国家総合職合格のカギは時事対策?その重要性と勉強法
公務員時事
2023年08月04日

公務員試験には様々な種類があり、異なるパターンの試験が実施されています。そんな公務員試験の多くで出題されるのが時事問題です。直前にざっと確認するのに適した時事対策の良書も出版されており、時事については「直前詰め込みでOK」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。
しかし、国家公務員総合職、いわゆる官僚を目指す場合も、時事対策はその程度の準備で足りるでしょうか?今回は、国家総合職試験において時事トピックがどのように問われるのか、また対策のポイントを詳しくご紹介します。

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【目次】
1.国家総合職試験の時事出題
大学生が受験する国家総合職試験には、秋試験と春試験の2種類があります。秋試験は大学2年・3年次に、春試験は大学4年次に受験する試験です。それぞれの試験で時事問題がどのように出題されるか、確認していきましょう。
1-1.秋試験(教養区分)の場合
秋試験はいわゆる教養区分のこと。第1次試験と第2次試験が実施されます。試験種目は次のとおりです。
●第1次試験
①基礎能力試験
②総合論文試験
→合否は①の成績のみで決まる
●第2次試験
③企画提案試験
④政策課題討議試験
⑤人物試験
→合否は①~⑤全ての成績を総合して決まる
これら5つの試験種目には、『受験案内』に時事が出題内容として明記されているものと、何も言及されていないものがあります。
出題が明記されている種目
時事が出題科目とされているのが、第1次試験の基礎能力試験です。
『教養区分受験案内(2023年度)』より ※○内の数字は出題数
基礎能力試験 公務員として必要な基礎的な能力(知能及び知識)についての筆記試験 【Ⅰ部】知能分野 文章理解⑧、判断・数的推理(資料解釈を含む。)⑯ 【Ⅱ部】知識分野 自然⑩、人文⑩、社会⑩ ※時事を含む |
基礎能力試験にはⅠ部とⅡ部があり、時事はⅡ部「知識分野」で出題されます。全30問中のおおむね3問が時事問題、というのが例年の傾向ですが、その他にも自然・人文・社会の各分野において時事トピックと関連させながら知識を問う、といった出題パターンもあります。
基礎能力試験の配点は、下表に示すとおり「全体28のうち5」であり、それほど高くはありません。しかし、第1次試験の合否は基礎能力試験の成績のみで決まるため、確実に合格ラインを超える準備をしっかり行う必要があります。
基礎能力試験の配点比率(2022年教養区分)
試験種目 | 配点比率 | 満点 | 平均点 |
Ⅰ部:知能分野 | 3/28 | 24 | 10.889 |
Ⅱ部:知識分野 | 2/28 | 30 | 13.918 |
第1次試験を確実に突破するには、Ⅰ部7割、Ⅱ部6割の得点を目指したいところです。Ⅱ部では時事のほかに「自然」「人文」「社会」が出題されますが、具体的な分野は次のとおりです。
・自然科学 :数学、物理、化学、生物、地学
・人文科学 :世界史、日本史、思想、文学・芸術
・社会科学 :政治、行政、法律、経済、社会、国際関係
社会科学は大学に入ってから履修するような科目が中心ですが、自然・人文科学は大学入試までの学習経験がモノを言う分野といえます。スタートラインが同じ社会科学を重点的に学習して得点源にすることがⅡ部攻略のポイント。加えて、これまでの学習経験から自然・人文科学の両方で安定した得点をとれる方は、Ⅱ部については心配ないでしょう。
一方、例えば数学・物理・化学などの自然科学が苦手という方は、それらの科目を勉強し直すというよりは、自信のある分野について知識の精度を上げるとともに、時事問題を確実に正解して苦手分野の得点を補う戦略をとるのがおすすめです。
出題が明言されていない種目
『受験案内』には記載されていませんが、総合論文・企画提案・政策課題討議の各試験においても、時事の知識は解答するにあたって「当然の前提」として欠かせません。配点比率が8/28と最も高い総合論文試験では、時事の知識は特に重要です。
『教養区分受験案内(2023年度)』より
総合論文試験 幅広い教養や専門的知識を土台とした総合的な判断力、思考力についての筆記試験 【Ⅰ】:政策の企画立案の基礎となる教養・哲学的な考え方に関するもの 1題 【Ⅱ】:具体的な政策課題に関するもの 1題 |
時事の知識がとりわけ重要なのはⅡ部です。Ⅱ部では、問題文の中である政策課題が提示されます。たとえば、人口問題、SDGs、宇宙開発などです。これらの大きなテーマに対し、取り組むべき具体的な課題を設定して、政策案という形で解決策を論述していく、というのがⅡ部の試験です。
出題されるテーマは、現実に日本で、そして世界で起きている問題。答案を作成するにあたっては、実際に行われている政策、法整備の状況、最新の数値といった「事実」をふまえて政策案を組み立てる必要があります。
この「事実」部分を把握することが、総合論文試験に向けた時事の学習です。常に時事トピックにアンテナをはり、必要な情報は各省庁が出している行政文書も参照しながら、正確に押さえていきます。
1-2.春試験の場合
春試験は主に大学4年次に受験する試験で、第1次試験と第2次試験が実施されます。秋試験の試験区分が教養区分のみであるのに対し、春試験には11種類の試験区分があります。区分に応じた専門試験が課されるのが春試験の特徴です。
●第1次試験
①基礎能力試験
②専門試験(多肢選択式)
→合否は①②の成績で決まる
●第2次試験
③専門試験(記述式)
④政策論文試験
⑤人物試験
→合否は①~⑤全ての成績を総合して決まる
秋試験(教養区分)と同様、時事が出題科目とされているのが①基礎能力試験。2024年試験からは、より時事重視の内容に変更されます。
【変更点1】出題数の削減
基礎能力試験の出題数は、40題から30題へと10題削減されます。削減されるのは、知識分野が中心。知能分野の削減数が3問のみであるのに対し、知識分野は13問から半分以下の6問になります。
【変更点2】知識分野の出題内容
2023年までの試験では、知識分野の出題内容は「自然・人文・社会(時事を含む)」とされていました。これが、2024年からは「自然・人文・社会に関する時事、情報」となり、時事問題を中心とした出題内容へと変更されます。
これらの試験制度変更は、試験対策の負担を軽減し、国家公務員を目指す皆さんを増やすことを目的とするもの。学習効率の悪い知識分野の対策をしなくてよいのは、受験生とっては朗報です。
ただし、「知識で得点を稼ぐ」という戦略がとれなくなった、ともいえます。数的・判断推理をはじめとする知能分野に苦手意識がある場合は、絶対に時事で点数を取りこぼしてはいけません。しっかり対策する必要があるでしょう。
また、春試験の④政策論文試験は、教養区分の総合論文と同様の試験です。論述の前提として時事の知識が重要であることは、前述のとおりです。
2.官庁訪問にも時事の知識は必要?
2-1.そもそも官庁訪問とは
国家公務員総合職として採用されるためには、試験に合格するだけでは足りません。国家総合職試験合格に加えて、「官庁訪問」で内々定を獲得する必要があります。2023年採用の内定率は35.6%(※)。試験に合格しても3人に2人は不採用となる狭き門です。
※2022春試験(大卒・院卒)と2021年秋試験(大卒)の合格者と2023年4月時点の採用実績より算出。採用数/最終合格者=35.6%(理論値。2022年までの国家総合職試験の名簿有効期間は3年間のため、過去の合格者からも採用される可能性がある。)
官僚になるための最後の難関、官庁訪問。どのような流れで行われるのか、2023年のスケジュールを確認してみましょう。
国家総合職官庁訪問スケジュール(2023年)
第1クール :【3日間】 6/12(月)~6/14(水)
第2クール :【3日間】 6/15(木)~6/19(月)
第3クール :【2日間】 6/20(火)~6/21(水)
第4クール :【1日間】 6/22(木) 同日17:00内々定解禁
官庁訪問は事前予約制。6/1~6/9の期間に第1クールで訪問する府省庁の予約をとります。1日に訪問できるのは1省庁のみ。第1クールは3日間ありますので、訪問先は最大3つまで、ということになります。
第1クールを突破した府省庁には、第2クールで再度訪問します。これもパスすると第3、第4クールと進みます。第4クール突破で内々定獲得です。
官庁訪問の各クールでは、面接が繰り返されます。面接は大きく分けると、個別に質疑応答が行われる「ブース面接」と、各部局でレクチャーを受ける「原課面接」とがあります。複数回の面接で適性を見定めながら、徐々に面接官が役職上位者になっていき、採用が決まるという流れです。
2-2.官庁訪問で求められる時事の素養
官庁訪問で、ある時事トピックを知っているかどうか、質問されることはまずありません。なぜなら、「知っていて当然」だからです。官僚になるということは、ニュースで報じられる政策・制度や法律を立案する側に回るということ。社会の動向すら把握していないような人材は、官庁訪問には来ないというのが採用側の認識でしょう。
官庁訪問では1日12時間前後は拘束されます。この長時間、現役官僚を相手に面接・レクチャー・質疑応答を何度も繰り返すわけです。あえて聞かなくても、「この訪問者は最新のニュースもちゃんと把握できていない」なんてことは、すぐに見抜かれます。それでは、内定率35.6%の競争を勝ち抜くことは難しいでしょう。
3.国家総合職試験の時事対策
3-1.まずは新聞を読む
テレビを見ない若者が増えている、と言われるこの時代。ましてや、新聞を読んでいるという方はかなり少数派かもしれません。倍速で見られる動画コンテンツとは異なり、文章を読んで情報を得ることは、いわゆる「タイパ」的に耐えられない、という方もいらっしゃるでしょう。
それでも、官僚を目指すなら新聞を読むことをおすすめします。
理由は次の2つです。
理由① 正確かつ客観的な事実がつかめる
最も手軽に情報を入手できるのはネットニュースでしょう。けれどもネットで流れてくる情報はまさに玉石混交。真偽を見極めるリテラシーが求められる世界です。ネットニュースは娯楽の一種といえるかもしれません。国家総合職対策の情報源とはなりえません。
テレビのニュース番組であれば、情報が不正確ということはほとんど考えられません。しかし、制作者や司会者の意見が加味されている場合も多く、客観的な事実のみを伝えるものではないことに注意が必要です。
新聞については、裏付けのとれていない不正確な情報はまず掲載されていないと言ってよいでしょう。また、新聞社にもそれぞれ方針や理念はありますが、その主張は社説など特定のコーナーでなされるのが原則。新聞は最も正確性・客観性が担保された媒体といえます。
理由② 「小さく載る」記事がネタの宝庫
テレビ、特に民放のニュース番組では、視聴者の関心が高いニュースに偏って報じられています。一般の人が興味を持たないようなニュースは扱われません。しかし、国家総合職の試験対策として押さえておくべきニュースは、実は「扱われないほう」に多くあります。
新聞では、テレビで取り上げられないニュースも小さく載っていることが多いです。そんな「小さな記事」の中から、試験との関係で重要な情報を見つけ出すスキルを身に付ければ、新聞は国家総合職試験対策の大きな武器になります。
3-2.具体的政策論と関連づける
新聞を読んで最新ニュースに接することを習慣化する、というのが国家総合職時事対策の第一歩。次のステップは、「政策を立案する官僚になる」という視点で、ニュースをより深く読み込むトレーニングをすることです。
新聞は学習素材として最適とはいえ、ただ何となく読んでいるだけでは、あまり多くは得られません。記事に書かれた事実について、その背景や意図・目的、さらには政策の実施状況にまで踏み込んで理解を深めていきましょう。
例えば、『岸田首相が中東3か国を歴訪』というニュース。「ふーん、岸田さん中東に行ったんだ」で終わってしまっては不十分です。
・なぜ今、中東を訪問する必要があるのか
・なぜ訪問先がその3か国だったのか
・受け入れる中東3か国側の思惑は何か
・日本企業が多数同行している目的は何か
・最近の中東をめぐる情勢はどういうものか
・そもそも日本のエネルギー安全保障や経済外交の方針とは
首相中東歴訪のニュースからは、このようなことを考えてみると有益でしょう。考える素材として、『外交青書』などの行政文書も参照できるとなおよし、です。さらに、「総合論文試験で経済外交関連の問題が出たら、こう書こう」と考えるところまでできると100点満点ですね。
もちろん、最初から満点レベルではできません。総合論文対策など、時事以外の学習が進むにつれて徐々に、で大丈夫です。伊藤塾では効率よくノウハウを身に付けられる時事対策講座も開講しています。
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4.民間併願にも役立つ時事
国家総合職が第一志望であっても、多くの方は民間企業を併願します。筆記試験もある公務員試験とは異なり、民間企業の選考は面接試験が中心です。その中でも「興味のあるニュース」が話題になることが少なくありません。
国家総合職を目指すレベルで時事対策をしておけば、民間就活の場面では周りにかなり差をつけられるでしょう。
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「併願した民間就活で感じたこと」とは?
・国家総合職 文部科学省に内々定したK.Aさん
・国家総合職 厚生労働省に内々定したM.Kさん
5.まとめ
いかがでしたか?
時事の知識は、国家総合職試験のいろいろな場面で必要となるもの。その精度も高いものであることが求められます。
とはいえ、時事トピックを政策課題と関連させて学習することは、「官僚になった自分」をイメージできて結構ワクワクするものです。
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