なぜ中小企業診断士は「やめとけ・役に立たない」と言われるのか?診断士のリアルを解説!

キャリア

2025年11月24日

近年、経営コンサルタントの国家資格として人気が高まっている中小企業診断士。

資格取得を目指している人が増える一方で、「中小企業診断士はやめとけ」「中小企業診断士は役に立たない」とネガティブな意見を耳にすることもあります。

たしかに、中小企業診断士資格を活かして独立や副業を積極的に取り組む人もいれば、資格を取得したものの、活用できていないという人もいます。

また、中小企業診断士に限らず、どのような資格でも、取得するメリットがある一方で、勉強時間や費用がかかるといったデメリットがあります。

そこで、中小企業診断士試験に挑戦する際には、この資格取得がご自身の目的に合っているかを知っておくことが大切です。

この記事では次のような疑問を解決します。

「中小企業診断士資格は役に立たない?意味がない?」
「中小企業診断士は資格を取っても使えない?」
「中小企業診断士は稼げない?」

中小企業診断士に対するネガティブな意見を知ることによって、納得感を持って資格に挑戦できるようになるでしょう。

これから中小企業診断士に挑戦する人や、中小企業診断士に興味がある人はぜひご覧ください。

1.中小企業診断士が「やめとけ」と言われる3つの理由

中小企業診断士が「やめとけ」「役に立たない」と言われる理由は、主に3つあります。

①診断士には独占業務がないから
②中小企業診断士試験が難しいから
③資格を維持することが大変だから

それぞれについて説明します。

1-1.診断士には独占業務が無いから

中小企業診断士が役に立たないとされる大きな理由は「診断士には独占業務が無いから」です。

中小企業診断士は、税理士や社労士のように独占業務(資格を持っていないとできない業務)がありません。

この「独占業務が無い」ということで、中小企業診断士は仕事を得るのが難しいのではないかと勘違いされることがあります。

たしかに、経営コンサルティング業には資格が不要であり、中小企業診断士の資格が無くても経営コンサルタントになることは可能です。

しかし、「中小企業診断士は独占業務がないため役に立たない」というのは、一面的な考え方で正確ではありません。実際には診断士としての専門性を活かした仕事は数多く存在します。

例えば、公的機関の経営相談員は中小企業診断士でないと応募できなかったり、事業計画書の作成などは中小企業診断士が得意とする分野で、引き合いは少なくありません。

1-2.中小企業診断士試験が難しいから

一般的に「中小企業診断士試験は難しい」と認識されていることも、「中小企業診断士試験はやめとけ」と言われる一因となっているようです。

実際に、中小企業診断士試験は簡単な試験ではなく、令和6年度の1次試験の合格率は27.5%、2次試験の合格率は18.7%となっています。

また、人によって異なるものの、一般的には1,000時間程度の勉強時間が必要といわれています。

このような中小企業診断士試験の難易度に対して、資格取得後に上手く資格を活かすことができない等で、資格取得のメリットを感じられなかった人が「診断士はやめとけ」と主張している可能性が考えられます。

逆に、難易度が高いことは「希少性の高さ」を表すメリットであり、実際には多くの人が「中小企業診断士の資格を取得して本当に良かった」「ビジネスパーソンに最もおすすめしたい資格」「これほどコストパフォーマンスが良い資格はない」として高い評価を得ていることも事実です。

1-3.資格を更新することが大変だから

中小企業診断士の有効期限は5年です。

資格を更新するためには、合計5回の研修受講や、実務に従事した日数が30日以上必要となります。

したがって、資格取得後に中小企業診断士の活動をしない人にとっては、資格を維持するハードルが高くなりやすいです。

一方で、中小企業診断士として副業をしていたり、診断士の団体に所属し、研究会などの活動をしていれば、そこまで資格を維持するハードルは高くありません。

なお、中小企業診断士の登録や更新は無料です。

また、他士業では士業団体への参加が必須な場合もありますが、診断士は団体への参加も任意となっています。

※中小企業診断士の登録や更新については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 中小企業診断士の登録方法は?費用・期間・手続きなど詳しく解説!
→ 中小企業診断士の更新方法は?費用・有効期間・手続きを解説!

2.中小企業診断士のリアルは?

中小企業診断士は、独占業務が無いなどの理由から、役に立たないと思われることがあるようです。

実際には、独占業務が無くても、中小企業診断士への仕事の需要は多く、会社の中においても資格保持者が高く評価されたりと、資格を取って良かった、役に立ったという声が圧倒的に多いのが実情です。

資格を取得した人の状況によって、どれだけ活用できるか程度の差はあります。

ここでは中小企業診断士のリアルな状況をいくつか紹介しますので、参考にしてください。

2-1.社内でのキャリアアップに役立つ

中小企業診断士試験では、企業経営に必要な知識を幅広く学ぶことができます。

そのため、異動や昇進などのキャリアアップを目指して中小企業診断士に挑戦する人は少なくありません。

受験者の属性は様々で、経営企画やコンサル業の人はもちろん、金融機関や中小企業支援の公務員などもいます。

企業によっては中小企業診断士の資格取得を奨励していたり、資格取得支援制度や資格手当などの制度が整っている場合もあります。

他にも、製造業やIT企業の技術職の人が、提案力を高めるためや管理職として活躍するために、診断士に挑戦するケースもあります。

このように社内でのキャリアアップが目的の場合は、中小企業診断士として活躍することはあまり視野に入れず、診断士を目指す人が多いです。

しかし、いざ中小企業診断士になってみると、診断士同士の交流が増え、様々な刺激を受けた結果、社内での評価や昇進だけでなく、診断士活動の幅を広げようと新たな活動を開始する人が多いのも実情です。

2-2.独立、転職、副業で年収アップ

中小企業診断士を取得し、独立や転職、副業で活かす人は多いです。中でも、独立を視野に入れている人は多い傾向にあります。例えば、大手企業の管理職が、役職定年を見越して診断士を取得することもよくあります。

中小企業診断士は独占業務がないため、仕事がないと誤解されやすいのですが、実際には中小企業診断士しか応募できないような仕事があります。

例えば、公的機関の経営相談員は中小企業診断士でないと応募できません。

また、中小企業診断士同士のネットワークの中で仕事の紹介が頻繁に行われるため、事実上、診断士でないと仕事を受注できない場合が多くあります。

独立以外にも、転職で中小企業診断士を活かす人もいます。

特にコンサル業界への転職では中小企業診断士の資格が活用できることが多いです。資格取得を通じて得た知識は、実際にコンサルを行う時に役に立つでしょう。

他にも近年は、副業で活躍する中小企業診断士も多くなっています。

ZoomやTeamsなどのビデオ通話アプリを活用することで、企業に訪問せずにできる仕事が増えています。

さらに、副業人材と企業をマッチングするサービスも増加しており、地方の案件に挑戦する人も増えています。

以上のように、診断士を取得した後のキャリアは多種多様です。

※中小企業診断士の仕事内容については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 中小企業診断士の仕事内容は?何ができる?向いてる人やキャリアパスも紹介!

※中小企業診断士の年収については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 中小企業診断士の平均年収は?中央値や年収1,000万以上の秘訣も徹底解説

2-3.資格取得後も自己研鑽が必要

以上のように、中小企業診断士が活用できる場面は多々あります。

一方で、残念ながら中小企業診断士は資格取得したからといって、すぐに仕事が舞い込んで来るような資格ではありません。

資格取得後も情報収集や勉強などの自己研鑽が必要です。

診断士として活躍するためには、「過去の業務経験を活かしたサービス」と、「新たなサービスの開発」の両方が必要です。

例えば、金融機関出身の人が財務コンサルティングを行うというのは「過去の業務経験を活かしたサービス」にあたり、補助金の勉強をして補助金申請の支援を行うということが「新たなサービスの開発」にあたります。

このように、自身の専門性を活かしながら、提供できるサービスを拡充していくことが中小企業診断士として活躍するためのコツです。

3.中小企業診断士はAIに代替されにくい資格

2015年に発表された野村総合研究所のニュースリリース「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」では、中小企業診断士が人工知能やロボット等による代替可能性が低い100種の職業に選ばれています。

AIに代替されにくい職業については「創造性、協調性が必要な業務や、非定型な業務は将来においても人が担う」と説明されています。

したがって、中小企業診断士の業務で欠かせない経営者とのコミュニケーションはAIに代替されにくいと判断されたと考えられます。

一方で、補助金の申請書を作成する際に生成AIを利用するなど、AIが中小企業診断士の業務の一部を担うケースは既に増えてきています。

今後、中小企業診断士にとってAIを使いこなすスキルが重要になってくると考えられます。

4.中小企業診断士がオススメな人

中小企業診断士はご自身の目的によって活用しやすいこともあれば、思うように活用できないこともある資格です。

ここでは、中小企業診断士を活用しやすい人、中小企業診断士がオススメな人を紹介します。

4-1.独立したい人

中小企業診断士は「独立したい人」にオススメです。

今すぐに独立したい人はもちろん、「いつか独立したい」「定年後は独立して自分で事業をやりたい」という人にもピッタリです。

中小企業診断士がオススメな理由は、以下が挙げられます。

・公的機関の仕事があるため、一定の収入は期待できること
・民間の仕事は、収入が青天井なこと
・自身の経験を活かした仕事が見つかりやすいこと

中小企業診断士には公的機関の仕事があるため、独立初期の収入を安定させやすいことが特徴です。

徐々に民間の仕事を増やすことで時間単価を上げていくことができるため、リスクとリターンのバランスをとりやすく、独立したい人にオススメの資格です。

また、中小企業診断士は独占業務がないからこそ、個人個人が得意なサービスを提供できるというメリットがあります。

そのため、得意分野の異なる中小企業診断士が互いに顧客を紹介することがよくあります。

4-2.転職や異動でキャリアアップを目指す人

中小企業診断士は独立だけでなく、転職や異動を目指す人にとっても役に立つ資格です。

ただし、転職や異動で活用したい場合は、転職先や異動先が中小企業診断士を必要としているかどうか確認する必要があります。

また、中小企業診断士の資格取得をきっかけに希望する部署への異動が叶ったという話もよくあります。

特に、経営企画のような中小企業診断士と親和性の高い部門への異動を希望している人にとっては、オススメの資格といってよいでしょう。

4-3.経営の幅広い知識を身につけたい人

中小企業診断士の資格を取得するきっかけが独立や転職以外の場合も多いです。

・独立、転職、異動を考えていないけれど、スキルアップしたい
・異動や転職を機に、自分の知識不足を痛感している
・管理職になり、技術だけでなく経営の知識が必要となった

このような人にとっても中小企業診断士はオススメです。

中小企業診断士試験では1次試験では7科目、2次試験で4事例と、幅広く経営について学びます。

中小企業診断士の資格取得を通じて、「的を射た提案ができるようになった」、「会社全体を意識した意思決定ができるようになった」と感じる人も少なくありません。

中小企業診断士の取得を通じて得た知識は、ビジネスにおける様々な場面で役に立つことは間違いありません。

5.中小企業診断士はやめとけ・役に立たないに関するよくある質問

中小企業診断士は「やめとけ」、「役に立たない」に関して、よくある質問をまとめました。

5-1.中小企業診断士は廃止?なくなる?

中小企業診断士は廃止されたり、なくなるのではないかと言う人もいますが、中小企業庁や経済産業省からはそのような発表はされていません。

中小企業診断士は中小企業支援法を根拠としている国家資格のため、簡単に廃止できるような資格ではありません。

むしろ、昨今の中小企業を取り巻く厳しい経営環境の中で、多様な中小企業のニーズに対応できる中小企業診断士がより一層求められています。

5-2.独学でも合格できる?

中小企業診断士は独学で合格が目指せるか気になっている人も多いのではないでしょうか。

たしかに独学で合格している人もいますが、合格者全体から見るとかなり少数です。

多くの人が受験指導校等の教育サービスを利用しています。

中小企業診断士は1次試験が7科目と暗記が多く、2次試験は模範解答が公開されていない記述試験のため、独学では効率良く学習することが難しいためです。

受験指導校を利用することで、試験の頻出分野を効率良く学習したり、質問できる環境を整えることで、質の高い勉強を実現することができます。

短期間で合格を目指すのであれば、受験指導校の利用がオススメです。

6.まとめ

今回の記事では中小企業診断士が「やめとけ」「役に立たない」と言われる理由や中小企業診断士の実情について紹介しました。

まとめると次の通りです。

◉中小企業診断士がやめとけと言われる理由
①診断士には独占業務がないから
②中小企業診断士試験が難しく、資格取得のメリットよりもコストが大きいから
③資格を更新することが大変だから
◉中小企業診断士は社内のキャリアアップに役立つ
◉独立、転職、副業で年収アップが目指せる
◉中小企業診断士は資格取得後も自己研鑽が必要
◉中小企業診断士はAIに代替されにくい資格
◉中小企業診断士がオススメな人は
①独立したい人
②転職や異動でキャリアアップを目指す人
③経営の幅広い知識を身につけたい人
◉中小企業診断士は国家資格であり、中小企業からの支援ニーズは多様化している
◉中小企業診断士は独学でも合格を目指せるが、効率が悪い学習となりやすい
◉短時間で合格するためには質問や相談できる環境が大切
◉受験指導校を利用することで短時間で合格を目指すことができる

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伊藤塾 中小企業診断士試験科

著者:伊藤塾 中小企業診断士試験科

伊藤塾中小企業診断士試験科が運営する当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、中小企業診断士試験に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。