宅建士試験の勉強は順番がカギ!初学者が効率よく合格に近づくための勉強法

勉強法

2025年10月06日

宅地建物取引士(通称:宅建士)は、不動産業界で働くうえで欠かせない国家資格です。試験の難易度は決して低くなく、毎年20万人以上が受験し、その中で合格率は15〜18%前後で推移しています。働きながら合格を目指す方も多く、限られた学習時間の中で合格を目指すには、やみくもに学習するのではなく、「勉強の順番」を意識して効率よく進めることが重要です。

この記事では、宅建士試験の科目構成とその特徴を解説し、初心者が無理なく効果的に合格へ近づける勉強の順番を紹介します。勉強順に関するよくある質問にも答えているので、ぜひ最後までご覧ください。

1. 宅建士試験の全体像と4つの科目構成

宅建士試験に合格するためには、出題科目の特徴を正しく把握しておくことが大切です。ただ闇雲に勉強を進めるのではなく、各科目の配点や難易度、得点戦略を理解した上で、効率的に学習を積み重ねることが合格への近道となります。

まずは、宅建士試験で出題される4つの科目と、その配点比率を確認していきましょう。

1-1. 宅建士試験の出題科目と配点比率

宅建士試験は、年に1回、10月に実施される国家試験で、四肢択一形式の問題が50問出題されます。試験時間は2時間で、マークシート方式です。記述問題や論述問題は出題されません。

出題される科目は大きく4つに分類されており、それぞれ以下のような配点になっています。

科目問題数(配点)全体に
占める割合
権利関係14問(14点)28%
宅建業法20問(20点)40%
法令上の制限8問(8点)16%
税・その他8問(8点)16%
合計50問(50点)100%

宅建士試験では、権利関係および宅建業法の配点比率が高く設定されています。特に宅建業法は全体の約4割を占めており、試験対策でも最重要の科目といえます。

一方、合格基準点は毎年36点〜37点前後になることが多いため、他の科目についてもバランスよく得点することが求められます。権利関係や宅建業法での失点をカバーするためにも、すべての科目を軽視せずに取り組むことが必要です。

1-2. 科目ごとの難易度・得点しやすさの傾向

科目ごとに出題の傾向や難易度、点数の取りやすさに違いがあります。各科目の特徴を理解しておくことで、無理のない学習計画を立てやすくなります。

【権利関係(民法など)】

民法を中心とした法律知識が問われます。契約や相続、登記など、法律的な思考を必要とする内容が多く、抽象的で複雑な概念が多いため、勉強開始当初は理解に苦しむ受験者が多くいます。

出題傾向にばらつきがあり、過去問だけでは対応しきれないこともあるため、時間をかけてじっくり理解する姿勢が求められます。

※権利関係(民法)については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 宅建の権利関係(民法)が苦手な方へ!得点力アップの秘訣を教えます

※不動産登記法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 宅建の不動産登記法は難しい?覚え方のコツや出題範囲を解説!

【宅建業法】

宅建業に関する法律が出題されます。不動産取引に直接関係する内容が多く、出題のパターンが明確で、得点しやすい科目です。過去問と似た形式での出題が多いため、繰り返し問題演習を行うことで着実に点数を積み重ねられます。宅建業法は最も得点しやすい科目といえるでしょう。

※宅建業法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 宅建業法とは?宅建士試験で満点を目指すコツを解説

【法令上の制限】

都市計画法、建築基準法などの法令から出題されます。数字や規制内容など、暗記中心の問題が多いため、対策がしやすい傾向にあります。

一方で、聞き慣れない法令や日常生活で触れることのない規定に関する出題も多いため、苦手意識を持つ受験者も多い科目です。

法律用語や数値の細かい違いには注意が必要で、理解する際には、表や図解を使った整理が効果的です。

※法令上の制限については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 宅建試験「法令上の制限」の攻略法!覚え方や勉強法を解説

【税・その他(税金、不動産関連知識など)】

固定資産税、不動産取得税、登記制度、土地や建物の構造など、多岐にわたる分野から出題されます。科目の幅が広いため全体を網羅するのは難しいですが、頻出分野を重点的に対策することで、効率よく得点を狙えます。

人にもよりますが、学習期間後半にまとめて取り組む受験者が多い科目です。

1-3. 各科目の目標点

合格基準点は年度によって変動がありますが、例年36点〜37点前後が目安とされています。そのため、各科目ごとに「何点を目指すか」の目標を明確にしておくと、学習のバランスを取りやすくなります。

以下は、おおよその目標点数の目安です。

科目目標点
(満点)
備考
権利関係8〜10点
(14点)
難易度が高いため、
6〜7割を目指すのが
現実的
宅建業法18点以上
(20点)
得点源となる科目。
8割以上を狙いたい
法令上の制限5〜6点
(8点)
比較的対策しやすい
ため、できれば6割
は取りたい
税・その他5点
(8点)
頻出項目を押さえ、
6割を目標にする

得点の取りやすさを考慮すると、宅建業法を確実に得点源にすることが最も重要です。次いで法令上の制限や税・その他で安定して点を重ね、権利関係では大きく失点しないような対策を取る戦略が有効です。

2. 宅建士試験の勉強でおすすめの順番

宅建士試験の4科目は、どこから学習を始めるかで理解の深まり方や効率に大きく差が出ます。科目ごとの性質を踏まえ、学習の順番を工夫することで、効率よく得点力を伸ばすことが可能です。

ここでは、初学者が無理なく理解を深めながら合格に近づける勉強の順番を紹介します。

2-1. 時間のかかる「権利関係(民法)」からスタート

最初に取り組むべきは「権利関係」です。

この分野には民法、借地借家法、区分所有法、不動産登記法などが含まれており、主に法律の仕組みや契約のルールを学びます。内容は抽象的で、法律特有の言い回しも多く、短期間で理解するのは難しいため、早い段階から少しずつ進めることが重要です。

特に民法は、不動産に関する基本的なルールが詰まっており、他の科目と密接に関わります。たとえば、宅建業法に登場する契約条項の理解や、法令上の制限で出てくる所有権の問題など、法律の基礎となる考え方を支えます。

初学者にとっては難解に感じる部分も多いですが、事例や図解を交えて学ぶことで、抽象的な内容もイメージしやすくなります。また、繰り返し過去問に触れることで、出題パターンを把握しながら理解を深められます。

2-2. 出題数の多い「宅建業法」も並行して学習

「宅建業法」は50問中20問と、最も多く出題される得点源です。法律の条文に基づいて問われる問題が多いため、繰り返し学習することで安定して点を取りやすくなります。

学習の初期段階では、権利関係と宅建業法を並行して進めるのが効果的です。

宅建業法は比較的理解しやすく、覚えた知識がそのまま得点に直結します。「勉強した成果が見えやすい」という点でも、初学者の学習意欲を支えてくれます。

また、宅建業法には契約や重要事項説明に関する規定が多く、民法の知識と組み合わせて理解すると、より実践的な知識として身につきやすくなります。早い段階から得点源にできるこの科目を軸に置くことで、他の分野への学習にも弾みがつきます。

2-3. 苦手意識を持ちやすい「法令上の制限」はポイントを抑える

「法令上の制限」では、都市計画法や建築基準法、農地法など、不動産の利用に関する制限ルールを学びます。多くの受験者が苦手意識を持ちやすい分野ですが、理由は「数字や条件が多く、覚えにくい」という点にあります。

暗記中心になりがちな科目ですが、毎年似たような問題が出題されるため、出題パターンに慣れておくと得点しやすくなります。特に「用途地域ごとの建ぺい率・容積率」や「開発許可の基準」など、頻出ポイントに絞って学ぶのがコツです。

この科目は宅建業法と比べると難しく感じやすいため、先に得点源を固めたうえで、学習の中盤〜後半に取り組むのが効果的です。理解しにくい部分は図や表を活用し、視覚的に整理して覚えると記憶に残りやすくなります。

※※農地法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 宅建士試験における農地法の攻略法!覚え方をわかりやすく解説

2-4. 「税・その他」は最後にまとめて

「税・その他」は、不動産取得税や登録免許税、固定資産税といった税金に関する問題や、土地・建物の構造、景品表示法、不動産に関する直近の統計などが含まれる分野です。出題数は少ないものの、範囲が広く、情報が断片的なため、学習効率を考えると最後にまとめて学ぶのが最も合理的です。

特に税金分野では税率や控除の数値が毎年更新されることもあり、古い知識で対策してしまうと正答率が下がってしまいます。そのため、直前期に最新情報を反映させて学習するのが適しています。

また、不動産に関する統計や建築構造などは出題される内容が限られているため、出題傾向を絞って最低限の対策を行うことで、学習時間を節約しながら得点につなげることができます。。他の3科目で合格点に届く目処が立てば、「税・その他」については「確実に取れる問題を落とさない」くらいの感覚で取り組めば十分です。

3. 勉強順とあわせて意識したい3つのポイント

宅建士試験に短期間で合格するためには、学習の進め方や勉強方法にも工夫が必要です。ここでは、勉強の順番とあわせて意識しておくと良い3つのポイントを紹介します。計画的に取り組むことで、限られた時間を有効に使い、合格への道筋を明確にできます。

3-1. 試験日から逆算して勉強スケジュールを立てる

まず大切なのは「いつまでに何を終えるか」を明確にすることです。宅建士試験は毎年10月に実施されるので、そこから逆算して効果的なスケジュールを立てましょう。

たとえば、4月から本格的に勉強を始める場合、約6か月間で全科目をカバーしなければなりません。「最初の2〜3か月で権利関係と宅建業法を重点的に進め、中盤に法令上の制限、終盤で税・その他と過去問の総仕上げをする」というように、大まかな期間ごとの目標を設定することが大切です。

スケジュールを立てる際には、週単位で「いつ・何を・どのくらい学ぶか」まで具体的にしておくと、日々の勉強に迷いがなくなります。試験直前に焦らず余裕を持つためにも、早め早めのスケジューリングが効果的です。

3-2. 科目別の得点戦略を立てる

すべての科目に同じ時間をかける必要はありません。得点しやすい分野に勉強時間を集中させることも、合格への戦略のひとつです。

たとえば、宅建業法は出題数が20問と多く、出題内容も繰り返し出ることが多い科目です。安定して高得点を取りやすい分野であることを考えると、勉強時間の多くを使って学習すべき科目だといえます。この科目でしっかり18点前後を確保できれば、他の分野で多少ミスがあっても十分挽回が可能です。

一方で、権利関係は配点が高いものの難易度も高いため、満点を狙うよりは、確実に取れる10点を目指す戦い方が現実的です。法令上の制限や税・その他の分野も、満点を求めるのではなく、出題傾向を分析し、頻出論点を中心に7~8割の得点を目指すとよいでしょう。

このように、各科目で「どのくらいの得点を取るか」「そのためにどこを重点的に学ぶか」という戦略を立てることで、効率のよい勉強が可能になります。

3-3. 過去問中心で勉強を進める

宅建士試験では、過去に出題された問題と非常によく似た形式・論点が繰り返し出題されます。

そのため、テキストでインプットを終えたら、できるだけ早く過去問に取りかかることが重要です。

過去問を解くことで、知識の定着だけでなく、「どんな聞かれ方をするか」「どうやって正解を選ぶか」という実践的なスキルも養えます。1回だけで終わらせるのではなく、できれば3回以上繰り返して「問題文を見た瞬間に選択肢が頭に浮かぶ」レベルまで仕上げましょう。

また、間違えた問題にはチェックを入れ、後日改めて解き直す習慣をつけると、弱点を減らすことにつながります。

テキストだけを読んで理解したつもりになっている状態では、本番で得点に結びつきにくいです。

実践を通じて知識を使える形に変えることが、宅建士試験の合格には重要な要素になるでしょう。

4. 宅建士試験の勉強の順番でよくある質問(Q&A)

Q1. 独学の場合、どの科目から勉強すべき?

A. 独学で学習を始める場合、最初に取り掛かるべき科目は「権利関係(民法)」です。

理由は、内容が難しく理解に時間がかかるため、早めにスタートして余裕を持たせる必要があるからです。また、民法は条文の論理構成が複雑なため、初学者にとっては慣れるまでに時間を要します。

ただし、権利関係だけに集中しすぎると他の科目が疎かになる可能性もあります。そのため、ある程度ペースがつかめてきたら、宅建業法も並行して進めていくと効率的です。

早い段階から過去問にも取り組みながら、実際の出題形式に慣れることが合格への近道です。

Q2. 出題数の多い宅建業法を先に学習しても大丈夫? 

A. 宅建業法から学習を始めることも可能です。

実際、宅建業法は出題数が最も多い(20問)ことから、得点源として位置づけられており、最初に習得することでモチベーションを高める効果が期待できます。

特に、宅建業法は条文の内容や重要事項の説明義務など、繰り返し出題される項目が多く、正確な知識が身につきやすい科目です。学習が進んで得点が伸びてくると、「自分にも解ける」という実感が得られ、学習の継続につながります。

ただし、理解が浅いまま丸暗記に頼ると、本番でひねられた問題に対応しづらくなることがあります。条文の背景や制度の目的を意識しながら、「なぜそのような規定になっているのか」を学ぶことが重要です。

Q3. 苦手な科目から対策するのはNG?

A. 苦手科目に早めに向き合うことはむしろ効果的です。たとえば、「法令上の制限がとっつきにくそう」「宅建士の報酬計算が不安」と感じている場合は、あえて序盤に取り組むことで、繰り返し学習する時間を確保できます。

苦手な分野を後回しにすると、試験直前に不安が残り、精神的にも負担になります。逆に、早めに克服しておけば、ほかの得意分野により多くの時間を割けるようになり、全体として安定した得点力が身につきます。

重要なのは「完璧を目指す」よりも「少しずつ苦手意識を減らす」ことです。理解を深めるために、図解付きのテキストや動画など、視覚的に学べる教材を活用すると良いでしょう。

Q4. 全ての科目を同時並行で進めるのは効率悪い?

A. 宅建士試験の4科目すべてを同時に進めようとすると、学習の軸がぶれやすく、記憶の定着が難しくなりますのでおすすめできません。

特に初学者の場合、内容が頭の中で混ざってしまい、効率が悪くなる傾向があります。

そのため、「権利関係+宅建業法」→「法令上の制限」→「税・その他」と段階的に進める方が、集中力を維持しやすく、内容の理解も深まります。1週間ごとに学習内容を切り替える程度であれば無理はありませんが、日ごとに科目を変えるような学習法は避けたほうが無難です。

また、基礎を一通り終えた後は、全科目の過去問をまんべんなく解いて、総復習に入る時期を設けましょう。最終的には、すべての科目をバランスよく仕上げる必要があります。

5. まとめ 

宅建士試験は、決して簡単とは言えませんが、正しい順番で着実に勉強を進めれば、独学でも合格を目指せる試験です。試験範囲は広く、最初は圧倒されるかもしれませんが、ポイントを押さえた順序で学べば、無理なく知識を積み重ねられます。

まずは、最も時間がかかる「権利関係(民法)」から取りかかり、徐々に「宅建業法」や「法令上の制限」へと進めましょう。知識が土台に定着してきたら、「税・その他」の科目を一気にマスターするイメージでスケジュールを組むと効率的です。

宅建士試験は、「正しい順番での勉強」「自分に合った学習計画」を持つことで、合格の可能性が大きく高まる試験です。不安や焦りは誰にでもあるものですが、今回ご紹介した内容を参考に、自信を持って一歩ずつ進めてください。

宅建士という国家資格は、取得後のキャリアにも大きな価値をもたらします。自分の未来を切り拓くための第一歩として、一日一日の学習を大切にしてください。

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伊藤塾 宅建士試験科

著者:伊藤塾 宅建士試験科

伊藤塾宅建士試験科が運営する当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、宅建士試験に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。