
宅建士試験は難化した?難しかった年や今後の傾向と攻略法を解説
基本情報
2025年10月06日



宅建士試験は、年々難化してきていると言われています。宅建士試験の合格を目指す受験生にとっては「難易度が高くなると合格できないのではないか」と不安に感じてしまうことでしょう。
平成27年(2015年)に「宅地建物取引主任者」から「宅地建物取引士」に名称が変わったこともあり、宅建士にはより高度な専門性が求められるようになっています。それに伴い試験で問われる専門的知識も広くなっているため、適切な対策をしなければ合格できない試験になっていると言えるでしょう。
この記事では、宅建士試験が難化傾向にあるのかどうかを、合格率や合格基準点の推移、出題形式などから解説していきます。
令和7年(2025年)に実施予定の宅建士試験の難易度や、難化傾向にある宅建士試験で合格基準点を超えるための方法も解説していくので、ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
1. 宅建士試験は難化している?
結論から言えば、「宅建士試験は難化傾向にある」と言えます。宅建士試験が難化しているかどうかの明確な基準はありませんが、合格率や合格基準点、問題形式などから判断することが可能です。
1-1. 宅建士試験の合格率・合格基準点の推移
まずは、宅建士試験本試験における、過去10年間の合格率の推移を確認してみましょう。
なお、宅建士試験は毎年1回実施されますが、令和2年度(2020年度)および3年度(2021年度)に関しては、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から10月と12月の2回に分けて実施されています。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和6(2024)年度 | 241,436 | 44,992 | 18.64% |
令和5(2023)年度 | 233,276 | 40,025 | 17.16% |
令和4(2022)年度 | 226,048 | 38,525 | 17.04% |
令和3(2021)年度 ※12月実施 | 24,965 | 3,892 | 15.59% |
令和3(2021)年度 ※10月実施 | 209,749 | 37,579 | 17.92% |
令和2(2020)年度 ※12月実施 | 35,261 | 4,610 | 13.07% |
令和2(2020)年度 ※10月実施 | 168,989 | 29,728 | 17.59% |
令和元(2019)年度 | 220,797 | 37,481 | 16.98% |
平成30(2018)年度 | 213,993 | 33,360 | 15.59% |
平成29(2017)年度 | 209,354 | 32,644 | 15.59% |
平成28(2016)年度 | 198,463 | 30,589 | 15.41% |
平成27(2015)年度 | 194,926 | 30,028 | 15.40% |
年度 | 合格基準点 | 必要な正答率 |
令和6(2024)年度 | 37 | 74% |
令和5(2023)年度 | 36 | 72% |
令和4(2022)年度 | 36 | 72% |
令和3(2021)年度 ※12月実施 | 34 | 68% |
令和3(2021)年度 ※10月実施 | 34 | 68% |
令和2(2020)年度 ※12月実施 | 36 | 72% |
令和2(2020)年度 ※10月実施 | 38 | 76% |
令和元(2019)年度 | 35 | 70% |
平成30(2018)年度 | 37 | 74% |
平成29(2017)年度 | 35 | 70% |
平成28(2016)年度 | 35 | 70% |
平成27(2015)年度 | 31 | 62% |
平均 | 35.3 | 71% |
過去10年間の合格率の推移に大きな変化はありませんが、令和4年(2022年)から3年連続で合格率は17%以上を記録しており、令和6年度(2024年)の試験では18.64%と、直近10年間で最も高い数字が出ています。
一方で、合格に必要な合格基準点は、直近10年間で若干上がっている傾向にあります。基本的には、おおむね全体の70%前後の得点率が必要になりますが、令和4年(2022年)から令和6年(2024年)で3年連続で必要な正答率が72%を上回っています。
とはいえ、令和6年度(2024年度)には合格基準点が37点と比較的高い数字だったにもかかわらず、合格率は18.64%と直近10年で最も高い数字だったことを考えると、受験生のレベルも年々上がってきていることが推測されるでしょう。
1-2. 問題の長文化・個数問題の増加
頻繁に行われる法改正に伴い、宅建士に求められる知識は年々増加しています。それらの知識を満遍なく問うために、宅建士試験では問題文や選択肢が長文化傾向にあります。文章が長くなればその分、理解に時間を取られます。限られた時間内に正解を導き出さないといけない受験生にとって、焦りから誤答してしまうリスクも高くなるでしょう。
また、ここ最近では、個数問題も増加傾向にあります。個数問題では、4つある選択肢全ての正誤判断がつかないと正解にたどり着けません。例えば、次のような問題のことを指します。
【問6 】 Aの所有する甲土地にBを地上権者とする地上権(以下この問において「本件地上権」という。)が設定され、その旨の登記がされた後に、甲土地にCを抵当権者とする抵当権が設定され、その旨の登記がされた場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。
ア BがAとの売買契約に基づき、甲土地の所有権を取得したときは、本件地上権は消滅する。
イ Aが死亡してBがAを単独相続し、甲土地の所有権を取得したときは、本件地上権は消滅する。
ウ BがAとの代物弁済契約に基づき、甲土地の所有権を取得したときは、本件地上権は消滅する。
エ BがAとの贈与契約に基づき、甲土地の所有権を取得したときは、本件地上権は消滅する。
1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 なし
引用:令和6年度 問題 第6問|一般財団法人 不動産適正取引推進機構
個数問題では、テクニックを使って選択肢を絞ることができません。そのため、正確な知識を身につけていないと正しい選択肢を導けないようになっています。
さらに、これまでの試験では「あまり重要ではない」とされていた知識が問われるケースも多くなっており、個数問題や重要度の低い問題の正答率が合否を分けるケースも多くなっています。
このように、問題形式や合格に必要となる理解度から考えると、宅建士試験の難易度は上昇傾向にあると言えるでしょう。
2. 宅建士試験で難しかった年はいつ?
単純に合格率だけで見るのであれば、合格率が13.07%だった令和2年度(2020年度)12月実施分が最も難しい年だったといえるでしょう。
しかし、令和2年度(2020年度)および令和3年度(2021年度)に関しては、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から10月と12月の2回に分けて試験が実施されています。いつもと違う環境で試験が実施されたことが、合格率に影響を及ぼした可能性が十分考えられますので、難易度の比較対象からは除外すべきでしょう。
そこで、「宅建士試験」がスタートした平成27年度(2015年度)から令和6年度(2024年度)までの10年間の中で、令和2年度(2020年度)および令和3年度(2021年度)を除いて合格率と合格基準点の推移を見てみると、最も低い合格率は平成27年度(2015年度)の15.40%、最も低い合格基準点も平成27年度(2015年度)の31点となっており、平成27年が最も難易度が高いように見えます。
ただし前述のとおり、受験生のレベルは年々上がっているため、合格率や合格基準点の数値だけで、平成27年度が最も難易度が高かったとは一概にいえません。
年々、受験生のレベルは上昇傾向にあり、それに伴い問題も難化傾向が見られるため、単に合格率や合格基準点だけで宅建士試験の最も難しかった年を判断することは難しいといえるでしょう。
3. 令和7年(2025年)の宅建士試験の難易度は?
令和7年(2025年)に実施される宅建士試験の難易度はまだ予測できませんが、例年通りの難易度になることが推測されます。出題形式は大きく変わらない可能性は高いですが、近年の難化傾向に伴い、個数問題が増加する可能性は否定できません。
また、近年の傾向を見ると合格基準点も35〜37点程度になることが予測されますが、受験生のレベルも年々上がってきているため、正答率が上がり、合格基準点も上がる可能性があります。
自分が受験する年の宅建士試験の難易度は気になるところですが、合格に近づくためには、どの年度の問題が出題されても、40点(正答率8割)を安定的に取れるだけの実力を身につけることが重要になります。難化傾向にあることを意識しすぎてマイナーな知識ばかりに目を向けると、肝心な重要知識の習得が疎かになってしまい、より合格から遠ざかってしまう可能性があります。
難易度を気にしすぎず、「10問間違えても余裕を持って合格できる」と気軽に構えて、粛々と学習計画をこなしていきましょう。
4. 難化傾向にある宅建士試験で合格基準点を超えるための方法
では、難化傾向にあると言われている宅建士試験で確実に合格基準点を超えるためには、どのような勉強方法を取れば良いのでしょうか。人によって有効な学習方法は異なりますが、ここでは全ての受験生に共通するお勧めの勉強法を解説します。
・基礎的な部分を重点に学習する ・過去問中心の勉強を行う ・受験指導校の講座を活用する |
それぞれ、詳しく解説していきます。
4-1. 基礎的な部分を重点に学習する
勉強する際は、基礎的な部分を重点的に学習することを心がけてください。
宅建士試験が難化傾向にあることばかりが先行してしまうと、本来身につけなければいけない基礎的な知識を置き去りにしてしまう恐れがあります。基礎力がないと応用問題で正しい回答をすることも難しくなりますし、得点しなければいけない重要問題を落としてしまう恐れもあります。
宅建士試験は、全体の75%前後を正解できれば合格できる試験です。正答率の低い問題は落としても、他の問題でカバーできれば十分合格点に達することができます。
受験生の誰もが得点できる問題を確実に正解できるだけの基礎力を身につけ、マイナーな知識が問われる問題についてはできる限り正答率を上げる、これが宅建士試験の受験戦略としては正しい選択となるのです。
4-2. 過去問中心の勉強を行う
宅建士試験で効率良く得点力を伸ばしたいのであれば、過去問を中心としたアウトプット重視の勉強法を採るのがお勧めです。
宅建士試験では、全くの未知の問題が出題されるケースはあまり多くなく、過去に出題された知識が繰り返し問われる傾向にあります。そのため、過去問を繰り返し解くだけでも得点力を大幅にアップさせることができます。
例えば、苦手意識を持つ方も多い「法令上の制限」の分野では、次のように既出の問題を焼き直した問題が出題されています。
【問15】 都市計画法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
3 用途地域の一つである準住居地域は、道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するために定める地域である。
引用:令和6年度 問題 第15問|一般財団法人 不動産適正取引推進機構
【問15】 都市計画法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
3 準住居地域は、道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域とされている。
引用:令和元年度 問題 第15問|一般財団法人 不動産適正取引推進機構
この問題を見れば、問われている内容のみならず問題文すらも、ほぼ同様のことを言っていることがわかります。法令上の制限では、都市計画法や建築基準法など馴染みのない法律も多く、苦手意識を持つ方が少なくないのですが、過去問で出題範囲を絞れば、無駄な知識の取得に時間をかけることもありません。
また、過去問を繰り返し解くことで、インプットした知識がどのように問われるのかを知ることができます。自分の頭で問題を解くことでインプットした知識が長期記憶になるため、試験本番までに知識が抜けにくくなるのも過去問を解くメリットです。
一通りのインプットが終わったら、「過去問を解く → わからない部分の参考書を読む」ことを繰り返してください。なぜその回答になるのかを理解しながら問題を解き、正答できるようになった問題については関連知識まで身につけるようにすると、基礎力を身につけながら応用的な知識も身につけられます。
4-3. 受験指導校の講座を活用する
宅建士試験は独学での合格も可能な試験ですが、短期間で合格したいのであれば受験指導校の講座を上手に活用するのがお勧めです。
宅建士試験を目指す理由は人それぞれですが、どのような理由で資格を取得するにしても、短期間で合格を手にすることは非常に有益です。大学在学中に取得できれば就職活動を優位に進められますし、転職活動で必要な場合でも、早く資格を取得すればその分、良い条件で転職できる可能性も高まります。不動産関係の会社では資格手当を支給している会社もあり、資格を取得するだけで給与が上がる可能性もあるでしょう。
受験指導校では、宅建士試験を熟知した一流の講師陣が、試験対策上重要な箇所が網羅されたわかりやすいテキストを使って、本試験で得点するためのコツを伝授してくれます。このテキストに沿って勉強していくだけで、無駄なく効率よく出題範囲を学ぶことができます。
また、不明点があれば講師に質問できる制度や、モチベーションを維持するための工夫もされているため、安心して本試験に臨むことができます。
独学で合格を目指すよりも大幅に勉強時間を減らすことができるため、タイパを考えるのであれば受験指導校を利用しない手はありません。
独学での学習に限界を感じたら、ぜひ伊藤塾の「2025年合格目標 宅建士合格講座」の受講を検討してみてください。徹底した合格戦略で合格へのショートカットを実現します。
※こちらも併せてお読みください。
→ 宅建の通信講座はなぜ伊藤塾がおすすめなのか?宅建士合格講座の魅力を徹底解説
5. 宅建士試験の難化に関するよくある質問(Q&A)
Q1. 宅建士試験が難化している原因は?
A. 難化している要因を一つに絞ることはできませんが、法改正により宅建士に求められる業務が増していることや、本試験の蓄積により受験生のレベルが上がってきていることなどが要因の一つとして挙げられます。
Q2. 宅建士試験はいつから難しくなった?
A. 宅建士試験がいつから難しくなったかは、明確にはわかりません。合格率が大幅に上下することはなく、緩やかに上昇しています。また、合格基準点も大幅に変動することはなく、基本的には35〜37点前後を推移しています。
Q3. 宅建士試験の難易度が下がる可能性がある?
A. 大幅に難易度が下がることは推測できませんが、合格率が今よりも上がる可能性はあります。受験生のレベルが上がっていることから、問題の難易度が上がったとしても合格率が上がる可能性は決して低くはないでしょう。
6. 受験生のレベル上昇&難化傾向の宅建士試験を攻略するには?
Q.宅建士試験は難化している?
A. 問題文の長文化・個数問題の増加・重要度の低い知識を問われるケース増などから、宅建士試験は難化傾向にある。
Q. 宅建士試験が難しかった年はいつ?
A. 過去10年間の合格率と合格基準点が最も低かったのは平成27年度。しかし、その後10年間で受験生のレベルも上がり問題も難化傾向にあることから、平成27年度が最も難しかったと一概に判断はできない。
Q. 令和7年(2025年)の宅建士試験の難易度はどうなるのか?
A. 令和7年(2025年)の宅建士試験の難易度は、例年と同程度になるのではないかと予想される。
Q. 難化傾向にある宅建士試験に合格するためにはどうしたらよいか?
A. 難化傾向にある宅建士試験を攻略する主な方法は下記3点。
・基礎的な部分を重点に学習する ・過去問中心の勉強を行う ・受験指導校の講座を活用する |
以上です。
宅建士試験は難化傾向にありますが、どのような問題が出題されても、基礎的な問題さえ確実に得点できる基礎力を身につければ、短期間で合格基準点を超える実力を身につけることは可能です。
令和6年度に実施された試験では、合格基準点が高い数字になっているにもかかわらず、合格率は過去最高となっています。このことからも、受験生の正答率が高い問題については確実に得点する必要があることがわかります。
「盤石な基礎力」を身につけるためには、正しい方向の勉強を継続する必要があります。
独学では不明点を質問できなかったり、法改正に対応できなかったりと不便な点も多いでしょう。
一人での勉強に限界を感じたら、ぜひ伊藤塾で一緒に合格を目指しましょう。
伊藤塾では、”本気”で宅建士試験合格を目指す受験生を応援しています。