国家総合職とは?仕事内容・試験制度・年収・なり方を伊藤塾が解説
公務員の基本情報
【記事のポイント】
- 仕事内容:国の政策や法律の企画立案を担う国家公務員で、政策の実行を担う一般職に対し、幹部候補として採用される点が特徴です
- 年収モデル:初任給は月額242,000円で、人事院のモデル給与例では35歳課長補佐で年間約819万円、局長級で約1,939万円に達します
- 難易度:2025年の対受験者倍率は教養区分9.2倍・法律区分19.1倍で、公務員試験のなかでも高い部類に入ります
- 採用条件:試験の最終合格だけでは働けず、官庁訪問で内々定を得る必要があります。採用に至るのは合格者の32.6〜36.3%です
- 勤務実態:本府省の超過勤務は年平均376時間と多い水準ですが、初任給の引き上げや柔軟な働き方の整備が進んでいます
「キャリア官僚」と呼ばれる国家総合職は、国を動かす華やかなイメージと、深夜まで続く激務の評判の両方で語られる仕事です。どちらも印象が先行しがちですが、実像を知らないまま、「やめとけ」の声だけを理由に進路の選択肢から外すのはもったいないことです。
この記事では、国家総合職の仕事内容とキャリアパスから、一般職との役割・待遇・勤務地の違い、「激務」といわれる働き方の実態、採用試験と官庁訪問の仕組みまでを解説します。残業時間や退職者数、採用率といった気になる数字も、人事院の公表データに基づいて紹介するので、進路判断の材料としてご活用ください。

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【目次】
1. 国家総合職とはどのような仕事か?
国家総合職とは、中央省庁で法律・予算・政策の立案を担う国家公務員です。局長・事務次官への昇進が想定される幹部候補のため「キャリア官僚」と呼ばれます。
1-1. 「官僚」「キャリア」と呼ばれるのはなぜか?
総合職が「官僚」と呼ばれるのは、中央省庁で法律の立案や予算の編成といった、国の中枢の仕事を担うからです。「官僚」は法律上の呼び名ではなく、こうした政策づくりに携わる国家公務員を指す通称です。
「キャリア」と呼ばれる理由は、幹部候補として採用されているからです。総合職として採用された職員は、課長補佐、課長を経て、将来は局長や事務次官といった幹部に就くことが期待されています。
1-2. 総合職・一般職・専門職の違いとは?
国家公務員の採用試験には、大きく国家総合職・国家一般職・国家専門職の3つがあります。
このうち、国家総合職・国家一般職の採用試験は、特定の省庁・職種に紐づかない試験です。合格後に官庁訪問を経て採用先が決まります。
一方、国家専門職採用試験は、採用後に就く職種があらかじめ決まっている試験です。国税専門官・財務専門官・労働基準監督官など、特定の職種に就くことを前提に採用試験が行われます。
※国家専門職の仕事は、以下の記事で詳しく解説しています。
2. 国家総合職と一般職は何が違うのか?
国家総合職と国家一般職の違いは、政策を「つくる側」か「実行する側」かという役割分担です。そのほか給与・転勤の範囲や、採用試験・官庁訪問の仕組みにも違いがあります。
2-1. 役割・職務の違い
総合職の職務は政策の企画立案、一般職は政策の着実な執行です。両者の分担は、国家公務員の仕事の流れに沿って見るとよく分かります。
以下の流れのうち、課題の特定から政策の実現まで(①②)を担うのが総合職、実現した政策の執行(③)を担うのが一般職です。
▼国家公務員の仕事の流れ
① 国民生活で何が足りないのかを探り、課題を特定する(総合職)
② 課題を解決するための政策を立案し、実現に向けて政治家や他省庁、財界などの関係者と調整を重ねる(総合職)
③ 実現した政策を、公正かつ確実に実行する(一般職)
たとえば、子育て世帯への新しい給付制度をつくるとき、まず総合職が対象者の範囲や金額を設計し、法律と予算のかたちにしていきます。そして一般職が、できあがった制度に基づいて、申請の受付や審査、事業者・自治体への周知といった実務を通じて、制度を社会に根づかせていきます。
2-2. 6軸比較表(給与・異動・キャリア・採用・官庁訪問・転勤)
総合職と一般職の違いを6つの軸で整理すると、次のようになります。
| 比較軸 | 国家総合職 | 国家一般職 |
| 給与 | 初任給242,000円 | 初任給232,000円 |
| 異動 | 2〜3年ごとに異動 し、他府省への出向 や留学の機会もある | 概ね2〜3年サイクル で異動し、省内で 経験を積む |
| キャリア | 2級スタートで、7年 目前後から課長補佐 | 1級スタートで、30歳 前後で係長 |
| 採用 | 国家公務員採用総合 職試験を経て採用 | 国家公務員採用一般 職試験を経て採用 |
| 官庁訪問 | 1日がかりの選考が 続く | 面接2〜3回程度 |
| 転勤 | 原則、霞が関の本省 | 採用地域(エリア)内 が原則 |
出典(給与):人事院「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み(令和7年8月)」
出典(異動・キャリア):財務省「財務局総合職のキャリアパス」、国土交通省「キャリアパス 総合職(事務系)、国土交通省「一般職(大卒程度)キャリアパス」など
出典(採用):人事院「国家公務員採用総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)受験案内」「国家公務員採用 一般職試験(大卒程度試験)受験案内」
出典(官庁訪問):人事院「2026年度官庁訪問ガイド 総合職試験(院卒者・大卒程度試験)」「2026年度官庁訪問ガイド 一般職試験(大卒程度試験)」
出典(転勤):「国家公務員採用 一般職試験(大卒程度試験)受験案内」、国土交通省「キャリアパス 総合職(事務系)など
※国家一般職については、以下の記事で詳しく解説しています。
2-3. 官庁訪問が必要なのは総合職だけか?
官庁訪問は一般職の採用でも必要です。試験合格後に志望する省庁・機関を訪問し、面接を経て内々定を得るという採用選考の位置づけは、総合職も一般職も変わりません。
大きく違うのは、選考の重さです。総合職の官庁訪問は、朝から夕方まで1日がかりで面接が繰り返され、それが複数のクールにわたって続きます。一方、一般職の官庁訪問は面接2〜3回程度で終わるのが一般的です。同じ「官庁訪問」という名前でも、かかる時間と負荷はまったく別物と考えておきましょう。
3. 国家公務員の役職と級のしくみ
国家公務員の役職は、給与と連動した1〜10級の「職務の級」で整理され、その上に事務次官・局長などの「指定職」が置かれています。
3-1. 級別ポスト対応表
国家公務員の役職は、1〜10級の「職務の級」によって格付けされています。
職務の内容によって各級が定められており、同じポストでも、本府省・管区機関といった機関の区分によって職務の級が変わります。
【職務の級と職務内容の対応(例)】
| 職務の級 | 本府省 | 管区機関 |
| 1級 | 係員(定型的な業務) | 係員(定型的な業務) |
| 2級 | 主任・係員(高度業務) | 主任・係員(高度業務) |
| 3級 | 係長 | 係長・専門官 |
| 4級 | 係長(困難業務) | 課長補佐 |
| 5級 | 課長補佐 | 課長補佐(困難業務) |
| 6級 | 課長補佐(困難業務) | 課長 |
| 7級 | 室長 | 課長(特に困難業務) |
| 8級 | 室長(困難業務) | 部長 |
| 9級 | 課長 | 管区機関の長 |
| 10級 | 課長(特に重要業務) | 管区機関の長(重要業務) |
出典:人事院規則九―八(初任給、昇格、昇給等の基準)別表第一 標準職務表(第三条関係)イ 行政職俸給表(一)級別標準職務表をもとに作成
なお、上記はあくまで「標準的な職務」に基づく区分であり、実際の運用は省庁によって幅があります。10級のさらに上には、「指定職」とされる審議官・局次長・局長などのポストがあり、最上位が事務次官です。
3-2. キャリアパスと出世スピード
大卒程度で採用された場合、総合職は2級から、一般職は1級からスタートして、次のようなキャリアパスをたどるのが一般的です。総合職は幹部候補として速いペースで昇進し、一般職はスペシャリストとして時間をかけて経験を積んでいきます。
| 年齢 | 国家総合職 | 国家一般職 |
| 20代前半 | 係員(2級) | 係員(1〜2級) |
| 20代後半〜30代 | 係長(3〜4級) | 係員〜係長(3級) |
| 30代〜40代 | 課長補佐(5〜6級) | 係長(3級)が中心 |
| 40代〜50代 | 本省室長・出先機関の 部長(7〜8級) | 本省係長・出先機関の 課長補佐(4級) |
| 50代〜 | 本省課長・出先機関の 長(9〜10級) | 出先機関の課長(5〜6級) |
出典:財務省「財務局総合職のキャリアパス」、国土交通省「キャリアパス 総合職(事務系)」、国税庁「国家公務員総合職試験採用案内パンフレット2025」、国土交通省「一般職(大卒程度)キャリアパス」をもとに作成
3-3. 指定職(事務次官・局長)まで到達できるのはどのくらいか?
指定職とは、10級より上に位置づけられる幹部ポスト(事務次官・局長・審議官など)です。指定職まで到達する人は国家公務員のうち約0.37%(約27万人のうち992人)で、ポストの大半を総合職の採用者が占めています。
省庁ごとのポスト数は、財務省55人、外務省51人、法務省31人などです。頂点の事務次官は、各省庁に1人だけです。
指定職に就いている992人のうち約7割にあたる711人が55〜59歳であり、入省からおよそ30年かけてたどり着く到達点だといえます。
(出典:内閣人事局「一般職国家公務員在職状況統計表(令和7年7月1日現在)」)
4. 国家総合職の年収・初任給はどれくらいか?
総合職の初任給は242,000円、本府省勤務では手当込みで月301,200円です。昇進にともない、35歳の課長補佐で年間約819万円、局長級では約1,900万円に達します。
4-1. 初任給・モデル給与(人事院データ)
総合職(大卒程度)の初任給は月額242,000円です。総合職の多くが勤務する本府省では、地域手当などが加わり月301,200円、年間給与では約494万円となります。
最近は、採用市場での競争力を高めるため、初任給をはじめ20代〜30代を中心とした若手職員の給与が大幅に引き上げられています。2025年(令和7年)の人事院勧告では、前年から12,000円も初任給が引き上げられ、過去最高の水準となりました。
(出典:人事院「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み(令和7年8月)」)
4-2. 係長・課長補佐・幹部の年収モデル
本府省勤務の総合職の給与は、昇進とともに次のように推移します。
| 役職(年齢) | 月額 | 年間給与 |
| 係員(22歳・初任給) | 301,200円 | 約494万円 |
| 係長(28歳) | 355,860円 | 約588万円 |
| 課長補佐(35歳) | 489,360円 | 約819万円 |
| 室長(40歳) | 662,840円 | 約1,090万円 |
| 課長(50歳) | 857,720円 | 約1,447万円 |
| 局長 | 1,171,400円 | 約1,939万円 |
| 事務次官 | 1,520,600円 | 約2,524万円 |
出典:人事院「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み(令和7年8月)」
35歳時点のモデルで見ると、総合職の標準的なポストである本府省の課長補佐は年間約819万円です。その後も昇進のたびに大きく伸び、局長や事務次官といった指定職では2,000万円前後に達します。
※国家総合職の年収については、以下の記事で詳しく解説しています。
5. 国家総合職は「やめとけ」と言われるのはなぜか?
国家総合職が「やめとけ」といわれる背景には、本府省の残業の多さと若手退職の増加があります。ただし勤務環境と待遇の見直しは進んでおり、断じるのは早計です。
5-1. 激務・残業の実態
2024年(令和6年)の国家公務員の超過勤務は、霞が関の本府省で年平均376時間、月あたり約31時間でした。地方の出先機関などより2倍以上多い水準です。
| 年間の超過勤務 (平均) | |
| 本府省 | 376時間 (月あたり約31時間) |
| 本府省以外 | 181時間 (月あたり約15時間) |
| 全体 | 219時間 (月あたり約18時間) |
(出典:人事院「国家公務員の超過勤務の実態(令和6年)」)
これは、国会対応のように自分ではコントロールしづらい業務があったり、予算編成などで業務が集中する時期があったりするためです。配属先と時期による面も大きく、一律には語れないのが実態です。
5-2. 若手の退職は増えている?
あわせて注目されるのが、若手の退職の増加です。総合職として採用され10年未満で退職した職員は、2013年度(平成25年度)の76人から2024年度(令和6年度)には174人へと、2倍以上に増えました。ピークだった2023年度(令和5年度)からは減少したものの、なお高い水準が続いています。
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出典:人事院「総合職試験採用職員の退職状況について(令和7年12月)」
ただし、退職者の増加は職場への不満だけが原因とは限りません。「転職があたりまえ」という働き手側の価値観の変化も、背景にはあります。
伊藤塾で学んで総合職に内定した人にも、公務員一筋ではなく、シンクタンクやコンサルティングファームなどと迷った結果、官僚の道を選ぶ人が少なくありません。今の世代にとって、転職は挫折ではなく前向きな選択肢のひとつとなっているのです。
内定者の声
(内定後も)民間企業への就職活動は、今後も継続する予定です。現在はコンサルティング業界・シンクタンク・政府系金融機関を中心に検討しております。これらの業界は行政や公共分野との関わりが深く、政策や制度、社会課題に対して分析・提言・資金面から関与できるという点で、公務員の業務と親和性が高いと考えております。
出典:伊藤塾「公務員試験合格・内定体験記 I.Nさん」
5-3. 働き方改革の現状
こういった状況を改善するために、勤務環境と待遇の両面で、働き方改革も進んでいます。
勤務環境の面では、勤務間のインターバル確保、フレックスタイム制、早出遅出勤務、テレワークといった柔軟な働き方の仕組みが整えられてきました。フレックスタイム制は2025年4月に見直しが施行されるなど、制度の拡充が現在も続いています。
(出典:人事院「勤務時間・休暇」)
待遇面でも、人材の流出を止めるため、ここ数年、国は本気で対策を打っています。2025年の人事院勧告では初任給が大幅に引き上げられ、本府省勤務者への手当も増額されました。
さらに、給与の水準を決める民間企業との比較基準自体も変わりました。本府省の職員の場合、比較対象がこれまでの「企業規模500人以上」の事業所から、「東京23区に本店を置く企業規模1,000人以上」へ変更されたのです。これにより、給与の大幅な見直しが進んでいます。
5-4. それでも総合職を選ぶ理由
激務といわれるなかでも総合職を選ぶ人が多いのは、どんな大企業でも味わえない魅力があるからです。
民間企業がルールの「中」で価値を生み出すのに対し、総合職はルールそのものをつくりだして社会を動かしていく仕事です。社会の仕組みを変える手応えを、国全体、時には世界を見渡す視点で味わえます。
このスケールの大きさこそが、国家総合職ならではのやりがいです。
内定者の声
公務員、特に国家公務員という仕事に明確に興味を持ったのは、大学1年の夏頃です。大学での学びを通じて、経済格差や地方の衰退といった構造的な課題に触れる中で、「個別のビジネス活動だけでは解決できない、社会の根幹に関わるシステムそのものを変える仕事がしたい」と強く感じたことがきっかけでした。民間企業が「プレイヤー」として市場で価値を生み出すならば、私はその市場が健全に機能するための「ルールメーカー」になりたいと考えました。
出典:伊藤塾「公務員試験合格・内定体験記 M.Mさん」
6. 国家総合職の難易度はどのくらいか?
総合職試験の対受験者倍率は教養区分9.2倍、法律区分19.1倍です。さらに、合格しても採用は確定せず、本当の関門は合格後の官庁訪問にあります。
6-1. 試験の合格率・倍率から見た難易度
総合職の春試験と秋試験(教養区分)の対受験者倍率は、次のとおりです。
| 第1次試験 受験者数 | 合格者数 | 対受験者 倍率 | |
| 国家総合職 法律区分 (2025年春) | 5,185人 | 271人 | 19.1倍 |
| 国家総合職 教養区分 (2025年秋) | 3,898人 | 426人 | 9.2倍 |
出典:人事院「国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験) 実施状況 2025年度」
法律区分は約19倍、教養区分は約9倍と、公務員試験全体で見ても高い部類に入る倍率です。
とはいえ、この倍率は10年前より大きく下がっています。国家公務員試験の志望者減少が続いているためで、筆記試験の門戸は、かつてより確実に広がっています。
※国家公務員試験の難易度は、以下の記事で詳しく解説しています。
6-2. 合格しても採用されない?内定率から見た本当の難易度
総合職の本当の難しさは、「合格=採用」ではないことです。
最終合格は、あくまで採用「候補者」名簿に載っただけの状態です。実際に採用されるには官庁訪問で内々定を得なければなりません。
人事院の公表しているデータによれば、総合職試験に最終合格した人のうち実際に採用された人の割合(採用率)は、2021年度(令和3年度)〜2023年度の入省世代で32.6〜36.3%です。つまり、合格者の3人に1人程度しか採用に至っていない計算になります。
(出典:人事院「令和6年度年次報告書(公務員白書)第1編第3部第1章(表1-4)」)
民間企業などへ進んだ人を含む数字とはいえ、「合格から採用まで」のハードルが決して低くないことがわかります。
6-3. 教養区分の難易度とボーダーはどのくらいか?
教養区分の難易度は、受験者の約2割が第1次試験を通過し、最終合格に至るのは約1割という水準です。
第1次試験の合否を分けるのは基礎能力試験です。Ⅰ部(文章理解・判断・数的推理など)とⅡ部(自然・人文・社会・時事など)に分かれており、突破するにはおよそ6割の正答率が必要です。2025年秋試験では54問中、およそ30問程度が合格ラインでした。
(※公表されている平均点・標準偏差・配点比率から換算した試算です。Ⅰ部・Ⅱ部の得点割合によっても変わります。なお、2026年度試験からは出題構成が変わり、あわせて50題となっています。)
(出典:人事院「2025年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)(教養区分)合格点及び平均点等一覧」)
一方で、最終合格の判定では、総合論文試験(配点比率6/24)や企画提案試験(6/24)、政策課題討議試験(4/24)、人物試験(4/24)といった種目の配点が大半を占めています。このため、基礎能力試験で確実にボーダーを超えつつ、総合論文試験や政策課題討議試験・人物試験で高評価を狙っていく、というのが基本戦略となります。
(出典:人事院「2026年度 国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)教養区分受験案内」)
7. 省庁によって難易度は違うのか?
総合職の採用枠は省庁によって数人から140人超まで大きく異なります。ただし省庁別の倍率は公表されておらず、採用人数の多さがそのまま入りやすさを意味するわけではありません。
7-1. 人気省庁と採用人数(省庁別)
総合職の採用予定数は、省庁ごとに大きな差があります。2027年度(令和9年度)採用で採用予定数が多い省庁は次のとおりです。
| 省庁等 | 採用予定数 |
| 国土交通省 (事務系・技術系) | 142人 |
| 農林水産省 (事務系・技術系) | 128人 |
| 厚生労働省 (事務系ほか) | 72人 |
| 特許庁 | 66人 |
| 総務省 | 63人 |
| 経済産業省 | 56人 |
| 財務省 (本省・財務局・税関) | 45人 |
| 法務省 | 41人 |
| 防衛省 (事務系ほか) | 41人 |
| 文部科学省 | 40人 |
(出典:人事院「総合職試験 府省等別採用予定数(2027年度採用)」(2026年4月現在))
なお、採用予定数が特に多い国土交通省と農林水産省は、技術系の採用が中心です。国土交通省は142人のうち107人、農林水産省は128人のうち100人を技術系が占めており、事務系の枠はその一部です。
枠の大きさと入りやすさが比例しない点にも、注意が必要です。採用予定数が多くても、志望者が多ければ倍率は高くなります。省庁ごとの倍率は公表されていないため、あくまで志望先を考える際の参考として活用しましょう。
7-2. 官庁訪問の実態と対策
官庁訪問とは、最終合格者が志望する省庁を訪れ、職員との面接を何度も重ねて内々定を目指す選考プロセスです。最終合格者だけが参加できる就職活動ともいえます。
例年、約2週間の日程で実施されます。2026年(令和8年)は6月10日に始まり、6月22日に内々定が解禁されました。
この2週間の期間中に「クール」とよばれる数日単位の選考が繰り返されます。1つの省庁を訪問すると朝から夕方まで拘束され、複数回の面接を受けるのが通例です。クールを通過すれば次のクールに進み、最終盤まで残った人に内々定が出ます。
連日続く面接では、志望動機や政策への関心を深く問われるため、筆記試験とは別の準備が必要です。説明会やインターンシップなど、官庁訪問が始まる前から省庁との接点をつくっておくことが対策の出発点になります。
7-3. 官庁訪問で内定が出なかった場合はどうなるか?
官庁訪問で内々定が出なくても、採用候補者名簿から名前が消えるわけではありません。名簿の有効期間は、教養区分を除く総合職試験で最終合格者発表日から5年間、教養区分は7年間です(2026年度(令和8年度)試験の合格者から適用)。この期間内なら、試験を受け直すことなく、翌年度以降の官庁訪問に再挑戦できます。(出典:人事院「採用情報に関するQ&A」)
また、省庁によっては秋以降に追加の採用面接を行うことがあります。翌年度を待たずに内々定を得られる可能性もあるので、最後まで諦める必要はありません。
※官庁訪問の仕組みと選考の実態は、こちらの記事で詳しく解説しています。
8. 国家総合職になるには何をすればよいか?
総合職になるには、採用試験の最終合格と、官庁訪問での内々定の2つが必要です。試験は教養区分・春試験・院卒者試験の3系統で、在学中最大6回の受験機会があります。
8-1. 試験区分と出願の流れ
総合職試験(大卒程度)には、大きく2つの系統があります。専門科目のない「教養区分」と、法律・経済・政治・国際・人文など専門試験が課される区分(春試験)です。このほか、大学院修了(見込み)者を対象とする院卒者試験があります。
どの区分でも、入省までの流れは同じです。
▼国家総合職になるまでの流れ
①インターネットで出願(事前登録+申込み)
②採用試験を受験
③最終合格し、採用候補者名簿に記載される
④官庁訪問で内々定を得る
⑤翌年4月に入省
複数の区分を併願することもでき、たとえば秋に教養区分、翌春に法律区分と、2回以上挑戦する受験生も多くいます。
※国家総合職になる方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
8-2. 教養区分・春試験・院卒区分の特徴
教養区分・春試験(法律区分等)・院卒区分の特徴は、次のとおりです。
| 教養区分 | 春試験 (法律区分等) | 院卒者試験 | |
| 専門科目 | なし | あり (法律・経済 など11区分) | あり |
| 実施時期 | 春・秋の年2回 | 春 | 春 |
| 主な受験者 | 19歳以上 (主に大学 2~4年生) | 20歳以上 (主に大学 4年生) | 大学院修了 (見込み)者 |
出典:人事院「国家公務員採用総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)受験案内(2026年度)」、「国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験) 「教養区分」受験案内」(2026年度)
教養区分は、現在の総合職試験の主流です。単一の区分としては3年連続で合格者数が最多で、これから対策を始める人がまず目指すべき区分といえます。
「秋試験」ともいわれていましたが、2026年から春にも実施されるようになりました。19歳以上、大学2年生に進級する年の3月から受験できるため、在学中の受験機会は最大6回になります。
春試験では、教養区分に加え、法律・経済・政治・国際・人文など、専門試験が課される区分も実施されます。なかでも法律区分は、事務系で最も合格者数が多く、幅広い省庁が採用対象としています。このため、教養区分とあわせて受験する人が多い区分です。
院卒者試験は、大学院修了(見込み)者だけが受験できる試験です。2025年春の対受験者倍率は1.6倍と、大卒程度・法律区分の19.1倍と比較して低い水準です。受験資格があるなら、有力な選択肢になります。(出典:人事院「2025年度国家公務員採用総合職試験(春)の合格者発表」)
※院卒者試験と大卒程度試験の違いは、以下の記事で詳しく解説しています。
8-3. TOEICの活用と受験資格
総合職試験(大卒程度)の受験資格は、年齢が中心です。受験する年の4月1日時点でおおむね30歳未満であれば、大学卒業(見込み)またはこれと同等と認められることで受験できます。社会人・既卒でも、年齢要件を満たせば受験可能です。
さらに、総合職試験には外部英語試験のスコアに応じた加点制度があります。TOEIC L&Rで730点以上なら25点、600点以上730点未満なら15点が総得点に加算されます。TOEFL iBT・IELTS・英検も対象です。
▼英語試験の加算点
| 加算点 | TOEIC L&R | TOEFL iBT | IELTS | 英検 |
| 25点 | 730以上 | 80以上 | 6.5以上 | 1級 準1級 |
| 15点 | 600以上 730未満 | 65以上 80未満 | 5.5以上 6.5未満 | ― |
※どの区分で受験すべきかは、こちらの記事で詳しく解説しています。
9. 合格・内定に向けて何から始めるか?
国家総合職になるために必要なのは、試験対策のスタート段階から、「最終合格」と「内々定の獲得」の2つを見据えて計画を立てることです。
まずは、筆記対策を早くから積み重ねて、最終合格を獲得する。そして、省庁研究と面接準備を重ねて、官庁訪問で内々定を得る。この2つがそろってはじめて、官僚として働くことができます。
伊藤塾は、合格のためのカリキュラムと、内定にこだわった個別指導の両方を備えることで、各省庁・行政機関へ内定者を多数輩出してきました。
2026年の採用試験では、伊藤塾受講生の合格率が受験者全体の合格率と比べて、教養区分で6.2倍、法律区分で5.8倍となりました。さらに、2026年の官庁訪問では、受講生の81.5%(65名中53名)が内々定を獲得しています(※)。これは、人事院が公表する採用率32.6〜36.3%(2021年度〜2023年度入省世代。最終合格者のうち採用された割合)を大きく上回る水準です。
(出典(採用率):人事院「令和6年度年次報告書(公務員白書)第1編第3部第1章(表1-4)」)
※ 2026年春国家総合職[教養区分]試験・1次試験受験確認64名のうち、2次試験(最終)合格確認27名(全体は最終合格者/申込者6.8%)。
※ 2026年国家総合職[法律区分]試験・1次試験受験確認25名のうち、2次試験(最終)合格確認7名(全体は最終合格者/申込者4.8%)。
※ 法律区分・教養区分試験に合格し2026年の官庁訪問に臨み結果の判明した伊藤塾講座本科生65名のうち内々定確認53名。
(出典:実績で選ばれる国家総合職対策講座|伊藤塾)
筆記対策と官庁訪問対策を、別々の準備ではなく最初から一体のものとして設計している伊藤塾の方針が、合格率と内々定率の両方の差につながっています。
10. 国家総合職に関するよくある質問(FAQ)
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国家総合職の合格率・内定率はどのくらいですか?
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2025年の対受験者倍率は、教養区分で9.2倍、法律区分で19.1倍です。最終合格後の採用率(合格者のうち実際に採用された割合)は32.6〜36.3%で、合格者の3人に1人程度が採用されています。
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国家総合職の初任給と35歳・40歳時点の年収モデルは?
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初任給は月額242,000円で、本府省勤務では手当込みで月301,200円です。人事院のモデル給与例では、35歳の課長補佐で年間約819万円、40歳の室長で年間約1,090万円となっています。
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国家総合職と一般職で年収はどのくらい違いますか?
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初任給の差は月10,000円ですが、昇進スピードの違いで差が開きます。モデル給与例の35歳時点では、総合職の標準的なポストである本府省の課長補佐が年間約819万円、一般職の標準的なポストである地方機関の係長が年間約507万円で、約300万円の差があります。
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教養区分と法律区分・経済区分ではどちらが難しいですか?
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一概には比較できません。倍率は法律区分(19.1倍)のほうが教養区分(9.2倍)より高いものの、教養区分は論文や企画提案など特有の種目があり、求められる力が異なります。専攻や得意分野によって、どちらが難しいかは人により変わります。
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高卒・専門学校卒でも国家総合職になれますか?
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なれます。大卒程度試験は、受験する年の4月1日時点でおおむね30歳未満という年齢要件を満たせば、学歴を問わず受験できます。採用後の待遇にも、出身学歴による区別はありません。
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国家総合職の採用に学歴フィルターはありますか?
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ありません。難関大出身の合格者が多いのは、受験者の母数や準備量の違いによるもので、出身大学は選考の基準になりません。
※国家総合職の学歴フィルターについては、以下の記事で詳しく解説しています。
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「国家総合職はやめとけ」と言われるのはなぜですか?
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本府省の残業の多さや、若手退職の増加が背景にあると考えられます。ただし、柔軟な働き方の制度整備や初任給の大幅引き上げなど、勤務環境と待遇の見直しは進んでいます。
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官庁訪問で内定が出なかった場合(「全落ち」)はどうなりますか?
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採用候補者名簿から名前が消えるわけではなく、名簿の有効期間内(教養区分を除き5年間、教養区分は2026年度試験から7年間)であれば翌年度以降の官庁訪問に再挑戦できます。省庁によっては秋以降に追加の採用面接を行うこともあります。
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国家総合職の官庁訪問はいつ・どのように行いますか?
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例年6月頃から約2週間の日程で、志望する省庁を訪問して複数回の面接を受ける「クール」を重ね、最後まで残ると内々定が出ます。
※官庁訪問の詳しい実態は、以下の記事で解説しています。
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Q. 国家総合職の対策はいつから始めるのが適切ですか?
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大学1〜2年生からの開始がおすすめです。教養区分は早ければ大学1年生の3月から受験でき、早く始めるほど受験機会を多く確保できます。もっとも、大学3年の秋以降に始めて合格する人もいるため、いつからでも遅すぎることはありません。
11. 最終合格と内々定の2つを見据えて動き出そう
国家総合職は、法律や予算を通じて社会の土台そのものを動かす国家公務員です。簡単に就ける職業ではありませんが、社会の仕組みを設計する側に立てる仕事は、ほかにありません。
- 給与は昇進とともに大きく伸び、局長や事務次官などの指定職では年間2,000万円前後に達する
- 試験の倍率は高い水準にあるものの10年前より下がっており、筆記試験の門戸は広がっている
- 最終合格は採用候補者名簿に載るだけの状態で、働くには官庁訪問での内々定が欠かせない
- 本府省の残業は出先機関の2倍以上あるものの、待遇と勤務環境の見直しが続いている
国家総合職を目指すか迷っている人は、説明会などで省庁との接点づくりから始めましょう。受験を決めている人は、志望区分を定めたうえで、基礎能力試験の学習と省庁研究に早めに着手してください。
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