弁護士×中小企業診断士の活用法7選!科目免除で短期合格もできる?
試験詳細
2025年11月24日
「弁護士として、中小企業にもっと深く関わりたい」
「企業法務や、財務会計に詳しくなりたい」
このように考えたことはありませんか?
そのための資格として注目されているのが「中小企業診断士」です。
近年、弁護士が中小企業診断士資格を取得するケースが増えてきています。法律と経営、2つの専門性を組み合わせることで、企業の状況を包括的に把握することができ、より適切な助言が行えるようになったり、他の弁護士と大きな差別化を図ることができるようになるからです。
この記事では、弁護士が中小企業診断士資格を取得するメリットや、具体的な活用シーン、弁護士に有利な科目免除制度について分かりやすく解説します。
【目次】
1.弁護士が中小企業診断士のダブルライセンスをとるメリット3つ
弁護士が中小企業診断士の資格を取得することには、主に3つのメリットがあります。
・「法律面」だけでなく「経営面」からもベストな提案ができる
・人脈を広げることができる
・自分の事務所経営にも活かせる
それぞれ具体的に見ていきましょう。
1-1.「法律面」だけではなく「経営面」からもベストな提案ができる
1つ目のメリットは、法律面だけでなく、会社の経営状態を診て、経営面においてもベストな提案ができることです。
弁護士は、「法律的に正しいか」を判断することが得意です。しかし、その答えが「会社の経営にとって本当にプラスなのか」までは分かりません。法律的に正しい答えが、経営的にもベストとは限らないからです。
しかし、中小企業診断士として経営戦略や財務会計を学べば、「その判断が会社の利益にどう影響するか」といった経営面まで深く考えられるようになります。
たとえば、契約交渉において、法律上は有利でも資金繰りが苦しい条件であれば、その経営リスクを指摘し、企業の体力に合った代替案を示せるでしょう。法律面だけでなく、もう一歩踏み込んだサポートをすることで、クライアントとより深く関わることができます。
1-2.人脈を広げることができる
2つ目のメリットは、弁護士の業務を超えた人脈を築けることです。
中小企業診断士は、企業の社長や役員、コンサルタント、金融機関の担当者といった、ビジネスの第一線で活躍する人たちと関わる仕事です。こうした繋がりは、弁護士としての仕事の幅を広げる上でも、非常に役立ちます
中小企業診断士として知り合った社長から、「会社の法律問題についても相談に乗ってほしい」と依頼されたり、金融機関と協力して会社の事業承継を円滑に進めたりといった仕事につながるケースも珍しくはありません。
中小企業診断士のネットワークで得られる人脈が、弁護士としての活躍の場も広げるきっかけとなるのです。
1-3.自分の事務所経営にも活かせる
3つ目のメリットは、中小企業診断士のスキルが、自分の法律事務所の経営にも役立つことです。
法律事務所の経営も一つのビジネスです。質の高いサービスを提供し続けるためには、経営面の知識が欠かせません。とはいえ、弁護士はあくまでも「法律の専門家」です。集客やスタッフ管理、資金繰りといった経営面の知識まで十分とは言えないでしょう。法律業務に集中するあまり、事務所経営がおろそかになっているケースは珍しくありません。
中小企業診断士の勉強では、経営戦略、マーケティング(集客)、スタッフの管理、財務会計といった知識を基本から学べます。学んだ知識を使えば、「どの分野に力を入れていくべきか」を考えるヒントが得られたり、「スタッフが成長できるような仕組み」を作ったりと、事務所経営の改善に取り組めるでしょう。
2.【弁護士×中小企業診断士】ダブルライセンスの具体的な活用シーン7選
弁護士が中小企業診断士の資格を取ると、具体的にどのような場面で活躍できるのでしょうか。ダブルライセンスの強みが発揮できる7つの活用シーンを紹介します。
2-1.経営コンサルティング
「弁護士×中小企業診断士」のダブルライセンスは、経営コンサルティングの場面で大きな力を発揮します。
たとえば、新規事業を立ち上げるケースで考えてみましょう。弁護士が得意としているのは法律面のチェックです。しかし、その事業が市場で受け入れられるのか、本当に利益を出せるのかといったビジネス面のアドバイスは専門外です。
一方、中小企業診断士は、市場の分析方法、事業計画の立て方などを学んでいます。そのため、事業を成功に導く戦略面でのアドバイスができます。
弁護士と中小企業診断士の専門性をかけ合わせることで、企業が抱える法務リスクだけでなく、「どの層に、いくらで売るべきか」「競合商品に対する強みは何か」といった、売上を伸ばすためのビジネス戦略まで一緒に考えられるのです。
法律と経営、両方の専門スキルを身につけることで、より実践的なコンサルティングが提供できるでしょう。
2-2.事業再生やM&Aの支援
企業の事業再生や、M&A支援においても、ダブルライセンスの真価が発揮されます。
これらの場面では、法律面だけでなく、資金繰りや事業の将来性、本当に立て直しできるプランか、といった経営的な判断が求められるからです。弁護士だけでは判断が難しい点を、中小企業診断士の知識が補ってくれます。
たとえば、M&Aなら、法務リスクをチェックするだけでなく、「相手の会社の本当の強みや弱みはどこか」「統合した後、どんな問題が起きそうか」を分析してアドバイスできるでしょう。事業再生でも、債務の法的整理だけではなく、「どうすれば売上を回復できるか」という具体的な改善策を一緒に考えて、金融機関に説明できます。
法律面・経営面双方の専門家として、総合的にサポートすることで、経営改善を強力に後押しできるのです。
2-3.知的財産の戦略立案
知的財産の分野でも、法律と経営の両面からのアプローチが可能になります。
弁護士は、特許や商標を取得して権利を守ったり、権利侵害が起きた時に対応したりするのは得意です。しかし、「その権利をどう活用すればもっと利益が上がるのか」、あるいは「経営戦略上、本当にその商標権が必要なのか」といった企業戦略に踏み込んだアドバイスは専門外です。
中小企業診断士のスキルがあれば、企業のブランドを重要な「会社の強み(経営資源)」と捉え、時流に合わせたブランド構築や、企業のイメージアップ戦略などが提案できます。知的財産を「守る」だけでなく、会社の成長のために積極的に「活用する」戦略作りを手伝えるのです。
2-4.中小企業の人材育成や研修
人材育成の分野でも、法律と経営の両視点からのサポートが可能です。
弁護士は、法律的な労働トラブルを防ぐための「ルール(就業規則)作り」に精通しています。しかし、「どうすれば社員のモチベーションが上がるか」「会社の目標達成のために、どんなスキルを社員に身につけてもらうか」といった人材育成については専門分野ではありません。
中小企業診断士であれば、組織論や人材マネジメントの知識も身に付けています。法律面だけでなく、社員が前向きに働ける環境づくりや、会社の成長に必要な人材を育てる具体的なプランを提案できるでしょう。
2-5.企業の資金調達のサポート
資金調達においても、成功率を高めるサポートができます。
銀行融資や補助金・助成金申請には、説得力のある事業計画書が不可欠です。しかし、弁護士は事業計画書の作成は専門外です。あくまでも、法律上、申請を代理できる権限が与えられているに過ぎません。
一方、中小企業診断士は、事業計画の立て方や、お金の流れの分析(財務会計)を得意としています。そのため、会社の強みや将来性を分かりやすく伝え、説得力のある計画書や申請書類を作る手助けができます。
たとえば、銀行に対して「この計画なら、これだけ利益が出る見込みなので、きちんと返済できます」と説明する資料作りを手伝ったり、補助金の申請書で「この事業が社会にどう役立つか」を効果的にアピールすることも容易になるでしょう。
弁護士と中小企業診断士のダブルライセンスによって、資金調達の成功率は格段に高くなります。
2-6.スタートアップ(創業)の支援
企業のスタートアップ支援においても、ダブルライセンスは大きな力を発揮します。
弁護士は会社設立の手続きや社内規則の作成など、法律面のサポートは得意ですが、ビジネスモデルの構築や創業期の資金繰り、集客(マーケティング)の知識は十分ではありません。中小企業診断士の知識があれば、こうした創業期の問題にも幅広く対応できます。創業期から、経営者のパートナーとして伴走していけば、顧問契約といった長期的な関係にも繋がりやすいです。
2-7.士業事務所に特化した経営サポート
士業に特化した経営コンサルタントとして活躍する道も考えられます。
弁護士に限らず、士業には事務所の経営や集客に苦手意識を持つ方が多いです。専門家としての腕は確かでも、お客さんをどうやって増やすか(集客)、どう差別化していくか(マーケティング)などに悩んでいるケースは珍しくありません。
一方で、士業には、士業特有の難しさがあります。関連法規・広告規制などがあるため、一歩間違えると大きなトラブルに発展しかねないからです。
まさに、こうした場面で活躍できるのが、弁護士と中小企業診断士のダブルライセンス保有者です。士業特有のルール、マーケティング、経営戦略、これら全てに精通しているため、「広告規制の範囲内で、実績をアピールしていきましょう」「新たな給与体系を導入しましょう」といったより実践的なアドバイスが提供できるからです。
経営・集客に悩む士業事務所は多いので、ニーズも非常に高い分野だといえるでしょう。
3.弁護士が中小企業診断士に挑戦する難易度
弁護士が中小企業診断士に挑戦する難易度は、どの程度なのでしょうか。
試験科目の重複や勉強時間などの観点から説明します。
3-1.中小企業診断士試験の科目
中小企業診断士試験は、第1次試験と第2次試験から構成されています。
第1次試験ではマークシート形式で7科目、第2次試験は記述式で4科目が出題されます。
◉第1次試験(マークシート形式)
| 試験科目 | 司法試験 との重複 | 科目 免除 |
| A. 経済学・経済政策 | なし | |
| B. 財務・会計 | 会社法を理解す るうえで、一部 必要となる知識 | あり |
| C. 企業経営理論 | なし | |
| D. 運営管理 (オペレーション ・マネジメント) | なし | |
| E. 経営法務 | あり ※民法、会社法 知的財産法など | あり |
| F. 経営情報システム | なし | |
| G. 中小企業経営 ・中小企業政策 | なし |
◉第2次試験(記述式)
| 司法試験 との重複 | 科目免除 | |
| A 中小企業の診断及び 助言に関する実務の事例 I (組織・人事) | なし | なし |
| B 中小企業の診断及び 助言に関する実務の事例 II (マーケティング・流通) | なし | なし |
| C 中小企業の診断及び 助言に関する実務の事例 III (生産・技術) | なし | なし |
| D 中小企業の診断及び 助言に関する実務の事例 IV (財務・会計) | ほぼなし | なし |
重複している科目は少なく、第1次試験の「財務・会計」と「経営法務」以外は、基本的にゼロからの勉強になると考えた方が良いでしょう。
ただし、司法試験で培った経験が全く活用できないわけではありません。特に第2次試験(記述式)では、高度な論理的思考力や読解力が求められます。司法試験の経験が活かせるので、比較的取り組みやすいと感じる方が多いです。
3-2.合格に必要な勉強時間
中小企業診断士試験では、一般的に1,000時間程度の勉強が必要だと言われています。1次試験対策に約800時間、2次試験対策に約200時間が目安です。
しかし弁護士であれば、これよりはるかに短い時間で合格することができるでしょう。1次試験では、後述する科目免除制度を利用できますし、2次試験でも司法試験で身に付けた論理的思考力や文章構成能力などを活かせるからです。
4.弁護士が中小企業診断士試験で利用できる科目免除
弁護士資格保有者が中小企業診断士試験を受けるときは、科目免除制度を利用できます。対象となるのは、1次試験の「財務・会計」「企業法務」の2科目です。
| 科目 | 免除の対象者 |
| 財務・会計 | 税理士法第3条第1項第3号に規定する者 (弁護士または弁護士となる資格を有する者) |
| 経営法務 | 弁護士、司法試験合格者 |
参考として、令和6年度と令和5年度の科目別合格率を確認してみましょう。
| 科目 | 令和6年度 合格率 | 令和5年度 合格率 |
| 経済学・ 経済政策 | 14.3% | 13.1% |
| 財務・会計 | 15.1% | 14.3% |
| 企業経営理論 | 39.9% | 19.8% |
| 運営管理 | 26.8% | 8.7% |
| 経営法務 | 13.2% | 25.6% |
| 経営情報 システム | 15.6% | 11.4% |
| 中小企業経営 中小企業政策 | 5.6% | 20.6% |
上記をご覧いただくとわかる通り、中小企業診断士の1次試験の科目ごとの合格率は毎年大きく変動しています。どの科目の難易度が高く、どの科目の難易度が低いということは一概に言えません。
ただし、科目免除措置によって有利な状態で受験できることも事実です。
中小企業診断士試験は、決して簡単に合格できる試験ではありませんが、日々の業務が忙しく学習時間の捻出が難しい弁護士の方でも、受験指導校などで効率的な学習を進めていけば、半年程度の勉強期間で合格することも難しくないでしょう。
5.まとめ
記事のポイントをまとめます。
1.弁護士が中小企業診断士資格をとるメリットは3つ
法律知識に加え、経営的な視点を持つことで、①クライアントへの提案力が向上し、②経営者などの新たな人脈が広がり、③自身の事務所経営にも知識を活かせる、という3つのメリットがあります。
2.ダブルライセンスの活用できるシーンは多岐にわたる
弁護士と中小企業診断士のダブルライセンスは、経営コンサルティング、事業再生・M&A支援、知的財産戦略、人材育成、資金調達サポート、スタートアップ支援、さらには士業専門の経営コンサルティングなど、様々なシーンで活用できます。
3.試験は法律以外の知識が中心だが、弁護士に有利な面も
中小企業診断士試験は経営や財務など法律以外の科目が中心です。
ただし、弁護士は「財務・会計」「経営法務」の免除を受けられます。また、司法試験で培った論理的思考力も、2次試験で大いに発揮されます。
4.弁護士なら、短期間での合格も十分できる
中小企業診断士試験は、一般的に1000時間程度の勉強が必要と言われています。
しかし弁護士なら、科目免除などのアドバンテージにより、平均よりはるかに短い勉強時間(例えば半年程度)でも合格を目指せます。
以上です。
将来のキャリアアップや自己成長を目指す方は、ぜひ中小企業診断士試験に挑戦してみてください。
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