
企業内行政書士は存在しない?行政書士が会社員として働く方法を解説!
キャリア
2025年09月12日


「企業内行政書士は禁止されているって本当?」
「会社員として働きながら、行政書士の仕事をすることはできないの?」
たしかに、会社員として行政書士の業務をする「企業内行政書士」は、行政書士連合会の会則によって禁止されています。つまり、行政書士が一般企業に雇われてその企業のためだけに仕事をすることはできません。
ただし、一般企業で働きながら、自分の名前で行政書士業務を行う「兼業行政書士(サラリーマン行政書士)」という形での活動は認められています。
では、行政書士は会社員として働くことが全くできないのでしょうか?
会社員として働く以外に、どのような選択肢があるのでしょうか?
本記事では、行政書士が企業内で働く方法や、雇われ行政書士の収入、なぜ独立開業がオススメなのかについて徹底解説します。
行政書士として、企業で働きたいと考えている方は、是非ご一読ください。
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【目次】
1.企業内行政書士は存在しない
「企業内行政書士」とは、「行政書士が一般企業で働きながら「会社(法人)の名前」で、行政書士の業務をすること」をいいます。
「名義貸し」にあたるため、日本行政書士会連合会の会則によって禁止されています。
(名義貸等の禁止)第61条
2 単位会の会員は、法人等他の者の名において、業務を行ってはならない。
典型例は、一般企業に所属する行政書士が、その会社(法人)の仕事として許認可申請の依頼を受けて、報酬を得るようなケースです。
行政書士制度は、あくまでも「自分の責任」において仕事をすることを前提としています。そのため、一般企業の会社員が、会社(法人)の名前で行政書士業務を行うことは認められていません。
1-1.サラリーマン行政書士という働き方はある
一方で、一般企業で働きながら「自分の名前」で行政書士の仕事をする「兼業行政書士(サラリーマン行政書士)」は認められています。
行政書士会の会則で禁止されているのは、あくまでも「法人等他の者の名において」業務を行う行為だからです。「自分の名前」で行政書士の仕事をするのであれば、一般企業で働いていても問題はありません。
(具体例)
・一般企業で働きながら、兼業として行政書士の仕事をする(◯)
・会社と業務委託契約を結んで、会社の許認可申請を引き受ける(◯)
・一般企業に行政書士として雇用されて、行政書士の仕事をする(✕)
ただし、兼業行政書士として働く場合は、会社の仕事と行政書士の仕事はハッキリと区別する必要があります。行政書士会によって取り扱いが異なる場合もあるので、必ず自分が所属する行政書士会の会則を確認しましょう。
【福岡県行政書士会|行政書士新規登録の手引(引用)】
【行政書士登録後も他の法人等に勤務しようとお考えの方へ】
行政書士登録後も行政書士又は行政書士法人以外の各種団体、法人、組合あるいは個人等(以下「他の法人等」という)に勤務することは可能です。ただし、行政書士制度は、行政書士が自らの責任において業務を執行することを前提としているため、登録後も他の法人等に勤務しようとする場合には、以下の点に注意する必要があります。
① 他の法人等との雇用関係が行政書士業務の適法な執行に影響しないこと
② 申請者が行う行政書士業務が、他の法人等の支配に服さないこと
③ 一般の利用者が行政書士事務所として認識できるように事務所機能を確保すること
2.行政書士が企業内で働く4つの方法
ここまで説明したとおり、行政書士が一般企業に雇われる「企業内行政書士」は禁止されています。しかし、行政書士が企業に雇われることが一切認められていないわけではありません。
行政書士が企業内で働く方法は以下の4つです。
・行政書士法人に就職する
・個人事務所に就職する
・税理士法人・司法書士法人などに就職する
・一般企業の法務部で働く
それぞれ、説明します。
2-1.行政書士法人に就職する
最も一般的な方法は、行政書士法人に就職することです。
行政書士法人であれば、行政書士として雇用されることも認められています。そのため、一般的な会社員と同じように、安定した身分を持ちつつ、行政書士の業務を行うことができます。
先輩から仕事を教わりながらスキルアップできるので、使用人行政書士ならではの魅力でしょう。大規模な法人であれば、様々な案件に携わって専門的なノウハウを身につけることもできます。
経営には興味がないが、行政書士の仕事はしたいという方にとって最適の選択です。ただし、求人数は決して多くありません。また、独立開業したケースと比べると、収入の幅は低くなる可能性があります。
2-2.個人事務所に就職する
個人事務所で雇ってもらうのも一つの方法です。
法人と比べると、アットホームな雰囲気の職場が多く、所長との距離も近いのが特徴です。また、小回りが利くので、自分のペースで仕事を覚えやすいメリットもあるでしょう。専門性の高い事務所で働くことができれば、その後のキャリアでも大きな財産となるはずです。
ただし、個人事務所は小規模での経営となるため、採用活動をしているケース自体が少ないです。給与・仕事内容・立地など、全ての条件を満たす事務所を見つけることは難しいかもしれません。
また、個人事務所の働き方は、所長の経営方針等によっても大きく異なります。自分と相性の良い事務所を見つけることが大切です。
2-3.税理士法人・司法書士法人などに就職する
税理士法人や司法書士法人など、他士業の事務所で行政書士を採用しているケースもあります。
例えば、税理士法人であればメインは税務相談ですが、関連業務として会社設立なども請け負っていることが多いです。そのため、求人サイトで、行政書士の求人を検索すると、「税理士法人」「司法書士法人」などの情報が出てくるケースは珍しくありません。採用されると、次のような働き方になることが一般的です。
・税理士法人などで、行政書士の知識を活かしつつ、事務職員として働く
・併設している行政書士法人で、行政書士として働く など
他の士業と同じ会社で働くことで、行政書士の業務だけでなく、多角的な視点で仕事を学ぶことができます。行政書士として独立する際にも、ここで得た人脈や経験、ノウハウが大いに役立つでしょう。
2-4.一般企業の法務部で働く
行政書士の知識を活かして、一般企業の法務部門で働くこともできます。
企業の法務部門では、契約書の作成やチェック、各種の許認可申請、法的リスクへの対応など、法律知識を必要とする業務が数多く存在しています。契約書の作成や許認可申請などを中心に、行政書士としての専門性が大いに発揮されるはずです。
特に、中小企業では、弁護士を採用するのは難しいケースが多いので、行政書士にも一定のニーズがあるでしょう。ただし、法務部門で働くためには、行政書士試験に合格するだけでなく、企業法務の実務経験やビジネススキルも求められます。資格取得後も、幅広い知識とスキルを身につけるための努力が必要です。
3.雇われ行政書士の平均月収は約27万円?
ハローワークのデータによると、行政書士の求人賃金の平均は26.9万円です。
これは、全労働者の平均賃金である26.5万円とほぼ同水準です。つまり、行政書士法人や個人事務所で働く行政書士の収入は、一般的な会社員とそれほど変わりません。
行政書士 | 一般労働者 | |
月額賃金 | 約26万9千円 | 約26万5千円 |
(出典①:厚生労働省|職業情報提供サイトjobtag,出典②:厚生労働省|令和5年賃金構造基本統計調査)
ただし、行政書士の仕事は許認可申請や権利義務・事実証明に関する書類の作成がメインなので、専門性やスキルによって収入が変わってきます。専門性を高めていけば、大幅な収入アップにもつながるでしょう。
高収入を目指すなら、やはり独立開業を視野に入れることも必要です。開業にはリスクが伴いますが、経験や実績を積むことで、収入は格段にアップします。まずは法人などに勤務してスキルを磨き、自信がついてから独立することも選択肢の一つです。
4.行政書士は独立開業もしやすい資格
行政書士には、企業で働く以外にも「独立開業」という選択肢があります。
独立開業と聞くと、とても難しそうに感じるかもしれません。しかし、必要以上に身構える必要はありません。行政書士は独立開業しやすい仕事の代表格とも言われています。
開業にかかる費用や、開業後の廃業率などから、なぜ行政書士が開業しやすいと言われているのかを見ていきましょう。
4-1.開業に必要な費用は60万〜70万円
行政書士が開業するための費用は、概ね「60万〜70万円」程度が目安です。自宅で開業する場合や、すでにパソコンやプリンターを持っている場合は、さらに開業費用を抑えられるでしょう。
項目 | 金額 |
事務所の初月家賃 | 8万〜10万 |
事務所を借りる初期費用 (敷金、礼金、保証料など) | 30万〜40万 |
PC、プリンターなど | 10万程度 |
その他備品、消耗品 など | 10万程度 |
この他、行政書士の登録費用として約30万が発生しますが、これは「独立開業するか・就職するか」に関わらず必要なお金です。
独立開業というと身構えてしまうかもしれませんが、万が一上手くいかなかったとしても、最大リスクは開業費用として必要な「50万〜60万円」程度なのです。
銀行から融資を受けたり、大がかりな設備投資を行ったり、大量の在庫を抱えたりする必要はありません。飲食店などと比較しても、非常に独立開業しやすい仕事だといえるでしょう。
4-2.独立開業後の廃業率も低め
開業後の廃業率が低いことも、行政書士が独立開業しやすい理由の一つです。
総務省のデータによれば、令和5年度(2023年度)の行政書士の廃業率はわずか「4.0%」しかありません。これは、他の業態と比較してもかなり低い数字です。
令和5年度当初における登録者数 | 51,041人 |
令和5年度の廃業者数 | 2,064人 |
令和5年度の廃業率 | 4.0% |
(出典:総務省|行政書士の登録状況(令和5年度))
行政書士事務所が廃業しづらい理由としては、次のような特徴が考えられます。
・国家資格という参入障壁が存在している
・仕事の幅が広いので、競争が起こりにくい
・仕入れをする必要がないので、固定費が少ない
まず、行政書士として開業するには、「国家資格」という参入障壁をクリアする必要があります。さらに、士業の中でも仕事の幅が広く、行政書士によって専門分野が全く異なるため、過当な競争が起こりづらいのです。
加えて、飲食店のように仕入れをする必要がないので、毎月の固定費もあまり発生しません。極端な話をすると、家賃や光熱費、自分の生活費さえ稼ぐことができれば、営業を続けていくことができるのです。
4-3.経営が軌道にのると年収1000万以上も目指せる
一方で、独立開業して軌道に乗れば、年収1000万円以上を目指すことも十分に可能です。
先ほど、行政書士の平均月収は「約27万円」だとお伝えしましたが、これはあくまでも企業に雇われた場合です。行政書士は、そもそも独立開業向きの資格なので、自分の事業として経営していく方が年収は格段に高くなります。
例えば、報酬単価の高い入管業務を中心に取り扱ったり、市場が急拡大している相続業務に力を入れたり、収益性の高い風俗営業に力を入れたりするなど、様々な方法が考えられます。もちろん、開業当初は売上が上がりにくいタイミングもあるでしょう。しかし、専門性を高めて、地道に信頼を積み重ねていけば、必ず経営は安定してきます。
会社員ほどの安定はないかもしれませんが、自分次第で収入は青天井に上がっていきます。自分の行動が結果に表れるやりがいは、独立開業の醍醐味といえるでしょう。
※行政書士の独立開業については、こちらの記事で詳しく解説しています。
5.行政書士資格を得る最大のメリットは「選択肢が増える」こと
ここまで、行政書士は独立開業向きの資格であることをお伝えしてきました。とはいえ、行政書士として働くために、必ずしも会社を辞めて独立しなければならないわけではありません。合格後、資格をどのように活用するかは人によって千差万別です。
例えば、今の会社で働きながら行政書士の知識を業務に活かしていく道もあれば、副業として行政書士の仕事をスタートさせるという選択肢もあります。もちろん、思い切って会社員をやめて、独立開業するという選択もできるでしょう。
結局、最も大切なのは「自分に合った働き方を選べる」こと…つまり、資格を取ることで「人生の新しい選択肢」が増えるという点なのです。自分の状況や目標に合わせて、ベストな道を選べるようになる…これこそが行政書士資格を取得する最大のメリットといえるでしょう。
※行政書士の就職や副業については、こちらの記事で詳しく解説しています。
6.行政書士の働き方に関するFAQ
Q1.副業で行政書士をする場合、会社への報告とは別に、行政書士会への届出は必須ですか?
A.はい、必須です。行政書士として登録する際、または登録後に会社等に勤務する場合は、独立した公正な業務執行を担保するため、多くの都道府県行政書士会で「使用人であることの届出」等が義務付けられています。手続きの詳細は所属する行政書士会の手引きを必ず確認してください。
Q2.禁止されている「企業内行政書士」や「名義貸し」が発覚した場合の具体的な罰則は何ですか?
A.行政書士法に明確な罰則があります。名義を貸した行政書士は業務停止や登録抹消などの重い懲戒処分の対象となります(行政書士法第14条)。また、行政書士でない者が業務を行えば「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科される可能性があります(同法第21条)。
Q3.将来性があり、これから「儲かる」とされる行政書士の業務分野は何ですか?
A.法改正や社会情勢の変化に伴う新しい許認可業務に将来性があります。具体的には、国土交通省が管轄する「ドローン飛行許可申請」、デジタル庁などが推進する「DX・IT導入補助金申請支援」、社会問題となっている「空き家対策関連業務」などが挙げられます。
7.行政書士が会社員として働くことのまとめ
記事のポイントをまとめます。
Q1.企業内行政書士とは何ですか?また、なぜ禁止されているのですか?
A.企業内行政書士とは、行政書士が一般企業に雇われ、「会社(法人)の名前」で行政書士業務を行うことを指します。これは「名義貸し」にあたり、行政書士が「自分の責任」において業務を行うという制度の前提に反するため、日本行政書士会連合会の会則により禁止されています。
Q2.行政書士が会社員として働くことは全くできないのでしょうか?
A.いいえ、「兼業行政書士(サラリーマン行政書士)」としての活動は認められています。これは、一般企業で働きながら「自分の名前」で行政書士の仕事をする働き方です。
Q3.兼業行政書士として働く際の具体的な注意点や制約は何ですか?
A.会社の仕事と行政書士の仕事は明確に区別し、行政書士業務が勤務先の支配に服さないこと、また雇用関係が業務執行に影響しないことが求められます。さらに、一般の利用者が行政書士事務所として認識できるよう事務所機能を確保する必要があり、所属する行政書士会の会則を必ず確認することが重要です。
Q4.行政書士が企業内で働く具体的な方法には他にどのようなものがありますか?
A.以下の4つの方法が挙げられます:
◉行政書士法人に就職する
◉個人事務所に就職する
◉税理士法人・司法書士法人など、他士業の事務所に就職する
◉一般企業の法務部で働く
Q5.行政書士法人や個人事務所に就職するメリットとデメリットは何ですか?
A.行政書士法人では、安定した身分で行政書士業務ができ、先輩から教わりながらスキルアップが可能です。ただし、求人数が少なく、独立開業に比べ収入の幅は低くなる可能性があります。個人事務所はアットホームな雰囲気で、所長との距離が近く、自分のペースで仕事を覚えやすいですが、採用活動自体が少なく、希望条件に合う事務所を見つけるのが難しい場合があります。
Q6.他士業の事務所や一般企業の法務部で行政書士の知識を活かすことはできますか?
A.はい、可能です。税理士法人や司法書士法人では、行政書士の知識を活かして事務職員として働くか、併設の行政書士法人で行政書士として働くことが一般的です。一般企業の法務部では、契約書作成や許認可申請など、法律知識を必要とする業務で専門性を発揮できます。
Q7.雇われ行政書士の平均収入はどれくらいですか?
A.ハローワークのデータによると、雇われ行政書士の求人賃金の平均は月額約26.9万円で、これは全労働者の平均賃金(約26.5万円)とほぼ同水準です。専門性やスキル次第で収入アップは期待できます。
Q8.行政書士の独立開業は、なぜ推奨されるのですか?
A.行政書士は独立開業しやすい資格とされており、主な理由として開業費用が比較的少ない(60万〜70万円程度)こと、廃業率が低い(令和5年度で4.0%)経営が軌道に乗れば年収1000万円以上も目指せることが挙げられます。
Q9.行政書士事務所の廃業率が低いのはなぜですか?
A.国家資格という参入障壁があること、仕事の幅が広く競争が起こりにくいこと(行政書士によって専門分野が異なるため)、そして仕入れが不要で固定費が少ないことが理由として考えられます。
Q10.行政書士資格を取得する最大のメリットは何ですか?
A.最大のメリットは、「人生の新しい選択肢が増える」ことです。現在の会社で知識を活かす、副業として始める、独立開業するなど、自分の状況や目標に合わせてベストな働き方を選べるようになる点にあります。
企業内行政書士は認められていませんが、行政書士になれば、独立開業や副業など人生の選択肢は確実に広がります。自分の可能性を広げたい方は、ぜひ行政書士試験に挑戦してみてください。
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