法務で働きたい人が取るべき資格5選!実務で求められるスキルも紹介
キャリア
2025年12月11日
「法務部への転職に、資格は必須?」
「未経験から法務を目指すには、どの資格を取ればいいの?」
法務へのキャリアチェンジを目指している方の中には、こうした疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。専門性が高い職種だけに、「弁護士のような資格がないと無理なのでは?」とハードルを感じている人もいるでしょう。
結論から言うと、企業の法務部で働くために資格は必須ではありません。
ただし、未経験者がチャンスを掴むためには、資格で「法的な知識」と「本気で学ぶ姿勢」を証明できることが、大きな武器になります。
この記事では、法務への転職・異動を有利に進めるための資格を、予防法務系・知財系に分けて具体的に解説します。さらに、資格を取るだけでは不十分な、実務で活躍するために必要な力についても紹介します。
自分に合った資格を見つけて、法務への第一歩を踏み出しましょう。
【目次】
1. 企業の法務部で働くための必須資格はない
企業の法務部で働くために、必須となる資格はありません。
法務部の担当者が扱うのは、契約書のチェックやリスク管理、社内規定の整備、コンプライアンス体制の構築といった「予防法務」が中心だからです。これらの業務は、弁護士をはじめとした士業の独占業務ではないため、資格がなくても扱えます。
ただ、今から法務へのキャリアチェンジを目指したり、法務としてキャリアアップしていくなら、法律資格を目指して勉強することは間違いなく有利に働きます。
実際に伊藤塾の塾生の中には、法律系の資格を取って未経験から法務部へ異動した人、あるいは法律資格の学習経験を活かして企業の法務部へ転職した人などが複数います。
司法書士になって、企業内法務部で活躍!
◉鈴木 裕摩さん (司法書士試験合格者)
司法書士試験合格後は司法書士事務所に勤務する合格者が多いのですが、会社勤めをしながら勉強していた私は、合格後も勤務先を変えることなく、現在は法務部で司法書士の資格を活かしています。一般法務や契約書のレビュー、会社法に関する相談も頻繁にあり、今まで以上に多くの部署に喜ばれる仕事をしています。
司法試験の学習経験を活かして、企業の法務部門へ就職
◉矢板 德子 さん(元伊藤塾塾生「司法試験入門講座など」)
弁護士になりたくて法律の勉強をはじめましたが、勉強を続けるうちに、「本当に自分がやりたいことは弁護士でしか実現できないことなのか?」という思いを持つようになりました。
もちろん、弁護士になってやりたいことがある方は徹底してその道を追及していけばいいかと思います。私は早く社会に出て自立して生活を送りたいという思いの方が強くなり、就職という選択をしました。
1-1. 法務担当者と弁護士の違い
稀に、「法務の仕事=弁護士資格が必要」といったイメージを持っている方もいますが、法務担当者と弁護士ではそもそも求められる役割が異なります。
あくまでもざっくりとしたイメージですが、次のように考えると分かりやすいです。
法務担当者 = 「紛争を予防」するのが仕事
弁護士 = 起こってしまった「紛争を解決」するのが仕事
このように役割が違うため、一般的な法務担当者を目指すのであれば、司法試験に合格する必要はありません。
2. 法務部への就職でアピールするなら「予防法務」に強い資格がおすすめ
第1章でお伝えしたとおり、企業の法務部が担うメインの業務は、紛争を未然に防ぐ「予防法務」です。そのため、就職や転職の面接でアピールするなら、この予防法務に直結する知識を証明できる資格が効果的です。
2章では、数ある法律系資格の中でも、特に企業の法務部と相性が良く、採用担当者からの評価につながりやすい資格を3つ紹介します。
● 行政書士
● 司法書士
● ビジネス実務法務検定試験
それぞれ見ていきましょう。
2-1. 行政書士
行政書士は、本格的な法律系国家資格試験の中でも登竜門のような位置づけにある資格です。
法務未経験者が最初に目指すのに適しており、
- 一般社会のもっとも基本的なルールである「民法」
- 企業法務の基本となる「会社法(商法)」
- 許認可申請など行政機関との関係を規律する「行政法」
などがすべて試験科目に含まれているため、企業法務の基礎が身につきます。
特に、法務部の中心的な業務となる契約書の作成・チェックなどでは、行政書士の専門性を大いに発揮できるでしょう。
弁護士や司法書士に比べ、働きながら短期合格を目指しやすい点も大きなメリットです。知名度の高い国家資格なので、社会的な信用も抜群に高いです。
受験資格: なし
試験科目: 民法、商法(会社法)、行政法、憲法など
取得難易度:★★★☆☆
学習期間の目安: 6ヶ月〜1年程度
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2-2. 司法書士
司法書士は、企業法務のスペシャリストとして活躍できる国家資格です。
会社法に精通しており、企業の設立や役員変更に必要な登記手続き、株主総会の運営、M&A(企業の合併・買収)や事業承継など、さまざまな場面で専門性を発揮できます。
合格するには1〜3年程度の勉強が必要ですが、「実務家登用試験」ともいわれており、試験対策として勉強する内容がそのまま実務で役立つと話す人が多くいます。
◉穗坂 裕之さん(司法書士試験合格者)
実際の実務で役立つかというと、これが結構そのまま役立つのです。もちろん実務をするための新たな知識は絶対に必要です。しかし、司法書士試験で勉強したことがなんのひねりもなく実務の知識になることが当たり前のようにあります。そんな時は、条文や先例集を調べる前提で伊藤塾のテキストを開くことがありますし、基本的な知識を確認するためにテキストを見直すこともあります。
司法書士は「登記の専門家」というイメージが強いですが、法務としてのキャリア形成にも役立つため、これから法務への就職・転職を目指す人はもちろん、すでに法務で働いていてキャリアアップを目指す人にもおすすめの資格です。
受験資格: なし
試験科目: 民法、商法(会社法)、不動産登記法、商業登記法、民事保全法、民事執行法など
取得難易度: ★★★★★
学習期間の目安: 1年〜3年程度
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2-3. ビジネス実務法務検定試験
ビジネス実務法務検定試験は、ビジネスパーソンとして必要な法律知識を広く浅く身につけたい人に向けた民間検定です。東京商工会議所が主催しており、多くの企業で推奨資格として採用されています。
この検定の特徴は、実践的な事例問題を通じて、日常業務で起こりうる法的リスクへの感度を養える点にあります。「この法律はどういう意味なのか」「この契約書にサインしていいのか?」といった、法務の現場で基本となるスキルを磨けます。
2級以上であれば一定の評価対象になりますが、就職・転職への影響は、国家資格と比べると限定的です。ただし、取得のハードルが低いため、まず法律の全体像を掴みたい方には入門として適しています。
受験資格: なし
試験科目: 民法、商法(会社法)、労働法、特例法など
取得難易度: ★★☆☆☆
学習期間の目安: 2級で3〜6ヶ月程度
3. 「知的財産」に特化した資格も評価される
法務の仕事には、「予防法務」だけではなく、特許や商標といった「知的財産(知財)」を守るという役割もあります。
特にメーカーやIT企業など、技術やブランド力を重視する企業においては、知財の知識を持つ人材が強く求められます。もしあなたがこうした業界を目指すのであれば、「弁理士」や「知的財産管理技能士」のような知財に特化した資格も強力なアピール材料になります。
3-1. 弁理士
弁理士は、特許や商標といった「知的財産」を扱う国家資格です。
企業にとって、自社の技術やブランドを守るための知財戦略は経営の要となります。そのため、新たに開発した技術を権利化したり、他社からの権利侵害を防いだりする弁理士のニーズは常に高く、安定した需要があります。
特に、理系から法務へキャリアチェンジするなら、弁理士資格は大きな強みになるでしょう。技術面の知識と法務スキルの両方を身につけている人は少ないため、高待遇で迎えられるケースもあります。
難易度は高いですが、挑戦する価値のある資格です。
受験資格: なし
試験科目: 特許法、実用新案法、意匠法、商標法など
取得難易度: ★★★★★
学習期間の目安: 2〜3年以上
3-2. 知的財産管理技能士
知的財産管理技能検定は、弁理士のような「知的財産の専門家」ではなく、知的財産を適切に管理・活用するためのスキルを証明する検定試験です。
たとえば、開発した新製品が他社の特許を侵害していないか調査したり、契約における知財条項をチェックしたりなど、企業の実務担当者に求められるスキルを体系的に学べます。弁理士のような「専門家」ではなく、「社内で知財をきちんと管理する担当者」というイメージなので、企業の法務部とも相性が良い資格です。
1級から3級まであり、段階的にステップアップしていけます。就職や転職などで評価されやすいのは2級以上です。
受験資格: 3級はなし。2級は3級合格者や実務経験者など
試験科目: 知的財産関係法規、戦略、管理など
取得難易度: ★★☆☆☆(2級の場合)
学習期間の目安: 2級で3〜6ヶ月程度
4. 法務として活躍するために身につけておくべき3つの力
ここまで紹介したような資格を取得しても、必ず法務として活躍できるわけではありません。
資格はあくまで「法律知識を持っている証明」であり、実際の業務で成果を出せるかどうかは別の話です。
法務として活躍するためには、特に以下のような力が必要になってきます。
● 現場で使えるレベルの法的思考力
● 未知の問題への対処力
● 自分の言葉で表現する力
それぞれ、詳しく解説します。
4-1. 現場で使えるレベルの法的思考力
法務の現場で求められるのは、法律を教科書的に覚えているだけでなく、その背景にある考え方や原理・原則を理解し、実際の業務に応用できる力です。
たとえば、契約書に「秘密保持義務を負うものとする」と書いてあったとします。条項の意味自体は分かっても、実務では「秘密の範囲は明確に定義されているか」「義務を負う期間は適切か」「すでに知っていた情報は除外されているか」といった視点から判断できないと、後々トラブルになりかねません。
こうした「使える知識」を身につけるには、資格試験の段階から単に暗記するのではなく、制度趣旨や理由付けなどを理解する必要があります。
4-2. 未知の問題への対処力
法務の仕事では、教科書や過去の事例にないような、初めて遭遇する問題が必ず出てきます。
そういったトラブルに直面したときに、「このケースは事例がないから分からない」では、実務では役に立ちません。未知の法律問題に対し、これまで学んだ知識を組み合わせて、「こう考えれば解決できるのではないか」と自分なりの解答を提示できる人材が、法務では高く評価されるのです。
「なぜそうなるのか」を繰り返し問いながら学ぶ訓練や、複数の知識のつながりを考える訓練が、こうした力を育てます。
4-3. 自分の言葉で表現する力
法務担当者は、専門的な法律知識を、法律に詳しくない社内の人たちに分かりやすく説明する場面が多くあります。
たとえば、営業部門から「この契約書にサインしても大丈夫か」と相談されたとき、専門用語を並べて説明しても相手には伝わりません。法律の内容を噛み砕いて、相手が納得できる言葉で説明し、信頼を得る力が必要です。
取引先との交渉や、社内での提案の場面でも、事実と論理に基づいて相手を説得できる人が、法務として活躍しています。
5. 法務で活躍するために資格をとるなら伊藤塾
ここまで、法務の仕事と相性の良い資格、そして法務として活躍するために必要な3つの力について詳しく解説してきました。
ただ、いざ資格を目指そうにも、「実務で使える力をどう身につければいいのか」という悩みを抱える方も多いでしょう。
そうした方々を後押しし、合格のための知識のみならず、実務で活躍するために欠かせない力を養うことを目的に受験指導をしているのが、当コラムを運営する伊藤塾です。
伊藤塾は1995年の開塾から約30年にわたり、数多くの法律家を世に送り出してきた法律資格専門の受験指導校です。司法試験や司法書士試験といった最難関資格において、業界トップクラスの合格実績を誇っています。
◉2024年度 伊藤塾の合格実績
● 司法試験:合格者1,592名中1,436名が伊藤塾を利用(占有率90.2%)
● 予備試験:合格者449名中405名が伊藤塾を利用(占有率90.2%)
● 司法書士試験:合格者737名中433名が伊藤塾を利用(占有率59%)
特に、法務未経験から最初に目指す資格として最適な「行政書士試験」では、働きながらでも効率的に合格を目指せるカリキュラムを用意しており、多くの一発合格者を輩出しています。
資格をとって法務の仕事に就きたいと思っている方は、ぜひ伊藤塾の講座をチェックしてみてください。伊藤塾が、あなたの合格を力強くサポートします。
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6. 法務の資格に関するよくある質問(Q&A)
Q. 法学部出身ではない(法律初心者)ですが、資格があれば法務への転職は可能ですか?
A. はい、十分に可能です。
法務部員のおよそ3割〜半数は法学部以外(文学部、経済学部、理系など)の出身者であるというデータもあり、出身学部は必須条件ではありません。 ただし、法学部出身者に比べて基礎知識の証明が難しいため、この記事で紹介したような資格(行政書士やビジネス実務法務検定など)を取得することは、意欲と知識レベルを客観的に示す上で非常に有効なアピール材料になります。
Q. 英語力(TOEICなど)や国際的な法律資格は評価されますか?
A. 企業によっては、国内の法律資格以上に高く評価されます。
グローバル展開している企業や外資系企業では、英文契約書のレビュー(審査)が頻繁に発生するためです。TOEICの高スコアはもちろん、米国弁護士資格(NY州弁護士など)や英文会計(USCPA)の知識があると、海外法務担当として希少価値の高い人材になれる可能性があります。
Q. 社会保険労務士(社労士)の資格は、法務の仕事で役立ちますか?
A. 特に中小企業やベンチャー企業の法務で重宝されます。
大企業では「法務部」と「人事部」が明確に分かれていることが多いですが、組織が小さい場合、法務担当が労務管理(就業規則の整備やハラスメント対策など)を兼任するケースがよくあります。 社労士の知識は労働法務(労務コンプライアンス)に直結するため、守備範囲の広い法務担当として信頼を得やすくなります。
7.【まとめ】法務で働きたい人が取るべき資格とスキル
本記事では、企業の法務部で働きたい人が取得するべき資格と実務で求められるスキルの身につけ方などを解説しました。
以下にポイントをまとめます。
- 企業の法務部で働くために資格は必須ではありませんが、未経験者がキャリアチェンジやキャリアアップを目指す場合、法律資格を目指して勉強することは「法的な知識」と「本気で学ぶ姿勢」を証明する大きな武器となります。
- 法務部の中心業務は紛争を未然に防ぐ「予防法務」であり、これは弁護士などの士業の独占業務ではないため、資格がなくても対応可能です。
- 企業の法務部と相性が良く、採用担当者からの評価につながりやすい「予防法務」系の資格として、以下の3つが紹介されています。
- 行政書士:企業法務の基礎となる民法や会社法などの知識が身につき、法務未経験者が最初に目指すのに適した、働きながら短期合格を目指しやすい国家資格です。
- 司法書士:会社法に精通し、企業設立や登記手続き、M&Aなど、企業法務のスペシャリストとして活躍できる国家資格であり、試験の学習内容が実務で役立つとされています。
- ビジネス実務法務検定試験:日常業務で起こりうる法的リスクへの感度を養うための民間検定であり、法律の全体像を掴みたい方の入門として適しています(2級以上が一定の評価対象です)。
- メーカーやIT企業など、技術やブランド力を重視する企業を目指す場合は、「知的財産(知財)」に特化した資格も強力なアピール材料になります。
- 弁理士:特許や商標を扱う国家資格であり、特に理系出身者が法務へキャリアチェンジする際に、技術面の知識と法務スキルの両方を持つ人材として高待遇で迎えられるケースがあります。
- 知的財産管理技能士:知的財産を適切に管理・活用するためのスキルを証明する検定試験であり、企業の法務担当者に求められる実務スキルを体系的に学べます(2級以上が評価されやすいです)。
- 資格は「法律知識を持っている証明」に過ぎず、法務として活躍するためには、以下の3つの力が必要とされます。
- 現場で使えるレベルの法的思考力:法律を暗記するだけでなく、その背景にある原理・原則を理解し、実務に応用できる力です。
- 未知の問題への対処力:教科書にない初めての問題に直面した際、学んだ知識を組み合わせて自分なりの解答を提示できる力です。
- 自分の言葉で表現する力:専門的な法律知識を、法律に詳しくない社内の人たちに分かりやすく説明し、事実と論理に基づいて相手を説得し信頼を得る力です。
資格試験合格のための知識や法的思考力はもちろん、実際に法務の現場で活躍するために欠かせない実践力をも養えるカリキュラムとなっているのが、当コラムを運営する伊藤塾の特徴です。
伊藤塾は、司法試験や司法書士試験といった最難関資格で業界トップクラスの実績を誇り、特に法務未経験者におすすめの行政書士試験では、効率的なカリキュラムで多くの一発合格者や短期合格者を輩出しています。
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