司法修習とは何か?スケジュールや給与などを詳細解説
法曹
【記事のポイント】
- 修習期間:司法試験合格後に必須の1年間の実務研修です。修習を修了し二回試験に合格して初めて弁護士・裁判官・検察官の資格を得られます。
- 給付金額:返還不要の基本給付金が月額13万5,000円、住居給付金が月額3万5,000円で、合計最大月17万円が支給されます(出典:裁判所「司法修習生の修習給付金の給付に関する規則」)。
- 修習構成:導入修習・実務修習(4分野×各2か月)・選択型実務修習・集合修習の4段階で1年間が構成されます。
- 二回試験:民事裁判・刑事裁判・検察・民事弁護・刑事弁護の5科目を5日間で受験します。合格率は97〜99%と高く、適切な修習を経れば過度な不安は不要です。
- 生活補填:給付金だけでは不足する場合、月額10万円の無利息の修習専念資金(貸与金)との併用が可能です。
司法試験に合格しても、すぐに弁護士として働き始めるわけではありません。司法試験合格後は、1年間の司法修習を経ることで弁護士、裁判官、検察官などの法曹三者になれます。
司法修習は修習期間ではあっても、実際の実務を経験できる貴重な機会です。司法修習で学んだことは、法曹になってからも必ず役立つでしょう。
この記事では、司法修習生となった際の給与や、司法修習のスケジュール・研修内容などを解説します。司法試験合格後のイメージ作りのためにも、ぜひ最後までご覧ください。
※司法試験合格後について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
【目次】
1. 司法修習とは法曹となるための教育制度
司法修習は、法曹となるための教育制度です。司法試験に合格すると、すぐに法曹となるための資格を得られるわけではなく、司法修習を完了する必要があります。
司法修習では、座学もありますが、修習期間のメインは実務修習です。実務修習では、裁判官・検察官・弁護士の仕事を実際に体験し、実務に必要な能力を肌で感じながら学ぶことができます。
弁護士の道に進む場合でも、裁判官や検察官の仕事を体験しておくことは重要です。当然のことながら、弁護士になってからは裁判所や検察庁の内部に入ることはできません。司法修習生でしか体験できないことは多くあります。
司法修習での経験は法曹となってからも必ず役立ちます。
2. 司法修習生の生活とは
司法修習生がどのような生活を送っているのかは、一般にはあまり知られていません。司法修習生は、最高裁判所の所属となり、研修生でありながらも公務員に類似する立場に置かれます。
司法修習は、主として集合修習と実務修習に分かれており、集合修習は埼玉県和光市にある司法研修所に集合して行われますが、実務修習は全国47都道府県に分かれて実施されます。
勤務時間(研修の時間)は、基本的に平日の9時から17時となっており、一般の公務員と同じ時間です。
2-1. 裁判所から給与が支給される
司法修習生の期間は、裁判所から給与(修習給付金)が支給されます。
現在の司法修習生の修習給付金は月額13万5,000円です。それ以外に、月額3万5,000円の家賃補助がありますが、賞与などはありません。
なお、最高裁判所の許可を得ることで、アルバイトなどで別途収入を得ることは可能です。
2-2. 現在の司法修習は1年間
司法修習の期間は、合格者の増加に伴い徐々に短縮化され、現在は1年間となっています。かつての司法修習の期間は2年間でしたが、1年6か月、1年4か月と徐々に短縮され、現在に至ります。
司法修習の期間が短縮された1つの理由は、合格者増加による司法研修所などのキャパシティの問題です。2つ目の理由は、現在の司法試験では要件事実や事実認定が試験科目となっており、司法修習で要件事実や事実認定の基礎を学ぶ必要がなくなったことが挙げられます。
司法修習の1年間という期間は、長いものとは言えません。法曹として良いスタートを切るためにも、1年間の修習期間を充実したものとし、しっかりと学ぶことが重要でしょう。
2-3. 司法修習生の住宅事情
司法修習では、集合修習では埼玉県和光市に通わなくてはならず、実務修習は全国各地で行われます。
集合修習では、首都圏に在住する修習生は自宅から通うこともできますが、修習生の多くは「いずみ寮」と呼ばれる司法研修所の寮に入寮することが多いです。
ただし、司法修習生の数が増えた影響で、入寮を希望しても抽選に漏れて、入寮できない司法修習生もいます。その場合は、司法研修所の近郊のマンスリーマンションなどを住居とすることが多いようです。
実務修習では、自分が居住している地域から遠くの都道府県に配属されることも多いです。実務修習は、集合修習に比べて期間が長いので、司法修習生の多くは、ワンルームマンションを借りて生活します。
いずれにしても、司法修習生は、1年の間に住居を何度か変更することを覚悟しなくてはなりません。
3. 司法修習のスケジュール・研修内容
2025年度の司法修習期間(79期)は、2026年3月にスタートし、翌年の2月までの1年間です。
ここでは、司法修習のスケジュールと研修内容を解説します。
【79期 司法修習日程表】
| 2026年3月19日(木)~4月10日(金) | 導入修習 | |
| 4月14日(火)~11月20日(金) | 分野別実務修習 | |
| 11月下旬~2027年1月中旬 | 集合修習 | 選択型実務修習 |
| 1月中旬~2月下旬 | 選択型実務修習 | 集合修習 |
3-1. 導入修習(集合修習)
導入修習は、司法研修所(埼玉県和光市)で行われます。3月に開始し、4月には終了する1ヶ月足らずの研修です。
導入修習は、実務修習前に起案の基礎的な事項を学ぶためのものです。座学が中心で、講義と軽めの起案が行われます。(※起案とは:法律文書の草案を作成すること)
修習生の顔合わせ的な意味合いもありますので、同じ収集地の修習生などと交流を深めておくのも良いでしょう。修習期間中は、1人で学習するのではなく、修習生同士で議論を行うのも重要です。講義や起案の内容について、議論のできる仲間を増やしておくと、充実した修習生活を送れるでしょう。
3-2. 実務修習
実務修習は下記記載の都市にて行われます。
【1群】
東京、立川、横浜、さいたま、千葉、宇都宮、静岡、甲府、大阪、京都、神戸、大津、名古屋、福岡、仙台、札幌
【2群】
水戸、前橋、長野、新潟、奈良、和歌山、津、岐阜、金沢、広島、岡山、熊本、那覇、福島、高松
【3群】
福井、富山、山口、鳥取、松江、佐賀、長崎、大分、鹿児島、宮崎、山形、盛岡、秋田、青森、函館、旭川、釧路、徳島、高知、松山
修習地の選択については、下記のようなルールが設けられています。
・第1希望から第6希望まで希望を出すことができる。
・【1群】からは2箇所しか選択できない。
・第5希望、第6希望は必ず【3群】から選択しなければならない。
・特に希望がない、もしくは第6希望まで希望地がない場合は「一任」「以下一任」とすることもできる。
ただし、最終的な割り振りは司法研修所が決めるため、希望が通らないことも珍しいことではありません。司法修習生となる際には、自分の知らない土地で生活することも覚悟する必要があるでしょう。
実務修習は、弁護修習、検察修習、民事裁判修習、刑事裁判修習の4つで構成されます。それぞれの期間は2か月で、合計8か月が実務修習の期間です。
実務修習の内容は、弁護士、裁判官、検察官のいずれを志望する場合でも同じです。弁護士志望でも、裁判所や検察庁の中で実際の仕事に触れるという貴重な経験が得られます。
法曹三者それぞれの立場や仕事内容を理解しておくことは、どの進路に進むとしても欠かすことができないものです。自分の進路とは異なる修習であっても手を抜くことなく、より高い意識で修習に臨みましょう。
弁護士の仕事をするうえで、「実務感覚」を身に付けることは非常に重要です。物事を一方の立場からでなく、法曹三者それぞれの立場から考える感覚を身に付けるには、司法修習での経験は欠かせないものとなるでしょう。
3-3. 選択型実務修習
選択型実務修習と、次に説明する集合修習は、班によって順番が前後します。
11月下旬以降、司法修習生は、選択型実務修習の班と集合修習の班に分かれて修習を行います。期間は班によって約1か月半ほどです。
翌年2月頃まで、選択型実務修習を先に行った班は集合修習を、集合修習が先の班は選択型実務修習を行います。
選択型実務修習は、その名のとおり、複数の修習プログラムの中から興味のあるものを選択して行われる修習です。
選択型実務修習には、裁判所の知的財産部での修習や民間企業での修習、児童相談所での修習など様々なものがあります。1つの修習は2週間程度の期間のため、司法修習生は、複数のプラグラムを選択することが可能です。
3-4. 集合修習
集合修習は司法研修所(埼玉県和光市)で行われます。集合修習では、民事裁判・刑事裁判・検察・民事弁護・刑事弁護の5科目の講義と起案を中心に模擬裁判なども行われます。
この5科目は二回試験の科目と同じです。集合修習は二回試験の対策としても重要な意味を持ちます。講義の内容を理解し、評価される起案の書き方を身に付けるようにしましょう。
集合修習で作成した起案は、教官からの評価を受けることができます。悪い評価を受けてしまった場合には、十分に復習し二回試験で同じ誤りを繰り返さないことが重要です。
4. 二回試験に合格しなければ法曹にはなれない
選択型実務修習もしくは集合修習修了後に、司法修習の卒業試験としての意味合いを持つ二回試験が行われます。
二回試験の正式名称は「司法修習生考試」ですが、司法試験に続く二回目の試験(第二関門)という意味でこの通称が使われています。
二回試験の科目は、民事裁判・刑事裁判・検察・民事弁護・刑事弁護の5科目で、1日1科目の試験が5日間にわたって行われます。1科目の試験時間は7時間30分です。
二回試験は厳しい試験ですが、合格率は極めて高く、不合格となるのは毎年10人程度となっています。
修習中に学んだ内容を身に付けて、それをしっかり表現できれば心配することはありません。万が一、二回試験に不合格となってしまっても、次回の二回試験に再挑戦することができます。
二回試験に合格すると、法曹資格を得ることができ、法曹としての仕事を行えるようになります。
5. 司法修習に不安を感じる必要はない
司法試験を目指す方の中には、合格後の修習生活や二回試験に不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、司法修習は、法曹三者それぞれの立場を経験できる唯一のものです。貴重な学びを得るとともに、修習生同士での仲間もできます。
司法試験に合格できる能力があれば、二回試験を心配する必要もありません。常に学ぶ姿勢を持って修習に臨めば、修習から多くのものを学ぶことができ、二回試験も問題なく突破できるでしょう。
仲間と共に修習生活を過ごすと、楽しいことも沢山あります。充実した生活を送りながら目標に向かって進むことのできる修習生活は素晴らしいもので、不安に感じる必要はありません。
6. 司法修習に関するよくある質問(FAQ)
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司法修習の期間は何年間ですか。
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現在の司法修習の期間は1年間です。司法試験合格後の翌年3月末から始まり、翌年1月の二回試験(司法修習生考試)まで継続します。
かつての司法修習は2年間でしたが、合格者の増加と法科大学院での実務基礎教育を前提とした制度設計により、1年6か月、1年4か月と段階的に短縮され、現在の1年に至ります。法科大学院修了者は学部からの通算で7〜8年、予備試験合格者は試験合格までの学習期間に加えて1年の修習が必要となります。
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司法修習生の修習給付金は月額いくらですか。
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司法修習生には基本給付金として月額13万5,000円、住居を賃借する場合は住居給付金として月額3万5,000円の計17万円が支給されます。修習に伴う転居が必要な場合は移転給付金(路程に応じて4万6,500円〜14万1,000円)が別途支給されます。
修習給付金は源泉徴収の対象外で、賞与もありません。国民健康保険の加入手続きや確定申告は修習生が各自で行う必要があります。
出典:裁判所「司法修習生の修習給付金の給付に関する規則」
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修習給付金と修習専念資金(貸与金)の違いは何ですか。
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修習給付金は返還不要の給付金で、71期(2017年(平成29年))以降の司法修習生全員に支給されます。修習専念資金は返還義務のある無利息の貸与金で、基本月額10万円(扶養家族がいる場合は最大12万5,000円に増額可)を最大13か月間借りられます。
貸与金は修習終了後5年間の据置期間を経て、その後10年間で返還する条件です。給付金だけで生活が厳しい修習生が併用するケースが多く、給付金(約17万円)+貸与金(10万円)で月額約30万円までの収入確保が可能です。
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司法修習生は国家公務員ですか。
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司法修習生は国家公務員ではなく、最高裁判所が採用する身分で「国家公務員に準じた立場」として扱われます。給与所得ではない修習給付金が支給されますが、公務員と同じく兼業・兼職が原則禁止され、修習に専念する義務(修習専念義務)と守秘義務を負います。
修習の勤務時間は一般公務員と同じ平日9時から17時で、給与計算上の社会保険関係は通常の公務員とは別建ての扱いです。
出典:裁判所「司法修習生」
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弁護士の「修習期」とは何ですか。
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「修習期」とは、司法修習を受けた期を表す番号です。第1期から始まり、現在は79期(2026年3月修習開始)まで進んでいます。弁護士のプロフィールに「○期」と記載されている場合は、この修習期を指します。
修習期が同じ弁護士は「同期」と呼ばれ、法曹界での人脈や交流の基盤となることが少なくありません。なお、弁護士登録番号は日本弁護士連合会への登録順に付与されるため、修習期が早い弁護士ほど登録番号も若い傾向がありますが、登録時期などによって前後する場合があります。
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司法修習の配属先(修習地)は自分で希望できますか。
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配属希望は提出できますが、希望どおりに通るとは限りません。司法試験の成績や現住所、配属先の定員、家庭の事情などが総合的に判断されます。東京・大阪・横浜・名古屋などの都市部は就職活動のしやすさから人気が高く、希望者が定員を上回る傾向にあります。
実務修習では自宅から遠い都道府県に配属されることも多く、修習生の多くはワンルームマンションを借りて生活します。1年の間に複数回の引越しを覚悟する必要がある制度設計です。
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司法修習中の生活費は給付金だけで足りますか。
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単身・自宅通学型の修習生であれば、給付金13万5,000円+住居給付金3万5,000円の約17万円で、必要最低限の生活は可能です。扶養家族がいる修習生や、遠方への引越しが必要な修習生にとっては、給付金だけで生活費をまかなうのが難しいケースが多くあります。
そのため、修習生の一定数は無利息の修習専念資金(月額10万円)を借りて補填しています。家計に不安がある場合は、給付金と貸与金の両方の利用、貯蓄での補填、家族からの支援などを組み合わせる前提で修習に臨むのが現実的です。
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二回試験に不合格になったらどうなりますか。
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二回試験(司法修習生考試)の不合格率は毎年1〜3%で、不合格者数は10人前後で推移しています。不合格になった場合は法曹資格を得られず、内定済みの法律事務所への就職や裁判官・検察官への任官は通常見送られます。
ただし不合格者は次回の二回試験に再挑戦でき、追加修習を経て翌年に合格すれば法曹資格を得られます。3回連続で不合格になると「三振」と呼ばれる状態となり、それ以上の受験はできません。
出典:法務省「司法修習生考試の不合格者数推移」
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司法修習中にアルバイトや副業はできますか。
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原則として司法修習生は修習専念義務を負い、兼業・兼職が禁止されています(裁判所法67条2項)。ただし最高裁判所の許可を得れば、修習に支障のない範囲で一部のアルバイト・副業が認められます。
2013年の法曹養成制度検討会議の提言を受け、休日等を使った法科大学院での学生指導や教育活動による収入獲得は許可対象として運用緩和されています。司法試験予備校での答案添削や講師業務に従事する修習生もいます。
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司法試験合格後にすぐ司法修習に行く必要はありますか。
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司法修習には開始期限の定めがありません。司法試験合格後にすぐ司法修習を受けず、合格後数年経過してから修習に参加することも可能です。社会人として企業で経験を積んでから法曹になる、合格後の状況に応じて修習開始時期を遅らせるという選択肢が認められています。
ただし、合格後の年数が空くと法律知識のメンテナンスが必要となり、修習や二回試験のリスクが高まる懸念もあります。キャリアプランと学習継続性の両方を踏まえて修習開始時期を判断するのが妥当です。
7. 司法修習のスケジュールや給与などに関するまとめ
修習生活は、給与を得ながら様々なことを学べる素晴らしいものです。司法試験に合格する能力があり、普通の試験対策をしていれば二回試験の合否も心配することはありません。
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