国家総合職に「内定をもらいやすい」省庁はあるか?志望先の選び方を解説

国家総合職

2023年04月08日

国家総合職を目指す場合、特定の一つの省庁しか考えないというケースであれば何の迷いもありません。ひたすらその省庁を目指すだけです。その一方で、複数の省庁が候補になっており、どの省庁を目指すべきか迷ってしまっているという場合もあるでしょう。

あるいは、(本来、好ましいとは言えないことではあるものの、国家総合職が社会的ステータスであることは確かなので)「国家総合職になれるのであればどの省庁でもいい」と考える人もひょっとするといるかもしれません。そうした場合、気になってくるが「どの省庁は、内定をもらいやすいのか」ということです。

省庁によって、そのような違いはあるのでしょうか。

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1. 省庁の「内定倍率」はあるか

「内定倍率」は計算できる?

国家総合職では、採用試験に合格した後に、志望する省庁を訪問する「官庁訪問」があります。そこで複数回の面接を受けて評価をされ、その結果によって内定を出すかどうかが決まります。

内定の得られやすさの違いというものを単純に数字で測ろうとするなら、

(1)その省庁をどれだけの人数が官庁訪問したか。
(2)その省庁でどれだけの内定者を出したか。

で、倍率を出すことは、理屈上は可能です。
しかし、それにはいくつかの問題があり事実上不可能なのです。

まず「各省庁で官庁訪問をした人数」は公表されていません。ですから、その省庁をどれだけの人が訪問したのかは不明なのです。

また、人事院からは、国家総合職の当年度の「府省等別採用予定数」と過年度の「府省等別採用状況」は公開されていますが 、内定を出した人数イコール採用数にはなりません。少数とは思いますが、内定を得ても辞退する人がいた可能性もあります。

ということで、「内定倍率は不明」なのです。

わかったとしても意味がない

そもそも、仮に「内定倍率」がわかったとしても、「倍率が低い省庁は内定を得られやすい」とは言えません。

各年度に1省庁で100名とかの人数で内定を出すならともかく、多くても10数名程度の内定者数では、「今年、この省庁の官庁訪問には、精鋭の人たちが10人集まった」ならば、たとえ官庁訪問者数が多くなかったとしても難関になるでしょう。

結論として、「倍率はわからないし、わかったとしても意味がない」のです。

2. 省庁は何によって人を選ぶのか

官庁訪問に来た人について、各省庁ではその人の何を見て、内定を出すかどうかを判断するのでしょうか。

官庁訪問で採用側が見るポイント

判断する際の要素は様々ありますが、一つ言えるのは「その省庁についての知識の多さだけでは評価されない」ということです。

もちろん、その省庁が担当する分野や業務について「ほとんど知らない」のは問題外ですが、たとえ「その省庁の出した白書の内容を、隅から隅まで知っている」としても、「よく知っていますね」「ずいぶん勉強したんですね」とは言ってもらえるかもしれませんが、それがすなわち内定につながるわけではないのです。省庁が見るのは、そうした「知識量」ではなくて、「適性」であったり「人柄・能力」であったりです。

省庁が見る「適性」とは

「適性」というのは省庁側が「この人はうちに合っている」と思うかどうかです。
では、何をもって「合っている」「合っていない」を判断するのか?

抽象的な言い方ですが、1例を出すと、ある事象について「全体を見渡したうえでものごとを判断してやること決めるタイプ」なのか、「現場の事情を見てそれを重視してものごとを判断してやることを決めるタイプ」なのか、といったことです(どの省庁もこの2つのどちらかに色分けされるわけではありません)。

各省庁には「ものごとに対するアプローチのしかた」や「ものごとの決め方」でやはり違いがあります。そうした点から「うちとの相性」を省庁側は見るわけです。

省庁が見る「人柄・能力」とは

「人柄・能力」については、例えば「積極的に他者にアプローチするタイプ」とか「自分の考えについての意見を聞いて、それを踏まえて考えを修正できる能力」といったことです。

ただ、「この省庁には、〇〇のタイプの人が比較的多い」という場合はありますが、それでは〇〇のタイプの人がその省庁では内定を得やすいとは必ずしも言えません。省庁によっては「毎年、なるべく違うタイプの人をいろいろ採りたい」と思っているところもあるのです。

3. 何を基準にして省庁を選ぶのか

省庁との相性は重要

官庁訪問する省庁を選ぶに際して、その省庁の業務分野に「自分が関わりたい分野」があることはもちろんですが、省庁の選択としては、それ以外では何があるのでしょう。

前項に記した「官庁訪問に来た人の何を省庁は見るのか」が参考になると思います。その省庁の「ものごとに対するアプローチのしかた」や「ものごとの決め方」を見きわめて、自分の考え方としてはそれにフィットするか、が一つの判断基準になるでしょう。

省庁ごとの雰囲気を事前にチェック

また、それ以外のものとしては、「その省庁の人たちのもつ雰囲気」があります。仕事に対する姿勢や人柄などを見て、自分が「ここで働きたい」と感じるかどうかです。どうやって、省庁の人たちのもつ雰囲気を知るのか?

例えば、その省庁の分野・テーマ別の業務説明会に参加して、その仕事に携わった職員の方の話を聞くことで、その業務への思いや考え方・アプローチのしかたを知ることができます。

さらに、業務説明会に数多く参加すると、採用担当の方に「この分野の業務についてもっと知りたい」と伝えると、場合によってはその業務に携わっている方と直接お話しできる機会をもらえることもあります。また、インターンシップに参加できると、それこそ課内の雰囲気を体験できます。

官庁訪問では、複数の省庁を回ることができ、一つの省庁で複数の部署を見ることができ、複数の職員の方と話すことができます。もちろんその省庁の国家総合職全員を知ることはできませんし限定的ではあるのですが、それでも相当の人たちに会えるわけです。出会いお話しした人たちの雰囲気から「自分との相性」を感じ取れるでしょう。

4. まとめ

いかがでしたか?

「内定を取りたい」と思うのは当然のことですし、「どうしたら内定を取れるか」と考えるのも自然なことです。それについていろいろと情報を集めるのもよくわかります。けれども、安易な道を探るのは往々にして時間のむだになります。

「内定をもらいやすい省庁」といった言葉に踊らされず、「省庁は、官庁訪問する人の何を見るのか」を踏まえた上で、その省庁の人たちから感じ取れることに着目して、「この省庁で、この人たちと一緒に長く働きたい」と思えるかどうかで判断したらどうでしょう。職員の方のお話を聞いても、その点を重視して決めた人が実に多いです。

何十年と働く場所を決めることですから、しっかりと判断をしましょう。

伊藤塾 公務員試験科

著者:伊藤塾 公務員試験科

伊藤塾公務員試験科は一人ひとりの学習経験や環境に応じた個別指導で毎年多くの行政官を輩出しています。このコラムでは将来の進路に「公務員」を考えている皆さんへ、仕事の魅力や試験制度、学習法など公務員を目指すための情報を詳しくお伝えしています。