だけで一律に判断されるわけではありません。
ただし文書の立案作成や審査に関わる事務でない場合、行政事務と認められないことがあります。技術系の業務は審査で慎重に判断されます。
-
行政書士の特認制度は廃止されるという噂は本当ですか。
-
2026年現時点で、特認制度を廃止する法改正は行われていません。試験免除の根拠である行政書士法第2条第6号は現行法に残っており、制度は引き続き利用できます。2026年1月1日に施行された改正行政書士法(令和7年法律第65号)でも、特認制度の廃止は盛り込まれていません。
出典:総務省「行政書士制度」
-
17年や20年勤めても、特認制度が認められないことはありますか。
-
あります。年数を満たしても、担当業務が「行政事務」と認められなければ利用できません。文書の立案作成や審査に関わらない技術職、行政事務に当たらない裁判所職員などが例です。
行政事務かどうかは、文書の立案作成や審査に関わり、本人の責任で事務を処理していたかで判断されます。各行政書士会の事前審査で確認されます。
-
特認制度を使うには、どのような手続きや審査が必要ですか。
-
勤務先などが発行する公務員職歴証明書で行政事務の経験を示し、登録先の行政書士会による事前審査を受けます。審査で行政事務と認められて初めて、行政書士登録に進めます。審査基準は各行政書士会が公表しています。年数を満たした時点で自動的に資格が得られるわけではない点に注意が必要です。
-
行政書士の資格を取ると、ほかの試験で免除や受験資格が得られますか。
-
得られます。行政書士は弁理士試験の論文式筆記試験(選択科目)が免除され、社会保険労務士(社労士)試験の受験資格も認められます。学歴要件を満たさない場合でも、社労士を目指す入り口になります。
弁理士では「法律(弁理士の業務に関する法律)」科目が免除の対象です。社労士は行政書士試験の合格で受験資格が認められます。
8. 行政書士の試験科目の免除に関するまとめ
最後に、今回の記事のポイントをまとめます。
- 行政書士試験に「科目」免除はない
- 「試験」が免除になる方法は2つ
- 1つ目は、弁護士、弁理士、公認会計士、税理士になること
- 2つ目は、公務員の特認制度を使うこと
- ただし、どちらも万人にオススメできる方法ではない
- 最短で行政書士になるには、試験の合格が最も効率的
「試験免除」と聞くと、確かに魅力的に聞こえるかもしれません。しかし本気で行政書士を目指すのであれば、試験に合格するほうが、賢明な選択となるケースが多いです。
難しいイメージを持つ人が多い行政書士試験ですが、正しい勉強をすれば短期間で合格する人も珍しくはありません。
行政書士試験に挑戦したい方は、ぜひ法律資格専門の指導校である伊藤塾へご相談ください。伊藤塾では、法律を初歩からしっかり学習していくことができる「行政書士試験 合格講座」を開講しています。
▶︎伊藤塾の行政書士 合格講座の詳細はこちらをご覧ください。
伊藤塾が、あなたの挑戦を全力でサポートいたします。