予備試験の口述試験とは?出題テーマと合格率から見る傾向と対策

予備試験

口述試験のイメージ

口述試験は予備試験だけにある制度で、司法試験にはありません。論文式試験を通過した安心感と面接形式への不安が同時に来るため、何から手をつけるか決めにくい試験です。しかも合格発表から本番までは約5週間しかありません。

本記事では、法務省が公表している2023年から2025年までの出題テーマ12コマを分類し、実際に何が問われているかを整理しました。あわせて過去15年の結果と法務省が定めた採点基準の原文から、合格率と合格点の意味を読み解きます。後半では、論文式試験の合格発表から口述試験本番までの37日間にやることを合格者の声とともに示していきます。

※予備試験全体の日程については、こちらの記事で詳しく解説しています。

1. 予備試験の口述試験とは?

予備試験の口述試験とは、論文式試験の合格者だけが受ける、主査と副査の2人に口頭で答える最終試験です。

1-1. 口述試験は論文式試験と何が違うのか?

論文式試験が書いて示す試験であるのに対し、口述試験は問われたその場で口頭で答える試験です。使う知識の大半は重なりますが、答えを組み立てる時間がなく、相手の質問に正面から答えられるかどうかが評価の軸になります。

法務省の採点基準は、民事と刑事のそれぞれで一応の水準に達しているかを見て点を付け、合計で合否を判定します。深い論点の当否より、基本を正確に応答できるかが問われる設計です。
(出典:法務省「司法試験予備試験口述試験の採点及び合否判定の実施方法・基準について」)

ただし、試験時間と配点について、法務省は決定文書に定めを置いていません。何分で何点という形では公表されていません。

1-2. 試験科目は法律実務基礎科目の民事と刑事

口述試験の科目は法律実務基礎科目の民事と刑事の2つで、1日に1科目ずつ、2日間かけて受験します。論文式試験でも出る範囲ですが、民法や刑法といった法律基本科目の知識もあわせて問われる点に注意が必要です。

法務省のQ&Aは、口述試験を法律実務基礎科目の民事及び刑事を受験した者に実施すると定めています。採点基準では、いずれかを受験しなかった場合はそれだけで不合格になると明記されています。
(出典:法務省「令和8年司法試験予備試験に関するQ&A」)

なお、試験科目は制度の開始から変わっていません。論文式試験で使った実務基礎科目の教材が、そのまま土台になります。

※短答式試験・論文式試験を含む全科目については、こちらの記事で詳しく解説しています。

1-3. 試験日と試験地、当日の流れ

2026年度(令和8年度)司法試験予備試験の口述試験は、2027年(令和9年)1月23日(土)と24日(日)に、東京都又はその周辺で実施されます。最終合格発表は同年2月4日(木)です。
論文式試験の合格発表は2026年12月17日(木)で、口述試験の初日まで37日しかありません。持参する受験票兼日程通知書は12月下旬に郵送されます。電子出願者にはデジタル受験票も発行されますが、郵送される受験票兼日程通知書が正本です。
(出典:法務省「令和8年司法試験予備試験に関するQ&A」)

ただし、試験室の番号と順番は、当日に受付で受け取る番号札ではじめて分かります。後になるほど待機の時間は長くなります。

口述試験 当日の流れ

2. 予備試験の口述試験の合格率は何%?

2025年度の口述試験の合格率は98.91%、直近5年でも98.18%と9割台後半で推移しています。

2-1. 直近5年の口述試験の合格率は98.18%

2025年度の口述試験は受験者457人のうち452人が合格し、合格率は98.91%でした。2021年から2025年の直近5年を見ると、受験2,362人に対し合格2,319人で98.18%です。

もっとも、これは論文式試験を通過した人だけを母数とした数字です。短答式試験の受験者12,432人から見れば、最終合格者452人は3.64%にとどまります。
(出典:法務省「令和7年司法試験予備試験口述試験(最終)結果」)

なお、2011年からの推移は各年の公表資料で確認できます。合格率が9割を切った年はありません。

※予備試験全体の合格率については、こちらの記事で詳しく解説しています。

年(西暦・和暦)口述試験の受験者合格者合格率
2011年(平成23年)122人116人95.08%
2012年(平成24年)233人219人94.00%
2013年(平成25年)379人351人92.61%
2014年(平成26年)391人356人91.05%
2015年(平成27年)427人394人92.27%
2016年(平成28年)429人405人94.41%
2017年(平成29年)469人444人94.67%
2018年(平成30年)456人433人94.96%
2019年(令和元年)494人476人96.36%
2020年(令和2年)462人442人95.67%
2021年(令和3年)476人467人98.11%
2022年(令和4年)481人472人98.13%
2023年(令和5年)487人479人98.36%
2024年(令和6年)461人449人97.40%
2025年(令和7年)457人452人98.91%
15年通算6,224人5,955人95.68%

出典:法務省「司法試験予備試験の結果について」

2-2. 15年間で269人が口述試験で不合格

予備試験が始まった2011年からの15年間で、口述試験を受けたのは延べ6,224人、合格したのは5,955人です。差し引き269人が、論文式試験を通過しながら口述試験では不合格になっています。

直近5年の不合格者は43人、年平均は約9人です。合格率は2011年から2015年の5年間が92.53%、直近5年は98.18%と5.65ポイント上がりました。
出典:法務省「司法試験予備試験の結果について」

ただし、不合格になると翌年は短答式試験から受け直しです。予備試験に筆記試験の免除はないと法務省が明記しています。
(出典:法務省「令和8年司法試験予備試験に関するQ&A」)

2-3. 合格点119点はどう読めばよいのか?

2025年度と2024年度の合格点は、いずれも119点以上でした。各科目の上限は63点で満点は126点です。119点は、例えば民事60点と刑事59点の組み合わせでも届く水準になります。
出典:法務省「司法試験予備試験の結果について」

採点基準は、一応の水準に達していれば60点、超えていれば61点から63点、達していなければ57点から59点、特に不良であれば56点以下と定めています。57点と60点なら合計117点となり、119点には届きません。
(出典:法務省「司法試験予備試験口述試験の採点及び合否判定の実施方法・基準について」)

なお、得点は総合得点と順位という形で本人に通知されます。合格点は毎年の実施結果として公表されるもので、事前に決まっているわけではありません
(出典:法務省「司法試験予備試験口述試験における試験成績の本人通知について」)

評価点数位置づけ
一応の水準を超える
と認められる
61点から63点各科目の上限
は63点
一応の水準に達している
と認められる
60点基準点
一応の水準に達していない
と認められる
57点から59点もう一方の科目
での挽回が必要
特に不良であると
認められる
56点以下合計での到達が
難しくなる

(出典:法務省「司法試験予備試験口述試験の採点及び合否判定の実施方法・基準について」)

合格者の声

D.Zさん 会社員・働きながら合格
民事は要件事実の基本(訴訟物、請求の趣旨、請求原因)を、刑事は刑法の構成要件や刑事手続の流れを抑えるといいです。とにかく基本を大事にして、それぞれ60点を確保すれば受かります。
出典:伊藤塾「予備試験合格体験記」

3. 法務省公表の出題テーマから読む口述試験の傾向

問題そのものは公表されませんが、法務省は毎年、口述試験で扱われた問題のテーマを民事と刑事の日別に公表しています。

法務省公表テーマに現れた論点(2023年から2025年の12コマ)

3-1. 民事6コマに共通する要件事実の型

2023年から2025年までの民事6コマは、いずれも実体法及び攻撃防御方法に関する諸問題というテーマで公表されました。訴訟物を立て、請求原因と抗弁を組み立てる要件事実が毎回の中心です。

公表されたテーマは、建物退去土地明渡請求訴訟、保証債務履行請求訴訟、抹消登記請求及び承諾請求訴訟の3つです。残る3つは、譲受債権請求訴訟、時効取得した不動産の所有権移転登記手続請求訴訟、動産の代金支払請求訴訟でした。
(出典:法務省「司法試験予備試験の結果について」)

ただし、6コマのうち3コマが不動産と登記に関する訴訟です。物権と登記の要件事実は優先して確認する価値があります。

3-2. 刑事は実体法と身柄拘束の二本立て

刑事の6コマは、刑法の実体論と刑事手続を組み合わせる形で公表されています。手続の側では、逮捕・勾留・保釈・接見といった身柄拘束に関するテーマが6コマ中5コマで扱われました。

実体法側は詐欺罪と窃盗罪、殺人罪・自殺幇助罪・嘱託殺人罪、建造物侵入罪、殺人罪と保護責任者遺棄致死罪、業務上横領罪、強盗罪です。手続側は逮捕・捜索差押え、訴因変更、保釈、接見、訴因設定と証言拒絶、公判前整理手続でした。
(出典:法務省「司法試験予備試験の結果について」)

なお、実体法のテーマには括弧書きで論点が添えられます。実行の着手、既遂時期、作為義務、因果関係、故意、罪数といった総論の基本概念が並びます。

年民事の2コマ刑事の2コマ
2023年
(令和5年)
建物退去土地明渡請求訴訟
保証債務履行請求訴訟
詐欺罪と窃盗罪+逮捕
・捜索差押え
殺人罪等+逮捕
・勾留、訴因変更
2024年
(令和6年)
抹消登記請求及び承諾請求訴訟
譲受債権請求訴訟
建造物侵入罪+保釈
殺人罪等+接見
2025年
(令和7年)
所有権移転登記手続請求訴訟
動産の代金支払請求訴訟
業務上横領罪+訴因設定、
証言拒絶
強盗罪+逮捕・勾留等

出典:法務省「口述試験の問題のテーマ(令和5年・令和6年・令和7年)」

3-3. 弁護士倫理はどのくらい問われるのか?

公表された12コマのうち11コマに、弁護士倫理上の諸問題が明記されています。明記がないのは2023年の刑事第1日目だけで、民事は6コマすべてに書かれています。

ここから読み取れる優先順位は、民事が要件事実、刑事が刑法総論の基本概念と身柄拘束の手続、両方に共通する弁護士倫理です。ここを厚くしてから周辺へ広げるのが効率的でしょう。
(出典:法務省「令和5年司法試験予備試験 口述試験における問題のテーマ」)

もっとも、テーマの公表は2017年の考査委員会議の申合せにもとづくもので、実際のやり取りでテーマが変更・追加されることもあると明記されています。
(出典:法務省「司法試験予備試験口述試験における問題のテーマの公表方法等について」)

4. 口述試験で試験官の誘導にどう対応するか

口述試験は、答えに詰まった受験生を試験官が言い換えや条文の参照で導く形で進みます。

4-1. 誘導に乗って会話を続けるための3つの手

民事は訴訟物は何かという問いから始まり、請求原因、抗弁と進みます。刑事は刑法の実体論から刑事手続へ移る流れです。答えの筋が合っていれば、言葉が正確でなくても試験官が言い換えを求めて引き出してくれます。

詰まったときにしてはいけないのは黙り込むことです。分からない旨を伝えて考える時間をもらう、法文を参照してよいか尋ねる、直前の答えを訂正すると宣言する。この3つで会話は続けられます。

ただし、六法を引く回数が増えるほど問答のテンポは落ちます。定義や条文の文言は、見ずに言える状態が理想でしょう。

合格者の声

C.Rさん 会社員・働きながら合格
現状の精一杯の力で口述試験を受験したが、当日は誘導のオンパレードで勉強不足を痛感。
出典:伊藤塾「予備試験合格体験記」

5. 論文式試験のあと口述試験までにやること

合格発表を待たずに9月から再現問答に触れ、12月の発表後は口述模試と既存教材の復習に集中する流れが基本です。

5-1. 9月から動き出す理由

論文式試験の合格発表は12月17日で、口述試験の初日までは37日しかありません。発表を待ってから始めると、形式に慣れる時間と知識を戻す時間のどちらかを削ることになります。
法務省が公表するのは問題のテーマのみで、問答そのものは公表されません。何を聞かれるかを知る手段が限られるぶん、早い段階で聞かれ方の型に触れるという価値が大きくなります。

ただし、論文式試験の直後は消耗しています。9月は再現問答を読むだけにとどめる組み立ても現実的でしょう。

※論文式試験の結果と口述試験までの流れについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

5-2. 再現問答と口述模試で形式に慣れる

口述試験には市販の過去問集がありません。受験した人が問答を書き起こした再現問答が実質的な過去問となり、発表後は本番と同じ形式で問答を経験できる口述模試へ進む流れです。
再現問答を読むと、訴訟物から請求原因、抗弁へ進む民事の型や、実体論から手続へ移る刑事の型が見えてきます。回答部分を隠して自分で答える使い方が効果的です。
もっとも、一人での練習では誘導への乗り方や作法までは再現できません。人を相手に問答すること自体が訓練になります。

合格者の声

C.Eさん (一橋大学法学部3年)
短答論文と違い、実際に人と会話をする試験であるため、独特な雰囲気があり、それに慣れる必要があります。ただ、知識量としては論文に少し補充する程度であるため、形式面を重視して対策を練るのが良いと思います。
出典:伊藤塾「予備試験合格体験記」

F.Hさん(一橋大学法学部4年)
口述試験は独特の緊張感があるため、伊藤塾の口述模試は本番の空気に慣れる場慣れの機会として非常に有益でした。また、友人と過去問を出し合うロールプレイングを繰り返し、頭の中にある知識を、即座に声に出して正確に伝える訓練を徹底しました。
出典:伊藤塾「予備試験合格体験記」

5-3. 新しい教材には手を出さない

この時期に新しい教材を増やすのは避けたほうが安全です。民事は要件事実、刑事は刑法と刑事訴訟法の基礎知識を、これまで使ってきた教材で回しましょう。

公表テーマが示す優先順位も、要件事実、刑法総論の基本概念、身柄拘束の手続、弁護士倫理という基礎的な範囲です。新しい範囲を足すより、学んだ範囲を口頭で出せる状態にするほうが得点に直結します。

ただし、声に出して答える練習だけは別です。紙の上で説明できることと、人に説明できることは違います。

5-4. 口述対策が向いている進め方と別の選択肢

【この進め方が向いている方】

論文式試験の手応えにかかわらず、9月のうちに再現問答へ目を通せる方に向いています。発表を待ってから動くと、形式に慣れる時間と知識を戻す時間のどちらかを削ることになります。

【他の選択肢も検討したい方】

論文式試験の直後に力が尽きる方や、仕事と両立して9月から動けない方には別の形もあります。発表後の5週間を、前半は要件事実と刑事手続の確認、後半は口述模試と練習に区切る組み立てです。

6. 予備試験の口述試験に関するよくある質問(FAQ)

予備試験の口述試験の合格率はどれくらいですか?

2025年度の口述試験は受験者457人のうち452人が合格し、合格率は98.91%でした。直近5年では受験2,362人に対し合格2,319人で98.18%です。
短答式試験の受験者12,432人を母数にすると、最終合格者452人は3.64%です。口述試験の高い合格率は、論文式試験を通過した人だけを母数にした数字である点に注意してください。
(出典:法務省「令和7年司法試験予備試験口述試験(最終)結果」)

予備試験の口述試験の合格点は何点ですか?

2025年度と2024年度の合格点は、いずれも119点以上でした。各科目の上限が63点で満点は126点なので、例えば民事60点と刑事59点でも届きます。
基準点は60点で、超えると61点から63点、達していないと57点から59点、特に不良は56点以下です。民事と刑事のいずれかを受験しなかった場合は、それだけで不合格になります。
(出典:法務省「司法試験予備試験口述試験の採点及び合否判定の実施方法・基準について」)

予備試験の口述試験はいつどこで行われますか?

2026年度司法試験予備試験の口述試験は、2027年1月23日と24日、東京都又はその周辺で実施されます。最終合格発表は同年2月4日です。
試験地が1か所のため、地方にお住まいの方は前日入りの宿泊準備が必要です。
(出典:法務省「令和8年司法試験予備試験に関するQ&A」)

司法試験にも口述試験はありますか?

司法試験に口述試験はありません。予備試験だけの制度で、司法試験は短答式試験と論文式試験の2つで構成されています。
口述試験を経験するのは、予備試験を経て司法試験の受験資格を得ようとする方だけです。

予備試験の口述試験は廃止されるのですか?

廃止の予定は公表されていません。2026年度司法試験予備試験の実施日程にも記載されており、2027年1月に実施されます。
デジタル化が進む中でも、予備試験でCBT方式の対象となるのは論文式試験のみです。
(出典:法務省「令和8年司法試験予備試験に関するQ&A」)

口述試験に不合格になったら翌年はどこから受け直しですか?

翌年は短答式試験から受け直しです。法務省は、前年に論文式試験まで合格していても筆記試験免除の制度はないと明記しています。
科目の一部免除もありません。15年間で269人が論文式試験を通過しながら口述試験で不合格になっている点を踏まえると、最後の5週間の使い方は結果を大きく左右します。
(出典:法務省「令和8年司法試験予備試験に関するQ&A」)

予備試験の口述試験で落ちる人にはどんな特徴がありますか?

法務省は不合格の理由を公表していません。採点基準から読み取れるのは、基本的な事項に一応の水準で応答できるかが見られているという点です。
試験官は詰まった受験生に言い換えや条文の参照を促します。黙り込まずに会話を続けられるかが分かれ目です。

口述試験の対策はいつから始めるべきですか?

論文式試験が終わった9月から再現問答に触れ、12月の発表後に口述模試と既存教材の復習へ進む流れが基本です。発表から本番までは37日しかありません。
法務省が公表するのはテーマのみのため、早めに再現問答を読み始める価値があります。

※最終合格発表については、こちらの記事で詳しく解説しています。

7. 口述試験は公表テーマから逆算して準備できる

予備試験の口述試験は、法務省の公表テーマから何が問われるかを逆算でき、過去15年の結果から合格の水準も見える試験です。

  • 2025年度の合格率は98.91%、直近5年は98.18%
  • 15年間で269人が論文式試験を通過したあとに不合格
  • 合格点119点は民事60点と刑事59点でも届く水準
  • 民事は要件事実、刑事は実体法と身柄拘束、そして弁護士倫理
  • 2027年1月23日と24日に東京都又はその周辺で実施される

論文式試験を受け終えた方は、合格発表を待たずに再現問答へ目を通してください。これから学習を始める方は、法律実務基礎科目が最後まで問われると頭に置いて計画を立てましょう。

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