裁判官になるには?必要な学歴・試験・任官までの流れを解説

法曹

裁判官のイメージ

裁判官になりたいと思っても、必要な学歴や試験、任官までの道のりは、調べるほど情報がばらばらに出てきます。専門の学校が要るのか、司法試験に受かれば誰でもなれるのか、何年かかるのか。進路を決める前に全体像を押さえたいところです。

この記事では、裁判所法と裁判所職員定員法の条文、最高裁判所と日本弁護士連合会の統計をもとに、裁判官になるまでの流れを整理します。選考で何が見られるのか、弁護士任官の要件も扱い、伊藤塾出身の実務家5名の話も添えます。

※法曹三者の違いは、こちらで解説しています。

1. 裁判官になるための法律上の要件は1つだけ

裁判所法が裁判官の任命資格として定めているのは司法修習を終えることだけで、学歴や年齢の要件はどこにも置かれていません。

1-1. 裁判官になるには何の資格が必要ですか?

必要なのは、司法試験に合格して司法修習を終えることだけです。判事補の任命資格を定める裁判所法43条は「司法修習生の修習を終えた者の中からこれを任命する」とします。

裁判所法40条1項は、下級裁判所の裁判官を最高裁判所が指名した者の名簿によって内閣が任命すると定めます。指名と任命の主体が分かれている点が特徴です。
(出典:e-Gov法令検索「裁判所法」)

ただし、簡易裁判所判事には例外があります。裁判所書記官などが選考を経て任命される道が、裁判所法45条に残されています。

1-2. 学歴や年齢の制限はあるか?

法律上、裁判官に学歴の要件はありません。高校卒業後に司法試験予備試験へ合格すれば、大学や法科大学院を経ずに司法試験を受けられます。任官時の年齢にも上限はありません。

法務省の2025年度(令和7年度)司法試験の採点結果によると、合格者1,581人の最低年齢は18歳、最高年齢は69歳、平均年齢は26.8歳でした。
(出典:法務省「令和7年司法試験の採点結果」)

1-3. 裁判官の種類と定員

裁判官は、最高裁判所長官・最高裁判所判事・高等裁判所長官・判事・判事補・簡易裁判所判事の6種類です。最初に任命されるのは判事補で、判事は通算10年以上の経験を有する者の中から任命されます。

裁判所職員定員法は、高等裁判所長官8人、判事2,155人、判事補842人、簡易裁判所判事806人と定めます。裁判所法5条の最高裁判所判事14人と長官1人を加えると3,826人です。
(出典:e-Gov法令検索「裁判所職員定員法」「裁判所法」)

種類定員任命の手続
最高裁判所長官1人内閣の指名に基づき天皇が任命
最高裁判所判事14人内閣が任命し天皇が認証
高等裁判所長官8人最高裁判所の名簿により内閣が任命し
天皇が認証
判事2,155人最高裁判所の名簿により内閣が任命
判事補842人司法修習を終えた者から任命
簡易裁判所判事806人選考による任命の道もある

※裁判所法・裁判所職員定員法より作成

2. 裁判官になるまでの2つのルートと期間

裁判官を目指すルートは予備試験と法科大学院の2つで、どちらも司法試験の合格後に1年の司法修習を経て判事補に任命されます。

2-1. 裁判官になるには何年かかる?

最短の目安は約6年です。大学1年から学習を始め、3年次に予備試験へ合格し、4年次に司法試験を受け、卒業後の1年の修習を終えて任官する道筋が最短です。

法科大学院ルートでも期間は大きく変わりません。文部科学省が示す法曹コースは法学部3年と法科大学院2年の5年一貫で、在学中受験と1年の修習を加えて6年前後です。
(出典:文部科学省「法曹コースについて」)

2-2. 予備試験ルートの進み方

予備試験ルートは、司法試験予備試験に合格して受験資格を得る道です。予備試験の受験資格に学歴や年齢の条件がないため、在学していなくても働きながらでも進められます。

2025年度(令和7年度)司法試験では、予備試験合格の資格で受験した人から428人が合格しました。合格者1,581人の約27%にあたり、法科大学院を経ない入口が実際に機能しています。
(出典:法務省「令和7年司法試験の採点結果」)

2-3. 法科大学院ルートの進み方

法科大学院ルートは、修了するか在学中に所定の単位を取ることで受験資格を得る道です。未修者コースは3年、既修者コースは2年が標準で、2023年(令和5年)から在学中受験ができます。

2025年度(令和7年度)司法試験の合格者1,581人の内訳は、法科大学院課程修了者441人、在学中受験資格者712人、予備試験合格者428人でした。在学中受験が最大の入口です。
(出典:法務省「令和7年司法試験の採点結果」)

2-4. 司法修習から判事補に任命されるまで

司法試験に合格すると、最高裁判所の採用選考を経て司法修習生になります。導入修習が約1か月、分野別実務修習が約8か月、選択型実務修習と集合修習が各約2か月です。

分野別実務修習では、民事裁判・刑事裁判・検察・弁護の4分野を各2か月ずつ回ります。最後の司法修習生考試(二回試験)に合格すると法曹の資格を得ます。
(出典:最高裁判所「司法修習の概要」)

なお、修習中は修習に専念する義務があり、許可なくほかの仕事に就くことはできません。

先輩実務家の声

伊藤塾出身の田中翔吾先生は、ずっと弁護士志望だったものの、修習で初めて裁判官や検事の仕事に触れて憧れを持ったと振り返っています。それでも弁護士がいちばん自由に感じられたそうです。
出典:伊藤塾「実務家レポート 田中翔吾先生

※司法修習の流れは、こちらで解説しています。

3. 任官の選考で見られているもの

判事補の任官は司法試験の順位だけで決まるものではなく、修習中の起案や実務修習での評価を含めた総合的な判断で決まります。

3-1. 裁判官になれる確率はどのくらい?

司法修習を終えた人のうち、判事補になるのは5%前後です。第77期は1,826人のうち判事補が90人で4.9%でした。同じ期の弁護士1,455人とは入口の幅が違います。

日本弁護士連合会の弁護士白書2025年版によると、第73期から第77期の判事補任官者は66人・73人・76人・81人・90人です。総数が動いても水準は変わりません。
(出典:日本弁護士連合会「弁護士白書2025年版」)

ただし、修習生の全員が裁判官を志望するわけではありません。この割合は競争率ではなく、進路の構成比です。

修習終了者裁判官検察官弁護士
第73期1,468人66人66人1,047人
第74期1,458人73人72人1,136人
第75期1,325人76人71人966人
第76期1,391人81人76人993人
第77期1,826人90人82人1,455人

※日本弁護士連合会「弁護士白書2025年版」より作成

3-2. 司法試験の順位は任官に影響するか?

順位そのものに明確な基準はありません。判事補の任命資格を定める裁判所法43条は「司法修習生の修習を終えた者」とだけ規定し、順位の要件を置いていないためです。

任命の前には、下級裁判所裁判官指名諮問委員会が指名の適否を審議します。指名の透明性を高め、国民の意見を反映させる機関で、成績以外の情報も対象になります。
(出典:最高裁判所「下級裁判所裁判官指名諮問委員会」)

先輩実務家の声

伊藤塾出身の竹ノ谷健人先生は、裁判官・検察官・弁護士のいずれを目指すにしても、落ち着いて時間をとって基礎をじっくり学ぶ機会が大切だと語っています。
出典:伊藤塾「実務家レポート 竹ノ谷健人先生

3-3. 判事補の指名は誰が決めているか

判事補の指名を実質的に支えているのが、最高裁判所に置かれた下級裁判所裁判官指名諮問委員会です。最高裁判所の諮問に応じて適否を審議し、結果を答申します。

委員会は全国8か所の高等裁判所所在地ごとに地域委員会を置き、候補者の情報を集めて報告します。裁判所の内部だけで判断を完結させない仕組みです。
(出典:最高裁判所「下級裁判所裁判官指名諮問委員会」)

なお、この仕組みは採用だけでなく再任でも働きます。裁判官の任期は10年で、任期を終えたあと再任されることができます(裁判所法40条3項)。

4. 弁護士から裁判官になる弁護士任官

司法修習の直後に任官しなかった方にも、弁護士として経験を積んでから裁判官になる弁護士任官という道があります。

4-1. 弁護士任官の要件と選考の流れ

弁護士任官は、弁護士経験のある人が常勤の裁判官になる制度です。日本弁護士連合会の形式的な基準では、判事への任官は弁護士経験10年以上が望ましいとされます。

当面は経験3年以上の判事補任官も認められ、年齢は55歳位まで、懲戒処分がないことが基準です。実質的には事実認定能力や専門的知識、廉直さや決断力が見られます。
(出典:日本弁護士連合会「弁護士任官Q&A(常勤)」)

4-2. 弁護士任官はどのくらい実現しているか?

2024年(令和6年)10月1日現在で、弁護士任官を経た60人が裁判官として執務しています。裁判官の定員3,826人と並べると限られた人数です。

任官後の給与は原則として修習同期の裁判官と同額で、手当や退職金も同じ扱いです。4月1日付の任官を希望する場合、原則として前年1~2月頃までに任官希望を申し出るなど、任官までには1年以上前から準備を進める必要があります。
(出典:日本弁護士連合会「弁護士任官Q&A(常勤)」)

5. 任官後のキャリアと待遇

判事補は、一定の経験を積むことで簡易裁判所判事や判事の任命資格を得るほか、通算5年以上で職権特例判事補に指名される道があります。判事補から判事へ進む場合、10年が一つの節目となります。

5-1. 判事補の10年で権限はこう変わる

判事補には、はじめから単独で裁判を行う権限があるわけではありません。3年で簡易裁判所判事の任命資格、5年で職権特例判事補の指名、一定の法律専門職として通算10年以上の経験を積むと、判事の任命資格を得ます。

裁判所法44条は簡易裁判所判事の任命資格に通算3年の職歴を求め、判事補の職権の特例等に関する法律1条は通算5年以上の判事補を職権の制限から外します。
(出典:e-Gov法令検索「判事補の職権の特例等に関する法律」)

任官からの年数得られる資格と権限
0年判事補として任命。原則は合議体の一員
3年簡易裁判所判事の任命資格を得る
5年職権特例判事補に指名されれば判事と同じ権限
10年判事の任命資格を得る。任期満了後は再任可

※裁判所法・判事補の職権の特例等に関する法律より作成

5-2. 1年目の判事補は1人で裁判できるのか?

一定の事件については、1年目でも1人で裁判ができます。裁判所法27条は「判事補は、他の法律に特別の定のある場合を除いて、一人で裁判をすることができない」と規定します。

伊藤塾出身で裁判官として執務する吉川このみ氏も、1年目から1人の裁判官として責任のある判断が求められると述べています。

先輩実務家の声

司法修習で初めて裁判官の仕事を間近で見たことが転機でした。当事者双方の意見を聞き、中立公正の立場から法律のみに従って判断できる点に魅力を感じたそうです。弁護士職務経験では、当事者の声を裁判官へ伝える大切さに気づいたと語ります。
出典:伊藤塾出身実務家インタビュー 吉川このみ氏

5-3. 裁判官の報酬と手当の決まり方

裁判官の報酬は法律で決まります。報酬等に関する法律の別表では、判事補が12号の276,300円から1号の459,000円まで、判事が546,000円から1,224,000円までです。
(出典:e-Gov 法令検索裁判官の報酬等に関する法律)

ここに国家公務員と同じ期末手当・勤勉手当が加わり、2026年度(令和8年度)の支給割合は年間4.65月分です。
(出典:内閣官房内閣人事局「国家公務員の給与(令和8年版)」)

地域手当は2024年度(令和6年度)の見直しで5級地に整理され、1級地の東京都特別区が20%です。
(出典:人事院「国家公務員の諸手当の概要」)

※裁判官の年収の内訳は、こちらで解説しています。

5-4. 裁判官を目指すか迷ったときの判断軸

【向いている方】

中立の立場で判断を下すことに意義を感じ、記録を読み込んで筋道を立てる作業を続けられる方に向いています。若手は3年単位で異動するため、全国転勤を前提にした生活設計も条件です。

先輩実務家の声

伊藤塾出身の井山貴裕先生は、法律家に向いているのは自分の意見がしっかりある人だと語っています。三者のいずれでも、最後は自分の頭で考え抜いた結論を外に出す必要があるためです。
出典:伊藤塾「実務家レポート 井山貴裕先生

【他の選択肢も検討したい方】

自分から依頼者へ提案を組み立てたい方、勤務地を選びたい方は、弁護士や検察官も含めて比べるほうが納得しやすくなります。法曹三者は修習まで同じ道を歩むためです。
(出典:最高裁判所「裁判官人事の概況」)

先輩実務家の声

伊藤塾出身の樅木良一先生は、裁判官や検察官と異なり、依頼者の利益のために行動するところが自分の性格に合うと考えて弁護士を選んだと語っています。
出典:伊藤塾「実務家レポート 樅木良一先生

6. 裁判官になる方法に関するよくある質問(FAQ)

裁判官には1年で何人が任官されますか?

第77期は、司法修習を終えた1,826人のうち90人が判事補に任命されました。第73期から第77期は66人・73人・76人・81人・90人で、修習終了者に占める割合は5%前後です。
(出典:日本弁護士連合会「弁護士白書2025年版」)

高卒でも裁判官になれますか?

なれます。裁判所法43条は判事補の任命資格を「司法修習生の修習を終えた者」とだけ定め、学歴の要件はありません。高校卒業後に予備試験へ合格すれば司法試験を受験できます。

裁判官になるのに有利な大学や学部はありますか?

法律上は出身大学も学部も問われません。裁判所法43条に大学の規定はなく、法学部でなくても受験資格を得られれば道は開かれます。法曹コースを持つ大学なら期間を短くしやすくなります。
(出典:文部科学省「法曹コースについて」)

裁判官の定年は何歳ですか?

高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所の裁判官は65歳、最高裁判所と簡易裁判所の裁判官は70歳です(裁判所法50条)。一方で任官時の年齢に上限はなく、2025度司法試験では69歳の合格者がいます。
(出典:e-Gov法令検索「裁判所法」)

裁判官は何年ごとに転勤しますか?

若手のうちは3年単位で異動し、その後は4年から5年の間隔になるのが一般的です。任官後の最初の2年半は、東京や大阪など規模の大きな地方裁判所に配置されます。
(出典:最高裁判所「裁判官人事の概況」)

弁護士から裁判官になれますか?

 なれます。弁護士任官という制度があり、2024年10月1日現在で60人が裁判官として執務しています。推薦の基準は判事任官が弁護士経験10年以上、当面は3年以上の判事補任官も可です。
(出典:日本弁護士連合会「弁護士任官Q&A(常勤)」)

裁判官が弁護士になることはありますか?

あります。判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律により、判事補は身分を保ったまま原則2年間、弁護士として職務を経験できます。2005年(平成17年)開始の制度です。
(出典:e-Gov法令検索「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」)

司法試験の順位が低いと裁判官になれませんか?

順位そのものに法律上の基準はありません。裁判所法43条にも順位の要件はなく、修習中の起案や実務修習での取り組みを含む総合的な判断になります。適否は指名諮問委員会が審議します。

女性でも裁判官になれますか?

性別による制限はありません。最高裁判所の裁判所データブック2025によると、女性裁判官は850人です(2024年12月1日現在)。産前産後休暇や育児休業も使えます。
(出典:最高裁判所「裁判所データブック2025」)

裁判官と検察官では任官までの流れが違いますか?

司法修習を終えるところまでは同じです。分かれるのは修習の終わりで、裁判官は最高裁判所の名簿によって内閣が任命し、検事は法務大臣が任命します。第77期は判事補90人、検事82人でした。
(出典:e-Gov法令検索「検察庁法」)

※女性裁判官の割合は、こちらで解説しています。

※検察官のルートは、こちらで解説しています。

7. 裁判官になるには司法修習の修了が唯一の入口

裁判官になるために法律が求めているのは、司法試験に合格して司法修習を終えることだけです。学歴も出身大学も条文にはありません。入口は開かれている一方、判事補になるのは5%前後にとどまります。

  • 学歴の要件はなく、高卒から予備試験に進む道もある
  • 最短の目安は約6年で、ルートは予備試験と法科大学院
  • 第77期の判事補任官は1,826人中90人で4.9%
  • 判事補は3年・5年・10年で権限が段階的に広がる
  • 弁護士経験を積んでから任官する弁護士任官もある

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著者:伊藤塾 司法試験科

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