内定者が実践した国家総合職対策はコレだ!【①教養区分・総合論文編】

勉強法

2023年04月24日

国家総合職試験を受験する皆さんの中には、合格者がどんな対策をしたのか参考にしたい、という方も多いのではないでしょうか?

国家総合職対策の内容・ボリュームは、大学入試や学部での学習経験に応じて一人ひとり異なります。身近な先輩であっても、全く同じことをすれば合格できる、とは言い切れません。とはいえ、最新合格者の体験談にはヒントが満載。「どの部分を自分の勉強に取り入れるか」を意識しながら、ぜひ参考にしましょう。

今回から3回シリーズで、合格者が実践した教養区分対策をご紹介します。第1弾は「総合論文試験」対策です。

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1.国家総合職教養区分の試験制度

まずは国家総合職試験の制度をおさらいしておきましょう。
国家総合職試験には、大卒程度試験と院卒者試験があります。大学生の皆さんが受験するのは、大卒程度試験です。

大卒程度試験には、実施時期・内容の異なる2種類の試験があり、それぞれ「秋試験」「春試験」と呼ばれています。教養区分試験とは、「秋試験」を指します。

1-1.教養区分の試験日程

教養区分試験は、ここ数年、10月の第1日曜日に実施されています。2023年の試験日程は次のとおりです。

●第1次試験

 試験日 10月1日(日)
 発表日 10月18日(水)

●第2次試験

 試験日 11月25日(土)・26日(日)
 発表日 12月13日(水)

教養区分では、1次・2次と試験が行われます。2次試験合格=最終合格です。ただし、試験に合格するだけでは官僚にはなれません。試験合格後、「官庁訪問」で志望する官庁から内々定を獲得してはじめて採用確定、という流れです。

官庁訪問で内々定がとれるのは、合格者の37.3%(※)とかなりの激戦。教養区分に合格すれば、翌年6月まで約半年間かけて官庁訪問の準備をじっくりできます。春試験合格者よりもかなり有利といえます。

※2022年内定率
2021年春試験(大卒・院卒)と2020年秋試験(大卒)の合格者および2024年4月時点の採用実績より算出。採用数/最終合格者=37.3%(理論値。国家総合職試験の名簿有効期間は3年間のため、過去の合格者からも採用される可能性がある)

1-2.教養区分の試験概要

教養区分試験では、次の5つの試験種目が行われます。

●第1次試験

①基礎能力試験
②総合論文試験

●第2次試験

③企画提案試験
④政策課題討議試験
⑤人物試験

1次は①②ともに筆記試験、2次で行われるのは主に「話す」試験です。今回のテーマは、第1次試験の「総合論文試験」。教養区分の試験概要については、別の記事でもご紹介しています。

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2.総合論文ってどんな試験?

では、「総合論文試験」の内容を確認していきましょう。

2-1.総合論文試験の実施内容

総合論文の実施形式

総合論文試験は、第1次試験で行われる2つの試験種目のうちのひとつ。1次試験日の午前に総合論文試験、午後に基礎能力試験が実施されます。出題数は2問。B4版両面の答案用紙に手書きで解答を記述していきます。試験時間は4時間(1問あたり2時間)です。

総合論文の出題内容

総合論文試験の出題内容は、『受験案内』に次のように記載されています。

「総合論文試験」
幅広い教養や専門的知識を土台とした総合的な判断力、思考力についての筆記試験
Ⅰ:政策の企画立案の基礎となる教養・哲学的な考え方に関するもの
Ⅱ:具体的な政策課題に関するもの

国家総合職試験は官僚を採用する試験。そして官僚の主たる仕事は、政策を立案することです。したがって、総合論文試験ではⅠ部・Ⅱ部ともに、政策立案の素養があるかが問われています。

Ⅰ部で出題されるのは、主に「思考のプロセス」をチェックする問題です。一定の専門的知識をベースに、自分の考えを論理的・説得的にまとめられているか、が見られています。過去に出題されたテーマには、「国境を超える人の移動」「公的な意志決定」「母語の持つ意味」などがあります。

Ⅱ部で問われるのは具体的政策論です。的確な現状分析・課題設定と、妥当な解決策の提示が求められます。必要「SDGs」「人口増加」「国連」といったテーマが出題されています。時事的な重要トピックの理解と、政策立案の基本的なスキルが必要です。

2-2.総合論文対策の重要性

国家総合職試験では、試験種目ごとの配点比率が公表されています。配点が高いほど、失敗できない重要な試験種目ということになります。

国家総合職教養区分 配点比率

試験種目配点比率
 基礎能力試験Ⅰ部3/28
 基礎能力試験Ⅱ部2/28
 総合論文試験8/28
 企画提案試験5/28
 政策課題討議試験4/28
 人物試験6/28

これを見ると、総合論文試験の配点比率は、最も高い8/28。総合職試験の得点は、「素点」を配点比率に応じた計算式にあてはめて換算する「標準点」で算出されます。配点比率の高い総合論文試験は、素点1点の違いで換算後には大きな差がつく採点方式です。

教養区分の合否は総合論文試験で決まると言っても過言ではありません。1点でも高い点数を目指すべき、最重要種目といえます。

3.総合論文試験攻略のポイント

3-1.目指すべき得点ライン

総合論文試験は各問10点、合計20点満点の試験です。各問4点が「基準点」とされており、4点未満の答案を書いてしまうと不合格決定となります。

総合論文試験では、少しのミスで基準点未満の点数がついてしまいます。基準点クリアを最低条件として常に意識する必要があります。とはいえ、6点以下の点数では合格は厳しいでしょう。できれば各問8点で16点、ダメでも15点が目指したいラインです。

3-1.総合論文試験対策のポイント

総合論文試験では、次のような流れで答案を仕上げていきます。

①問題分析

まずは問題文を分析し、出題意図を読み取らなければいけません。出題者の「問いに答える」ことが、合格答案の絶対条件です。Ⅰ部では例年、複数の資料が添付されます。問題文本文に加え、それらの資料をどう使うべきかの検討も必要です。

②答案構成

問題分析で出題意図をつかめたら、「何を」「どの順番」で書くか、答案のアウトラインを決めていきます。答案は手書きで仕上げるため、いったん書き始めると大幅に修正するのは困難です。答案構成をしっかり行うことが重要です。

③答案作成

あとは作成した答案構成に沿って、答案を書きあげるだけです。

出題意図を正しく読み取り、「問いに答える」答案を書くには、一定の知識が欠かせません。具体的には次の知識です。

・行政学や政治学など専門科目の知識
・重要な時事トピックに関する知識

これらの知識をインプットすることから教養論文対策ははじまります。併行して、政策を立案するための「官僚的」思考プロセスを身に付けること、そしてアウトプットのトレーニングが必要です。

4.内定者が実践した対策

ここからは、2022年国家総合職内定者(2021年教養区分合格)および2022年教養区分合格者が実際に行った対策をご紹介します。いずれも、公務員受験指導校「伊藤塾」で開講している、『国家総合職ゼミ』に参加して試験の準備をされました。

国家総合職ゼミを活用

2022年内定者Aさんの体験談

ゼミ(※)で講師の言うことを素直に受け入れ、アドバイスされた通りに学習を進めることが何よりの近道であると思います。具体的に白書や資料の読み方を絞って伝えてくれるので、その通りに読みポイントを適宜まとめていくなどして工夫しました。

またゼミ内でディスカッションを毎回行うため、盛り沢山の内容ですが、それを乗り越えたからこそ得られた論理的思考力は大きな財産になったと思います。そして実際に時間を測って書くトレーニングも欠かさず行っていました。伊藤塾では答案を添削していただけるため、客観的な第三者から見た適正な評価をもらうことができます。

2022年内定者Bさんの体験談

大部分を伊藤塾の論文対策ゼミ(※)で行いました。形式的な論文の書き方や段落の分け方を知るだけでなく、内容的にも各問題文に対して主に政治学・行政学のどの範囲を論じるべきなのかを講義していただいた事で頻出の分野等を知ることができました。

たった数行の問題文にしても、単語1つ1つを細かく見ていくことが重要であり、そこからいかに論文を展開するかを学びました。その後、配信される解説講義を視聴する事、また、視聴して終わりにせず紹介していただいた白書や資料を読んで自分でもう一度答案を書いてみる事も行っていました。自主ゼミと称して、他の学生の方と一緒に取り扱った問題について議論することもとても有効でした。

※伊藤塾『国家総合職ゼミ<教養区分編>』
教養区分合格に向けて総合論文対策を行う全20回のゼミ。毎回、過去問演習とグループ討議を行うほか、問題分析や答案構成のノウハウ、押さえておくべき知識の解説を行う。

自主ゼミで切磋琢磨

2022年合格者Cさんの体験談

ゼミでの議論に加え、伊藤塾生同士の自主ゼミを組んでさらに深く検討することで、自らの考えを深めるようにしていた。単に試験をパスするための時間ではなく、社会問題について深く知り、深く考え、友人たちと議論ができる時間であったように感じる。

実際に解答を書いて、内容について議論し、講師のインプットを受けて、さらにそれを友人たちと深める。このサイクルを作り、継続できたからこそ、総合論文試験では高得点をいただくことができたと思うし、このサイクルを作り出してくれたのは間違いなく伊藤塾での受講生同士のつながりである。講師の方が「講義を受けることも大切だけれど、受講生同士で自主ゼミを組むことが一番大事だ」というようなことを仰っていたが、まさにその通りであると感じた。

何度も繰り返した「書く」練習

2022年合格者Dさんの体験談

基本的には佐藤講師の指示の通りに勉強を進めました。①まず各回のゼミで実際に答案を作成します。特に勉強を始めたばかりの段階では時間内に書き切ることはできなかったのですが、そのことはあまり気にせず解説を吸収することに集中しました。それは正しいやり方だったと思います。

②次に解説や参照資料を踏まえて答案を再び書いてみます。この時、書く内容だけでなく論文の構成にも十分な注意を払いました。本番が近づくにつれ、時間を計って解くようにしましたが、当初は時間をかけても納得の行く論文を完成させるように努めました。

③最後に自主ゼミで自分の2回目の答案を共有し、他の受講生から様々な指摘をもらうと同時に、彼らの答案からよいところを盗みました。以上のサイクルを回すことで、総合論文を安定して書けるようになりました。

2022年合格者Eさんの体験談

講義で案内された資料は指示のあった要点だけに絞って読み込み、事前に解答のパターンをイメージできるまで書く練習をした。また全ての回で扱ったテーマを、もう一度調べ上げ、自分なりの完全解答を作成していた。

あまり推奨はできないが、個人的には10日前から毎日論文を書いたことが一番力になったと思っている。記述量もウエイトも大きい試験のため事前に準備を着実に進めるのが理想だが、仮に遅れたとしても直前の学習は役に立つ部分が大きいと感じた。本番では新しさより確実さを重視し、実際の出題と過去問の共通点を探しながら、練習で多用したフレーズを当てはめる形で答えた。

2022年合格者Fさんの体験談

伊藤塾の国家総合職教養区分ゼミを利用して対策を行いました。すべての回に出席することで、総合論文で出題されるお題全体を概観でき、さらに最初の方はなかなか書くのが難しいながらも、厳しい時間設定(本番よりも40分短い80分)の中で何度も書く練習をしたことで、(ゼミ前の時間に演習時間をとって毎回答案を書いていました)自分にとって納得がいく答案の書き方や時間配分を見つけることができました。

新聞・ニュースで時事対策

2022年合格者Gさんの体験談

政策の背景となる基本知識は新聞やニュースで得ていた。特にNHKの夜9時のニュースは、解説員がついて解説することが多いので、新聞がどうしても購読できない自分の環境にとってありがたいものだった。

次に実際の政策については、省庁が出す白書を読んでニュースで得た知識とできる限り関連付けながら把握していた。特に私は白書の1フレーズをそのままメモに取っておき、解き直しの時に利用できるようにしていた。そのおかげもあってか、当日は言い回しにそれほど苦労することなく答案を作成することができた。

2022年内定者Aさんの体験談

私は日経新聞を毎日欠かさず読み、時には複数の新聞社を読み比べするなどして幅広く知識を取り入れることを意識していました。最初はかなりハードに感じましたが、段々と読むスピードも上がり、負担が減っていくと思います。

1つ1つの記事に対して自分はどのような意見を持つかと言うことを意識していました。これにより知識が多角的かつ深く整理され、論文でどのような内容が出題されても、柔軟に現場思考して論述する素養が身についたと思います。

5.まとめ

いかがでしたか?

今回は、伊藤塾利用者の対策を紹介したため、独学で目指す場合はまた別の方法論が必要となるでしょう。しかし、彼らの体験を通して「総合論文対策として何をすべきか」のイメージはお伝えできたのではないでしょうか?

国家総合職教養区分は「難関」「地頭勝負」「対策してもムダ」という印象をお持ちの方も多い試験。その大きな要因となっているのが、総合論文対策の捉えどころのなさ、でしょう。

総合論文対策にもノウハウがあります。何をすれば合格レベルに達するのか。それを把握できたなら、あとは実行あるのみ。伊藤塾はあなたのチャレンジを応援しています。

伊藤塾 公務員試験科

著者:伊藤塾 公務員試験科

伊藤塾公務員試験科は一人ひとりの学習経験や環境に応じた個別指導で毎年多くの行政官を輩出しています。このコラムでは将来の進路に「公務員」を考えている皆さんへ、仕事の魅力や試験制度、学習法など公務員を目指すための情報を詳しくお伝えしています。