国家総合職試験の試験区分とは?選択のポイントを解説
公務員の基本情報
2023年01月30日

更新日:2025年4月19日
国家公務員総合職試験には、12種類もの試験区分があります。
試験区分によって、受験するタイミングと試験内容が異なります。どの試験区分を選ぶのが「正解」なのでしょうか。
・合格しやすい試験区分は?
・独学で目指すならどれ?
・試験区分によって採用に有利・不利がある?
よくある疑問を解消しながら、試験区分を選ぶポイントをご紹介していきましょう。

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【目次】
1.国家総合職の試験区分とは
1-1.大学生が受けるのは「大卒程度」試験
国家公務員総合職試験には、大きく分けて「大卒程度試験」と「院卒者試験」の2種類があります。このうち、大学生が受験するのは大卒程度試験です。
大卒程度試験はさらに2種類に分かれます。
実施時期から「秋試験」「春試験」とよばれ、受験可能年齢および試験内容が異なります。
秋試験
●受験可能年齢 | 19歳(主に大学2年生)から受験可能 |
●試験時期 | 2025年試験日程 第1次試験:10月5日(日) 最終合格発表:12月18日(木) |
●試験区分 | 教養区分のみ |
●特徴 | 法律・経済などの専門科目試験は課されない。 ただし「総合論文試験」「企画提案試験」という形式で教養や専門的知識を備えていることを前提とした論述が求められる。 |
春試験
●受験可能年齢 | 21歳(主に大学4年生)から受験可能 |
●試験時期 | 2025年試験日程 第1次試験:3月16日(日) 最終合格発表:5月30日(金) |
●試験区分 | 法律、政治・国際・人文、経済など11種類 |
●特徴 | 試験区分に応じた専門試験が課される。 1次の専門試験は多肢選択式、2次は記述式。 政策立案の能力を試す政策論文試験もあり。 |
1-2.試験区分は全部で12種類
主に大学2・3年生が受験する秋試験の試験区分は、教養区分のみです。一方、大学4年生が受験する春試験には11種類の区分があります。
●秋試験 | 教養区分 |
●春試験 | ①法律 ②政治・国際・人文 ③経済 ④人間科学 ⑤デジタル ⑥工学 ⑦数理科学・物理・地球科学 ⑧化学・生物・薬学 ⑨農業科学・水産 ⑩農業農村工学 ⑪森林・自然環境 |
春試験の試験区分で、文系学生の皆さんが多く受験するのは①法律、②政治・国際・人文、③経済のいずれかです。ここからは、春試験のこの3つの区分と教養区分を中心にご紹介していきます。
2.試験区分による試験内容のちがい
2-1.秋試験(教養区分)の場合
前述のとおり、秋試験の試験区分は「教養区分」です。
春試験とは異なり、専門試験が課されないのが大きな特徴です。
2024年 国家総合職秋試験(教養区分) 試験内容
●第1次試験
試験種目 | 配点比率 | 内容 |
基礎能力試験 | Ⅰ部:3/28 Ⅱ部:2/28 | Ⅰ部:知能分野(数的推理など) Ⅱ部:知識分野(人文科学など) |
総合論文試験 | 8/28 | 幅広い教養や専門的知識を土台とした総合的な判断力、思考力についての筆記試験 |
基礎能力試験は、例年、春試験よりも難易度の高い問題が出題されます。
しかも第1次試験の合否は基礎能力試験の成績のみで判定される仕組みです。
第1次試験では総合論文試験も実施されますが、基礎能力で合格点に達していなければ採点されません。満点狙いは必要ありませんが、何回やっても常に合格ラインは突破できる、そんな基礎能力科目の力が求められます。
●第2次試験
試験種目 | 配点比率 | 内容 |
企画提案試験 | 5/28 | Ⅰ部:プレゼンシート作成 Ⅱ部:プレゼン・質疑応答 |
政策課題討議試験 | 4/28 | 課題に対するグループ討議 |
人物試験 | 6/28 | 個別面接 |
第1次試験の合否を決めるのは基礎能力試験でしたが、最終的な合否に大きく影響するのは総合論文試験です。行政学などの専門知識なしに、合格レベルの答案は書けないにもかかわらず、出題科目としては明示されていないため、対策が難しい試験種目です。
教養区分試験の内容と対策の詳細はこちらをご覧ください。
▼公務員試験 受験ガイド
2-2.春試験の場合
春試験では専門試験が課されます。
出題される科目・出題数は試験区分ごとに異なり、受験案内に明記されています。
なお、政治・国際・人文区分は、2023年試験までは「政治・国際」という試験区分でしたが、人文系(哲学・歴史学・文学など)を専攻する方も受験しやすいように「政治・国際・人文」区分へと改編されました。
コースAとBに分かれ、Aは従来の政治・国際区分と同じ出題内容、Bは人文系科目も含む出題内容となっています。ここでは、コースAについて紹介していきます。
2025年 国家総合職春試験 試験内容
●第1次試験
試験種目 | 配点比率 | 内容 |
基礎能力試験 | 2/15 | Ⅰ部:知能分野(数的推理など) Ⅱ部:知識分野(人文科学など) |
専門試験 (多肢選択式) | 8/28 | 【法律区分】 必須:憲法、行政法、民法 選択:商法、刑法、労働法、国際法、経済学・財政学から9題選択 |
【政治・国際・人文区分】A 必須:政治学、国際関係、憲法 選択:行政学、国際事情、国際法、民法※、経済学、財政学、経済政策から15題選択 | ||
【経済区分】 必須:経済理論、財政学・経済政策、経済事情、統計学・計量経済学 選択:経済史・経済事情、国際経済学、経営学、憲法、民法※から9題選択 |
●第2次試験
試験種目 | 配点比率 | 内容(②:2題出題) |
専門試験 (記述式) | 8/28 | 【法律区分】 必須:なし 選択:憲法、行政法、民法、国際法、公共政策②から2科目選択 |
【政治・国際・人文区分】A 必須:なし 選択:政治学、行政学、憲法、国際関係②、国際法、公共政策②から2科目選択 | ||
【経済区分】 必須:経済理論 選択:財政学、経済政策、公共政策②から1科目選択 | ||
政策論文試験 | 2/15 | 政策の企画立案に必要な能力、総合的な判断力及び思考力についての筆記試験 |
人物試験 | 3/15 | 個別面接 |
春試験の合格に求められるのは、専門科目の正確な知識です。マークシート形式の試験だけではなく記述式の試験も課されるのが特徴。「見て答えられる」だけではなく、白紙の答案用紙上に知識をアウトプットしていく力が必要です。
とはいえ、教養区分とは異なり、出題科目は明示されています。記述式であっても、自身の見解を自由に組み立てて展開する、というよりは、一定の知識や型の枠内で論述する、という形式。コツコツやれば確実に力がついて合格に近づく、そんな取り組みやすさがあります。
秋試験・春試験いずれも最新の『受験案内』で詳細を確認しておきましょう。
3.試験区分に有利・不利はあるか
3-1.そもそも「有利・不利」とは?
国家総合職になるまでには、①試験に合格→②採用の内々定獲得 という2つのステップがあります。この流れにおいて、「有利」というのは
①試験に合格しやすい
②内々定をとりやすい
ということでしょう。
試験区分の違いによって本当にそんなことがあるのか、実際の結果でみていきましょう。
3-2.試験区分別の結果
人事院は、試験区分ごとの採用状況を毎年公表しています。最新のデータは2024年4月採用者の数値です。
2024年4月から官僚として働きはじめた人の大半は、2022年秋試験(教養区分)または2023年春試験に合格、2023年夏の官庁訪問で内々定獲得、という流れを経ています。各段階の結果をまとめると、次のようになります。
2024年採用者の状況
試験区分 | 申込数 | 合格数 | 合格率※ | 採用数 |
教養 | 2,952 | 255 | 8.6% | 171 |
法律 | 7,834 | 352 | 4.5% | 88 |
政治・国際 | 1,308 | 211 | 16.1% | 69 |
経済 | 1,071 | 142 | 13.3% | 48 |
3-3.有利=①「合格のしやすさ」
まず、①合格のしやすさ の判断材料となるのは「合格率」でしょう。表を見ると、教養区分が8.6%、春試験のうち法律区分が4.5%と低めの合格率、残る2つの区分は10%を超えるやや高めの数値となっています。
ただし、法律区分の合格率4.5%は実態を正確にあらわしているとはいえません。なぜなら「本気ではない」受験生がかなり混じっているからです。
大学4年生が受験する国家公務員試験の中で、最も早い日程で行われるのが国家総合職試験。その後に続く、裁判所や国家一般職などを本命とする皆さんが、「試験慣れ」のために科目が重なる法律区分を受験する、というケースが多いのです。
1次合格者の2次試験辞退率がその裏付けのひとつといえるでしょう。せっかく1次試験し合格したのに2次試験を受験しない人の割合は法律区分では4割にのぼり、政治・国際区分の約2倍となっています。この点をふまえると、法律区分の合格率も、政治・国際や経済と大差ない水準とみてよいでしょう。
したがって、①合格のしやすさ においては、教養区分よりも春試験のほうが有利といえそうです。教養区分は実際の出題内容を見ても、問題レベルの高さ、対策のしづらさが群を抜いています。
3-4.有利=②「内々定のとりやすさ」
では、②内々定のとりやすさ はどうでしょうか?
こちらは、「採用数」や「内定率」をみるわけですが、教養区分合格者の内定率が62.1%と他を圧倒しています。採用人数自体も年々増加しており、春試験で最も多い法律区分を上回りました。
教養区分は、合格するのは難しいものの、合格できれば6割以上の高い確率で内々定がとれる試験区分、ということになります。
4.国家総合職の試験区分を選ぶポイント
4-1.採用状況から「教養区分」は必須
結局のところ、国家総合職試験においては、どの試験区分を選べば良いのでしょうか?
私たち「伊藤塾」のおすすめは、教養区分と法律区分の併願。
その理由は、①採用状況 と ②官僚になってからの有用性 の2点です。
まず、①採用状況を考えると、教養区分は絶対にはずせません。
単純に、内定率が高い、内定者数が増えているというだけではありません。省庁によっては、内定者の大半を教養区分合格者が占めている、という省庁があるのです。
例えば、外務省。
外交に関心を持つ学生は多く、とても人気のある省庁です。その外務省の2024年度採用状況は、内定者36名中20名が教養区分合格者。例年、採用枠の約半数を教養区分合格者が占めています。
同じく、人気省庁である経済産業省も、教養区分合格者を比較的多く採用しています。
興味ある省庁の採用状況は早めにチェックしておきましょう。
▼人事院『国家公務員試験採用情報NAVI』
国家公務員採用総合職試験の区分試験別・府省等別採用状況
4-2.春試験は「法律区分」が堅実
国家総合職を目指す以上は、教養区分は必ず受験、です。
とはいえ、教養区分は合格のハードルが高め、でしたね?教養区分のみ受験する、という選択はリスクが大きいといえます。
国家総合職を目指すなら、最初から教養区分と春試験を併願する、というプランを立てておきましょう。春試験でおすすめの試験区分は、やはり①採用状況からいって、法律区分です。
法律区分は、
・採用者数が他の区分よりも多い
・ほぼ全ての主要省庁で採用枠がある
という点で、他の区分より堅実な選択といえます。
さらには、②官僚になってからの有用性 という点でも、法律区分にはアドバンテージがあります。
国家総合職は、政策を立案し、法律案を作成するのが主な仕事。その際、法律の基礎知識や法的思考力が、少なからず役に立ちます。法律区分の対策を通じて、これらを身に付けておくことは、試験合格のためだけでなく、官僚として活躍するためにも有益といえます。
ただし、前述の外務省は、春試験では政治・国際区分の合格者を多く採用しているので注意が必要です。外務省本命なら「教養区分+政治・国際区分」、それ以外の省庁なら「教養区分+法律区分」という選択がおすすめです。
5.まとめ
いかがでしたか?
国家総合職の試験区分は、採用数に関わるため、選択を誤ると後から困ったことになるので選択は慎重に。まずは、自分が官僚としてどんな仕事がしたいのか、イメージすることからはじめましょう。
明確に「ここで働きたい」という志望先があるなら、その省庁の採用状況をみて試験区分を決めればOKです。
まだやりたいことが絞り切れない、というあなたは、選択肢が最も多くなる、「教養区分+法律区分」でとにかくスタートを切りましょう。「決められない」ことは何ら問題ありません。大切な将来のこと、じっくり時間をかけて考えればよいのです。問題なのは「決めるまで何もしないこと」。これが失敗のもとです。
官僚に興味があるのなら、とりあえず準備をはじめてしまうことです。準備を進めるうちに、やりたいことが具体化していきます。伊藤塾はあなたのチャレンジを応援しています。
以上です。
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