
【宅建業法】報酬の制限とは?覚え方や計算方法をわかりやすく解説
勉強法
2025年10月10日


宅建業法では、不動産取引に関わる宅建業者が受け取ることのできる報酬額の上限が厳格に定められています。これを「報酬の制限」と呼び、売買や賃貸の媒介、代理など取引の内容ごとに上限額が変わります。
試験では毎年のように出題される重要分野であり、数字や計算方法を正確に理解しておくことが合格に直結します。
一方で、媒介と代理では上限が異なる点や、特例による例外規定もあるため、初学者にとって混乱しやすいテーマでもあります。
本記事では、「報酬の制限」の基本的な仕組みから具体的な計算方法、さらに試験対策として覚えるコツまでをわかりやすく解説します。特例規定や法改正の影響にも触れながら、効率的に学習する方法を紹介するので、宅建士試験の得点源としてしっかりと身につけましょう。
【目次】
1.宅建業法における「報酬の制限」とは?
宅建業法における「報酬の制限」とは、宅建業者が不動産取引の媒介や代理を行った際に受け取ることのできる報酬額の上限のことです。
不動産取引は金額が大きいため、過大な手数料を請求するトラブルが起こりやすい分野です。そこで宅建業法では、消費者を保護する目的から報酬額の上限を法律で規定しています。このルールによって、宅建業者と依頼者の間で公平な取引関係が保たれるようになっています。
2.宅建業者の報酬の計算方法
宅建業者の報酬は、取引の種類によって計算方法が異なります。大きく分けて「売買・交換」と「貸借」の2つがあり、それぞれ「媒介」と「代理」で上限が変わります。ここでは基本的な計算ルールを確認していきましょう。
2-1. 売買・交換の「媒介」および「代理」の報酬の上限の計算
まず最初に、「媒介」と「代理」の違いをしっかりと理解しておきましょう。
【「媒介」と「代理」の違い 】
・媒介:不動産の売買、交換、賃貸借の契約において、売主と買主(または貸主と借主)の間に立って、契約成立に向けてサポートする業務のこと。
※一般的に使われている「仲介」と同義ですが、宅建士試験においては「媒介」が正式名称となります。(◯ 媒介の報酬 ↔ ✕ 仲介手数料)
・代理:依頼者(本人)の代理人として、相手方と不動産契約に関する意思表示(契約の締結など)を行う権限を与えられ、契約を成立させる業務のこと。
売買や交換の「媒介」を行った場合、取引価格に応じて次のように報酬の上限が定められています。
【売買又は交換の媒介に関する報酬計算の仕方(速算法)】
取引額 | 速算式 | 消費税 |
200万円以下 | 取引額 ✕ 5% | ✕ 1.1(課税事業者) 又は ✕ 1.04(免税事業者) |
200万円を超え 400万円以下 |
取引額 ✕ 4%+2万円 | |
400万円超え | 取引額 ✕ 3%+6万円 |
例えば、取引額が1,000万円で課税業者の場合の報酬の上限は、
となります。
「媒介」の場合は、売主と買主の双方からそれぞれこの範囲内で請求できます。
「代理」の場合は、その場合の上限額は計算表の2倍が上限となります。
なお、交換の媒介の場合には、高い方の価額を基準として上記表の計算を行います。
加えて、複数の宅建業者が関与する場合、1つの業者に依頼した場合における報酬の範囲内である必要があります。
2-2. 貸借の「媒介」および「代理」
アパートやマンションなどの賃貸借契約を媒介した場合、宅建業者が受け取れる報酬額には次のような上限が定められています。
【居住用建物の場合】
媒介・代理問わず、依頼者双方から受け取れる報酬額の合計は借賃の1か月分が上限となります。どちらがどれくらい払うかなどの内訳は問われませんが、媒介の場合、承諾のない限りは一方から2分の1を超える報酬を受け取ることはできません。
【居住用建物以外(事業用・店舗用など)の場合】
・依頼者双方から受け取れる報酬額の合計は、借賃の1か月分が上限となります。ただし、 権利金(権利設定の対価で返還されない金銭) が存在する場合、権利金の額を「売買代金」とみなして、売買報酬の計算式で手数料を算出できる特例があります。その場合、借賃1か月分と、権利金を元に計算した報酬額のどちらか高い方を上限として報酬請求が認められる場合があります。
3.報酬とは別に必要費の請求はできる?
宅建業者は原則として報酬以外に広告費などを別途請求することはできません。 広告活動は媒介業務に含まれるため、通常の宣伝費を依頼者に転嫁することは認められていないからです。
ただし、依頼者から特別な依頼を受けて実施する広告については例外です。例えば「折込チラシを通常より多く配布してほしい」「特定の不動産情報誌に有料掲載してほしい」といった要望に基づいて行った場合、その実費を報酬とは別に請求できます。この場合は、必ず事前に説明し同意を得る必要があります。
4.宅建の報酬に関する特例
宅建業法で定められた報酬の上限には、いくつか特例的な扱いがあります。特に、社会問題となっている空き家の流通促進や、長期間利用されていない不動産の活用を後押しするため、一定の条件を満たす取引では通常より高い報酬を受け取れる仕組みが設けられています。
4-1. 低廉な空家等の媒介に関する特例
売買の媒介報酬は通常、取引価格に応じて上限が定められていますが、価格が低い空家や土地では報酬額がごくわずかとなり、宅建業者が取り扱いをためらうケースがありました。こうした課題を解消し、空家の流通を促進するために設けられたのが「低廉な空家等の媒介に関する特例」です。
【低廉な空家等の媒介に関する特例】
取引価格が800万円以下の空家やその敷地が対象となり、報酬の上限は通常の計算式ではなく30万円の1.1倍までとされています。そのため、媒介であれば当事者双方から受け取れる報酬の上限は33万円まで、代理であれば66万円が受け取れる報酬の上限となります。
4-2. 長期の空家等の媒介に関する特例
通常、居住用建物の賃貸借契約における媒介報酬は、借賃1か月分が上限とされています。しかし、長期間空き家や空き室となっている物件では、賃貸需要が低く、宅建業者が積極的に取り扱いにくいという課題がありました。
この問題に対応するために設けられたのが「長期の空家等の媒介に関する特例」です。
【長期の空家等の媒介に関する特例】
長期(※少なくとも1年以上)の空家等(現に長期間使用されておらず、又は将来にわたり使用の見込みがない宅地建物)に関しては、媒介報酬の上限を通常の1か月分から2か月分まで引き上げることが認められています(借賃1か月分の2.2倍が上限)。
この特例によって、業者が空家や空室の賃貸媒介に積極的に取り組みやすくなり、空家問題の解消や住宅ストックの有効活用が進められることが期待されています。
5.宅建士試験における「報酬の制限」の覚え方
「報酬の制限」は、宅建士試験で毎年のように出題される定番分野です。ただ数字を丸暗記するだけでは混乱しやすいため、工夫しながら効率的に覚えることが大切です。ここでは、得点につなげるための学習のコツを紹介します。
5-1. 具体的な金額は表で整理して覚える
「報酬の制限」の金額は売買や賃貸、さらに特例によって異なるため、闇雲に覚えようとすると混乱しやすい分野です。効率よく整理するには、表にまとめるイメージを持ちながら、文章で関連づけて理解することが効果的です。
例えば、売買・交換における媒介に関する「報酬の制限」は、「200万円以下は5%」「200万円を超えて400万円までは4%+ 2万円」「400万円を超えると3%+ 6万円」と段階的にルールが変わります。
まずは、下記のように表にまとめたうえで。「3%から5%の数字が並んでいること」や、「取引価格が上がるほどパーセンテージは下がり、その代わりに定額部分が加わる」という仕組みを意識すると覚えやすくなります。
【売買又は交換の媒介に関する報酬計算の仕方(速算法)】
取引額 | 速算式 | 消費税 |
200万円以下 | 取引額 ✕ 5% | ✕ 1.1(課税事業者) 又は ✕ 1.04(免税事業者) |
200万円を超え 400万円以下 |
取引額 ✕ 4%+2万円 | |
400万円超え | 取引額 ✕ 3%+6万円 |
また、貸借に関する報酬額も同じように整理しておくことが重要です。居住用建物かそれ以外か、媒介か代理かに場合分けして、自分なりに整理しておくと、試験本番での混乱を防げます。
5-2. 過去問を活用して出題パターンを定着させる
「報酬の制限」の学習で重要なのは、単に数字を覚えるだけでなく、実際の出題形式に慣れることです。宅建士試験では、「報酬の制限」がほぼ毎年出題され、金額の計算や媒介・代理の区別を問う典型的なパターンがあります。
こうした傾向に対応するには、過去問を繰り返し解き、解答プロセスを身につけることが最も効果的です。間違えた問題は数字や条件を整理し直し、「どの種類の取引なのか」「どの条件が適用されるのか」を意識して復習することで、出題パターンが自然に定着します。
過去問演習を重ねれば、「報酬の制限」は確実に得点源になります。
短期間で効率よく得点力を上げるためにも、必ず過去問を活用しましょう。
5-3. 法改正による上限額の変更に注意する
「報酬の制限」は社会状況に応じて見直しが行われる分野であり、数字が法改正によって変わることがあります。古い情報のまま覚えてしまうと、本試験で誤答につながるため注意が必要です。
代表的な改正としては、空家対策の一環で導入された「低廉な空家等の特例」があります。従来は400万円以下が対象で上限18万円とされていましたが、現在は800万円以下・上限30万円に引き上げられています。また、長期間利用されていない空家や空き室の賃貸については、通常の1か月分ではなく2か月分まで報酬を受け取れるようになりました。
このように、「報酬の制限」は数字が変わる可能性があるため、学習時には必ず最新版のテキストや講座を確認することが大切です。
特に宅建士試験では最新の法改正が狙われやすいため、「改正後の正しい数字を覚えているかどうか」が得点を左右します。
6.宅建業法で高得点を取るなら「宅建士合格講座」の活用がお勧め
宅建士試験では、宅建業法が全50問中20問を占める最重要分野です。しかも、しっかり対策すれば得点源にできるため、合否を分ける決定的なポイントになります。独学でも学習は可能ですが、数字や条文の細かな暗記、法改正への対応まで一人でこなすのは容易ではありません。確実に得点力をつけるなら、専門講座を活用するのが近道です。
特にお勧めなのが、伊藤塾の「宅建士合格講座」です。この講座は宅建業法だけでなく、民法を中心とした権利関係、法令上の制限、税・その他の科目までを総合的にカバーしています。頻出分野を重点的に学びつつ、独学では理解が難しい法律用語や条文の背景も講師が丁寧に解説してくれるため、知識をバランスよく習得できます。また、最新の法改正や出題傾向にも対応しており、常に正しい情報をもとに学習を進められる点も安心です。
宅建士試験に確実に合格したい人、特に宅建業法で安定した得点を取りたい人にとって、プロの指導を受けられる講座は大きな助けになります。独学で迷う時間を減らし、効率的に学習を進めるためにも、宅建士合格講座を積極的に活用しましょう。
※こちらも読まれています。
7.宅建の「報酬の制限」に関するQ&A
Q. 宅建士試験では「報酬の制限」がどのくらい出題されますか?
A.「報酬の制限」は宅建業法のなかでも頻出分野で、ほぼ毎年1問程度出題されます。数字や計算式を正確に覚えていれば確実に得点できるため、取りこぼさないことが大切です。
Q. 宅建の報酬計算に関する問題に慣れるにはどうすればいいですか?
「報酬の制限」は数字や計算式を問う実戦的な出題が多いため、過去問演習を繰り返すことが一番の近道です。単に答えを確認するだけでなく、「取引の種類」「媒介か代理か」「居住用か事業用か」「特例の有無」といった条件を整理してから解く習慣をつけると、問題文を読んだ瞬間に適用すべきルールが浮かぶようになります。
さらに、計算過程をノートにまとめ直すと数字の根拠が整理され、似た問題に出会ったときも迷わず対応できます。
8.宅建業法における「報酬の制限」のまとめ
本記事では、宅建業法における「報酬の制限」に関して内容・覚え方・計算方法などについて解説しました。
以下にポイントをまとめます。
◉「報酬の制限」の定義と目的
- 宅建業者が不動産取引の媒介や代理を行った際に受け取れる報酬額の上限を、宅建業法で厳格に定めたものです。
- 不動産取引は高額なため、消費者を保護し、過大な手数料請求によるトラブルを防ぐ目的で設けられています。
◉売買・交換における報酬の上限(媒介の場合)
- 取引価格に応じた計算式が定められており、例えば、400万円超の場合、「取引価格の3%+6万円」が上限となります(税抜)。
- 媒介の場合、売主と買主の双方からそれぞれこの範囲内で報酬を請求できます。
◉売買・交換における報酬の上限(代理の場合)
- 代理の場合、計算表の上限額の2倍が上限となります。
- ただし、民法上の規定により、双方からの承諾がない限り一方の当事者からしか報酬を受け取れない場合があります。
◉貸借における報酬の上限
- 居住用建物の場合、媒介・代理問わず、依頼者双方から受け取れる報酬額の合計は借賃の1か月分が上限です。媒介の場合、承諾がない限り一方から2分の1を超える報酬は受け取れません。
- 居住用建物以外(事業用など)で権利金がある場合、権利金を売買代金とみなして計算した報酬額と借賃1か月分のうち、高い方を上限として請求が認められる場合があります。
◉報酬以外の請求の制限
- 原則として、広告活動は媒介業務に含まれるため、通常の報酬以外に広告費を別途請求することはできません。
- ただし、依頼者からの特別な依頼に基づいて実施する広告については、事前に説明し同意を得ることで実費を別途請求できます。
◉特例規定
- 低廉な空家等の特例:取引価格が800万円以下の空家やその敷地が対象で、媒介の場合の上限は33万円まで引き上げられます。これは空家の流通促進を目的としています。
- 長期の空家等の特例:長期間(少なくとも1年以上)使用されていない空家等の賃貸借媒介においては、報酬の上限を通常の1か月分から2か月分(借賃1か月分の2.2倍)まで引き上げることが認められています。
◉宅建士試験対策のポイント:
- 「報酬の制限」は宅建士試験でほぼ毎年出題される重要分野であり、正確に覚えていれば確実に得点源となります。
- 売買、賃貸、特例といった条件ごとに金額を表で整理し、仕組みを理解しながら覚えることが効果的です。
- 過去問を繰り返し解くことで、計算方法や出題パターンを定着させましょう。
- 法改正により上限額や対象条件が変わることがあるため、常に最新のテキストや講座で学習することが不可欠です。
宅建士試験では、宅建業法が全50問中20問を占める最重要分野です。この得点源を確実にものにし、複雑な数字や法改正に確実に対応するためには、プロの指導が最も効率的です。
独学で迷う時間を減らし、最短ルートで合格を目指すなら、宅建業法だけでなく全科目を総合的にカバーし、最新の出題傾向に対応した伊藤塾の「宅建士合格講座」の活用をお勧めします。