予備試験の一般教養は0点でも合格できる?対策のポイントを解説

予備試験

2025年10月31日

予備試験対策で、一般教養科目の対策をどうすればいいのかわからず、困ってしまっている方も多いのではないでしょうか。予備試験の短答式試験では一般教養科目が出題されますが、論文式試験以降、司法試験まで二度と出題されないため、できる限り時間や手間をかけずに対策するのが得策です。

しかし、一般教養科目の問題の難易度は大学卒業程度と高く、出題範囲も非常に広範囲に及ぶため、日常で身につける知識や付け焼き刃の知識で点数を上げることは困難です。ここで、もし一般教養科目で0点をとってしまった場合、予備試験に合格することはできないのでしょうか。また、合格者はどのような対策をしているのでしょうか。

この記事では、一般教養科目の対策はどの程度すべきか、0点でも合格することができるのか、本番で少しでも点数をとるためのコツなどについて、法務省の公式データに基づいて詳しく解説していきます。

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1.一般教養科目は0点でも合格できる

予備試験の一般教養科目は、仮に0点だったとしても合格することができます。その理由は、短答式試験の配点と、合格ラインにあります。

1-1.一般教養科目の配点割合は短答式試験全体の2割程度

予備試験の短答式試験では、それぞれの科目に合格点が決められている訳ではなく、全科目の合計点だけの合格ラインが決められています。短答式試験の各科目の配点や、短答式試験全体に占める割合は、以下の通りとなっています。

科目 問題数 配点 全体に占める
割合
憲法 各科目ごとに10問
〜15問程度
30点満点 11.1%
行政法 30点満点 11.1%
民法 30点満点 11.1%
商法 30点満点 11.1%
民事訴訟法 30点満点 11.1%
刑法 30点満点 11.1%
刑事訴訟法 30点満点 11.1%
一般教養科目 40題の中から20題を
選択して回答
60点満点 22.2%
合計 270点満点 1


このように、一般教養科目は60点満点で、短答式試験全体の約2割を占めています。これだけ聞くと、ある程度の対策はしておいた方がいいように思えるかもしれませんが、短答式試験の合格ラインを見れば、一般教養科目の対策に力を入れなくてもいいことがわかります。

1-2.過去の合格点データから見える真実

法務省が公表している過去12年間の短答式試験の結果を見てみましょう。

年度 短答式試験
合格者の平均点
合格ライン 合格ライン
の得点率
2025年
(令和7年)
175.8点 159点 58.9%
2024年
(令和6年)
181.1点 165点 61.1%
2023年
(令和5年)
183.4点 168点 62.2%
2022年
(令和4年)
175.0点 159点 58.9%
2021年
(令和3年)
178.7点 162点 60.0%
2020年
(令和2年)
173.7点 156点 57.8%
2019年
(令和元年)
177.0点 162点 60.0%
2018年
(平成30年)
177.7点 160点 59.3%
2017年
(平成29年)
174.9点 160点 59.3%
2016年
(平成28年)
181.5点 165点 61.1%
2015年
(平成27年)
187.5点 170点 63.0%
2014年
(平成26年)
185.7点 170点 63.0%
12年間
の平均
179.3点 163点 60.4%

参照:司法試験予備試験の結果について

このように、短答式試験の合格ラインの得点率は、一番合格点が低い年で57.8%、一番合格点が高い年で63.0%と、おおむね6割前後取れば合格できる試験になっています。

仮に、一般教養科目が0点だった場合、法律科目が満点だったとしても合計210点となりますが、合格ラインは例年160点前後であることが多いため、法律科目で8割(168点)前後とることができれば、予備試験の短答式試験を突破することができます。

1-3.数値で見る「0点合格」の可能性

令和7年度の合格点159点を例に、一般教養科目の得点別に必要な法律科目の得点を計算してみましょう。

一般教養の得点 必要な法律
科目の得点
(210点満点中)
法律科目の
必要得点率
達成難易度
0点 159点 75.7% 非常に高い
12点(4問正解) 147点 70.0% 高い
18点(6問正解) 141点 67.1% やや高い
24点(8問正解) 135点 64.3% 標準的
30点(10問正解) 129点 61.4% 達成しやすい


この表から分かるように、理論上は一般教養が0点でも法律科目で75.7%を取れば合格できます。しかし、予備試験レベルの法律科目で安定して75%以上を取ることは、相当な実力を要求されるのが現実です。

1-4.一般教養科目の対策は効率が悪い

一般教養科目は、他の法律科目と比べて出題範囲が膨大で、全ての試験範囲を網羅的に学習することは非常に困難です。また、法律科目の論文の勉強に時間を割かなければいけない予備試験の受験生にとって、短答式試験にしか出題されない科目の勉強に力を入れるのは、非常に効率が悪いといえるでしょう。

問題の難度も一般教養科目は難しく、対して、法律科目は基本的な知識が出題されます。基本知識で得点できる法律科目に対策を絞ることが、得点戦略上有効といえます。

2.そもそも予備試験の一般教養科目とは?

ここで、予備試験で出題される一般教養科目について、その概要を確認していきます。

2-1.予備試験の短答式試験のみに存在する科目

論文式試験でも一般教養科目が出題されていたことがありましたが、2022年度(令和4年度)より、論文式試験の一般教養科目は廃止され、司法試験と同様の選択科目に変更されました。現在では、予備試験の短答式試験でのみ出題されます。

また、司法試験では、短答式試験でも論文式試験でも一般教養科目は出題されません。つまり、一般教養科目は予備試験の短答式試験だけに存在する特殊な科目なのです。

2-2.一般教養科目が出題される理由

法曹になるための資格を得るための試験で、なぜ法律科目以外の試験が必要なのでしょうか。司法試験委員会は、一般教養科目の出題趣旨について次のように述べています。

学校教育法に定める大学卒業程度の一般教養を基本とし、法科大学院において得られる法曹として必要な教養を有するかどうかを試すものとし、その出題に当たっては、幅広い分野から出題し、知識の有無を問う出題に偏することなく、思考力、分析力、理解力等を適切に試すことができるよう工夫するものとする。また、法律科目の知識のみで容易に解答できるような出題とはならないよう工夫する必要がある。
引用:予備試験の実施方針について|司法試験委員会

法曹として困っている人を助けるためには、法律の知識だけでなく、一定程度の教養や常識を持ち合わせているかどうかが重要です。一般教養科目を試験科目にすることで、法科大学院修了程度の教養を試すだけでなく、法曹として活躍するために必要な、思考力、分析力、理解力等を問うことができるのです。

2-3.一般教養科目の試験範囲

一般教養科目の試験範囲は、以下の4つの分野です。

出題分野 具体的な内容
人文科学 日本史、世界史、地理、思想、
哲学、文学、芸術 など
社会科学 政治学、経済学、社会学 など
自然科学 物理、化学、生物、地学、数学
など
英語 長文読解、英文解釈 など


これらの分野の問題が、特定の分野に偏ることなく出題されます。約40問が出題され、受験生はその中から20問を自由に選択して解答する形式となっています。

2-4.一般教養科目の配点

一般教養科目の配点は1問あたり3点で、約40題の中から20問選択して解答するため、満点は60点となっています。法律基本科目が各30点満点であることを考えると、一般教養科目は法律科目2科目分の配点があることになります。

3.一般教養科目の対策はどの程度すべきか

一般教養科目が0点でも、法律科目で8割得点できれば短答式試験を突破できるとはいえ、他の法律科目の負担を考えると、少しでも点数をとっておくことに越したことはありません。では、一般教養科目の対策をする場合、どれくらい力を入れて対策をとるべきなのでしょうか。

3-1.必要以上に時間をかける必要はない

一般教養科目の対策をするとしても、他の法律科目の勉強に影響が出てしまうくらい時間を割くのは得策ではありません。あくまでも、一般教養科目の得点は法律科目でカバーするのが、短答式試験を効率よく突破するためのポイントであることを頭に入れておいてください。

つまり、戦略的に、一般教養対策には一切時間をかける必要はありません。そのうえで、もし一般教養科目の対策をするのであれば、自分が得意な分野ひとつに絞って勉強することをおすすめします。

3-2.実力レベル別パターン

自分の実力レベルに応じて、最適な得点戦略は異なります。令和7年の合格点159点を基準に考えてみましょう。

パターン 法律科目の実力 一般教養目標点 合計目標点 推奨される対策
パターンA
上位層
80%以上
(168点〜)
0〜15点 168点〜 過去問確認のみ
(約3時間)
パターンB
中位層
70%前後
(147点前後)
12〜21点
(4〜7問)
159点〜 最低限の保険対策
(約5〜10時間)
パターンC
基礎固め層
60%台
(126〜147点)
まだ対策不要 法律優先 一般教養より
法律の基礎固め

※パターンBが最も現実的で多くの受験生に推奨される戦略です。

3-3.効率的な対策のポイント

もし一般教養科目の対策をするのであれば、以下の点に注意しましょう。

対策のポイント 具体的な方法 所要時間の目安
過去問の確認 法務省のホームページで過去問
を解いてみて、自分が得点でき
そうな分野を分析
約3時間
得意分野に絞る 全分野を網羅せず、1〜2分野に
集中。特に社会科学(政治・
経済)が狙い目
約2〜3時間
現場思考問題 論理的に考えれば解ける問題へ
の対応力強化。判断推理、統計
問題など
約2〜3時間
時事問題 試験2週間前に直近1年の重要
ニュース確認
約30分〜1時間


3-4.本番で少しでも点数をとるためのポイント

ほとんど対策せずに本番を迎えたとしても、適当にマークシートを塗りつぶすだけの作業にするのはもったいないです。一見しただけではわからない問題も、よく考えてみると、専門的知識なしでも一般常識で回答できるような問題や、内容が分からなくても論理的に考えることで回答できるような問題も存在します。

一般教養科目では、全40問から20問を選択して解答することになるため、自分の手持ちの知識のみで解答できるような問題をいかに選択できるかが、本番で得点を少しでも上げるコツになります。

3-5.試験当日の時間配分と注意点

一般教養科目の試験時間は90分です。この時間を効果的に使うために、以下のような時間配分を心がけましょう。

時間帯 活動内容 ポイント
最初の10〜15分 全問題の確認。解け
そうな問題の選定
焦らず全体を見渡す。明らか
に解ける問題にチェック
次の50〜60分 選定した問題の解答 確実に解ける問題から着手。
20問を目安に選択・解答
最後の15〜20分 見直しと調整。マーク
ミスの確認
選択欄と解答欄の両方を
マーク確認


重要な注意点: 一般教養科目の答案用紙には「選択欄」と「解答欄」の2つがあり、両方にマークする必要があります。選択欄のマーク漏れがあると、解答欄にマークしていても採点対象となりませんので、必ず両方のマークを確認しましょう。

4.やってはいけない3つの誤った対策

一般教養科目の対策において、避けるべき学習方法を明確にしておきます。

やってはいけ
ないこと
なぜ非効率か
❌ 英語の専門
学習を開始
予備試験の英語は非常に高難度。短期間で得点力向上は困難
で、法律の学習時間を圧迫するだけ
❌ 理系科目
の深入り
物理・化学・生物・地学と範囲が膨大。専門的知識が必要
で、文系受験生には非現実的
❌ 過去問を
何周も解く
出題範囲が広く類似問題が出にくい。繰り返しの効果が薄く、
傾向把握程度で十分


これらの誤った対策に時間を費やすよりも、法律基本科目の精度を高めることに注力すべきです。

5.令和7年試験結果の詳細分析

法務省が公表した最新データから、予備試験短答式試験の実態を分析します。

令和7年予備試験短答式試験の結果

出願者数 受験者数 合格者数 合格率 合格点(270点満点中) 合格者平均点
15,764人 12,432人 2,744人 22.1% 159点 175.8点

※出典:法務省「令和7年司法試験予備試験短答式試験結果」

この数字から読み取れるのは、合格点159点に対して合格者平均点が175.8点と、約17点高いということです。これは、多くの合格者が一般教養科目でも一定の得点を確保していることを示唆しています。

仮に法律基本科目で平均的な得点率(約70%前後、147点程度)を維持していると仮定すると、一般教養科目でも20点から30点程度は得点していると推測されます。つまり、「一般教養0点戦略」は理論上可能であっても、実際の合格者の多くは最低限の得点を確保しているのが現実です。

6.予備試験の一般教養は0点でも合格できるかFAQ

Q.一般教養科目の平均点はどのくらいですか?

A.法務省は一般教養科目単独の平均点を公表していませんが、合格者全体の平均点と法律科目の得点率から逆算すると、合格者の一般教養科目の平均点はおおむね20点〜30点程度(60点満点中)と推定されます。これは20問中7問〜10問程度の正解に相当します。

一般教養科目は出題範囲が広く、対策が困難なため、満点を狙う必要はありません。むしろ、20点から30点程度を確保できれば、法律科目で70%前後の得点と合わせて合格圏内に入ることができます。

重要なのは、一般教養で高得点を目指すことではなく、法律科目で確実に得点を重ねることです。一般教養は「保険」程度の位置づけで考えるのが賢明です。

Q.実際に一般教養0点で合格した人はいるのですか?

A.法務省は個別の受験者データを公表していないため、実際に一般教養0点で合格した事例があるかどうかは公式には確認できません。しかし、理論上は可能であっても、実際には極めて稀なケースと考えられます。

その理由は以下の通りです。

・法律科目で75%以上を安定して取るのは非常に困難
・本番では予期せぬ難問やケアレスミスのリスクがある
・5肢択一のマークシート方式のため、確率的に全問不正解は起こりにくい
・90分という試験時間で20問を選択する中で、常識や論理で解ける問題が数問は含まれている

多くの合格者は法律科目70%前後+一般教養20〜30点という組み合わせで合格しているのが実態です。「0点でも合格できる」という事実は、一般教養に過度な時間をかけなくて良いという意味であり、完全に無視して良いという意味ではありません。

Q.一般教養科目の過去問はどこで入手できますか?

A. 予備試験の一般教養科目の過去問は、法務省の公式ウェブサイトで無料で閲覧・ダウンロードできます。

法務省のサイトでは以下の情報が公開されています。

・短答式試験の問題(PDF形式)
・正解番号一覧
・過去10年以上の全問題

アクセス方法: 法務省ウェブサイト → 「司法試験・予備試験」 → 「司法試験予備試験問題」のページから、各年度の問題をダウンロードできます。

効果的な活用方法: 過去問は何度も解くのではなく、直近3年分程度に目を通して「自分が解けそうな分野」を把握することに重点を置きましょう。人文科学、社会科学、自然科学、英語の4分野のうち、どの分野が得意か、どのタイプの問題なら対応できそうかを確認するのが目的です。

過去問演習に多くの時間を費やすよりも、法律科目の学習に時間を使う方が合格への近道となります。

7.予備試験の一般教養は0点でも合格できるかまとめ

予備試験の一般教養科目が仮に0点だったとしても、法律科目で8割得点することで短答式試験を突破することは可能です。合格者の多くも、法律科目の8割を目標としています。そのため、一般教養の対策に力を入れず、その分他の法律科目の勉強に時間を使うのが、試験対策上、得策であるといえるでしょう。

そのかわり本番では、一般常識や論理的に考えれば解ける問題を選択し、その問題に全力で取り組むことで、得点の最大化を目指すのが良いでしょう。

ポイント 推奨される考え方
理論 0点でも法律75.7%で合格可能
現実 法律75.7%の維持は非常に困難
推奨戦略 法律70%前後+一般教養12〜21点
学習時間配分 法律95%:一般教養5%
対策時間 一般教養は合計5〜10時間程度で十分


予備試験は短答式試験、論文式試験、口述試験の3段階からなる長期戦です。短答式試験はその第一関門にすぎません。一般教養科目という予備試験特有の科目に過度に惑わされることなく、法律家としての実力を着実に積み上げていくことこそが、最終的な予備試験合格、そして司法試験合格への最短距離となります。

2022年度(令和4年度)より、論文式試験で一般教養科目が問われることはなくなりましたが、今後も試験制度が変わることがあるかもしれません。今後の動向にも気を配りつつ、法律科目を中心に学習を進めるようにしましょう。

伊藤塾では、「盤石な基礎」と「合格後を考える」を指導理念に、司法試験合格はもちろんのこと、合格後の活躍まで見据えたお一人おひとりへの丁寧なサポートで、受講生の皆様を全力で支えています。

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著者:伊藤塾 司法試験科

伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。