国家総合職でもガクチカは重要?面接・官庁訪問でアピールすべきこと

勉強法

2023年03月02日

就職活動(就活)で、最近とみに重要視されているのが「ガクチカ」。「彼はガクチカがあっていいな」「私はぜんぜんガクチカがない!」とか、大学の中でもけっこう話題になっているのではないでしょうか。

「ガクチカ」とは、「学生時代に力を入れてやったこと」を略した就活用語ですが、就活の際に、エントリーシートや面接カードに書きこんだり、面接の時に自己アピールの材料に使うのが、その「力を入れてやったこと」になります。

それでは、この「ガクチカ」は、国家公務員総合職の合格・内定を獲得する際にも重要なものなのでしょうか。国家総合職試験で課される面接試験の傾向と、「ガクチカ」対策を確認していきましょう。

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1. 国家公務員総合職の「面接」には2種類ある

1-1.国家総合職の「面接」一つ目は人事院面接

国家総合職で内定を得るためには、まずは採用試験に合格しなければなりません。

国家総合職の採用試験には、大卒程度試験だけでも、「法律区分」「政治・国際区分」「経済区分」など春に実施される諸々の区分と秋に実施される「教養区分」など多種類ありますが、そのいずれであっても、第2次試験で「人物試験」が課せられます。この人事院による「人物試験」が、国家総合職志望者にとっての一つ目の面接になります。

1-2.国家総合職の「面接」二つ目は官庁訪問

採用試験に合格して、次が入職を希望する官庁を訪ねる「官庁訪問」になります。試験に合格しただけではだめで、官庁訪問の結果で内定が決まります。この「官庁訪問」では複数の官庁を訪ねることができますが、そこで実施されるのが「面接」または「面談」です。これが二つ目の面接です。

「面接」と「面談」の違いとは何か。簡単に言うなら、人物の評価をされるのが「面接」、両者で話をして互いの理解を深めるのが「面談」となります。

ただし、「面談」と称されてはいても実質的には「面接」になっている場合もあるので、「これは面談だから評価されるわけじゃないんだ」と決めつけるのは危険。省庁によっては「面接」と「面談」をしっかり分けているところもあれば、事実上ほとんど「面接」になっているところもあります。ただ、「面談」しかない省庁はありません。必ずどこかで面接があります。

国家総合職志望者は、この二つの面接を突破しなければなりません。そして、この二つは、面接のされ方や評価の基準が異なるものなのです。

2. 人事院による「人物試験」での面接

2-1.人事院面接の内容

国家総合職第2次試験で課せられる「人物試験」では、試験当日に「面接カード(面接票)」を提出します。どの区分の試験であっても面接カードの体裁は同じもの。記入する質問項目に変わりはありません。提出した面接カードに沿って、面接は実施されます。受験者1名に対して面接官3名が交替で質問をしていきます。

評価は5段階(A・B・C・D・E)での段階評価です。Aが最高評価で、Eが最低評価です。気を付けなければいけないのは、E評価になったら、他の試験科目でどんなに良い点数をとっても試験が「不合格」になってしまうこと。これは絶対に避けなければなりません。なんとしても「D以上の評価をもらう」ことが面接での最低目標になります。

面接カードの質問項目は、大きくは次の2つに分かれます(※)。

(1) 「これまでに取り組んだ活動や体験」
(2) 「志望動機」

この(1)が直接的に「ガクチカ」を問う項目ですが、(2)にも「ガクチカ」は関わってきます。

(1)はさらに次の3つに分かれます。

① 「学業や職務について」(「職務」は社会人経験のある人のみ)
② 「社会的活動や学生生活について」
③ 「日常生活その他(資格、特技、趣味、社会事情などで関心のあること等)について」

※執筆時点での最新の面接カードに沿って説明しています。面接カードの質問項目が変更される可能性もあるので、最新のものを確認してください。

2-2.人事院面接における評価ポイント

それでは、面接官は、どんな点を見て評価をするのでしょうか。

この試験は、「国家公務員総合職にふさわしい人物」かどうかを見きわめるものですが、人事院の面接での審査基準は、主に次の3つと考えられます。

(1) 「公務員」としてふさわしいか
(2) 「(地方公務員ではなく)国家公務員」としてふさわしいか
(3) 「総合職」としてふさわしいか

面接官は、面接カードに書かれた内容と質疑応答を通して、それらが確かめられていくと思われます。この中でもまず重要なのは、(1)「公務員」としてふさわしいか、すなわち公務員としての適性があるかどうかです。

2-3.公務員としての適性とは?

みなさんは、どういう人が「公務員にふさわしい人」「公務員としての適性がある人」だと思いますか?いろいろ考えられますよね。主なものを挙げてみましょう。

■奉仕の精神を持っている
■遵法精神(法やルールを尊重し守ることができる)がある
■中立性・公平性を保てる
■バランス能力がある
■協調性がある
■責任感が強い
■計画性がある
■傾聴力がある
■コミュニケーション能力がある
■継続して物事に取り組む力がある
■クレーム処理能力がある
■ストレス耐性がある
■人としての信頼感がある

もちろんこれらの中には公務員だけでなく、民間においても重視される能力・適性はあります。ただ、特に強く公務員に求められるものもあります。

例えば、「協調性」。
公務員は、一般に民間以上に組織として動き働くところですから、「協調性」への要求度は高いと見るべきです。念のために言いますが、この「協調性」は、「自分の意見を言わない」とか「何でも命じられたことをする」ということではありません。「職場や組織全体のために自分が何をするべきかを考え、他の人と協力し合って実行できること」ということです。

上に記した適性の中でも、公務員に強く求められる適性、いわば「公務員としての基礎的適性」があることを示せれば、一定の評価をしてもらえるでしょう。そして、適性を示すための材料となるのが「ガクチカ」です。

人事院面接では、学生時代のエピソードを用いて、自分自身に公務員としての適性があることを面接官にアピールしていかなければなりません。D以上の評価を得るためにまず大切なことは、求められる適性がどのようなものかをしっかり理解すること。その上で、自身がその適性を備えていることが伝わるように『ガクチカ』を語る準備をしておくことが重要です。

そうすれば致命的な評価にはならない。これが人事院「面接」でのポイントになります。

3. 各省庁による「官庁訪問」での面接

3-1.官庁訪問の内容

官庁訪問の際にも、「訪問カード」という面接カードを事前に記して持参します。人事院「面接」では志望省庁に関係なく共通のカードを使うのに対して、「訪問カード」は各省庁オリジナルなものです。

人事院「面接」に比べると、官庁訪問の「面接」はより要求度が高いと見るべきです。

「国家公務員総合職の適性」を見定める点では同じでも、人事院の面接では「(国家)公務員」としての適性がまず見られるのに対して、官庁訪問の「面接」では「総合職」としての適性にさらに重点が置かれてきます。

3-2.総合職としての適性とは?

総合職としての適性には、どんなものがあるでしょう。

国家一般職とは異なり、国家総合職では様々な部署を短期間で渡り歩きます。省庁によっては本省と地方を往き来したり他省庁に出向することも多いです。また、30代で自分より年上の部下をもつことも珍しくありません。また、新たな施策を立案することや他省庁との連携・調整もあります。

こうした総合職の働き方や置かれる地位から見ると、先に示した「公務員」としての適性にプラスして、次のような能力が求められます。

■課題を発見する能力がある
■企画・立案の能力がある
■説明能力がある
■交渉力がある
■統率力がある
■社会への高い関心度・広い視野をもっている
■複眼的に思考する能力がある
■修正能力がある

「ガクチカ」を材料として、これらの能力があることを伝えることが大切になります。

4. ガクチカで伝えることは何か

「ガクチカ」というと、「何をしたか・何ができたか」を重視する人がけっこういます。例えば、「ボランティア活動をした」とか「成績優秀者になった」ということをアピールの中心に据えるといったことです。

しかし、面接官が見るのは「事実」や「結果」ではありません。その経験をする上で「どうふるまったか・どのように行動したか」であり、その経験から「何を学んだか・何を得られたか」です。ですから、「ガクチカ」はあくまで素材として使い、「自分の持つ、国家公務員総合職としての適性」を示すことこそが大事なのです。

5. まとめ

いかがでしたか?

『ガクチカ』は民間就活のみならず、国家総合職をはじめとする公務員試験においても重要といえます。それは、あなたがどのような人物かを知るための素材となるからです。

・〇〇部で主将を務めて大会で入賞した
・1年間海外留学した
・〇〇の資格を取得した

そんな華やかな『ガクチカ』でなくても全く問題ありません。これまでの経験を振り返ってみれば、些細なエピソードの中にも、「公務員としての適性」をアピールできるものがあるはずです。

とはいえ、使えるエピソードや長所を、自分1人で考えて見つけ出すのは意外とむずかしいもの。伊藤塾では、受講生の自己分析をサポートするために、「経験の棚卸し」を一緒に行うカウンセリングを実施。本人が気づいていないアピール素材をともに発見していきます。少し恥ずかしいけれど、「私ってどんな人?」と、友人や家族に相談してみるのもアリですね?

伊藤塾はあなたのチャレンジを応援しています。

伊藤塾 公務員試験科

著者:伊藤塾 公務員試験科

伊藤塾公務員試験科は一人ひとりの学習経験や環境に応じた個別指導で毎年多くの行政官を輩出しています。このコラムでは将来の進路に「公務員」を考えている皆さんへ、仕事の魅力や試験制度、学習法など公務員を目指すための情報を詳しくお伝えしています。