弁護士の年収はどのくらい?平均年収や中央値・仕事の魅力を検証しました

法曹

2025年10月31日

テレビのニュースなどで、「弁護士になっても仕事がない」「弁護士の年収が減っている」などと議論されていることは、みなさんも聞いたことがあるのではないでしょうか。弁護士を目指そうという方の中でも、このような議論を耳にして不安に思う方もいらっしゃるでしょう。

実際、弁護士の年収は昔に比べると減少していますが、それでも一般的なサラリーマンなどと比較するとはるかに高い数字です。「弁護士は食えない職業である」などということはありません。

弁護士は、現在でも十分な収入を得ることが可能な職業であり、何よりもやりがいのある魅力的な職業です。弁護士の人数が増えたということは、収入を考えるとマイナスな面もありますが、弁護士になるチャンスが増えたことも意味します。

この記事では、男女別や勤務形態別での弁護士の年収について解説します。弁護士が年収を上げる方法についても触れていますので、弁護士という職業に対する不安を解消していただければ幸いです。
※こちらもご確認ください

2026年以降司法試験・予備試験ではパソコン受験が必須
そこで伊藤塾ではCBTシステムをリリースいたしました。
>>> いますぐCBTシステムをご確認下さい <<<

1.弁護士の年収は減少傾向にある?

弁護士の年収は、過去に比べて減少傾向にあることは間違いありません。かつての弁護士は、資格さえ取ることができれば一生安泰とも言われるような職業でした。

実際、2006年に日弁連が実施した調査では、弁護士の年間収入の平均は3,620万円で、所得の平均は1,748万円でした。(※所得とは、収入から必要経費を引いて残った額)

しかし、その後の弁護士の年収は減少傾向にあり、2018年の調査では、弁護士の年間収入の平均は2,143万円で、所得の平均は959万円にまで減少しています。
参照:日弁連「近年の弁護士の実勢について」32頁

弁護士の年収が減少傾向にある主な原因には、次の2つの理由が挙げられるでしょう。

 ◉司法制度改革による弁護士数の増加
 ◉訴訟需要の停滞

ここでは、この2つの理由について具体的に解説していきます。

1-1.司法制度改革による弁護士数の増加

司法制度改革とは、1999年から行われている「国民の期待に応える司法制度の構築」「司法制度を支える法曹の在り方の改革」「国民の司法参加」をテーマとした司法制度全般の改革のことです。

司法制度改革の内容は多岐に渡りますが、その中の1つに司法試験合格者数の増加、法曹人口の増加があり、結果として、弁護士の人数は急速に増え続けています2010年に2万8,789人であった弁護士の人数は10年後の2020年には4万2,164人にまで増加しました。

人数が急増したことで、法律事務所への就職活動も簡単なものではなくなり、新人弁護士の就職活動はいわゆる買い手市場の状態となっています。そのため、安い賃金で雇用される弁護士や就職先が見つからず最初から独立して仕事を始める弁護士も少なくありません。

弁護士の数が増加しているのは、弁護士に定年がないことも1つの要因です。弁護士には定年がなく、引退せずに仕事を続けるベテラン弁護士も多いため、増える数と減る数とには大きな差があります。

このように、弁護士数の増加が弁護士の年収を減少させる原因となっていることは間違いないでしょう。

1-2.訴訟需要の停滞

司法制度改革では、弁護士などの法曹人口が増えることで、訴訟などの需要も増加することが見込まれていました。しかし、実際には、年間の訴訟件数などは横ばいの状態が続いており、需要の増加には至っていません。

裁判所の統計によると、地方裁判所における民事事件の新件受付数は、司法制度改革がスタートした1999年(平成11年)が、142,272件、それから20年近く経った平成29年が146,678件とほとんど変わっていません。
参照:法務省「民事第一審通常訴訟 事件類型別の新受・既済事件数の推移

それどころか、弁護士バブルとも言える過払い金返還請求の案件は年々減少しています。弁護士の数を増やしたにもかかわらず、それに見合う訴訟数の増加がないと、当然のことながら1人当たりの担当事件数は減少します。

このように、訴訟需要が停滞し、伸びが見られないというのも弁護士の年収が減少する要因と言えるでしょう。

2.弁護士の平均年収・中央値はいくら?

弁護士の年収が減少傾向にあることは間違いありませんが、具体的に、弁護士の平均年収や中央値はどのくらいなのでしょうか。

ここでは、弁護士の平均年収や中央値について、男女別や経験年齢別のデータも含めて解説します。

2-1.弁護士の平均年収は約950万円

厚生労働省が毎年実施している賃金構造基本統計調査の令和3年版では、弁護士の平均年収は、945万3,600円となっています。
参照:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況

国税庁による民間給与実態統計調査によると、令和3年の民間の平均給与は443万円となっており、弁護士の年収が減少傾向にあると言っても、945万円という金額は民間平均と比べれば、かなりの高水準であると言えるでしょう。

また、弁護士の収入については、日弁連でも独自の統計を取っています。日弁連の統計による弁護士の収入の推移は以下のとおりです。

【弁護士の収入の推移】

 平均収入平均収入の中央値平均所得所得の中央値
1990年3,060万円2,355万円
2000年3,793万円2,800万円
2010年3,304万円2,112万円1,471万円959万円
2020年2,558万円1,437万円1,206万円770万円

参照:日弁連「近年の弁護士の活動実態について

弁護士は個人事業主の形態で働いている方が多いです。経費処理を行うため、収入も一般的な給与収入とは異なります。弁護士の年収は、所得の部分を年収に置き換えて考えるとイメージがしやすいでしょう。

中央値は、極端に年収が高い人や低い人の影響をあまり受けることの無い数字です。中央値付近の収入・所得の方が最も多いので、実質的に平均的な弁護士の収入・所得としてはこちらの数字を参考にしてみてください。

2020年の統計では、所得の中央値も770万円と高い数値となっています。現在でも、弁護士は十分に高収入の職業と言うことができるでしょう。

2-2.男女別の弁護士の平均年収

賃金構造基本統計調査の令和3年版では、男性弁護士の平均年収が970万800円、女性弁護士の平均年収が879万1,000円となっています。

弁護士の年収は、男性と女性とで大きな差はありません。実際、弁護士業界は、男女差なくキャリアを積み上げられる業界と言うことができます。特に家事事件の分野などでは、最前線で活躍されている女性弁護士も多いです。

2-3.経験年数別の弁護士の平均所得・中央値

弁護士の平均年収は、10年目ころまでが大きく伸びる傾向にあるようです。日弁連の統計における修習期別の平均所得・所得の中央値は次のとおりです。(※中央値とは、データを大きい順に並べた時の中央の値)

 平均所得所得の中央値
70期~519.3万円461万円
66~69期860.3万円550万円
60~65期955万円799万円
55~59期1,514.1万円1,000万円
50~54期1,621.5万円1,101万円

参照:日弁連「近年の弁護士の活動実態について

キャリア10年を超えるころからは、平均所得で1,500万円を超え、所得の中央値でも1,000万円とかなりの高収入が見込める状態となっています。

3.勤務形態別での弁護士の年収

弁護士の働き方としては、大きく分けて次の3つの形態があります。

◉勤務弁護士
◉開業弁護士
◉企業内弁護士

働き方によって目安となる年収などは異なります。ここでは、それぞれの働き方について、年収の目安などを解説します。

3-1.勤務弁護士

勤務弁護士についても、大きな事務所か小規模な事務所か、パートナーかアソシエイトかによって年収は大きく異なります。(注:パートナーとは事務所の共同経営者、アソシエイトとは勤務弁護士の意味です。)

東京の大手事務所であれば、初年度から年収1,000万円を超える条件の事務所もあります。パートナーとなれば年収が数千万から1億円を超えることもあるでしょう。

弁護士の数が4〜5人程度もしくは個人事務所などの小規模事務所では、初年度の年収は400〜500万円程度のところが多いです。事務所からの給与は1,000万円程度が上限となる例が多く、それ以上の収入は個人事件で得ることになります。

勤務弁護士の場合、個人事件の受任ができるか、受任できるとして収入のうち何割を経費として納めるのかによって、最終的な収入が大きく変わるケースがあります。勤務弁護士であっても、個人事件を大量に受任できる環境にあれば収入が数千万円になるケースもあるでしょう。

勤務弁護士は、固定収入を得ながら事件の処理方法などを学ぶこともできます。パートナーを目指すのか、開業弁護士を目指すのかなど、どのキャリアプランを選ぶとしても勤務弁護士の間に得た経験とスキルは非常に重要なものとなるでしょう。

3-2.開業弁護士

開業弁護士の年収は人によって大きな差があります。顧客がいないまま独立してしまった場合などは、全く収入がないということもあるでしょう。

開業弁護士は、固定給はありませんが、仕事を受任し、それを確実に処理していけば、その分だけ収入が増えます。平均的な所得としては1,000万円ほどとなりますが、数千万円から1億円を超える所得を稼ぐ弁護士も珍しくありません。

開業弁護士は、仕事の量だけ収入が増えるという収入面ではやりがいのある勤務形態と言えるでしょう。

3-3.企業内弁護士

企業内弁護士とは、企業に社員として入社し、社内の法務やコンプライアンス強化などに携わる弁護士のことです。

かつては企業内弁護士はほとんど存在していませんでしたが、司法制度改革で弁護士が増加するにつれて企業内弁護士の数も増えています。

企業内弁護士の年収は、パートナー弁護士や開業弁護士のような高額なものではありませんが、長期間にわたり安定した収入を得られるのが魅力です。年収としては、500〜1,000万円ほどの条件が最も多くなっています。

4.弁護士は年収で選ぶ職業ではない?

弁護士の年収事情について解説してきました。弁護士の年収は減少傾向にあるとは言え、弁護士はまだ十分に高収入の職業と言えます。

しかし、弁護士は年収だけで選ぶ職業ではありません。年収だけで選ぶのであれば、他にも高収入の職業はあります。

弁護士の中には、収入が多くてもその分だけ労働時間も長く、寝る間も惜しんで仕事をしている方も多いです。弁護士の仕事は、人のトラブルを扱うことも多く、精神的にも大きな負担があります。弁護士を志すのであれば、年収だけでなく、仕事内容にやりがいや魅力を感じられるかが重要なポイントと言えるでしょう。

弁護士の仕事は業態や取り扱う事件などによって様々ですが、弁護士の仕事の多くは依頼者の問題に寄り添いそれを解決するものです。その中には、依頼者の人生を左右するような大きな問題も少なくありません。

そのため、仕事をやり遂げたときには、心の底からの感謝を受けることができます。依頼者の重大な問題に責任感を持って対応し、それをやり遂げたときの達成感はお金に換えることはできない大きな魅力と言えるでしょう。

自分が弁護士になったときにどのような仕事をしたいのかを思い描き、未来の自分の姿を想像して魅力を感じるのであれば、弁護士への道を選ぶべきです。それを感じられないのであれば、受験勉強だけでなく、弁護士になってからの苦労も多くなってしまうかもしれません。

弁護士を目指すのであれば、年収だけでなく、自分が弁護士としての仕事をしたいのかを一番に考えるようにしましょう。弁護士の仕事に憧れを持ち、弁護士になることができたのならば、弁護士は収入面においても十分に魅力的な職業です。

5.弁護士が年収を上げるには?

弁護士が年収を上げる方法には、次の3つの方法が考えられます。

 ◉大手事務所に就職・転職する
 ◉事務所のパートナーになる
 ◉独立開業する

大手事務所に就職し、勤務を継続できれば継続的に高収入を得ることができます。さらに、大手事務所に限らず事務所のパートナーになることでも年収を上げることができるでしょう。

勤務弁護士として勤務しながら、個人事件などの顧客が増えてきた場合には、独立開業することで年収を上げることができます。

弁護士として年収を上げたいのであれば、最終的にはパートナーとなるか、開業することで、自分自身で稼ぐ力を身につけなければなりません。

弁護士としてのキャリアをスタートさせる段階で、どのような事件に取り組みたいのかということだけでなく、キャリアプランについても目標を持つことが重要です。

6.まとめ

弁護士の年収について、実際のデータなどを基に解説しました。結論として、弁護士の年収は、一般的な職種と比べると今でも十分に高額です。スキル次第では、数千万円から1億円を超える年収を目指すこともできるでしょう。

弁護士の仕事に魅力を感じるのであれば、合格後の収入の心配をする必要はありません。「食えない職業と言われているから受験はやめておこう」などと考える必要は全くありません。

弁護士の数が増えていることは、司法試験の合格を目指すうえではプラスの材料です。正しい努力を継続することができれば、司法試験合格は十分に手の届く目標と言えるでしょう。

伊藤塾では、「盤石な基礎」と「合格後を考える」を指導理念に、司法試験合格はもちろんのこと、合格後の活躍まで見据えたお一人おひとりへの丁寧なサポートで、受講生の皆様を全力で支えています。

無料の体験受講や説明会も実施していますので、司法試験の受験に興味をお持ちの方は、ぜひ一度伊藤塾までお問い合わせください。

2024年 司法試験合格者1,592人中 1,436名(90.2%)※1
2024年 予備試験合格者 449人中 405名(90.2%)※2
伊藤塾有料講座の受講生でした。
※1(講座内訳:入門講座698名、講座・答練337名、模試401名)
※2(講座内訳:入門講座231名、講座・答練126名、模試48名)

なぜ、伊藤塾の受講生は、これほどまでに司法試験・予備試験に強いのか?
その秘密を知りたい方は、ぜひこちらの動画をご覧ください。

祝賀会ムービー

著者:伊藤塾 司法試験科

伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。