中小企業診断士試験とは?日程・科目・受験資格など試験内容を分かりやすく解説!

基本情報

2025年11月24日

近年、人気が高まっている中小企業診断士。どのような試験内容か気になっている人も多いのではないでしょうか。

中小企業診断士試験は1次試験と2次試験があり、内容は大きく異なります。そのため、全体像を掴んだ上で勉強計画を立てることが合格への鍵となります。

この記事では中小企業診断士試験の試験内容や日程、そして試験を受けるにあたって知っておくべきポイントを分かりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。

中小企業診断士資格ガイダンス~診断士って何だろう?~

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1-1.中小企業診断士は経済産業大臣が認める国家資格

中小企業診断士は「中小企業の経営課題を解決に導く専門家」であり、中小企業支援法に基づき、経済産業大臣が登録する国家資格です。そのため、「経営コンサルタントの国家資格」とも言われます。

中小企業が抱える課題は、マーケティング戦略、財務、人事・組織、IT、事業承継など多岐にわたります。中小企業診断士は、これらの課題に対して専門的な知識と経験を活かし、企業の成長を多角的にサポートします。

1-2.中小企業診断士が求められる理由

近年のグローバル化、デジタル化、少子高齢化といった社会環境の変化により、中小企業を取り巻く環境は厳しさを増しています。競争が激化する中で、中小企業は生き残りをかけて、経営戦略の再構築、業務効率化、新たな事業展開などを模索しています。

しかし、これらの課題に対応するための専門的な知識やノウハウを、中小企業が社内で確保することは困難です。そこで、外部の専門家である中小企業診断士に、経営課題の解決や成長戦略の実現を支援する役割が求められています。

また、中小企業診断士の活躍の場は中小企業だけにとどまりません。例えば、中小企業を取引先とする金融機関は、質の高い金融サービスを提供するため、中小企業診断士を奨励資格として設定していることが多いです。

他にも、大企業の経営企画部門や新規事業部門への異動を希望した場合に、中小企業診断士を保持していることが後押しとなることもあります。
このように、中小企業診断士は中小企業支援という役割だけでなく、企業内においてもその専門知識やスキルを活かして活躍することが期待されています。

1-3.中小企業診断士の特徴や他の士業との違い

日本には弁護士、税理士、社会保険労務士など、様々な分野に特化した専門家である「士業」が存在します。

それぞれが法律、税務、労務といった特定の分野に特化しているのに対し、中小企業診断士は「経営全般」をカバーするジェネラリストとしての強みを持っています。
そのため、すでに他の士業資格を持つ人が2つ目の資格(ダブルライセンス)として中小企業診断士が選ばれるケースも多々あります。

資格名専門分野主な業務内容特徴
弁護士法律・訴訟代理
・契約書作成
・法律相談など
法律問題に
特化
税理士税務・税務申告
・税務相談
・会計業務など
税務・会計
に特化
社会保険
労務士
労務管理・労働保険
・社会保険手続き
・就業規則作成
・労務相談など
労務管理に
特化
司法書士登記
供託
・不動産登記
・法人登記
・供託など
法律事務に
特化
行政書士許認可
申請
・建設業許可
・飲食店営業許可
・帰化申請など
許認可申請
に特化
宅建士不動産・不動産取引での重要事項の説明
・契約書への記名押印など
不動産取引
に特化
中小企業
診断士
経営全般・経営戦略立案
・経営改善
・事業再生
・経営相談など
経営全般を
総合的に
サポート

※行政書士と中小企業診断士のダブルライセンスについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
行政書士×中小企業診断士の相乗効果とは?ダブルライセンスの活用法

2.中小企業診断士試験の内容

中小企業診断士資格ガイダンス~「中小企業診断士試験」について~

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2-1.中小企業診断士試験の概要

中小企業診断士試験は、経営に関する幅広い知識と実践的な能力を問う国家資格試験です。一般社団法人 中小企業診断協会(2024年10月より一般社団法人 日本中小企業診断士協会連合会に名称変更)が試験の実施を担っています。

試験は年に一度実施され、1次試験と2次試験に分かれています。1次試験に合格すると、2次試験の受験資格が得られます。
2次試験は筆記試験と口述試験があります。口述試験は筆記試験の合格者のみが受験できます。

2-2.1次試験の試験科目および内容

1次試験は2日間かけて7科目の試験が実施されます。

配点:各100点(マークシート方式)

日程時間帯試験科目試験時間
1日目午前A. 経済学・経済政策60分
B. 財務・会計60分
午後C. 企業経営理論90分
D. 運営管理
(オペレーションマネジメント)
90分
2日目午前E. 経営法務60分
F. 経営情報システム60分
午後G. 中小企業経営・中小企業政策90分

中小企業診断士試験は、中小企業の診断・助言に必要な幅広い知識を有しているか評価する試験で、1次試験では多くの専門用語が出題されます。マークシート方式ですが、専門用語の意味を理解して覚えていないと正答できない問題が多いです。

下記に1次試験の科目設置の目的を示します(令和6年度中小企業診断士第1次試験案内より作成)。

各科目の概要としてご覧ください。

A.経済学・経済政策
企業経営において、基本的なマクロ経済指標の動きを理解し、為替相場、国際収支、雇用・物価動向等を的確に把握することは、経営上の意思決定を行う際の基本である。また、経営戦略やマーケティング活動の成果を高め、他方で積極的な財務戦略を展開していくためには、ミクロ経済学の知識を身につけることも必要である。

B.財務会計
財務・会計に関する知識は企業経営の基本であり、また企業の現状把握や問題点の抽出において、財務諸表等による経営分析は重要な手法となる。また、今後、中小企業が資本市場から資金を調達したり、成長戦略の一環として他社の買収等を行うケースが増大することが考えられることから、割引キャッシュフローの手法を活用した投資評価や、企業価値の算定等に関する知識を身につける必要もある。

C.企業経営理論
企業経営において、資金面以外の経営に関する基本的な理論を習得することは、経営に関する現状分析及び 問題解決、新たな事業への展開等に関する助言を行うにあたり、必要不可欠な知識である。また、近年、技術 と経営の双方を理解し、高い技術力を経済的価値に転換する技術経営(MOT)の重要性が高まっており、こうした知識についても充分な理解が必要である。

D.運営管理(オペレーション・マネジメント)
中小企業の経営において、工場や店舗における生産や販売に係る運営管理は大きな位置を占めており、また、 近年の情報通信技術の進展により情報システムを活用した効率的な事業運営に係るコンサルティングニーズも高まっている。

E.経営法務
創業者、中小企業経営者に助言を行う際に、企業経営に関係する法律、諸制度、手続き等に関する実務的な知識を身につける必要がある。また、さらに専門的な内容に関しては、経営支援において必要に応じて弁護士等の有資格者を活用することが想定されることから、有資格者に橋渡しするための最低限の実務知識を有していることが求められる。

F.経営情報システム
情報通信技術の発展、普及により、経営のあらゆる場面において情報システムの活用が重要となっており、情報通信技術に関する知識を身につける必要がある。また、情報システムを経営戦略・企業革新と結びつけ、経営資源として効果的に活用できるよう適切な助言を行うとともに、必要に応じて、情報システムに関する専門家に橋渡しを行うことが想定される。

G.中小企業経営・中小企業政策
中小企業診断士は、中小企業に対するコンサルタントとしての役割を期待されており、中小企業経営の特徴を踏まえて、経営分析や経営戦略の策定等の診断・助言を行う必要がある。そこで、企業経営の実態や各種統計等により、経済・産業における中小企業の役割や位置づけを理解するとともに、中小企業の経営特質や経営における大企業との相違を把握する必要がある。また、創業や中小企業経営の診断・助言を行う際には、国や地方自治体等が講じている各種の政策を、成長ステージや経営課題に合わせて適切に活用することが有効である。

2-3.2次試験の科目および内容

2次試験の筆記試験は4科目(4事例)の試験です。制限時間は80分、配点は各100点です。

科目(事例)
A 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例I
 組織(人事を含む)を中心とした 経営戦略および管理に関する事例
B 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例II
 マーケティング・流通を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例
C 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例III
 生産・技術を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例
D 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例IV
 財務・会計を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例

2次試験は記述試験(論述試験)です。

問題冊子の与件文に事例企業(実際の企業を元にしたモデル企業)の状況が記載されており、問題文に沿って企業の分析や助言を行います。
そのため「紙の上(紙面)での経営コンサルティング」と言われます。

事例Ⅰ〜Ⅲでは、解答の字数制限が30〜150文字程度の問題が5題程度出題されます。
事例Ⅳでは論述問題に加えて、投資判断のためのROI(投資収益率)の算出や経営数値の算出といった計算問題も出題されます(電卓の持ち込みが可能)。

2-4.受験資格および合格基準

①受験資格

年齢、性別、学歴等関係なく誰でも受験が可能です。

②1次試験の合格基準

1次試験の合格基準は下記の通りです。

(1) 第1次試験の合格基準は、総点数の 60% 以上であって、かつ1科目でも満点の 40% 未満がないことを基準とする。
(2) 科目合格基準は、満点の 60% を基準とする。


1次試験は7科目700点満点の試験のため、総得点が420点以上かつ、40点未満の科目が無ければ合格となります。

1次試験では科目合格制度があり、60点以上を取得した科目は翌年度と翌々年度の1次試験を受験する際、申請により当該科目が免除されます。つまり3年間ですべての科目に合格すれば1次試験合格となります。

また1次試験合格の有効期間は2年間で、合格年度とその翌年度の2年間に限り2次試験を受験できます。つまり1次試験合格年度に2次試験が不合格であった場合でも、翌年は1次試験を受けずに2次試験を受けることができます。

③2次試験の合格基準

2次試験の合格基準は下記の通りです。

筆記試験における総点数の 60% 以上で、かつ、1科目でも満点の 40% 未満がなく、口述試験における評定が 60% 以上であることを基準とします。
なお、口述試験を受ける資格は、当該年度のみ有効であり、翌年度に持ち越しすることはできません。

2-5.試験日程と試験会場

1次試験は、8月上旬の土曜日・日曜日の2日間です。2次試験は、筆記試験が10月下旬の日曜日に、口述試験が1月下旬の日曜日に実地されます。
令和7年度の日程は下記のとおりです。

①1次試験

申込受付期間令和7年4月24日(木)~5月28日(水)
試験日令和7年8月2日(土)・3日(日)
合格発表日令和7年9月2日(火)
実施地区札幌・仙台・東京・名古屋・金沢・大阪
広島・四国・福岡・那覇の10地区

②2次試験

申込受付期間令和7年9月2日(火)~9月22日(月)
筆記試験日令和7年10月26日(日)
口述試験の受験資格
を得た方の発表日
令和8年1月14日(水)
口述試験日令和8年1月25日(日)
合格発表日令和8年2月4日(水)
実施地区札幌・仙台・東京・名古屋・大阪
広島・福岡の7地区

*出典:令和7年度の試験日程について 一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会

申込時に受験地区を記載して申し込みます。実際の受験会場は受験票(1次試験の場合は7月上旬に送付)に記載されています。遠方で宿泊場所が必要となる場合は受験票を確認後、早めに手配することをおすすめします。

3.中小企業診断士試験の合格率や学習時間

3-1.1次試験と2次試験の合格率

一般的に、中小企業診断士試験の1次試験、2次試験の合格率はそれぞれ約20%とされ、一発合格(ストレート合格)の合格率は約4%(20%×20%)と言われてきました。

令和元年以降の試験では、1次試験の合格率が高まっており(30%〜40%程度)、それに伴ってストレート合格率も5~8%程度と少し上がっています。
なお、令和6年度試験の1次試験の合格率は27.5%、2次試験の合格率は18.7%でした。

受験者数は増加傾向にあり、令和6年度は21,274人で、10年前の平成26年度16,224人と比較して約1.3倍となっています。

※中小企業診断士の難易度については、こちらの記事で詳しく解説しています。
中小企業診断士の難易度は?合格率や攻略法を徹底解説!

3-2.学習時間の目安

中小企業診断士試験の学習時間はおよそ1,000時間と言われています。内訳は1次試験対策が800時間程度、2次試験対策が200時間程度が必要となります。

既に試験科目の知識を持っている人であれば、より短い時間で合格することが可能ですが、初学者であれば1,000時間を目安にスケジュールを立てることをおすすめします。
もちろん、学習時間と合格が必ずしも比例するわけではありません。特に、2次試験は記述式であるため、個人の経験や思考力によって必要な学習時間は変わってきます。

1次試験は、暗記中心の学習となるため、ある程度勉強時間に比例して得点が伸びやすい傾向にあります。基礎知識をしっかりと固め、過去問を繰り返し解くことで、合格ラインに到達することが可能です。

一方、2次試験は、与えられた事例に対して、論理的な思考力や問題解決能力を用いて、具体的な解決策を提案する能力が問われます。そのため、単なる知識の詰め込みではなく、実践的なトレーニングを通じて、診断士としての思考力を養う必要があります。

※中小企業診断士の勉強時間についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
→ 中小企業診断士の勉強時間は1000時間?短時間で合格するコツを紹介!

4.まとめ

今回の記事では、中小企業診断士試験の試験科目や日程、合格率などについて解説しました。

中小企業診断士は、中小企業の成長をサポートするだけでなく、大企業においてもその専門知識やスキルを活かして活躍できる、非常に魅力的な資格です。

試験は決して簡単ではありませんが、試験勉強を通じて得た知識やスキルは、一生の財産となるでしょう。将来のキャリアアップや自己成長を目指す方は、ぜひ中小企業診断士試験に挑戦してみてください。

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伊藤塾 中小企業診断士試験科

著者:伊藤塾 中小企業診断士試験科

伊藤塾中小企業診断士試験科が運営する当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、中小企業診断士試験に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。