
不動産資格の三冠・四冠とは?年収や仕事内容について解説
キャリア
2025年08月29日


「宅建士」「マンション管理士」「管理業務主任者」などの不動産に関する主な国家資格は、従来不動産資格の三冠資格(トリプルクラウン)と呼ばれていましたが、現在では、2021年度から国家資格となった「賃貸不動産経営管理士」を加えて四冠と呼ばれています。
それぞれ専門性の高い分野に精通したスペシャリストとして活動できるので、四冠資格全てを持っている人材は不動産業界でも重宝されます。
この記事では不動産資格における三冠・四冠のそれぞれの仕事内容や年収、取得難易度や取得する順番などについて、分かりやすく解説していきます。不動産業界に興味がある、不動産を所有していて管理に関する資格を取得したいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
※宅建士の資格の詳細については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
→【完全版】宅建とは?試験の詳細や宅建士の仕事内容など資格のすべてを徹底解説!
【目次】
1.不動産資格の三冠・四冠とは?それぞれの仕事内容
不動産資格における四冠とは、次の4つの資格のことを指します。
・宅地建物取引士(宅建士) ・マンション管理士(マン管) ・管理業務主任者(管業) ・賃貸不動産経営管理士(賃貸管理士) |
従来は「三冠」と呼ばれていましたが、2021年に国家資格となった賃貸不動産経営管理士を加えて、近年は「四冠」と呼ばれています。それぞれ不動産に関する国家資格であることは共通していますが、取り扱う業務内容が異なります。
ここからは、各資格の特徴や業務内容についてご紹介していきます。
1-1.宅地建物取引士(宅建士)
不動産資格の中で最もメジャーな資格である宅地建物取引士(通称宅建士)は、公正な不動産取引を実現するために重要な役割を果たす、不動産取引のスペシャリストです。
宅建士の主な仕事は、不動産の売買や賃貸物件のあっせんなどを行う場面で、顧客に対してその不動産に関する重要事項を説明することです。専門知識を有している不動産会社に対し、一般の顧客はそれほど多くの知識を持っている訳ではありません。情報格差から顧客に不利な取引にならないようにするためには、当該不動産に関する情報や契約に関する事項について説明できる専門家が必要不可欠となります。
たとえば、不動産業を営む場合には、従業員5人のうち少なくとも1人は宅建士の資格を有することが義務付けられています。また、不動産取引における重要事項の説明以外にも、重要事項説明書や契約書への記名・押印については、宅建士の独占業務となっています。
高額な取引になる不動産取引の場面において、不動産取引について熟知している宅建士の存在は、需要が高いと言えるでしょう。
※宅建士の資格の詳細については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→【完全版】宅建士とはどんな資格?仕事内容やメリットなど宅建士の魅力を徹底解説!
1-2.マンション管理士(マン管)
マンション管理士とは、マンションの維持・管理に関するコンサルティング業務を生業とする専門家です。マンションの管理者や区分所有者等からの相談を受けて、助言や指導、その他の援助を行う、マンション管理のスペシャリストです。
マンション管理士の主な業務内容は、大きく次の5つに分けることができます。
・マンションの維持や管理に関する相談業務
・マンションの修繕工事に関する計画立案および進行
・マンションの管理規約の作成および変更
・マンションの管理費や修繕積立金の管理
・住民同士のトラブル解決に向けた対応
分譲マンションでは今後修繕が必要になるマンションも多く、また、新築のマンションも年々増加していることを考えると、今後、マンション管理士の需要も増加していくと考えられます。
住民の立場に立って問題を解決する資格なので、コミュニケーションスキルが求められる職種です。そういう意味では、AI化によって仕事を奪われにくい資格の1つだと言えるでしょう。
1-3.管理業務主任者(管業)
管理業務主任者は、マンションの管理業者が、管理組合に対して管理委託契約に関する重要事項を説明したり、管理事務の報告などを行う際に必要となる国家資格です。分譲マンションでは、マンションの住民同士で管理組合を形成し、マンションの管理を住民全員で行うケースが一般的です。
一方で、不動産に関する専門知識を持っていないにもかかわらず、マンションの維持・管理を適切に行うのは困難であるケースも多いでしょう。そのため、マンションの管理については、管理会社に委託するケースが多いですが、その際に、管理会社の立場から重要事項について説明するのが、管理業務主任者となります。
契約内容に関する重要事項の説明や管理業務のチェックおよび管理組合への報告などが主な業務です。なお、住民側からマンション管理に携わるマンション管理士と、管理者側からマンション管理に携わる管理業務主任者の親和性は非常に高いため、ダブルライセンスを目指す人が多い資格でもあります。
1-4.賃貸不動産経営管理士(賃貸管理士)
賃貸不動産経営管理士は、賃貸不動産の管理業務に関するエキスパートです。2021年に国家資格となったことから、不動産資格の三冠に加えて新たに四冠資格と呼ばれるようになりました。
マンションやアパートなどの賃貸不動産に関する管理業務を行う賃貸不動産経営管理士ですが、主に次のような業務を行います。
・賃貸不動産の維持・管理業務
・入居者の募集から契約までの対応
・クレーム対応やトラブルの仲裁など、住民とオーナーの間を取り持つ業務
・賃貸不動産の経営に関するアドバイス など
賃貸住宅管理業を営む場合には、1事業所に1人以上の「業務管理者」を設置する義務があり、この業務管理者として認められるためには、賃貸不動産経営管理士である必要があります
(※注:現時点では、指定講習(賃貸住宅管理業業務管理者講習)を修了した宅建士も業務管理者としての登録が可能となっていますが、あくまで暫定的措置であり、将来的には賃貸不動産経営管理士に1本化されるのではないかと言われています。)
賃貸物件が増加し、その管理業務への需要も高まっていることもあり、賃貸不動産経営管理士のニーズは今後も増していくと考えられます。
※賃貸不動産管理士の試験日等に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。
→【2024年度】賃貸不動産経営管理士の試験日は?申込方法・講習・過去問なども解説
※効率よく確実に「賃貸不動産経営管理士試験」に合格したい方におすすめ!
→ 賃貸不動産経営管理士 合格講座|伊藤塾
2.不動産資格四冠(三冠)の年収
不動産資格の四冠(三冠)それぞれの具体的な年収は公表されていないため、正確な数字はわかりません。一方で、少し古いデータにはなりますが、マンション管理士の業務についてのアンケートによれば、マンション管理士を本業としている人について、マンション管理士としての業務に伴う過去1年間の年間売上高は、400万円以上が18.8%、100万円以上400万円未満が30.4%となっています。
一方で、1,000万円以上と回答した人も5.3%程度いることから、働き方次第で稼げる仕事であることがわかります。
参照: マンション管理士の業務についての アンケート調査結果の概要|公益財団法人マンション管理センター
他の資格についても同様で、働く会社の規模や独立開業するかどうかにより年収は異なります。サラリーマンとして勤務する場合は、資格手当が支給される企業も多いため(金額は月1万円〜5万円など企業によって様々)、比較的年収が高めとなることが多いようです。
また、事業所において設置義務が課せられている宅建士や賃貸不動産経営管理士は、市場のニーズが強く、ミドル世代であっても未経験から好条件での転職が可能であることも大きな魅力といえます。さらに、ダブルライセンスやトリプルライセンスを取得し付加価値を上げることにより年収を上げたり、独立開業へステップアップするなど、年収1,000万円を超えることも夢ではありません。
※宅建士の年収については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 宅建士の年収とメリットは?女性にもおすすめな理由を徹底解説
※宅建士のダブルライセンスについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 宅建士とのダブルライセンスがおすすめな資格9選!独立に役立つ資格もご紹介
3.不動産資格四冠(三冠)の難易度は?合格率はどれくらい?
不動産資格四冠は、それぞれ不動産に関する資格であることは共通していますが、出題される試験範囲や出題難易度は異なります。人によって得意不得意があるので難易度を一概に決めることはできませんが、ここでは、令和6年度に実施された各試験の合格率や出題範囲を基に、資格取得の難易度を探っていきます。
資格 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 合格基準点 |
宅地建物 取引士 | 241,436人 | 44,992 人 | 18.6% | 50問中37問 ※登録講習修了 者については、 45問中32問 |
マンション 管理士 | 10,955人 | 1,389人 | 12.7% | 50問中37問 ※試験の一部免除 者については、 45問中32問 |
管理業務 主任者 | 14,850人 | 3,159人 | 21.3% | 50問中38問 ※試験の一部免 除者については、 45問中33問 |
賃貸不動産 経営管理士 | 30,194人 | 7,282人 | 24.1% | 50問中35問 ※管理講習修了 者については、 45問中30問 |
資格 | 出題範囲 |
宅地建物 取引士 | ・土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、 構造及び種別に関すること ・土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する 法令に関すること ・土地及び建物についての法令上の制限に関すること ・宅地及び建物についての税に関する法令に関すること ・宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること ・宅地及び建物の価格の評定に関すること ・宅地建物取引業法及び同法の関係法令に関すること |
マンション 管理士 | ・区分所有法など法令に関する科目 ・管理組合の運営に関する科目 ・建築基準法等・建築設備に関する科目 ・マンション管理適正化法に関する科目 |
管理業務 主任者 | ・法令系(民法・区分所有法・標準管理規約、マンション 管理適正化法等) ・建設・設備系(標準管理委託契約書、会計等) ・管理実務系 |
賃貸不動産 経営管理士 | ・管理受託契約に関する事項 ・管理業務として行う賃貸住宅の維持保全に関する事項 ・家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理に関する事項 ・賃貸住宅の賃貸借に関する事項 ・法に関する事項 ・管理業務その他の賃貸住宅の管理の実務に関する事項 |
参照:
宅建試験|一般財団法人 不動産適正取引推進機構
マンション管理士試験について|公益財団法人 マンション管理センター
管理業務主任者 試験|一般社団法人 マンション管理業教会
賃貸不動産経営管理士試験|一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会
各試験の合格率を比較してみると、賃貸不動産経営管理士が24.1%で1番高く、マンション管理士が12.7%で1番低くなっていることがわかります。ただし、マンション管理士の受験者数は4つの試験の中で最も低くなっているため、他の試験に比べて合格率が変動しやすいことを頭に入れておく必要があります。
どの試験も合格基準点が7割程度なので、受験生が落とさない基本的な問題については、確実に正解することが求められていると言えるでしょう。
難易度が気になるようであれば、まずは1度各試験の過去問を解いてみることをお勧めします。
※宅建士の難易度については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 宅建士試験の合格率はなぜ低い?合格点や難易度をデータをもとに徹底解説!
※賃貸不動産経営管理士の難易度については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 賃貸不動産経営管理士の難易度は?合格率や合格点・合格ラインを解説
4.不動産資格四冠(三冠)を取得する順番は?
不動産資格四冠を制覇しようと考えている場合、どの資格から取得すべきか迷うかもしれません。基本的にどの資格から取得しても問題ありませんが、現在及び今後の仕事で必要になる順に取得していくのが良いでしょう。
ただし、四冠資格の中でも汎用性の高い宅建士については、できれば最初に勉強を開始しておくことをお勧めします。宅建で出題される民法は、初学者が学ぶ場合にはある程度の時間がかかるケースが多く、先に学んでおけば、各種法令の基礎を学ぶことができるからです。また、マンション管理士試験と管理業務主任者試験においては、どちらかの試験に合格していると、もう一方の試験問題が5問免除されるという制度が存在しています。
この2つの資格を取得したい場合には、両方の過去問を解いてみて、得意な試験の方に先に合格しておき、苦手な試験の方で5問免除を受けるという方法がおすすめです。
5.短期間での合格を目指すなら受験指導校の有効活用を
不動産資格四冠をスムーズに取得するためには、効率よく知識を身につけられる受験指導校の講義を活用するのがお勧めです。
合格までに必要な勉強時間は人によって異なりますが、例えば宅建士の場合、合格までに少なくとも200〜300時間程度の勉強時間が必要だと言われています。専業受験生で勉強時間を確保できる場合は別にして、社会人で働きながら資格取得を目指す場合には、効率の悪い勉強をしていては、いつまで経っても試験に合格できない可能性が高いです。
その点、受験指導校では、質の高い講義と合格に特化したテキストを用いて学習を進めていくので、本人の努力次第では、短期間での合格も可能となります。
自分1人で勉強を進めていると、勉強の進捗度合いも分からず、試験までモチベーションを維持させることも難しい場合が多いです。もし、不動産資格四冠をスムーズに取得して、いち早く次のステップに進みたいと考えているのであれば、受験指導校を活用することを検討してみてください。
※宅建士試験に合格するのに必要な勉強時間については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→【500時間必要?】宅建試験の合格に必要な勉強時間について徹底解説!
※こちらも併せてお読みください。
→ 宅建の通信講座はなぜ伊藤塾がおすすめなのか?宅建士合格講座の魅力を徹底解説
6.まとめ
不動産資格三冠とは、「宅地建物取引士(宅建士)」「マンション管理士(マン管)」「管理業務主任者(管業)」のことをいい、そこに2021年に国家資格となった「賃貸不動産経営管理士(賃貸管理士)」を加えて不動産資格四冠と呼ばれています。
それぞれが不動産に関するスペシャリストで、専門性の高い知識をもって管理者・オーナーと顧客との間を取り持ちます。
試験範囲は、それぞれの業務内容に即した科目になっており、難易度の感じ方は人によって異なります。
専門分野に関する資格であることから、初学者にとっては、勉強のコツを掴むまでにある程度時間がかかるかもしれません。
資格取得に時間をかけず、一日も早く実務の世界で活躍するためにも、受験指導校の講義を活用して、得点するためのコツや基礎知識を効率よく身につけることをお勧めします。
「今年はさらにバージョンアップしたコースをご用意!!「2025年合格目標 宅建士合格講座」 のご紹介です!」