社労士試験は簡単だった?実際の難易度を徹底検証!

難易度・合格率

2025年11月18日

「社労士試験 簡単だった」SNSやインターネットで、こういったキーワードを目にすることがあります。

これは本当なのでしょうか?

結論から言えば、社労士試験は決して簡単な試験ではありません。

本記事では、次の点について取り上げました。

・社労士試験の難易度
・社労士が簡単だと言われる理由
・社労士試験に合格するポイント

社労士試験の本当の難易度が気になる方は、是非ご一読ください。

1. 社労士試験結果から難易度を考察

1-1. 令和7年度(2025年度)社労士試験の結果

令和7年10月1日に発表された第57回社会保険労務士試験の結果は、以下の通りでした。

  令和7年度 令和6年度 対前年比
受験者数 43,421人 43,174人 0.6%増
合格者数 2,376人 2,974人 20.1%減
合格率 5.5% 6.9% 20.3%減

出典:社会保険労務士試験オフィシャルサイト|第57回(令和7年度)社会保険労務士試験の合格者の発表について

この結果を見れば、社労士試験は「誰でも簡単に合格できる試験」ではありません。受験者数は前年並みで推移する中、合格者数は約600人減少しており、合格の難易度が上昇した年であったと言えます。

1-2. 過去10年の合格率推移

社労士試験の合格率は、過去10年間で見ても低い水準を維持しています。

試験年度 受験者数 合格者数 合格率
2025年(令和7年) 43,421人 2,376人 5.5%
2024年(令和6年) 43,174人 2,974人 6.9%
2023年(令和5年) 42,741人 2,720人 6.4%
2022年(令和4年) 40,633人 2,134人 5.3%
2021年(令和3年) 37,306人 2,937人 7.9%
2020年(令和2年) 34,845人 2,237人 6.4%
2019年(令和元年) 38,428人 2,525人 6.6%
2018年(平成30年) 38,427人 2,413人 6.3%
2017年(平成29年) 38,685人 2,613人 6.8%
2016年(平成28年) 39,972人 1,770人 4.4%
平均 39,763人 2,470人 6.1%

出典:厚生労働省|社会保険労務士試験の合格者発表

過去10年の合格率の平均値は6.1%、中央値は6.4%です。最も合格率が高かった年でも7.9%(令和3年度)、最も低かった年は4.4%(平成28年度)でした。どの年度を見ても10%を切る合格率になっており、社労士試験が難関国家資格であることがわかります。

1-3. 他資格との合格率比較

社労士試験の難易度を相対的に理解するため、他の主要な国家資格との合格率を比較してみましょう。

国家資格 合格率 平均勉強時間
司法書士 5.2% 2,000〜3,000時間
中小企業診断士 5.9% 800〜1,000時間
弁理士 6.1% 2,000〜3,000時間
社会保険労務士 6.4% 800〜1,000時間
土地家屋調査士 9.6% 1,000〜1,500時間
行政書士 13.9% 600〜1,000時間
宅地建物取引士 17.2% 400〜600時間

※すべて2023年(令和5年)の試験結果データ
※試験が複数次に及ぶものは、最終合格率で表示

社労士試験は、司法書士や中小企業診断士と同等レベルの合格率であり、行政書士や宅建士と比較すると難易度が高いことが分かります。

2. なぜ「簡単だった」と感じる人がいるのか

合格率が5〜6%という厳しい数字にもかかわらず、なぜネット上には「社労士試験 簡単だった」というキーワードが存在するのでしょうか。その背景には、いくつかの重要な理由があります。

2-1. 理由①適切な準備をした人の主観的評価

社労士試験に合格するために必要な学習時間は、一般的に800〜1,000時間と言われています。この学習時間をしっかりと確保し、計画的に学習を進めた方にとっては、「想定していたよりも簡単だった」と感じることがあるようです。

重要なのは、これは試験そのものが簡単だったのではなく、十分な準備ができていたからこその感想であるようです。1,000時間以上の学習時間を投入し、過去問を何度も繰り返し、法改正にも対応した受験生にとって、試験本番は「学習してきたことの確認」という側面が強くなります。その結果、「思ったより簡単だった」という印象を持つのです。

2-2. 理由②試験制度の特性による「救済措置」

社労士試験では、問題の難易度が極端に高かった科目について、合格基準点が引き下げられる「救済措置」が設けられています。

【令和7年度試験の救済措置】

厚生労働省が公表した合格基準によると、令和7年度試験では以下の科目で基準点の引き下げが行われました。

◉選択式試験(通常は各科目3点以上が必要)

 ●労働者災害補償保険法:2点以上
 ●労務管理その他の労働に関する一般常識:2点以上
 ●社会保険に関する一般常識:2点以上

◉択一式試験(通常は各科目4点以上が必要)

 ●雇用保険法:3点以上

出典:厚生労働省|第57回社会保険労務士試験の合格基準及び正答について

この救済措置により、本来であれば不合格だった受験生が合格できるケースがあります。このような経験をした合格者が「運が良かった」「意外と簡単だった」と表現することがあるようです。ただし、これは救済措置という特殊な制度があってこその結果であり、試験自体の難易度が低いことを意味するものではありません。

2-3. 理由③実務経験や関連知識の有無

社労士試験は、労働・社会保険に関する法律知識を問う試験です。そのため、人事・労務部門で働いている方や、すでに社労士事務所で補助者として働いている方にとっては、業務で日常的に触れている内容が試験に出題されることになります。

実務で扱う手続きや制度に関する知識がすでにあると、暗記すべき内容も頭に入りやすく、学習効率が格段に上がります。こうした背景を持つ受験生にとっては、「実務で知っていることの確認」という側面が強くなり、相対的に「簡単」と感じやすい傾向があるようです。

2-4. 理由④他の難関資格との相対的比較

司法試験や公認会計士試験、税理士試験など、さらに難易度の高い資格と比較して「社労士は簡単だった」と表現されることもあるようです。

例えば、司法試験の合格に必要な勉強時間は5,000〜8,000時間、税理士試験は2,500〜5,000時間と言われています。これらの試験を経験した方や、法学部出身で法律の基礎知識がある方にとっては、社労士試験の学習範囲や難易度が相対的に低く感じられることがあります。

しかし、これはあくまで相対的な評価であり、社労士試験自体の難易度が低いということではありません。

3. 社労士試験に合格した人の特徴

厚生労働省が公表した第57回試験のデータを分析すると、合格者の受験者層の特徴が見えてきます。

3-1. 年齢別合格者の分析

年齢層 割合
20歳代以下 12.7%
30歳代 32.5%(最多)
40歳代 27.5%
50歳代 18.9%
60歳代以上 8.4%
合計 100.0%

出典:厚生労働省|第57回社会保険労務士試験の合格者発表

30〜40代が全体の約6割、40代以上も含めると8割以上が社会人層を占めています。この年齢層は、業務で労働・社会保険に触れる機会が多く、実務知識を試験に活かせる立場にあります。一定の社会人経験があることで、労働法規や社会保険制度の必要性を実感として理解できるため、学習内容が「机上の空論」ではなく「実際に使える知識」として定着しやすいという特徴があるようです。

3-2. 職業別合格者の分析

職業 割合
会社員 58.4%(最多)
公務員 11.7%
無職 11.0%
団体職員 4.8%
自営業 3.6%
その他 10.5%
合計 100.0%

出典:厚生労働省|第57回社会保険労務士試験の合格者発表

社会人が約8割を占めており、働きながら合格した方が大多数です。特に人事・労務部門で働く方は、業務知識が直接試験に役立つため、学習効率が高くなります。また、公務員も一定数の合格者を出しており、安定した学習時間の確保と、行政手続きに関する理解が有利に働いていると考えられます。

一方、無職の方も約1割と一定数おり、学習時間を十分に確保できる環境にあることが合格に結びついているケースもあるようです。

4. 社労士試験の科目別難易度について

社労士試験は10科目から構成されていますが、科目によって難易度にばらつきがあります。「簡単だった」と感じる方の多くは、比較的取り組みやすい科目で確実に得点し、難易度の高い科目でも基準点をクリアする戦略を立てているようです。

4-1. 比較的取り組みやすい科目

◉労働基準法

労働法の基本となる科目で、体系的に整理されているため理解しやすいという声が多く聞かれます。また、働く人なら誰でも多少は馴染みのある内容であるため、取り組みやすい科目と言えます。ただし、判例や通達からの出題も多く、単純な暗記だけでは対応できない点には注意が必要です。

◉雇用保険法

実務で扱う機会が多く、具体的なイメージを持ちやすい科目です。失業給付や育児休業給付など、身近な制度を学ぶため、暗記すべき内容も頭に入りやすい傾向があります。

◉労働者災害補償保険法

労災事故が起きた場合の流れを体系的に理解すれば、比較的得点しやすい科目です。保険給付の種類と給付条件を整理して覚えていくことで、確実に得点できるようになります。

4-2. 難易度が高い科目

◉厚生年金保険法・国民年金法

年金制度は複雑で、計算問題も多く出題されます。特に厚生年金保険法は出題範囲が広く、細かい数字を正確に覚える必要があるため、最も学習時間を要する科目の一つです。多くの受験生が「最も難しい」と感じる科目であり、この科目で苦戦して不合格となるケースも少なくありません。

◉一般常識(労働・社会保険)

出題範囲が広く、労働経済の統計データや最新の法改正など、直前まで対策が難しい内容が含まれます。労働経済白書や厚生労働白書からの出題があり、どの部分から出題されるかの予想も困難です。この科目で基準点を下回り不合格となる受験生も多いため、「救済措置」が適用されることが多い科目でもあります。

4-3. 救済措置の実態と影響

前述の通り、令和7年度試験では選択式で3科目、択一式で1科目の救済措置が行われました。この救済措置により、合格ラインに達することができた受験生は少なくありません。

救済措置の恩恵を受けて合格した方が「意外と簡単だった」と感じるケースもありますが、これは本来の合格基準では不合格だった可能性があることを意味します。救済措置に頼る学習戦略ではなく、全科目で確実に基準点をクリアできる実力を養うことが重要です。

5. 社労士試験に合格するためのポイント

社労士試験に合格した方には共通点があります。では、どのような学習戦略を立てれば合格レベルまで実力を高めることができるのでしょうか。

5-1. 戦略①1,000時間以上の学習時間確保

社労士試験に合格した方の多くは、1,000時間以上の学習時間を確保しています。これは1日3時間の学習を継続する計算です。

働きながら受験する場合、通勤時間や昼休み、週末などをうまく活用し、計画的に学習時間を積み上げることが重要です。短期間での詰め込み学習ではなく、長期間にわたって継続的に学習することで、知識が確実に定着し、試験本番で「学習してきたことの確認」というレベルに到達できます。

5-2. 戦略②科目間のバランスを保った学習

社労士試験の最大の特徴は、「全科目で基準点をクリアする必要がある」という点です。総合得点が高くても、1科目でも基準点を下回れば不合格となります。

そのため、得意科目に偏った学習ではなく、苦手科目を含めた全科目でバランス良く得点できる力を養うことが求められます。合格した方の多くは、この科目間バランスを意識した学習を実践しています。

苦手科目を作らないためには、早い段階で全科目の概要を把握し、どの科目にどれくらいの時間を配分すべきかを計画的に決めることが重要です。

5-3. 戦略③過去問と模試の徹底活用

合格した方の多くは、過去問と模試を徹底的に活用しています。

過去問を繰り返し解くことで、出題傾向やよく問われるポイントを把握できます。同じ問題を5周、10周と繰り返すことで、知識が確実に定着し、本番で似たような問題が出題された際に確実に得点できるようになります。

また、模試を受験することで、本番と同じ時間配分での問題演習ができ、実戦力を養うことができます。模試で間違えた問題を徹底的に復習することで、弱点を克服していくことも重要です。

6. 合格が難しいと感じたら受験指導校もおすすめ

社労士試験は決して簡単な試験ではありません。膨大な量の法律知識を短期間で習得するためには、効率的な学習方法が不可欠です。

特に、法律の知識がない状態から学習を始める人にとって、何から手をつけていいのかわからないのが実情でしょう。働きながら勉強した結果、数年勉強しても合格できなかったという受験生も珍しくありません。

そんな時におすすめなのが、受験指導校の社労士合格講座です。受験指導校では、社労士試験に精通した講師陣によって、洗練された学習カリキュラムが組まれていますので合格に必要なポイントだけを集中的に学習することができます。もちろん、受験指導校に通うためには一定の費用はかかります。

しかし、合格するための最短ルートだと考えれば、コストパフォーマンスは決して悪くありません。社労士試験の合格を本気で目指すなら、選択肢の1つとして、受験指導校の利用も検討してみてはいかがでしょうか。

7. 社労士試験に関するよくある質問(FAQ)

Q. 独学でも「簡単だった」と感じられますか?

A.法学部出身者や実務経験者であれば、独学でも効率的に学習を進められる可能性があります。しかし、完全な初心者にとって、独学は相当ハードルが高いと言えます。

社労士試験で勉強する内容は、専門的な用語や難解な判例が多く含まれます。法律に触れたことがない人や実務経験がない人にとって、これらを独学で理解するのは容易ではありません。

また、法改正への対応も独学では困難になるでしょう。もし難しいと感じてるのであれば受験指導校の利用もおすすめしています。毎年更新される法改正に対応した講義や教材が提供されるため、効率的に最新情報を学ぶことができます。

Q. 働きながらでも「簡単だった」と感じられますか?

A.社労士試験の合格者の約8割が社会人です。働きながら合格を掴んでいる方が大多数であることは、データからも明らかです。

ただし、働きながら合格した方の多くは、通勤時間や昼休み、週末などを活用し、1日2〜3時間の学習時間を継続しています。仕事と勉強の両立は決して楽ではありませんが、計画的に時間を確保し、効率的に学習を進めることで、働きながらでも合格は十分に可能です。

Q. 一発合格できる確率はどれくらいですか?

A.受講生の中で1回目の受験で合格できるのは約26%です。全体の合格率が過去10年平均で6.1%であることを考えると、全受験生の中で一発合格できるのは、計算上わずか1.4%程度ということになります。約4人に1人が一発合格しているということになります。適切な学習方法と十分な学習時間を確保すれば、一発合格も決して不可能ではありません。

8. まとめ

社労士試験について「簡単だった」という声は確かに存在しますが、それは「十分な準備と正しい学習方法により、想定通りの結果を得られた」という意味であり、決して「誰でも簡単に合格できる試験」という意味ではありません。

本記事のポイント

◉ 令和7年度の合格率は5.5%、過去10年平均でも6.1%の難関試験である
◉ 合格者の多くは、1,000時間以上の学習時間を確保している
◉ 実務経験や適切な学習方法により、効率的に合格を目指すことは可能
◉ 全科目で基準点をクリアする必要があり、バランスの取れた学習が不可欠
◉ 「簡単」という情報を鵜呑みにせず、現実的な難易度を理解して学習に取り組むことが重要
◉ 合格が難しいと感じたら受験指導校の活用もおすすめ

これから社労士試験に挑戦する方は、「簡単だった」という声に惑わされず、しかし「不可能ではない」という確信を持って、計画的に学習を進めてください。適切な準備と正しい学習方法により、あなたも「簡単だった」と感じられるレベルまで実力を高めることは十分に可能です。

特に、限られた学習時間の中で合格を目指す場合、短期間で確実な合格を狙うのであれば、受験指導校の活用は必須といってもよいでしょう。

伊藤塾は1995年の開塾以来約30年にわたり、司法試験や司法試験予備試験といった最難関の法律資格において、業界トップクラスの合格実績(2024年の合格者占有率90.2%)を出し続けている法律系受験指導校のトップランナーです。その圧倒的なノウハウを活かし、「社労士試験合格講座」を開催しております。「簡単だった」は主観的な事実ですので、難しいと感じるかもしれませんが、伊藤塾の提供する学習をしていただければ、「必ず合格」を掴むことができる学習カリキュラムを提供しています。

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伊藤塾 社労士試験科

著者:伊藤塾 社労士試験科

伊藤塾 社労士試験科が運営する当コラムでは、社会保険労務士試験に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。