
司法書士と税理士の違いは?どっちが難しい?ダブルライセンスについても解説
基本情報
2025年10月02日


士業の仕事に興味があるものの、具体的にどんな職業を目指すべきか悩んでいる方はたくさんいます。
色々調べてみると、司法書士や税理士などの資格がいいのではないかと考えたものの、自分に合っている資格はどちらなのか、決めきれない方も多いでしょう。
そこで、この記事では、司法書士と税理士の違いを様々な視点から詳しく説明した上で、どちらの資格取得を目指すべきかを分かりやすく解説していきます。
業務内容や試験の難易度だけでなく、司法書士と税理士のダブルライセンスについても解説していきますので、資格取得のチャレンジを検討している方はぜひ最後までご覧下さい。
【目次】
1.司法書士と税理士の違いとは?どっちが難しい?
司法書士と税理士のどちらを目指すかを決めるにあたり、それぞれの資格の特徴を把握することは重要です。
ここでは、司法書士と税理士の違いについて、「業務内容」「試験制度」「試験難易度」の3つの視点から解説していきます。
1-1.業務内容の違い
司法書士と税理士の主な業務内容は、それぞれ次の通りです。
司法書士と税理士の具体的な業務内容 | |
司法書士 | ・不動産(土地、建物)の登記 ・商業、法人の(会社設立、役員変更等)登記の申請 ・裁判所、検察庁、法務局等に提出する書類の作成 ・企業法務 ・成年後見業務 ・遺言、相続業務 ・財産管理業務 ・企業のコンサルティング業務 ・自治体のボランティアなどの社会貢献 ・供託手続き代理 ・簡易裁判所における訴訟・調停・和解代理 ・法律相談 ・多重債務者の救済 など |
税理士 | ・記帳業務(個人・法人) ・税務監査業務(月次・年次) ・税務に関する相談業務 ・経営コンサルティング業務 ・決算時の申告書等、書類作成業務 ・確定申告時の書類作成業務 ・決算・確定申告時の関連書類作成業務 ・年末調整に関する業務 ・事業承継における税務関係書類の作成業務 ・会計ソフト(システム)導入・指導業務 ・補助金、助成金に関するサポート業務 ・財産評価(法人資産、個人資産)業務 ・経理代行業務 ・相続税、贈与税に関する書類の作成及び対策等の業務 ・その他税務関係全般の相談・対応業務 |
「街の法律家」とも呼ばれる司法書士は、私たちの権利・財産を守る身近な法律家です。
主な業務は不動産や法人に関する登記業務や裁判所・検察庁・法務局等に提出する書類の作成ですが、他にも成年後見業務や遺言、相続業務などを通じて、私たちの権利や財産を守ることをその職務としています。
近年では、司法書士の働き方が多様化しており、法律の専門知識を駆使して企業のコンサルティング業務を行なったり、資格を活かしてインターネットビジネスの分野で働くなど、職業の枠を超えて様々なフィールドで活躍しています。
一方、税理士は税務の専門家です。国民の三大義務の一つである「納税」がスムーズかつ適切に実施されるためのアドバイスや、税務関連の手続きの代行業務を行ないます。
主な仕事内容は、依頼者の代わりに税務関係の書類を作成・提出する「税務代理」や「税務書類の作成」、申告書作成や手続きの方法についてアドバイスする「税務相談」、企業の会計業務に関するサポートなどです。
また、税務の専門家として、各企業でコンサルティング業務を行なったり、相続における相続税や贈与税の対策等についてクライアントに対してアドバイスする相談業務も、税理士の重要な仕事となります。
司法書士と税理士は、いずれも専門的な国家資格であり、それぞれの資格を持つ人のみが行える独占業務がある点で共通しています。
しかし、登記等の申請書類作成のプロフェッショナルである司法書士と、税務関係のプロフェッショナルである税理士では、取り扱う業務内容が異なります。
1-2.試験制度の違い
司法書士であれば司法書士試験、税理士であれば税理士試験に合格するのが、資格取得の王道ルートですが、試験制度はそれぞれ特徴があります。
2つの試験制度の特徴は次の通りです。
司法書士試験と税理士試験の試験制度概要 | ||
司法書士試験 | 税理士試験 | |
受験資格 | 年齢、性別、国籍、学歴等に関係なく誰でも受験可能 | 会計科目は、誰でも受験可能 税法科目は、学識・資格・職歴による受験資格の制限がある |
受験料 | 8,000円 | 1科目:4,000円 2科目:5,500円 3科目:7,000円 4科目:8,500円 5科目:10,000円 |
受験申請書配付 | 4月上旬から5月中旬まで | 例年4月中旬から5月中旬 |
出願期間 | 例年5月上旬から5月中旬 | 例年5月上旬から5月中旬 |
試験日 | 筆記試験:例年7月の第1あるいは第2日曜日 口述試験:10月中旬から下旬 | 例年8月上旬~中旬の連続する3日間 |
合格発表 | 10月下旬から11月中旬 | 例年11月下旬~12月上旬 |
参照1:司法書士試験|法務省
参照2:税理士の資格取得|日本税理士連合会
司法書士試験は、年齢、性別、国籍、学歴等に関係なく誰でも受験できるため、老若男女チャレンジしやすい試験になっています。
一方、税理士試験の中でも、会計科目については誰でも受験できますが、税法科目については、学識・資格・職歴による受験資格の制限が定められているため、一定の要件を満たした人しか受験できません。
1-3.試験難易度の違い
国家資格である司法書士と税理士試験は、合格率だけ見るとどちらも難易度の高い試験となっています。
司法書士試験と税理士試験の難易度を、様々な観点から比較してみましょう。
司法書士試験と税理士試験の難易度比較 | ||
司法書士試験 | 税理士試験 | |
合格率 | 4〜5% | 20%前後 |
一般的に言われ ている合格に 必要な勉強時間 | 概ね3,000時間程度 | 4,000時間程度 |
試験形式 | 択一式 記述式 口述(面接) | 択一式 記述式 |
試験科目数 | 11科目 ①民法 ②商法 ③不動産登記法 ④商業登記法 ⑤憲法 ⑥刑法 ⑧供託法 ⑦民事訴訟法 ⑨民事執行法 ⑩民事保全法 ⑪司法書士法 | 5科目(選択式) 【会計学に属する科目】 いずれも必須 ・簿記論 ・財務諸表論 【税法に属する科目】 いずれか必須 ・所得税法 ・法人税法 2科目選択 ・相続税法 ・消費税法もしくは酒税法 ・固定資産税 ・住民税もしくは事業税 ・国税徴収法 |
合格基準 | ①午前の部(択一式) ②午後の部(択一式) ③午後の部(記述式) ④筆記試験全体 ①〜④のそれぞれに定められた4つの基準点をクリアする必要があり、①・②・④の得点率は、概ね70〜75%前後で推移している | 各科目とも満点の60%程度 合格科目が、「会計学に属する科目2科目」及び「税法に属する科目3科目」の合計5科目に達する必要がある(科目合格制) |
評価方法 | 相対評価 | 相対評価 |
免除制度 | 試験免除 筆記試験免除 | 学位による免除 国税従事者における免除 |
司法書士試験の合格率は例年4〜5%、税理士試験の合格率は例年20%前後で推移しています。
合格率だけ見ると司法書士試験の方が難しく感じるかもしれませんが、試験科目や今までやってきた仕事との関連性など、一概にどちらの試験が難しいかは判断できません。
どちらの試験にチャレンジするか迷っているのであれば、一度それぞれの試験の過去問を解いてみて、自分に合っているかどうかを確認することをおすすめします。
※司法書士試験合格に必要な勉強時間が気になる方は、こちらの記事をご覧ください。
2.司法書士と税理士はどっちが稼げる?
司法書士と税理士のどちらを目指すか迷っている人にとって、それぞれどれくらい稼げる資格なのか、気になる方も多いと思います。
ここからは、司法書士と税理士の年収について解説していきます。
2-1.事務所勤務か独立開業するかで年収は大きく異なる
司法書士及び税理士の年収は、事務所勤務か独立開業するかで大きく異なります。
独立開業すれば、事務所勤務の司法書士や税理士よりも、高額な年収を獲得できる可能性が高まります。
とはいえ、事務所勤務であっても、一般のサラリーマンと同等か、それ以上に稼ぐことも十分に可能です。
厚生労働省が公表しているデータによると、令和4年度における司法書士の平均年収は、971万4,000円、税理士及び公認会計士の平均年収は、約747万円となっています。
参照:司法書士|厚生労働省
参照:賃金構造基本統計調査 / 令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種
給与所得者の賞与を含めた平均年収は約563万円であることを考えると、どちらの資格も”稼げる資格”だと言えるでしょう。
参照:令和4年分民間給与実態統計調査結果
2-2.独立開業すれば年収1,000万円も夢じゃない!?
司法書士や税理士は、資格を取得すれば独立開業することも可能な資格です。
開業当初は、仕事を選ばずに積極的に実務経験を積んだり、他士業との連携を図り人脈を広げるなど、苦労することも多々あるでしょう。
しかし、事業が上手く波に乗れば、年収1,000万円を目指す事も夢ではありません。
最近では、司法書士や税理士の資格を持ちながら一般企業の法務部で働いたり、企業の経営コンサルティング業務を行なったりするなど、仕事の幅や自由度が高くなっています。
つまり、どちらの資格も、意欲とアイデア次第で業務の幅を広げる事でき、青天井に収入を上げる事も可能になるのです。
なお、司法書士の詳しい年収について気になる方は、こちらの記事もご参照ください。
3.司法書士と税理士はどっちを目指すべき?
司法書士と税理士のどちらを目指すべきかは、人によって異なるため一概には言えません。
どちらの資格も法律関係の事務手続きを行なう職業ですが、それぞれの資格には特徴があり、業務範囲や社会的役割、試験範囲や難易度が異なります。
資格の特徴をしっかり理解し、自分が将来やりたい仕事やなりたい姿を想像することで、どちらの資格を取得をすべきかの方向性が見えてくるでしょう。
単純にどちらの仕事に興味があるのかも、資格を選択する1つの判断基準になります。
司法書士や税理士は将来性のある資格で、一度資格を取得してしまえば、資格を活かして様々なフィールドで活躍することができます。
平均年収も、一般のサラリーマンよりも高いうえ、独立開業すれば年収1,000万円も夢ではないことを考えると、どちらの資格も目指す価値のある資格だと言えるでしょう。
※司法書士の将来性について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧下さい。
4.司法書士と税理士のダブルライセンスならどちらから取得すべき?
将来、司法書士と税理士のダブルライセンスで働こうと考えている場合、どちらの資格を先に取得すべきか迷うかもしれません。その場合、どちらの仕事を軸にして働くかで、先に取得すべき資格が異なります。
司法書士試験と税理士試験は、どちらも法律に関する試験ですが、試験科目が重複していません。そのため、どちらの資格を先に取得しても、試験科目から見たメリットはありません。
もし、司法書士として働きながら、それに付随する税務関係の依頼も受けようと考えているのであれば、司法書士としての経験を積むためにも、先に司法書士の資格を取得した方が良いでしょう。
一方で、司法書士と税理士のダブルライセンスを活かして一般企業で働きたいと考えるのであれば、どちらの資格を先に取得しても差はありません。法律に関する専門的知識も、税務に関する専門的知識も、一般企業で働くうえで役に立つ知識だからです。
いずれにせよ、まずは早い段階でどちらか1つの資格を取得しておくことが重要なので、試験科目を比較したり過去問を解いてみることで、自分に合っているのはどちらなのかを確認することをおすすめします。
5.司法書士と税理士のダブルライセンスのメリット
司法書士と税理士のダブルライセンスで働くメリットは、次の通りです。
司法書士と税理士のダブルライセンスで 働く2つのメリット |
◉転職活動で有利になる ◉業務の幅が広がり集客しやすくなる |
以下では、それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
5-1.転職活動で有利になる
国家資格である司法書士と税理士の資格を所持していれば、転職活動を有利に進めることができます。
ダブルライセンスであれば、法律の専門的知識と税務に関する専門的知識があることを客観的に証明できるため、企業にとって自分の強みをアピールすることができます。
また、難関国家資格である2つの資格を持っていることで、目標に向かって継続した努力ができることをアピールすることもできるでしょう。
司法書士と税理士の2つの資格を持っている人は、そこまで多くありません。
転職活動の際に、ダブルライセンスの希少性と対応できる業務範囲をアピールできれば、順調にキャリアアップすることを期待できます。
5-2.業務の幅が広がり集客しやすくなる
司法書士と税理士のダブルライセンスで仕事をすれば、対応できる業務の幅が広がり、独立開業してから集客しやすくなります。
司法書士と税理士で対応できる業務の範囲は被っていませんが、資格の相性は非常に良く、ダブルライセンスなら様々な範囲の業務に対応できるようになります。
たとえば、税理士として仕事をしていると、クライアントである企業の役員が変更になったり、個人事業主が会社を設立するために設立登記が必要になるなど、法人関係の登記が必要な場面もあるでしょう。
また、司法書士として相続に関する業務を行なう際にも、相続税の申告手続きが必要になる場面や、生前贈与に伴う贈与税の申告が必要になる場面もあります。
さらに、相続放棄を検討している場合であれば、法律の専門家である司法書士としての経験・知識と、税務の専門家である税理士としての経験・知識を活かして、相続に関して適切なアドバイスを行ないながら、相続税・贈与税の観点からも適切なアドバイスを行なうことができます。
依頼者の悩みをワンストップで対応できるダブルライセンスであれば、質の高いリーガルサービスを提供することで、同業者との差別化を図ることができるでしょう。
6.まとめ
司法書士と税理士は、業務内容や資格試験など、様々な点で違いがあります。
司法書士の主な業務は、不動産や法人に関する登記業務や裁判所・検察庁・法務局等に提出する書類の作成で、税理士の主な業務は、個人や法人の税務に関連する業務です。
どちらの資格を目指すべきかは人によって異なりますが、2つの業務内容を比べて、興味のある分野の資格取得を目指すのが良いでしょう。
ダブルライセンスで働きたいと考えるのであれば、試験制度や試験科目を比較してみて、まずは自分に合った資格取得を目指すのが王道です。
どちらの資格も、持っていれば転職活動で有利に働くだけでなく、独立開業して自由に働くこともできる国家資格です。
資格取得を迷っている時間がもったいないので、試験にチャレンジすることを検討しているのであれば、ライバルよりも一日でも早く勉強を始めることをおすすめします。
※2つの業務独占資格で仕事の幅が広がる!行政書士とのダブルライセンスについては、こちらの記事で詳しく解説しています。