司法書士の厳しい現実とは?データでみる試験・仕事・収入などの実情を解説

基本情報

2025年10月02日

司法書士試験には「厳しい現実」があると言われています。果たして本当なのでしょうか?

「厳しい現実」と言われる内容を見ていくと、必ずしも正しいわけではないことがわかります。

よくある誤解現実
仕事を辞めて勉強に専念しないと合格できない・働きながら合格する人が大半
・家事や育児と両立している人も多い
合格するまで何年もかかるのが普通・初回合格は珍しくない
・1年以内で受かる人もいる
限られた人しか合格できない難関試験・努力が報われやすい知識型の試験

合格後の仕事や収入に関するネガティブな噂もありますが、こちらも大半がイメージや誤解にもとづく内容です。噂に惑わされることなく、客観的な情報をもとに自分の人生を選択していきましょう。

本記事では、司法書士の「厳しい現実」について、データにもとづいた実情を解説していきます。ネガティブな噂を耳にして不安になっている方は、是非ご一読ください。

1.司法書士試験の厳しい現実とは

司法書士試験は、最難関資格の一つだと言われています。しかし、司法書士試験の厳しさについては、誤解されている部分が多いのが実情です。

よくある誤解現実
仕事を辞めて勉強に専念しないと合格できない・働きながら合格する人が大半
・家事や育児と両立している人も多い
合格するまで何年もかかるのが普通・初回合格は珍しくない
・1年以内で受かる人もいる
限られた人しか合格できない難関試験・努力が報われやすい知識型の試験

司法書士試験は、正しい方法で勉強すれば、誰でも合格できる試験です。よくある誤解について、さらに詳しく見ていきましょう。

1-1.仕事を辞めて勉強しないと合格できない?

仕事を辞めて勉強に専念しないと合格できないと思っている人もいるかもしれません。

しかし、これは大きな誤りで、働きながらでも十分に合格することができます。むしろ、勉強に専念している人よりも、働きながらや家事や育児に追われながら合格する人が大半ではないでしょうか。

たとえば、令和6年度の司法書士試験合格者の平均年齢は「41歳」でした。30代〜50代の割合が高く、仕事や子育てなどで忙しい世代が中心です。伊藤塾の受講生でも、働きながら合格している人がかなりの数を占めています。

【伊藤塾 2024年合格者の声】

「会社に勤めながらの受験生だったため、とにかく時間の捻出に努めていました。朝早く起きて確保したり、電車通勤中に確保したり、昼休みや就寝前など、様々です(川井 喜代子さん)」
「仕事をしながらの受験勉強のさなかに子どもが生まれました。仕事、子育て、受験勉強の3軸同時進行はとにかく大変でした。(荒川 直人さん)」
「フルタイム勤務で残業もそこそこあり、休みの日は1歳の息子の世話等でまとまって勉強する時間はほとんどありませんでした。(H.Uさん)

※働きながら司法書士に合格する方法については、こちらの記事も併せてご覧ください。

1-2.合格までに膨大な時間がかかる?

司法書士試験では、一般的に3000時間の勉強が必要とされています。

5年、10年と挑戦し続けてやっと合格できたという人の話を耳にすると、「何年も勉強を続けることはできない」と考えるのも無理はありません。

しかし、上記はあくまでも独学で勉強した場合の話です。実は受験指導校を使った人に限れば、初回受験で合格する人が珍しくありません。中には、7ヶ月といった超短期で合格する人もいます。

これは、独学生が知識の量を広げすぎるのに対して、受験指導校では学習範囲を絞り込んで、メリハリをつけた実践的講義を行っているからです。

司法書士試験では、膨大な量の法律知識が求められます。だからこそ、必要な知識を絞り込んで、手を広げすぎないことが大切なのです。余計な情報に流されず、一本筋の通った勉強ができれば、短期合格も夢ではありません。

【伊藤塾 2024年合格者】

※司法書士試験の勉強時間については、こちらの記事も併せてご覧ください。

1-3.限られた人しか合格できない?

司法書士試験の合格率は、毎年4%から5%程度で推移しています。

この合格率を見て「限られた人しか合格できない試験だ」と誤解している人もいます。しかし、司法書士試験は一部の天才しか合格できない試験ではありません。

司法書士試験が難しいのは「問題の難易度」ではなく「学習範囲の広さ」による部分が大きいです。求められる知識量は膨大ですが、高度なひらめきは要求されません。

努力が報われやすい「知識型」の試験なので、コツコツと勉強すれば、必ず合格点に達することができます。

※司法書士試験の合格率については、こちらの記事も併せてご覧ください。

2.司法書士試験の合格後に待ち受ける厳しい現実

司法書士試験に合格した後は、どのような現実が待ち受けているのでしょうか?

年齢的なハードル、収入面、働きやすさなど、様々な不安を抱えている人も多いでしょう。

以下では、司法書士試験合格後のよくある誤解について解説します。

よくある誤解現実
年齢的なハードルがある・「40代で未経験スタート」という人も多い
・60歳以上で活躍する人もいる
収入面で厳しい・一般のサラリーマンより高い水準
・年収1000万も目指せる
すでに飽和状態・人が足りておらず「売り手市場」が続いている
激務でプライベートと
両立しづらい
・自分のライフスタイルに合わせて働ける
都会でないと仕事がない・都会・田舎を問わず一定のニーズがある

2-1.合格しても年齢的なハードルがある?

「合格しても年齢的に難しいのではないか?」と心配している人もいるかもしれません。

しかし、司法書士試験の合格後に、年齢的な問題を感じるケースは少ないでしょう。

司法書士の世界は、他の業界とは異なり「40代で未経験スタート」という人も普通に存在するからです。

令和6年度の司法書士試験でも、30〜40代の合格者が全体の60%以上を占めていました。合格者の平均年齢は41.5歳となっており、社会人経験を経てから、資格を取得するケースが一般的です。求人も豊富にあるため、年齢がハードルになると感じることは少ないでしょう。

60歳以上で活躍している実務家の方も多く、まさに「生涯現役」という言葉がふさわしい仕事です。

2-2.収入面でも司法書士は厳しい?

司法書士は収入面で厳しいと言われることがあります。

しかし、実際のところ、司法書士の平均年収は決して低いわけではありません。

厚生労働省のデータによれば、令和5年度における司法書士の平均年収は「1,121万円」となっており、かなり高い水準です。月収にすると90万を超えており、収入が低いと感じる人は少ないでしょう。

もっとも、これはあくまでも「法務従事者」という職業分類に沿った数字です。司法書士以外の年収も含まれているので、これだけで「平均年収1000万超え」と考えることはできません。

勤務形態によっても差があるため、年収1000万以上を目指すなら、独立開業は必須となるでしょう。ただし、少なくとも一般的なサラリーマンより高い水準であることは確かです。収入面で不満を感じる人は少ないでしょう。

※司法書士試験の年収については、こちらの記事も併せてご覧ください。

2-3.すでに飽和状態で競争が激しい?

司法書士はすでに飽和していると言う人もいますが、大きな誤りです。

実際には人が足りておらず、まだまだ「売り手市場」の状態が続いています。これは司法書士の「人数」以上に、司法書士の「仕事」が増えていることが大きな要因です。

次のような社会の変化によって、司法書士の仕事は、今でも増え続けているのです。

・高齢社会による相続の増加
・成年後見人の人手不足
・所有者不明土地問題による相続登記の義務化 など

司法書士は、社会インフラとして高いニーズがある仕事です。「飽和している」という噂は全く事実ではありません。

※司法書士試験の将来性については、こちらの記事も併せてご覧ください。

2-4.理想とは違って激務になる?

司法書士の仕事は、激務である…つまり「仕事とプライベートの両立が難しい」と思っている人もいます。しかし、就職先や働き方によって大きく異なります。

就職するのであれば、一般的な会社員と同じような働き方になるでしょう。忙しい職場もあれば、ホワイトな職場もあります。一概に決めつけることはできません。

一方で、開業して独立すれば、個人事業主として働くことになります。仕事量や働き方は、個人の進め方・考え方次第という面が大きいでしょう。仕事とプライベートが混ざりやすいという特徴はありますが、その分自由な時間も多くなります。

「司法書士=激務」というわけではなく結局のところ、その人次第です。むしろ、ライフスタイルに合わせて、理想の働き方を実現しやすい仕事だといえるでしょう。

2-5.都心部でなければ仕事がない?

せっかく合格しても、都心部でなければ仕事がないと考えている人もいます。

しかし、司法書士の場合、こういった心配は必要ありません。司法書士のメイン業務である「登記申請業務」は、土地・企業のある場所には必ず発生する仕事だからです。都会・田舎を問わず、常に一定のニーズが存在しています。

これは、全国に存在する司法書士の割合からも、うかがい知ることができます。

同じ法律資格でも、弁護士の人数は「3大都市圏(東京・愛知・大阪)」に集中しています。

一方で、司法書士は3大都市圏以外にいる人の割合が64.7を占めており、全国に分散しています。

司法書士は地域を選ばずに活躍できるため、全国どこに住んでいても働きやすい仕事です。

3.データから見る司法書士の現実

実際のデータからも、イメージとは異なった司法書士の現実が見えてきます。

試験の合格率や年収、就職状況など、具体的なデータをもとに司法書士の実情を見ていきましょう。

3-1.実質的な合格率は10%超え?非常に受かりやすくなっている

司法書士試験はここ数年、確実に受かりやすくなっています。

たとえば平成時代、司法書士試験の合格率は2%程度しかありませんでした。しかし、令和に入ってからは、安定的に4%を超えています。出願者の数が減っている一方で、合格者数が変わっていないため、合格率は年々高くなっているのです。

出願者数最終合格者数合格率
令和6年16,837人737人4.4%
令和5年16,133人695人4.3%
令和4年15,693人660人4.2%
平成16年29,958人865人2.9%
平成15年28,454人790人2.8%
平成14年25,416人701人2.8%

見方によっては司法書士が足りていないことの表れとも言えるでしょう。司法書士に対するニーズが年々高まっているので、多少合格率を上げてでも、一定の人数を確保しようとしていると考えられます。

さらに、「4%」という数字も実体を反映しているとは言えません。出願者の中には、「当日欠席した人」や「ほぼ勉強していない記念受験の人」、「お試し受験の人」や「試験範囲の勉強が全て終わっていない人」なども含まれているからです。

そう考えると、実質的な合格率は10%程度まで高くなる可能性があります。

難関試験ではありますが、非常に受かりやすくなっていることは間違いありません。司法書士になりたい人にとって、今は絶好のチャンスだと言えるでしょう。

3-2.独立開業すれば「年収1000万超え」も十分目指せる

司法書士は、「年収1000万超え」も夢ではない仕事です。

令和2年に実施された「第2回 司法書士全国調査」では、確定申告額の「売上(収入)金額」が1000万を超えていると回答した司法書士の割合が「52%」にものぼっています。

売上回答数割合
0円45人2%
1〜199万円160人9%
200〜499万円260人14%
500〜749万円224人12%
750〜999万円216人11%
1000〜4,999万円894人47%
5000〜9,999万円81人4%
1億円以上20人1%
無回答657人

(出典:司法書士白書 2021年版|日本司法書士会連合会)

これは、前述した厚生労働省のデータとも概ね一致する数字です。独立開業した司法書士のうち、かなりの数が「年収1000万超え」を達成していると考えられます。

※司法書士の就職については、こちらの記事も併せてご覧ください。

3-3.司法書士は売り手市場!就職で困ることは少ない

司法書士が売り手市場であることは、就職のしやすさにも表れています。

たとえば、厚生労働省のデータによれば、令和5年の司法書士の有効求人倍率は1.92倍でした。一方で、令和5年の全産業の有効求人倍率は1.31倍です。「司法書士」と「全産業」ではかなりの差があることが分かります。

実際、合格者の中でも就職で苦労している人は少ないです。年齢や性別に関わらずスムーズに採用されており、次のような声が数多く聞こえてきます。

「事務所を辞めても、すぐに次の就職先が見つかる」
「パート勤務、子育て中といった条件でもすぐに声がかかる」
「納得がいくまで、相性の良い事務所を探せるので安心できる」
「変化に対応できる”人生の保険”として最適な資格だと思う」

※司法書士の就職については、こちらの記事も併せてご覧ください。

4.司法書士の満足度は高め!後悔している人は少ない

結局のところ、司法書士になって後悔している人は少ないです。確かに、司法書士試験は簡単に合格できる試験ではありません。膨大な法律知識が要求されるため、それなりに覚悟をしてチャレンジすることは必要です。

しかし、それでも司法書士を目指す人が後を絶たないのは、それだけの価値がある資格だからです。収入や働きやすさ、就職しやすさなどの待遇面はもちろん、依頼者の役に立ち、感謝されるという「やりがい」は、何物にも代えがたいものがあるでしょう。

令和2年の司法書士全国調査では「司法書士の職業満足度」について、次のような結果が示されています。

「Q,あなたは、現在ご自分の司法書士としての職業生活について、どう思われますか。」

回答数割合
非常に満足49315.5%
やや満足1,55548.9%
どちらともいえない68121.4%
やや不満2838.9%
非常に不満812.5%
わからない491.5%
無回答391.2%

(出典:司法書士白書 2021年版|日本司法書士会連合会)

司法書士としての職業生活に不満を感じている人は「11%」しかおらず、満足感を感じている人が過半数を占めていることがわかります。伊藤塾の合格者からも、「司法書士になったことを後悔している」という声はほとんど聞こえてきません。

司法書士は難関資格ではありますが、一度合格してしまえば、人生の可能性が大きく広がる資格です。興味がある方は、ぜひ挑戦してみてください。

5.まとめ

最後に、記事のポイントをまとめます。

◉司法書士試験は、正しい方法で勉強すれば誰でも合格できる試験

・働きながら、家事や育児と両立して合格する人が大半
・受験指導校では、初回受験で合格する人や、1年以内の短期で合格する人も多い
・ひらめきは不要。知識型試験なので努力が報われやすい。

◉合格後も、明るい未来が広がっている

・年齢的なハードルは低く、40代未経験者や60歳以上も活躍できる
・年収1,000万円以上も十分に目指せる仕事
・売り手市場が続いているので、就職で苦労する人も少ない
・働き方も柔軟で、自分のライフスタイルに合わせて働きやすい

◉職業満足度も高く、司法書士になって後悔している人は少ない

以上です。

司法書士は、決して「厳しい現実」が待ち受けているような仕事ではありません。

現実に行き詰まりを感じている方や、新しい一歩を踏み出したいという方こそ、是非とも挑戦して欲しい資格です。努力して目指すだけの価値があるので、是非チャレンジしてみてください。

伊藤塾は、「司法書士試験」合格者の半数近くが利用しているという確かな実績を持った「法律資格専門」の受験指導校です。ぜひ伊藤塾で新たな一歩を踏み出してみてください。伊藤塾が、あなたの挑戦を全力でサポートします。

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伊藤塾 司法書士試験科

著者:伊藤塾 司法書士試験科

伊藤塾司法書士試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法書士試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法書士試験に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。