行政書士と弁護士の違い7選!できること・できないことを業務別に解説

基本情報

2025年09月11日

行政書士と弁護士の違いをはっきり説明できますか?

「この場合はどちらの仕事になるんだろう…?」
「今から目指すなら、自分にはどちらが合っている?」

こんな風に迷ってしまうことも多いのではないでしょうか。

実は制度上、弁護士は全ての法律事務(行政書士の独占業務を含む)を扱えます。しかし、「制度上できる」ことと「得意である」ことは必ずしも一致しません。それぞれの専門性や役割には、明確な違いがあるのです。

そこでこの記事では、行政書士と弁護士を比較しつつ、基本的な仕事内容や業務範囲の違い、向いている人の特徴などを解説します。

この記事を最後まで読めば、行政書士と弁護士の違いが明確になり、あなたにとって最適な選択ができるようになるはずです。行政書士と弁護士の仕事に興味がある方は、是非ご一読ください。

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1.行政書士と弁護士の関係

行政書士と弁護士は、どちらも法律に関わる専門家ですが、仕事内容には明確な違いがあります。それぞれの仕事と、両者の関係性を説明します。

1-1.行政書士の仕事

行政書士は、「法律文書を作成するプロフェッショナル」です。

仕事内容は、行政書士法第1条の2によって、次のように定められています。

(業務)
第一条の二 「行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とする」

行政書士の具体的な仕事には、建設業許可や飲食店営業許可などの許認可申請の代理、契約書の作成、遺言書の作成などがあります。

行政書士が扱える書類の数は、9,000種類を超えているとも言われており、建築、相続、外国人の国際業務など特定の分野に特化して専門性を高める人も多いです。

※行政書士の仕事は次の記事で詳しく解説しています。

1-2.弁護士の仕事

一方、弁護士は、法律事務全般を取り扱うことができる「法律の専門家」です。

仕事内容は、弁護士法第3条によって定められています。

(弁護士の職務)
第三条 「弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする」

裁判はもちろん、契約交渉、法律相談、企業法務、行政庁への不服申し立てなど、法律に関するあらゆる業務を行えるのが弁護士の大きな特徴です。業務範囲に法的な制限がほとんどないことも、他の士業との違いといえるでしょう。

※弁護の仕事は、次の記事で詳しく解説しています。

1-3.両者の関係を定めた「弁護士法第72条」

弁護士と行政書士の関係を定めているのが、「弁護士法第72条」です。

この条文は、弁護士資格のない者(行政書士や司法書士を含む)が、報酬を得る目的で法律事務を行うことを禁止しています。

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士法第72条 「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は「他の法律に別段の定めがある場合」は、この限りでない。」

たとえば、行政書士が示談交渉などを代理することは、ここで禁止されている「代理」や「和解」といった法律事務にあたるので違法となります。

一方で、行政書士が行う「書類作成業務」は、行政書士法で定められているので、「他の法律に別段の定めがある場合」に該当します。そのため行政書士は、許認可申請・書類作成などに関する法律事務のみ、例外的に業務として扱えるのです。

2.【業務別】行政書士と弁護士ができることの違い

では、具体的にどのようなシーンで違いが出るのでしょうか。

ここからは、日常生活やビジネスでよく見られる7つの場面を取り上げ、それぞれのケースで弁護士と行政書士がどこまで関与できるのかを解説します。

業務内容行政書士ができること弁護士ができること
契約の締結契約書作成のみ契約書作成
内容の法的チェック
相手方との交渉代理
トラブル時の訴訟など
相続・遺言遺産分割協議書
遺言書作成
相続財産
相続人調査など
相続人間の交渉
遺産分割調停
審判の代理
遺留分侵害額請求など
離婚・男女
トラブル
離婚協議書の作成法律相談、交渉
離婚調停
慰謝料・養育費の請求
など
企業法務会社設立手続き
(定款作成など)
M&A、労働問題、債権
回収、契約紛争・訴訟
対応、事業再生など
許認可申請建設業、飲食業、運送
業など様々な分野に対
応できる
法律上はできるが、
実際に扱うことは少ない
交通事故
などの対応
示談書の作成
事故状況報告書の作成
自賠責保険の被害者請
求書類作成など
加害者や保険会社との
示談交渉
その後の訴訟など
法律相談書類作成業務に必要な
範囲での相談のみ
あらゆる法律問題につ
いての法的判断やアド
バイスが可能。

2-1.契約の締結

契約を締結する場面では、行政書士と弁護士で対応できる範囲が異なります。

行政書士は、契約書の作成のみ扱うことができます。ただし、契約の内容について相手方と交渉したり、法的にアドバイスしたりすることはできません。弁護士法第72条で禁止される「法律事務」に該当する可能性があるからです。

一方、弁護士は契約書の作成はもちろん、契約内容を法的にチェックし、依頼者の代理人として相手方と条件交渉を行うことも可能です。さらに、契約に関してトラブルが発生した場合の訴訟対応まで、一貫して対応することができます。

2-2.相続・遺言

相続手続きや遺言書の作成においても、行政書士と弁護士の業務範囲は異なります。

行政書士は、遺産分割協議書や遺言書の作成、相続関係説明図の作成、相続財産・相続人調査など、相続に関する書類作成とその前提となる調査業務を行うことができます。しかし、相続人間で争いが生じている場合に法的なアドバイスをしたり、交渉したりすることはできません。扱うことができる相続業務は、あくまでも紛争性のない事案に限られます。

一方、弁護士は、相続に関する全ての手続きに対応できます。遺言書の作成・相続人調査はもちろん、相続人間の交渉、遺産分割調停や審判の代理、遺留分侵害額請求など、紛争解決を含むあらゆる相続手続きを扱えます。

※相続で行政書士ができることは、次の記事で詳しく解説しています。

2-3.離婚・男女トラブル

離婚や男女間のトラブルに関する手続きでも、対応できる範囲に違いがあります。

行政書士は、当事者間で合意が成立している場合に、その合意内容(財産分与、養育費、慰謝料など)をまとめた離婚協議書を作成することができます。ただし、離婚について法律的にアドバイスしたり、交渉したり、離婚調停の代理人になったりすることはできません。

一方で弁護士は、離婚・男女トラブルに関する法律相談はもちろん、相手との交渉、離婚調停、慰謝料・養育費などの請求など、あらゆる法的対応を行うことができます

2-4.企業法務

企業活動に関する法律事務(企業法務)においても、両者の役割は異なります。

行政書士は、会社の設立手続き(定款作成・認証など)、事業に必要な許認可の申請の代理、紛争性のない契約書の作成などが主な役割です。主に、中小企業を対象に、許認可・補助金申請などと合わせて、ビジネスの立ち上げなどで活躍するケースが多いです。

一方で、弁護士はこれらの業務に加えて、M&A(企業の合併・買収)に関する法的アドバイスや、労働問題への対応、債権の回収、契約トラブルや訴訟対応、事業再生など、企業活動全般に関わる法律問題に対応できます。大企業を相手に、企業の専任弁護士や顧問弁護士として活躍する人もいます。

2-5.許認可申請

ビジネスを行うために必要な官公署への許認可申請は、行政書士が得意とする分野です

建設業の許可、宅地建物取引業免許、飲食店の営業許可、風俗営業許可、古物商許可、産業廃棄物処理業許可、運送業許可など、さまざまな許認可申請を扱っており、専門的なノウハウを有しています。

弁護士も、法律上は許認可申請ができますが、実際に扱っているケースは少ないです

ただし、申請が不許可となった場合に、その処分に対して不服を申し立てる審査請求や、処分の取り消しを求めて裁判所に行政訴訟を提起するときは、弁護士が代理人として活動することになります。

2-6.交通事故などの対応

交通事故などのトラブルが発生した場合も、弁護士と行政書士では対応できる範囲が異なります。

行政書士は、当事者間で合意した内容をまとめる示談書や、事故状況報告書といった事実証明に関する書類を作成することができます。しかし、交通事故の相手方と示談交渉をすることは、弁護士法第72条で禁止されている「代理」や「和解」といった法律事務に該当するためできません。

一方、弁護士は、当事者に代わって交通事故の相手方や保険会社と示談交渉をすることができます。交渉が不調に終わった場合には、訴訟などの法的手続きに移行することも可能です。

2-7.一般的な法律相談

法律相談についても、対応できる範囲が異なります。

行政書士は、書類作成等の業務に必要な範囲でのみ、依頼者からの相談に乗ることができます。例えば、「相続手続きの一般的な内容を説明する」、「この遺言書の文言で問題がないかを確認する」といった相談には応じられます。しかし、個別具体的な事案について法律的な見解を示したり、法的なアドバイスを行ったりすることは、弁護士法第72条に抵触する可能性があります。

一方で、弁護士は、あらゆる法律問題について、具体的な事案に対する法的判断やアドバイスを行うことが可能です。紛争の解決手段や法律的なリスク、その後の見通しなどについて相談に乗ることができます。

3.なぜ行政書士が必要なのか

ここまで、弁護士と行政書士の業務範囲の違いを説明しました。

弁護士は法律事務を全て扱える一方で、行政書士は限られた業務しか扱えないことがお分かりいただけたと思います。では、制度上、弁護士だけで全ての法律事務ができるのに、なぜ行政書士が必要なのでしょうか?

ここからは、社会から行政書士が求められる理由を説明します。

3-1.行政書士の方が専門性が高い分野がある

ほぼ同じ内容の許認可申請を、弁護士と行政書士に依頼するとします。

依頼主の条件、タイミング、行政庁の担当者などの条件が同じなら、スムーズに許可されやすいのはおそらく行政書士に依頼したケースでしょう。

行政書士のほうが、許認可申請についての知識や経験、行政庁とのやり取り、許認可を得るための専門的なノウハウを圧倒的に有しているからです。

確かに、弁護士も許認可申請を扱うことはできますが、行政書士ほどの専門性はありません。中には許認可申請に詳しい弁護士もいますが、全体として行政書士のほうが精通しているケースが多いです。

3-2.「制度上扱える」ことと、「実際にできる」ことは違う

そもそも、「制度上扱える」ことと、「実際にできる」ことは全く違います

サッカーなどのスポーツでイメージするとわかりやすいでしょう。例えば、フォワードとして世界トップクラスの実力を持つサッカー選手が、ゴールキーパーとしても同じように高いレベルでプレーできるとは限りません。

法律の世界も同様です。弁護士は、制度上あらゆる法律事務を扱えますが、実際には得意・不得意があります。訴訟や示談交渉に強い弁護士でも、許認可申請の実務経験が少なければ、スムーズに業務を進めることは難しいです。

一方、行政書士は書類作成や行政手続きに特化し、その分野での専門性を日々磨いています。「制度上」は職域が共通していても、「実務」ではそれぞれの得意分野で役割分担がされているのです。決して、「弁護士がいれば、行政書士は必要ない」といった話ではないのです。

4.行政書士と弁護士はどちらを目指すべき?

ここまで弁護士と行政書士の業務内容や役割の違いを解説してきました。

これらの違いを踏まえた上で、法律家としてどちらの資格を目指すべきか、考えてみましょう。

4-1.行政書士が向いている人

行政書士が向いているのは、次のようなタイプの人です。

・特定の専門分野を深く追求したい人
・手続きや書類作成を通じて人の役に立ちたい人
・独立開業を目指したい人

行政書士の業務は許認可申請や会社設立、相続関連など多岐にわたりますが、多くの行政書士は特定の分野に特化して専門性を高めています。そのため、特定の分野のエキスパートとして活躍したい人には適しているでしょう。

また、紛争解決の最前線に立つのではなく、予防法務や許認可申請、補助金などに力を入れたいと考えている人にも向いている資格です。

※行政書士が向いている人の特徴は、次の記事で詳しく解説しています。

4-2.弁護士が向いている人

弁護士が向いているのは、次のようなタイプの人です。

・幅広い法律問題に携わりたい人
・紛争解決の最前線で活躍したい人
・論理的思考力や交渉力を活かしたい人

弁護士は、民事・刑事・企業法務など、社会で起こるあらゆる法律問題を扱うことができます。困っている人の代理人として相手方と交渉したり、法廷で主張を展開したり、法律家として紛争解決に直接貢献したいと考えている人に適性があるでしょう。法律の専門家として社会に貢献できる実感を得やすく、やりがいも非常に大きい資格です。

ただし、仕事柄、常に紛争の渦中に身を置くことになります。争いごとが苦手な人はストレスを感じやすい側面もあるかもしれません。

※弁護士が向いている人の特徴は、次の記事で詳しく解説しています。

5.行政書士試験と司法試験の違い

行政書士試験と司法試験の違いも見ていきましょう。

「受験資格」「出題される科目」「勉強時間や合格率」の3つの観点から説明します。

5-1.受験資格

行政書士試験と司法試験の最も大きな違いが、「受験資格の有無」です。

行政書士試験には、受験資格がありません。学歴や年齢に関係なく、日本国籍を有する人であれば誰でも受験できます。未経験から法律職にキャリアチェンジを考える社会人にとっても、挑戦しやすい資格です。

一方、司法試験は「法科大学院を修了した人」か「司法試験予備試験の合格者」だけが受験できます。社会人から目指す場合、まずは司法試験予備試験に合格して、その後司法試験を受験するケースが一般的です。

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5-2.出題される科目

出題される科目にも明確な違いがあります。

行政書士試験では、「行政法、憲法、民法、商法(会社法)、一般知識」などが出題されます。特に「民法・行政法」の配点が高く、この2科目を攻略することが合格のカギを握っています。

一方、司法試験では、行政書士試験よりも広範な法律科目が問われます。「憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法」の7科目は必須であり、さらに選択科目も加わります。短答式も出題されますが、論文式問題の配点が高いため、より実践的な法的思考力が求められる試験です。

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5-3.難易度・合格率

難易度にも、大きな差があります。

行政書士試験、司法試験の直近3年間の合格率は次のとおりです。

 行政書士
試験
司法試験(予備試験)
令和6年12.90%42.13%(3.57%)
令和5年13.98%45.34%(3.58%)
令和4年12.13%45.52%(3.63%)

(出典:(一財)行政書士試験研究センター法務省(司法試験の結果について)法務省(司法試験予備試験の結果について)

合格率だけ見れば、司法試験の方が高いですが、司法試験はそもそも受験資格を得ること自体が難しい試験です。

法科大学院修了ルートの場合、法科大学院で2年間(既修者)もしくは3年間(未修者)学ぶ必要があります。また、予備試験ルートの場合、最終合格率は4%前後、予備試験合格に至るまでに数年かかることも多い難関試験です。

受験するまでの道のりを含めると、司法試験の方が圧倒的に難しい試験だといえるでしょう。

そのため、法律家への道を、行政書士→司法書士→弁護士(司法試験)と徐々にステップアップしながら挑戦を進めていく人も少なくありません。

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6.まとめ

記事のポイントをまとめます。

1.行政書士と弁護士の業務範囲には明確な違いがある
行政書士は、「書類作成のプロフェッショナル」として、官公署に提出する書類や権利義務に関する書類の作成を得意としています。一方、弁護士は「法律の専門家」として、訴訟代理から法律相談まであらゆる法律事務を扱っています。両者の関係は弁護士法第72条によって明確に区分されています。

2.行政書士の方が専門性が高い分野もある
弁護士は法律上あらゆる法律事務を扱えますが、許認可申請などは行政書士の方が専門性が高いケースも多いです。「制度上できる」ことと「実際にできる」ことは違うため、「弁護士がいれば、行政書士は必要ない」といった話ではありません。

3.行政書士と弁護士はそれぞれ向いている人が異なる
行政書士は特定分野の専門家として活躍したい人や、予防法務に力を入れたい人に向いています。一方、弁護士は幅広い法律問題に携わりたい人や、紛争解決の最前線で活躍したい人、論理的思考力や交渉力を活かしたい人に適しています。

4.試験の難易度にも大きな違いがある
行政書士試験は受験資格がなく誰でも挑戦できますが、司法試験は法科大学院修了者か司法試験予備試験合格者のみが受験できます。試験科目も司法試験の方が多く、難易度は司法試験の方が圧倒的に高いです。

以上です。

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伊藤塾 行政書士試験科

著者:伊藤塾 行政書士試験科

伊藤塾行政書士試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの行政書士試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、行政書士試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。