内定者が実践した国家総合職対策はコレだ!【③教養区分・2次試験編】

勉強法

2023年05月11日

3回シリーズで合格者が実践した教養区分対策をご紹介しています。第3弾の今回は「2次試験」対策です。

国家総合職教養区分の2次試験は、総合職春試験を含む他の試験ではあまり見られない形式の試験が行われます。何をすべきかわからず、不安を感じるという方も少なくありません。

今回は、最新内定者や合格者の体験談をまじえながら、2次試験で行われる3つの試験種目について、実施内容と目指すべき得点ライン、そして具体的対策を解説します。

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1.国家総合職教養区分の試験制度

2023年の国家総合職「秋試験」教養区分は、第1次試験が10月1日、第2次試験が11月25日(土)~26日(日)に実施されます。1次と2次、合わせて5種類の試験が行われます。2次合格=最終合格です。

1-1.教養区分の試験種目

●第1次試験

①基礎能力試験
②総合論文試験

●第2次試験

③企画提案試験
④政策課題討議試験
⑤人物試験

第1次試験で行われる2種目はいずれも筆記試験。これに対して、2次試験で行われる③~⑤の3種目はいずれも「話す」要素のある試験です。具体的な内容を確認していきましょう。

1-2.2次試験ってどんな試験?

第2次試験は2日にわたって行われます。1日目が企画提案試験、2日目が政策課題討議試験および人物試験です。

●企画提案試験

企画提案試験はⅠ部とⅡ部に分かれます。Ⅰ部では、与えられた課題に対する企画(政策)を考え、それをプレゼンテーションシートにまとめます。記載できる分量はA4両面1枚、試験時間は1時間30分です。

Ⅱ部ではまとめたシートをもとに自身が提案する企画についてのプレゼンテーションを行った後、試験官との質疑応答があります。Ⅱ部の試験時間は、受験案内では「おおむね1時間」とだけ記載されていますが、例年、準備時間10分→プレゼン5分→質疑応答20分という時間配分で進んでいきます。

企画提案試験の配点比率はⅠ部3/28、Ⅱ部2/28です。満点は12点で、基準点は4点(いわゆる足切り)に設定されています。企画提案試験では実はあまり差がつきません。約6割の得点である7~8点を目指せばよいでしょう。

●政策課題討議試験

政策課題討議試験はグループディスカッションを行うもので、試験時間は「おおむね1時間30分」とされています。受験案内には記載されていませんが、例年、課題についてのレジュメ作成20分→個別発表3分→グループ討議45分→個別発表2分、という流れです。

ただしコロナ流行下で行われた試験では、討議時間が短縮されるなどの修正があったため、当日予定変更があっても対応できる準備をしておけば安心です。

政策課題討議試験の配点比率は4/28です。最高A~Eの5段階で評価されます。E評価がつくと不合格決定。何より「Eがつかない」パフォーマンスをすることが重要です。C狙いで良ければB、というスタンスで問題ありません。

●人物試験

人物試験は個別面接です。官庁訪問と区別して「人事院面接」と呼ばれています。事前に提出した『面接カード』に沿って、試験官3人と15~20分間の質疑応答を行います。

人物試験の配点比率は6/28。総合論文試験に次いで高くなっています。面接対策はつい後回しになりがちですが、実はとても重要、かつ準備に時間がかかる試験種目です。

採点はA~Eの5段階評価。政策課題試験と同様、E評価=不合格です。Eを避けてC狙い・良くてB、という目指すべきラインも同じです。

2.「企画提案試験」の対策

2-1.企画提案試験のポイント

企画提案試験は、ある政策課題に対する具体的施策を企画して提案する、という内容です。まず、企画の概要をまとめたプレゼンテーションシートを作成した後、試験官3人に対してプレゼンテーションを行います。最後は質疑応答です。

実は、企画提案試験は、事前準備がしやすい試験といえます。というのも、「この範囲から試験問題を出しますよ」という資料があらかじめ指定され、その読み込みができるからです。例年、課題資料は第1次試験の合格発表日に公表されます。

企画提案試験の対策を「内容面」と「形式面」に分けて確認しておきましょう。

●内容面の対策

内容面の対策とは、もちろん合格点が与えられる具体的施策を企画するための準備ということになります。次の3ステップで進めていきましょう。

(1)課題資料を徹底的に読み込む
(2)資料の中から試験に出されそうなテーマを複数予想する
(3)予想したテーマごとに提案する企画(具体的施策)を考える

とにかく資料を丁寧に読み込むことが大切です。ここが出るかも、と思ったテーマについては、公表されている資料だけではなく、関連する他の資料についても目を通しておく必要があります。伊藤塾では、資料解説とテーマ予想を行う講義を実施しています。

「企画を考える」部分は総合論文対策の応用です。総合論文で十分トレーニングしてきた方はそれほど心配する必要はないでしょう。

●形式面の対策

企画提案試験は単純な「論文試験」や「面接試験」ではないため、形式面も気になるところです。具体的には次の3つの練習をしておくとよいでしょう。

(1)提案内容をプレゼンテーションシートにまとめる練習
(2)わかりやすくプレゼンテーションをする練習
(3)質疑応答の練習

プレゼンテーションシートはA4両面1枚で作成します。1時間30分という制限時間で、課題文を読み、企画を考え、シートにわかりやすくまとめなければなりません。事前準備の段階で、シートをどのようなスタイルで作成するか、大枠は決めておきましょう。

プレゼンや質疑応答の練習については、伊藤塾塾生であれば「模擬企画提案」としてシミュレーションする機会があります。大学内の公務員サークルなどで模擬を実施しているところもあります。このほか、受験仲間や友人、家族を相手に練習させてもらうのも良いですね。

「内容面」と「形式面」では言うまでもなく内容面のほうが重要です。どんなにプレゼンが上手でも、中身がスカスカでは7~8点はつきません。時間をかけて資料を読み込み、企画を練り上げておくことがポイントです。

2-2.内定者が行った企画提案対策

2022年国家総合職内定者(2021年教養区分合格)および2022年教養区分合格者が企画提案試験に向けて何をしたか、その対策をご紹介しましょう。

2022年内定者Aさんの体験談

企画提案試験については、一次合格と同時に課題資料が発表されたため、当月内に資料の読み込みを終えられるよう取り組んでいました。その後解説講義を視聴し、施策をいくつ考えておくべきか、そしてどの分野の施策をどの程度まで仕上げるべきかを丁寧に教えてくださるため、その方針にそって準備をしていました。

また、一人で考え込んでいても埒があかないため、友達と施策を持ち寄って議論したり、大学の実務家教員からアドバイスをもらうなど多くの人とコミュニケーションをとりながら中身をつめていく作業も行っていました。本番でも、現役官僚の方と提案した施策の内容を詰めていくような議論が展開されるため、練習の段階から意識することが大切であると思います。

2022年内定者Bさんの体験談

企画提案について、まず解説講義を視聴し、発表された参考資料の読むポイントや他に読み込むべき資料、予想される問題文を学びました。また、伊藤塾の模擬練習を早めに申し込むことで、自分自身を追い込み、対面でより実践に近い形で練習しました。

模擬練習後は、講師や内定者の方から頂いた意見やアドバイス、受けた質問を参考にして、発表したプレゼンのブラッシュアップを行いました。

2022年合格者Aさんの体験談

10月に配信される講義で読むべき資料を提示していただいたので、その資料読解を通じてまずはどのような政策を打ち出すかを考えました。その後はひたすらリサーチしました。大学のレポート課題を書く時と同じように、とにかく様々な文献にあたって勉強するうちに、どんどん楽しくなり、不思議と企画も奥深いものになった気がします。

また2022年度のテーマは「孤独孤立・ひきこもり」だったのですが、地元の公民館で開催されていたひきこもり講演会に参加し、実際の現場を目で見たことも施策について理解を深めるきっかけになったと思います。

その後、ある程度施策の方針が固まったら、今度はプレゼンテーションシートを作成し、先輩方や友人、自主ゼミの仲間、家族を相手に何度もプレゼンテーションの練習をしました。そこで思いがけない指摘を頂いたので、その都度施策に修正をして、磨きをかけました。何度もプレゼンテーションシートを書くうちにシートのデザインも頭に入ったので、本番はいつも通りのプレゼテーションシートをそのまま再現する作業になり、時間的余裕も生み出せたと思います。

3.「政策課題討議試験」の対策

3-1.政策課題討議試験のポイント

政策課題討議試験は、その名前のとおり、政策課題についてグループで討議する試験です。試験は例年、次のように流れで進行します。

①レジュメ作成(20分)

問題文で、ある政策課題について、2つの立場が示されます。添付資料も読んだ上で自分はどちらの立場に立つのか、その根拠とともに20分でレジュメにまとめます。

②自身の立場について個別発表(3分)

自分がどちらの立場に立つのか個別に発表します。意外と短い3分という制限時間。レジュメでまとめた内容を簡潔にわかりやすく説明できると良いでしょう。

③グループ討議(45分)

例年、6人1組で45分間の討議を行います。自身の考えで立場を選択しているので、6人のうち5人が「A」の立場、自分だけが「B」の立場ということもあります。6人全員が「A」の立場なんてケースもありえます。

④個別発表(2分)

討議をふまえた自分の意見を2分で発表します。討論を通じて、自分の考えがどのように変わったのか、あるいは変わらなかったのかを端的に説明します。

政策課題討議試験においても、やはり重要なのは中身。テーマとなっている政策課題について、「その立場を選択する根拠」を深く論じられることが重要です。当日配付される資料+αの議論ができると高評価を得られるでしょう。

過去に出題されたテーマは「死刑制度」「定年制の廃止」「食品ロス」など、比較的オーソドックスな内容。普段から総合論文対策などを通して、政策課題や時事トピックについての理解を深め、自分の意見を固めておくことが対策となります。

形式面では、グループ討議には「作法」ともいえるものがあります。どのような立ち振る舞いをすべきか、練習が必要でしょう。

3-2.内定者が行った政策課題討議対策

内定者・合格者の体験談をご紹介しましょう

2022年内定者Aさんの体験談

政策討議は最も対策が難しいと思います。伊藤塾の模擬や友人と練習をする際には、役職や立ち回りを意識して練習していましたが、いくら練習を重ねても、不安は払拭しきれないと思います。本番のメンバーにも随分左右されるため、ある程度慣れたらそれで十分ではないかと私は割り切って準備をしていました。結局、本番は想定外のことが多く発生したため、臨機応変に対応せざるを得なかったと記憶しています。

2022年合格者Dさんの体験談

教養区分試験の中で、最も個人での対策が困難な分野であり、また個人的にグループディスカッション等の経験が乏しかったので、伊藤塾や国総OB団体(京僚会)が主催する模擬試験、塾生同士での対策会に積極的に参加するよう心掛けました。

勝敗を決めるディベートとは異なり他の参加者と協力する場であることを意識し、議論の中で自分がどういった立ち回りをするべきかを試行錯誤しながら取り組みました。その中で、ファシリテーター的役割や、自分の意見を率先して言う役割、フォローする役割等様々な立ち回りを経験しました。

当初は、どのように議論を進めればよいかわからず沈黙の時間が生まれてしまうこともありましたが、練習を重ねるにつれ、それぞれの立場で、議論を深めるあるいは議論を次の展開に進めるためにはどうすればよいかを掴むことができるようになっていきました。本番では期せずしてファシリテーターを引き受けることとなってしまいましたが、それまでの練習が非常に役立ちました。

4.「人物試験」の対策

4-1.人物試験のポイント

人物試験は前述のとおり、試験官3人との個別面接です。例年、第1次試験の合格発表日に公表される『面接カード』を第2次試験までに作成し、試験当日に提出します。面接の質疑応答は面接カードの内容に沿って行われます。

人物試験は、自分の「過去と未来」について語る試験です。過去とは、これまでのどのような経験を積んできたのか、ということ。未来とは、国家公務員になって何がしたいのか、どんな貢献ができるのか、ということです。

過去の経験が、官僚になった場合にどう活きるのか。過去と未来を関連づけて国家公務員としての適性をアピールしていかなければなりません。面接カードを作成する段階になって、「語るべき経験が何もない」と気付いても遅すぎます。その意味において、人物試験の「対策」には相当時間が必要です。

4-2.内定者が行った人物試験対策

2022年内定者Aさんの体験談

早いうちから面接カード(民間のESに相当)を作成しておくべきだと思います。公務員試験の面接はこのカードを基に行われるため、出来不出来が結果を大きく左右することになります。短期間で仕上げることはほぼ不可能なため、時間に余裕のある時期からコツコツ取り組んでいきましょう。1.2年生の方は、学生生活を充実させることも大切です。それが結果として面接で話すネタを豊富にすることにも繋がります。

また、公務員の面接試験と聞くと、「政策の知識量をアピールしないと」、「固いイメージかなあ」というイメージの方も多いのではないでしょうか。実際はそんなことは全くありません。面接試験はあくまでコミュニケーションであり、会話を楽しむくらいの姿勢がちょうど良いかもしれません。自分自身のことを自分の言葉で語れるように準備してください。

2022年内定者Bさんの体験談

早め早めに動くことが大事だと感じました。1次試験の対策をしつつ、間の時間で自分の志望動機やしてきたことを整理することで、1次試験合格後にあせることなく面接準備をすることができました。 

また、面接カードに文字を起こしてみて、先輩や友達に見てもらうこともして良かったと思います。本番でどれくらいの分量書くことができるのかを早めに理解しておくことで、自分の文章の内容を取捨選択することができました。

2022年合格者Eさんの体験談

本番の面接は3対1で行われました。伊藤塾の模擬では、かなり詰められた記憶がありますが、本番は和やかに進んだ印象が強いです。面接カードについては、伊藤塾で何度も添削してもらうことができます。

印象に残るエピソードがあるとその話で時間が稼げると思いますが、結局はいつもの自分を見てもらう感覚で気楽に面接に臨む方が良いと思いました。模擬では無駄に良く見せようとして、自分が自分にプレッシャーを与えてしまったため、面白くない印象を与えてしまったのではないかと反省しました。

本番では、適度に緊張しつつも、省庁の方とお話しする機会なんて滅多にないのだから、楽しんで学ぼうといった気持ちで面接を受けることができ、それがそこそこ良い評価をもらえた理由ではないかと考えています。

5.まとめ

いかがでしたか?

教養区分の第2次試験について、具体的にイメージしていただけたのではないでしょうか。

教養区分試験では、政策の「企画立案を行うための基礎的能力」があるかどうか、が見られています。したがって、1次の総合論文も、2次の企画提案・政策課題討議も、内容面の対策は共通です。

教養区分合格のカギとなる1次試験対策を中心に行いつつ、2次試験については、独自の形式に慣れる練習をしていきましょう。面接対策として「勉強」以外のいろいろな経験を積んでおくこともお忘れなく!伊藤塾はあなたのチャレンジを応援しています。

伊藤塾 公務員試験科

著者:伊藤塾 公務員試験科

伊藤塾公務員試験科は一人ひとりの学習経験や環境に応じた個別指導で毎年多くの行政官を輩出しています。このコラムでは将来の進路に「公務員」を考えている皆さんへ、仕事の魅力や試験制度、学習法など公務員を目指すための情報を詳しくお伝えしています。