国家総合職の年収はどれくらい?民間と比較してみよう
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2023年04月08日

国家総合職は、政策の立案・実現を通して、国全体を動かすスケールの大きな仕事ができる国家公務員。やりがいがあることは間違いありません。
とはいえ、やりがいだけでは生活できません。職業選択においては、収入・待遇面もとても重要な判断要素です。
・給与やボーナスはどれくらい?
・年収はどんなペースで上がる?
・民間企業とくらべてどう?
今回は、そんな国家総合職の収入面をチェックしていきましょう。

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【目次】
1.国家総合職の年収 その内訳は?
1-1.給与としてもらえるもの
たとえば、大阪出身・独身のAさん(22歳)が国家総合職職員として東京・霞ヶ関の本府省ではたらく場合、給与として毎月もえらえるものは次のとおりです。
①俸給
②地域手当
③本府省業務調整手当
④住居手当
⑤通勤手当
①俸給が基本給にあたるもので、初任給は195,500円です。
②は民間企業の賃金レベルが高い地域ではたらく場合に支給される手当です。東京で働くAさんの場合は、毎月俸給の20%(!)がもらえます。基本給である俸給が上がれば、連動して地域手当も上がっていく仕組みです。
さらに、本府省勤務なので③も支給されます。Aさんはまだ一般職員である係員ですが、こちらも、係員→係長→課長補佐と昇進するにつれて上がっていきます。
Aさんは大阪から東京に出てきて賃貸住まい。④住居手当がつきます。しかもその賃貸マンション、霞が関から2km以上離れているので⑤通勤手当も支給されます。
④⑤は毎月出ていくお金なので省くとして、①~③月額合計は232,840円と公表されています。12か月分で約279万円となります。これにボーナス(期末手当・勤勉手当)として給与4.4か月分が支給されるので、年収としては370~380万円ほどです。残業代も合わせると、高額ではないけれど「そこそこ」もらえる、といった水準ではないでしょうか。
1-2.国家総合職の給与 3つの特長
国家総合職の給与には、民間企業とは異なる特長があります。3つ確認しておきましょう。
特長① 支給金額が明確・確実
特長② 手当が豊富
特長③ 毎年昇給・総合職ならペースも早い
①支給金額が明確・確実
総合職をはじめとする国家公務員の給与・手当・退職金などは全て法律で決まっています。給与法、国家公務員退職手当法、人事院規則などです。
どのポジションにあれば、いくら支給されるのかが細かく規定されています。また人事評価のルールも、昇給・昇格の仕組みもきっちり法律に書き込まれています。そしてそれは公開されており、誰でも見ることができます。
もちろん業績評価による多寡はありますが、基本的には勤務年数に応じて毎年給与はアップしていきます。民間企業と異なり、「収益悪化」でボーナスゼロや給料大幅カット、リストラといったことはありません。もちろん倒産もありません(あったら困っちゃいますね)。
この点では、国家公務員は「安定した」職業といえるでしょう。
②手当が豊富
基本給にあたる俸給のほかに、様々な手当がつくのが国家公務員の大きな特長です。先にご紹介した「地域手当」などのほかにも、扶養手当・単身赴任手当・寒冷地手当・特殊勤務手当など、いろいろあります。
興味がある方は人事院のホームページをご覧ください。
※国家公務員の諸手当の概要
③毎年昇給・総合職ならペースも早い
国家公務員は毎年1回、昇給します。「賃金が上がらない」ことが大きな問題となっている日本において、これはあたりまえのことではありません。
もちろん、「人事院勧告」という調整の仕組みがありますので、公務員の給与が民間水準を大幅に上回ることはないのですが、ちゃんと働いていれば毎年給与は上がります。そして民間の給与水準が上がれば、公務員の給与も連動して上がることになります。
府省の幹部職員となる総合職であれば初任給こそ「そこそこ」レベルですが、昇進ペースも早く、それにともなって給与もどんどん上がっていきます。
2.国家総合職の給与はどう決まる?
2-1.基本給決定のしくみ
国家総合職の給与のうち、基本給にあたる「俸給」の金額は『俸給表』によって定められています。俸給表にも種類がありますが、国家総合職に適用されるのは『行政職俸給表(一)』というものです。
俸給表は横軸が「職務の級」、縦軸が「号俸」となっています。
以下にイメージ図を示します。
職務の級 | 1級 | 2級 | 3級 | ・・・ | 10級 |
本府省役職 | 係員 | 係員 | 係長 | 課長 | |
号俸 | 俸給月額 | 俸給月額 | 俸給月額 | 俸給月額 | 俸給月額 |
1 | 146,100 | 195,500 | 231,500 | ・・・ | 521,700 |
2 | 147,200 | 197,300 | 233,100 | ・・・ | 524,600 |
3 | 148,400 | 199,100 | 234,600 | ・・・ | 527,700 |
4 | 149,500 | 200,900 | 236,200 | ・・・ | 530,800 |
5 | 150,600 | 202,400 | 237,600 | ・・・ | 533,900 |
横軸の「職務の級」は、おおむねポストと連動しています。上位の役職につけば、職務の級も上がります。上のポストになるほど、当然俸給はアップします。
・1級~2級 係員
・3級~4級 係長
・5級~6級 課長補佐
・7級~8級 室長
・9級~10級 課長
10級課長のさらに上には、審議官、部長、局長などのポストがあり、別の俸給表が適用されます。最上位は事務次官です。
縦軸の「号俸」は、おおむね勤務年数と連動しています。国家総合職の場合、スタートは2級1号俸(195,500円)です。年1回の昇給時に、実績に応じて号俸が上がっていく仕組みです。号俸が上がれば俸給が上がり、俸給が上がれば地域手当も上がります。
※参考:人事院「行政職俸給表(一)」
2-2.昇給のしくみ
国家公務員は人事評価に基づき、毎年1月1日に昇給します。
現行の制度では、5段階の昇給区分があります。区分によりアップする号俸数が決まっています。
5段階の昇給区分
昇給区分 | 昇給号俸数 |
A | 8号俸以上 |
B | 6号俸 |
C | 4号俸 |
D | 2号俸 |
E | 0号俸 |

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Aの評価を受けられるのは全体の5%以内です。同じくBは25%以内なので、A・Bは高い評価を受けている職員といえます。Cが「標準」です。普通だ、と評価されても4号俸はアップするということになります。
3.国家総合職の年収
3-1.モデル例は「35歳で700万」
ここで、人事院が公表しているモデル給与例をご紹介しておきましょう。
モデル | 年齢 | 月額 | 年間給与 |
係員 | 25歳 | 193,900円 | 3,149,000円 |
係長 | 35歳 | 273,600円 | 4,501,000円 |
地方機関課長 | 50歳 | 413,200円 | 6,670,000円 |
本府省課長補佐 | 35歳 | 435,320円 | 7,155,000円 |
本府省課長 | 50歳 | 749,400円 | 12,534,000円 |
本府省局長 | – | 1,074,000円 | 17,653,000円 |
事務次官 | – | 1,410,000円 | 23,175,000円 |
この表は国家一般職も想定したものになっているため、総合職職員の年収として参考にしていただきたいのは、「本府省課長補佐」以下です。
総合職は20代後半で係長、30代半ばで課長補佐に昇進していくのが一般的なキャリアパス。係長級の年収は450~650万、課長補佐級で650万~850万ほどと考えられます。この金額+残業代です。室長になる頃には900万を超えていく、というイメージです。
4.民間企業との比較
国家総合職の年収、民間とくらべてどうなのでしょうか。
まずは、国家公務員と民間企業、それぞれの全体平均をチェックしてみましょう。
4-1.全体平均は公務員が高い
国家総合職を含む国家公務員の平均給与は月額で405,049円です。この金額には俸給のほか、地域手当等が含まれます。平均年齢は42.7歳です(※1)。年収にすると、ボーナスを含め、およそ650万円程度になるでしょう。
一方、民間企業給与所得者の平均給与は、年収で443万円です。正社員に限ると508万円となっています。単純に平均値だけ比較すると、「公務員の方が民間よりももらっている」といえます。
しかし、この比較は「ふ~ん」程度の参考にしかなりません。それは「民間」というくくりの中には、平均年収が1,000万円を超えるような企業から、最低賃金ギリギリという企業まで混在しているからです。次に人気の大手企業と比較してみましょう。
※1 出典:人事院「令和4年国家公務員給与等実態調査報告書」
「行政職俸給表(一)」 平均年齢、平均月額給与
※2 出典:国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査」
4-2.併願先として人気の企業と比較
国家総合職を受験する皆さんの多くは民間就活も行います。併願先として人気があるのは、コンサル、商社、銀行、インフラ系などしょうか。ここでは、人気業種の代表的企業の年収をご紹介しましょう。
会社名 | 平均年齢 | 平均年間給与 |
M&Aキャピタルパートナーズ | 32歳 | 3,161万円 |
三菱商事 | 43歳 | 1,559万円 |
伊藤忠商事 | 42歳 | 1,580万円 |
三菱UFJフィナンシャルG | 40歳 | 1,029万円 |
日本政策投資銀行 | 37歳 | 1,006万円 |
東京電力 | 45歳 | 816万円 |
大阪ガス | 44歳 | 659万円 |
日本経済新聞社 | 44歳 | 1,220万円 |
ソニーG | 43歳 | 1,085万円 |
ファーストリテイリング | 38歳 | 959万円 |
メルカリ | 35歳 | 968万円 |
いずれも有価証券報告書で公開されている情報です。
トップのM&Aキャピタルパートナーズは、企業のM&Aを仲介する会社。2022年9月時点の平均給与は破格の3,000万円超えです。ただし、基本給はそれほど高くはなく、業績に応じたインセンティブと賞与で高額な給与になっています。結果が出せなければインセンティブはゼロ、激務に耐える覚悟も必要です。
人気のコンサルは外資系が多くここでは紹介していませんが、高額な企業で1,500万円~2,000万円、少なくても850万円超、といったところが相場のようです。もっとも、こちらも業績次第となるでしょう。
商社で1,500万円、銀行1,000万円、電力800万円あたりの水準です。その他、いくつか人気企業の平均給与を紹介しましたが、国家公務員よりも高い企業も少なくありません。
正直なところ、「お金を稼ぐ」ことを最優先に職業を選択するなら、公務員よりも民間の大手企業のほうが向いているでしょう。国家総合職は「ものすごく大きなやりがい」と「それなりの報酬」、そのバランスでどうか、という判断になります。
最後に、公務員受験指導を行う私たち「伊藤塾」の受講生が、国家総合職と併願して内定を得た企業の一部をご紹介させてください。
三菱UFJ、三井住友、みずほFG、日本銀行、国際協力銀行、日本政策投資銀行、野村証券、東京海上日動火災、三井物産、三菱商事、伊藤忠商事、マッキンゼー・アンド・カンパニー、アクセンチュア、ベイン・アンド・カンパニー、デロイトトーマツ、アビームコンサルティング、PwCコンサルティング、ドリームインキュベータ、楽天、NHK、リクルートホールディングス、日本経済新聞社、東京電力、ファーストリテーリング、大阪ガス、NTTデータ、関西電力、川崎重工、NEXCO東日本、パナソニック、NTTドコモ、三菱マテリアル、富士通、三菱電機、NTT東日本、ENEOS、JICA、JETRO、日本郵政、大成建設、日本総合研究所、神戸製鋼所 |
誰もが憧れる人気企業ばかりです。それでも彼らのほとんどは、民間企業ではなく国家総合職を選択します。ファーストキャリアとしての「官僚」という仕事にそれだけ魅力を感じているということでしょう。
5.まとめ
いかがでしたか?
国家総合職の収入面、「稼げる」というほどではないものの、それなりにはもらえるという印象だったのではないでしょうか。
人生100年ともいわれる時代。
大学卒業後、60歳定年としても約40年間は「働く」時間が1日の大半を占める生活が続きます。その膨大な時間をどのような仕事に費やすのかは、日々の「充実度」に直結するのではないでしょうか。
ぜひ一度、あなたは仕事に何を求めるのか、それを実現しうる職業は何なのか、考えてみませんか?伊藤塾はあなたのチャレンジを応援しています。
