2024年国家公務員の一般職試験はどう変わる?そのポイントと対策を解説

国家一般職

2024年04月22日

更新日:2024年4月23日

志願者の減少に歯止めをかけようと、国家公務員試験では、受験者数を増やすことを目的とした制度変更が様々なされています。一般職についても、2024年試験より、受験生の試験対策に影響を及ぼすような変更が予定されています。

今回は今後予定されている試験制度変更のポイントと、その影響および対策について解説していきます。

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1.国家一般職採用の仕組み

国家公務員には様々な種類があります。中でも最も採用人数が多いのが一般職です。どうすれば国家公務員一般職になれるのか、その流れを確認しておきましょう。

1-1.国家一般職になるまでの流れ

国家公務員一般職になるための条件は次の2つです。

条件① 試験に合格すること
条件② 志望する省庁から内々定をもらうこと

「試験合格」と「内々定」という2つの条件を満たす必要があるというのは、一般職だけでなく国家公務員試験全般に共通する仕組みです。

総合職などでは、試験に合格した後、志望先へ「官庁訪問」して内々定を得る、という流れになっています。一方、一般職では、最終合格前の段階から官庁訪問がスタートするのが特徴。2023年試験のスケジュールを見てみましょう。

1-2.国家一般職の試験日程

2024年の国家公務員一般職試験は以下の日程で行われます。

受付期間

 2024年2月22日(木)~3月25日(月)
 インターネットにより申込

第1次試験

 試験日 6月2日(日)
 発表日 6月26日(水)

官庁訪問

 開始日 7月2日(火)
(7月10日~28日は官庁訪問禁止期間)

第2次試験

 試験日 7月10日(水)~26日(金)
 発表日 8月13日(火)同日内々定解禁

第1次試験の合格発表が6月26日、その日のうちに官庁訪問の予約受付がはじまります。そしていよいよ7月2日から官庁訪問がスタート、第2次試験開始前日の7月9日までが「前半」ともいえる官庁訪問期間です。

第2次試験期間中は官庁訪問をすることはできず、7月29日から「後半」の官庁訪問が再スタート。以後、各機関の採用枠が埋まるまで続きます。最終合格発表および内々定解禁は8月13日です。

1-3.国家一般職の試験概要

国家公務員の一般職試験では、第1次試験と第2次試験が行われます。2次合格=最終合格です。

一般職試験には10種類の試験区分があり、いずれか1つを選択して受験します。試験区分によって試験内容が異なり、9種類は主に理系対象の内容。文系の皆さんの多くが選択するのは「行政」区分です。その試験内容は次のとおりです。

第1次試験

①基礎能力試験
・「知能分野」24題、「知識分野」6題 全問必須解答
・多肢選択式で解答時間は1時間50分

②専門試験
・試験科目は全16科目。政治学、憲法、経済学、英語など多岐にわたる
・各科目5題ずつ、合計80題出題
・16科目から8科目を選択して40題解答
・多肢選択式で解答時間は3時間

③一般論文試験
・行政課題(1題)について論述する筆記試験 
・記述式で解答時間は1時間

第2次試験

④人物試験
・試験官3名との個別面接
・面接カードに沿って質疑応答

国家一般職試験では試験種目ごとの配点比率が公表されています。最も配点が高いのが第1次試験の②専門試験で4/9。公務員試験では、「人物重視」が近年のトレンドですが、現状の国家一般職試験で合否を分けるのは専門試験といえます。

※試験に関する最新情報は人事院『国家公務員試験採用情報NAVI』をご覧ください。

2.2024年試験からの変更点

2023年試験までの制度変更は、国家公務員総合職を中心に行われました。国家一般職に関わる変更は、「合格有効期間」(=官庁訪問を行うことができる期間)が3年から5年に延長されたことくらいです。

2024年試験では、いよいよ国家一般職においても試験内容に関わる2つの見直しが行われます。①試験日程の前倒し②基礎能力試験の内容変更です。

2-1.【変更点①】試験日程の前倒し

国家一般職試験はおおむね6月第2日曜日に第1次試験が実施されてきました。2024年試験では約1週間早い日程となり、6月2日(日)に第1次試験が行われます。

多くの一般職受験生が併願する国家専門職試験(国税専門官・財務専門官・労働基準監督官)も同様に前倒しされており、2024年も併願受験することは可能。この1週間の日程早期化は、それほど大きな影響はないといえます。

逆に官庁訪問のスケジュールがかなり余裕のあるものになっています。昨年までは第1次試験の翌々日に官庁訪問がはじまる相当タイトな日程でしたが、2024年は官庁訪問開始まで約1週間の準備期間があります。第1次試験から気持ちを切り替えて官庁訪問に臨むことができるでしょう。

2-2.【変更点②】基礎能力試験の出題数・内容

2024年試験では、第1次試験で行われる、基礎能力試験の出題数と出題内容が変更されます。詳しくみていきましょう。

基礎能力試験の出題数削減

まず基礎能力試験の出題数が10題削減されます。

●変更前
 40題 全問必須解答
(知能問題:27題 知識問題:13題)
●変更後
 30題 全問必須解答
(知能問題:24題 知識問題:6題)

削減される合計10題の内訳は、知能分野が3題、知識分野が7題です。人文・社会・自然科学および時事から出題されてきた知識分野が主な削減対象で、昨年までの13題から半分以下の6問しか出題されなくなります。

知識分野の出題内容変更

さらに基礎能力試験の知識分野は、出題内容も2024年試験から変更されます。

●変更前
 出題分野:「自然・人文・社会(時事を含む)」

●変更後
 出題分野:「自然・人文・社会に関する時事、情報」

これまでの試験では、自然科学・人文科学・社会科学に関する知識そのものが問われていました。歴史、文学・芸術、政治、法律、経済、物理、化学など学習すべき科目・範囲は膨大。各科目で出題されるのは1題、多くても2~3題。学習効率の悪い試験でした。

2024年試験からは、時事問題を中心とした出題に変更されます。そのレベルも、「普段から社会情勢等に関心をもっていれば対応できるような内容」になるとのこと。

重要な時事トピックと、それに関連する自然・人文・社会の基礎知識を押さえればよく、膨大な範囲をひたすら暗記する、といった大変さはなくなるでしょう。

変更のメリット・デメリット

基礎能力試験の出題分野は、知識と知能の2分野です。2023年までの試験でいうと、出題数は「知識1:知能2」のバランスで知能分野から多く出題されています。コスパの悪い知識ではなく、知能中心に学習するのが基礎能力対策のセオリーです。

2024年以降の試験では、この傾向がさらに強まります。知識分野を中心に出題数が減ることで、「知識1:知能4」という出題バランスに。ますます知能分野の重要性が高くなります。

とはいえ、判断推理や数的推理など、算数・数学の要素があるために、苦手とする受験生も多い知能分野。出題数削減という制度変更は、「数字が嫌い」な受験生にとってはメリットばかりとは言えません。

知識分野で点数を稼ぐことができなくなる分、知能分野で合格ラインを突破する力をつける必要があります。自身の得意・不得意を分析し、どの分野を重点的に学習するのか、戦略をたてて対策することが重要です。

また、知識分野での点数取りこぼしは、絶対に避けなければなりません。出題可能性のあるトピックが何か、そのトピックと関連して押さえておくべき知識は何か。その判断を行った上で、しっかり準備しておきましょう。

3.今後検討されること

国家公務員一般職試験では、2025年以降の制度変更も検討されています。今後の課題とされている主な内容は次の2つです。

3-1.受験可能年齢の引き下げ

1つめは、受験可能年齢の引き下げです。

現行の国家公務員一般職試験では、21歳以上であることが受験資格とされています。大学現役入学の方であれば、大学4年生の6月に受験することになります。

民間企業の採用活動早期化に対応するため、大学3年生など、より早いタイミングで受験できるように、受験可能年齢の引き下げが検討されています。

先行して2023年試験より受験可能年齢が引き下げられる、国家総合職教養区分試験の状況をみつつ方針が決定される予定です。

3-2.専門試験のない区分の新設

2つめは、専門試験を課さない試験区分の創設です。

現行の一般職試験では、行政区分をはじめ10種類の試験区分がありますが、いずれも第1次試験において、専門試験が課されます。行政区分の場合、16科目から8科目を選択して解答する試験です。

各自治体が行う地方公務員の採用試験では、「SPIと教養論文と面接」など、専門試験を課さない試験も増えてきています。民間企業の採用試験では、もちろん専門科目の知識を問う試験などありません。

そのような状況において、8科目も専門科目を学習するのは、やはり負担感が大きいですよね?そこで、一般職試験においても専門試験を課さない試験区分の創設が検討されています。

ただし、こちらもまだ具体的な決定はなされていません。当面は2024年現行の試験制度が続くものと考えて準備をする必要があります。

4.まとめ

いかがでしたか?

国家一般職試験の制度見直しは、まだ始まったばかりで、検討段階にある項目が複数あります。このような制度変更に過渡期には、最新情報をいち早く入手していくことが大切。今後も最新情報をお知らせしますのでぜひチェックしてください。

もう一つ、重要なことがあります。
それは、「この状況でどう動くことが自分にとって有利になるか」を考えて行動することです。

例えば、専門試験が課されない面接重視型の新試験区分が創設された場合。主に面接試験で適性が判断されることに不安を感じる方も少なくないのでは?学習負担が軽いとはいえ、受験生全員がこのタイプの試験に向いているとはいえません。

むしろ多少の学習負担があっても、筆記重視型の試験で確実に合格を狙う、という戦略もアリですよね?まずは自分自身の得意・不得意、強み・弱みを知ること。その上で、国家公務員一般職になるために、自分にとってベストな選択は何か、を考えることが大切です。

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伊藤塾 公務員試験科

著者:伊藤塾 公務員試験科

伊藤塾公務員試験科は一人ひとりの学習経験や環境に応じた個別指導で毎年多くの行政官を輩出しています。このコラムでは将来の進路に「公務員」を考えている皆さんへ、仕事の魅力や試験制度、学習法など公務員を目指すための情報を詳しくお伝えしています。