国家総合職の法律区分とは?試験内容・難易度・対策を解説
公務員の基本情報
2025年05月04日

更新日:2025年5月5日
国家総合職の法律区分とは、国家総合職、いわゆる「官僚」を採用するための試験です。
国家総合職試験には複数の試験区分があり、法律区分もその中のひとつ。最も多くの受験生が選択する区分です。
・法律区分ってどんな試験?試験科目は?
・難易度はどれくらい?
・法律区分で受験するメリット・デメリットはある?
試験の仕組みや出題傾向、対策を知ることで、そんな疑問を解消していきましょう。

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【目次】
1.国家総合職法律区分とは
1-1.国家総合職には「秋試験」と「春試験」がある
国家公務員総合職試験には、大きく分けて「大卒程度試験」と「院卒者試験」の2種類があります。
このうち、大学生が受験するのは大卒程度試験です。
大卒程度試験はさらに2種類に分かれます。
実施時期から「秋試験」「春試験」とよばれ、受験可能年齢および試験内容が異なります。
法律区分は、春試験の11ある試験区分のひとつです。
▼秋試験とは「教養区分」のこと。日程・試験内容・対策についてはコチラから
1-2.法律区分は文系学生のメイン区分
国家総合職の春試験には全部で11種類の試験区分があります。
試験区分によって、『専門試験』の出題科目や出題数、必須・選択解答などの形式が異なります。
全ての試験区分が同日に実施され、受験生は1つの試験区分を選んで受験します。
特に決まりがあるわけではありませんが、出題内容から、文系・理系それぞれの学生が選択する試験区分はほぼ固定されています。
国家総合職春試験 試験区分(申込者数:2025年試験)
試験区分 | 申込者数 |
主に【文系学生】が選択 | |
①法律 | 6,063 |
②政治・国際・人文 | 1,674 |
③経済 | 984 |
④人間工学 | 236 |
主に【理系学生】が選択 | |
⑤デジタル | 135 |
⑥工学 | 695 |
⑦数理科学・物理・地球科学 | 141 |
⑧化学・生物・薬学 | 260 |
⑨農業科学・水産 | 309 |
⑩農業農村工学 | 86 |
⑪森林・自然環境 | 157 |
試験区分ごとに合格人数が割り振られているわけではありませんが、採用予定数は区分ごとに決められており、事前に公表されています。文系4区分のうち、最も採用人数が多いのは法律区分。2025年度の採用予定数は「約90名」で、次に多い政治・国際・人文区分の「約60名」の1.5です。
文系4区分のうち、④人間工学は採用人数もかなり少なく、また出題科目も心理学・教育学など少し特殊なもの。多くの受験生は、①法律、②政治・国際・人文、③経済のいずれかを選択します。
中でも、採用人数の多さ、対策のしやすさ、官僚になってからの有用性などから、文系学生の皆さんにとってメインの試験区分となっているのが、法律区分です。
2.法律区分の試験日程
2-1.国家総合職になるまでの流れ
まずは、国家総合職になるまでの流れを確認しておきましょう。
総合職に限らず、一般職なども含む国家公務員試験の特徴は「合格」=「採用」ではない、ということ。採用にいたる流れは2ステップです。
ステップ① 試験に合格する
ステップ② 志望する省庁から内々定をもらう
まずは、①「国家公務員総合職試験」に合格する必要があります。合格すれば『採用候補者名簿』に名前が載り、②志望する省庁への「官庁訪問」を行うことができます。そして内々定を獲得できれば、翌年4月から晴れて総合職職員です。
2-2.2025年試験の実施日程
国家公務員総合職試験においては、2022年より様々な制度変更が行われてきました。春試験の実施時期もその一つ。2024年以降、従来よりも約1ヶ月半早い日程で実施されています。
国家総合職春試験 日程(2025年)
●受付期間 | 2025年 2月3日(月)~25日(火) |
●第1次試験日 | 3月16日(日) |
●第1次試験合格発表 | 3月31日(月) |
●第2次試験日 | [筆記試験] 4月13日(日) [人物試験等] 4月21日(月) ~5月16日(金) |
●最終合格発表 | 5月30日(金) |
春試験の実施時期前倒しのほか、国家総合職試験においては、教養区分の受験会場増設や受験可能年齢引き下げなどの制度変更が行われています。
その目的は、「より多くの学生に国家公務員総合職試験を受験してほしい」、これに尽きます。現行の試験制度がスタートした2012年、国家総合職試験の受験者は21,358人でした。10年が経過した2022年の受験者は16,626人。2割以上も減少しています。
長期的には、若年人口の減少という要因がありますが、国家総合職試験に向けた準備負担を敬遠して、民間企業を選択する学生が増えているようです。民間就活のスケジュールが多様化し、国家総合職よりも前に民間企業の内定が決まるケースも多いでしょう。
謳い文句どおり、「民間企業との併願もしやすく」なるかは未知数ですが、国家総合職の採用が、学生に有利な「売り手市場」ともいえる状況は、本気で官僚を目指す皆さんにとっては大きなチャンスといえるでしょう。
3.法律区分の試験内容
3-1.法律区分の受験資格
国家総合職試験の法律区分(春試験)は、21歳から受験できる試験です。
主に大学4年生が対象となります。
2025年試験 受験資格
1. 1995(平成7)年4月2日~2004(平成16)年4月1日生まれの者 2. 2004(平成16)年4月2日以降生まれの者で次に掲げるもの (1) 大学(短期大学を除く。以下同じ。)を卒業した者及び 2026(令和8)年3月までに大学を卒業する見込みの者 (2) 人事院が(1)に掲げる者と同等の資格があると認める者 |
3-2.法律区分の試験科目・形式・出題数
法律区分では、まず第1次試験を受験します。合格すれば、第2次試験に進むことができ、2次合格=最終合格です。1次、2次それぞれの試験内容をみてみましょう。
法律区分の第1次試験とは
法律区分の第1次試験の種目は2つ。基礎能力試験と専門試験です。
2022年試験の第1次試験合格率は12.2%でした(対受験者、以下同様)。
●基礎能力試験
●配点比率 | 2/15 |
●形式 | 多肢選択式 |
●解答題数 | 【知能分野】24題出題 【知識分野】6題出題 全問必須解答 |
●解答時間 | 2時間20分 |
●内容 〇数字は出題数 | 【知能分野】 ◎文章理解⑩ ◎判断・数的推理 (資料解釈を含む)⑯ 【知識分野】 ◎自然・人文・社会に関する 時事、情報⑥ |
法律区分の基礎能力試験は30題出題され、全問必須解答です。目指すべき得点ラインは6割。40点満点で24点です。全問正解を目指すような学習は必要ありません。しかし、何度試験を受けても必ず6割はとれる、という力をつけなければなりません。
対策の中心はやはり知能分野です。文章理解といわゆる数的処理を合わせて、全体の8割にあたる24題出題されます。文章理解は全問正解を目指すべき分野です。一方、数的処理は、自身の得意・不得意を踏まえて、必ず正解すべきパターンの問題はどれかを明確にするなど、緻密な得点戦略を立てて臨む必要があるでしょう。
知識分野は2024年試験から時事中心の出題へと変更されました。時事トピックと関連付けて知識問題も出題されます。日頃からニュースにアンテナをはって、時事的なトピックと周辺知識の理解を深めることで、得点を取りこぼさないようにしておきましょう。
●専門試験
●配点比率 | 3/15 |
●形式 | 多肢選択式 |
●解答題数 | 【必須】31題出題 【選択】18題出題 49題出題 40題解答 |
●解答時間 | 3時間 |
●内容 〇数字は出題数 | 【必須】 憲法⑦、行政法⑫、民法⑫ 【選択】 商法③、刑法③、労働法③、 国際法③、経済学・財政学⑥ から任意の9題解答 |
第1次試験では、配点比率が1.5倍となる専門試験のほうが圧倒的に重要です。
出題数は基礎能力と同じ40題。合格を確実に狙うなら、目標としたい得点ラインは8割、40点満点で32点です。
専門試験で8割とれれば、他の試験種目で失敗しても(例えば基礎能力で5割、2次で平均点程度しかとれなくても)、合格点はクリアできます。
専門、すなわち法律科目の択一問題は、きちんと対策すれば確実に得点できるタイプの試験。学習効率が高く、得点源にできるはずです。中でも、行政法と民法は各12題と出題数も多いため、絶対に苦手科目にしてはいけません。
法律区分の第2次試験とは
法律区分の第2次試験の種目は3つ。記述式の専門試験と政策論文試験、そして人物試験です。2022年試験の合格率は87.6%です。このほか、TOEFLやTOEICなどの英語試験スコアに応じた加算があります。
●専門試験
●配点比率 | 5/15 |
●形式 | 記述式 |
●解答題数 | 5科目から2科目選択して2題解答 |
●解答時間 | 3時間 |
●内容 〇数字は出題数 | 憲法、行政法、民法、国際法、 公共政策②から2科目選択 (公共政策からは1題のみ選択可) |
●政策論文試験
●配点比率 | 2/15 |
●形式 | 記述式 |
●解答題数 | 1題 |
●解答時間 | 2時間 |
●内容 | 政策の企画立案に必要な能力 その他総合的な判断力及び思考力についての筆記試験 |
●人物試験
●配点比率 | 3/15 |
●形式 | 個別面接 |
●内容 | 人柄、対人的能力などについての個別面接 |
第2次試験においても、対策の中心は専門試験です。
専門試験は5科目から3科目を選択します。科目は、1次で必須科目となっている、憲法・行政法・民法で受験するのが一般的。得点ラインは7割を目指しましょう。
2024年試験でいうと、第2次試験の合格率は61.0%でした(対受験者)。これは第1次試験の合格率11.3%よりもずっと高く、この傾向は近年ほとんど変わりません。ということは、「あまり準備に力をいれなくていい?」と思われるかもしれませんね。残念ながら答えはNO。誰でも書けるような簡単な出題だから、合格率が高い、というわけではないのです。
実は法律区分の1次合格者は、約3割が辞退して2次を受験しません。第2次試験合格率の分母は、「絶対に官僚になりたい」という強い意志を持った、本気の受験生に厳選されているのです。そして、彼らは、2次を突破できるだけの論文対策も十分してきている、だから合格率が高くなる、というだけのこと。
さらには、国家総合職試験を「すべりどめ」として受験する法曹志望者の増加が予想されます。国家総合職試験と、司法試験および司法試験予備試験はこれまで実施時期がほぼ重なっていました。
ところが2023年から、一方は前倒し、他方は後倒しで4月と7月に時期が分散し、司法試験受験生が受けやすくなっています。彼らは、いやというほど論文のトレーニングを積んでいます。本当に油断は禁物です。
試験内容の詳細は最新の『受験案内』で確認しておきましょう。
4.法律区分に合格するには
4-1.「教養区分」合格を本気で狙う
法律区分合格をより確実にしたいなら、「教養区分」合格を本気で狙うことをおすすめします。
ちょっと「は?」という感じですよね?ご説明します。
実は、教養区分対策を本気でしておけば、それ以上の対策は不要、という試験種目が法律区分には3つもあるのです。具体的には次の3種目です。
①<1次>基礎能力試験
②<2次>政策論文試験
③<2次>人物試験
①基礎能力試験で出題される科目は教養区分と同じです。難易度はむしろ法律区分のほうが下がるので、教養区分対策で十分カバーできます。②政策論文試験は、教養区分「総合論文試験」と同様の出題傾向・難易度。追加の対策なしでOKです。
③人物試験も準備すべき内容は教養区分と同じ。具体的には面接カードの作成と面接練習です。中でも重要なのは面接カードですが、教養区分の段階で、ある程度のクオリティーに仕上がっていれば、あとは若干の修正で足ります。
法律区分の5種目中3種目の準備は、教養区分段階で終わっている、ということになります。あとは、残る2種目、法律科目の対策に集中するだけです。ポイントは、本気で合格を狙いにいくこと。「とりあえず受けてみよう」程度の準備では、この効果は得られません。合格するつもりで詰めて対策をしましょう。
4-2.「教養区分」に集中しすぎない
とはいえ、教養区分に集中しすぎるのも問題です。
皆さんの先輩には、教養区分まではその対策に集中し、11~12月に教養区分の結果が出てから法律区分の対策をはじめた、という方もおられるかもしれません。
たしかに従来は、法学部生で学部授業の内容がしっかり身についている、という方であれば、この短期間で法律区分に合格することも不可能ではありませんでした。しかし、今後は違います。
なぜなら、試験実施日が前倒しされたからです。教養区分の最終合格発表は12月中旬、法律区分の第1次試験は3月中旬ですので、たったの3ヶ月しかありません。教養区分の合否が判明してからはじめるのでは、法律科目の準備はまず間に合いません。
教養区分合格を本気で狙いつつ、法律科目の学習もコツコツ進めておく必要があります。
公務員受験指導校「伊藤塾」では、教養区分の基礎能力試験対策として憲法・行政法も学習するプログラムを提供しています。この2科目の学習をすることで、教養区分合格の可能性が高まる上、法律区分に向けて、残る「大物」は民法のみ、ということになります。
5.法律区分がおすすめの理由
5-1.採用省庁・採用数
私たち「伊藤塾」が、国家総合職を目指す皆さんへおすすめしている受験プランは、教養区分と法律区分の併願です。その理由は①採用状況と②官僚になってからの有用性です。
まず、①採用状況についてですが、人事院が公表している2024年採用者のデータを試験区分別にまとめると、次のとおりです。
2024年採用者の状況
試験区分 | 申込数 | 合格数 | 採用数 |
教養 | 2,952 | 255 | 171 |
法律 | 7,834 | 352 | 88 |
政治・国際 | 1,308 | 211 | 69 |
経済 | 1,071 | 142 | 48 |
教養区分と法律区分からの採用が多いのは一目瞭然ですね?
さらにいえば、法律区分はほぼ全ての省庁で採用枠があるのも特徴です。春試験では法律区分から最も多く採用するという省庁が、警察庁や財務省、文部科学省、厚生労働省、国土交通省など多数あります。
国家総合職になるまでの2ステップでは、「①試験に合格」よりも、「②内々定を獲得」のほうが、実はハードルが高いのです。採用人数の多さは、試験区分の選択において、はずせない視点です。
過去3年間の採用状況は人事院のサイトで確認できます。
▼人事院『国家公務員試験採用情報NAVI』
国家公務員採用総合職試験の区分試験別・府省等別採用状況
5-2.官僚になってからも役立つ知識
②官僚になってからの有用性 という点でも、法律区分にはアドバンテージがあります。
国家総合職は、政策を立案し、法律案を作成するのが主な仕事。その際、法律の基礎知識や法的思考力が、少なからず役に立ちます。法律区分の対策を通じて、これらを身に付けておくことは、試験合格のためだけでなく、官僚として活躍するためにも有益といえます。
6.まとめ
いかがでしたか?
法律区分は、教養区分と並んで、国家総合職試験におけるメインの試験区分です。
どんなに準備をしても、多少「運」の要素もある教養区分とはちがって、法律区分は準備をした分だけ結果に結びつきます。
とはいえ、選択科目まで含めると法律科目だけで6~7科目は学習しなければなりません。民法などは範囲も膨大。試験対策としての学習を、正しい方法で行わなければ時間はいくらあっても足りません。
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