社労士は就職に有利?年代別キャリアプランと未経験からの成功ポイントを徹底解説
キャリア
2025年10月30日
社会保険労務士(以下、社労士)資格は、就職や転職をはじめとしたキャリア形成において、大きな強みとなります。
なぜなら、「人」に関する業務は、すべての企業にとって欠かすことのできないものであり、それらに関する専門的知識を備えた社労士は、社会的にも重要な役割を担う職業だからです。
現代社会では、働き方改革やハラスメント対策、育児・介護と仕事の両立支援など、人事労務に関わる制度がますます複雑化しています。こうした状況の中、専門家である社労士のニーズは年々高まっています。
このように、社労士は社会的に代替の効かない存在となっており、資格を持つことは様々なキャリアパスにおいて確かな強みとなります。
しかし、インターネット上では「社労士として就職して後悔した」といった声も見られ、本当に自分のキャリアの強みになるのか、不安に感じている人もいらっしゃるかもしれません。
このような後悔の多くは、社労士資格に期待していたキャリアの可能性と、実際の就職市場や業務内容とのギャップから生じることがほとんどです。
本記事では、そうしたミスマッチを防ぐために、社労士としての具体的な業務内容や働き方を正確に解説した上で、各年代に応じたキャリア設計の仕方や、未経験からでも就職や転職で成功するためのポイントを詳しく説明していきます。
将来のキャリアプランとして社労士という選択肢が持つ可能性を、ぜひ一緒に探っていきましょう。
【目次】
1.「社労士として働く」とは
社労士の仕事は、社会的貢献性が高く、大きなやりがいを感じられるものです。
まずは、社労士が具体的にどのような業務を行うのか、そして社会での役割と現代で求められるスキルについて説明していきます。
1-1. 社労士の主な業務内容
社労士の業務は、労働法や社会保険の専門家として、企業における人事手続きや労務相談に携わることです。
主な業務の分類としては、法律で社労士のみに認められた独占業務と、コンサルティングなどの資格を持っていなくても行うことができる非独占業務があります。
【独占業務(1号・2号業務)】
・手続き代行: 労働・社会保険に関する書類作成、申請代行(入退社、保険給付など)
・帳簿書類の作成: 労働者名簿、賃金台帳、就業規則などの作成や届出
【非独占業務(3号業務)】
主に労務管理・社会保険に関する助言や指導
(人事制度の構築、賃金制度の設計、労務トラブルの相談、ハラスメント対策など)
※社労士資格を持っていなくても行うことができますが、多くの企業が人事労務の専門家である社労士に依頼をする分野です。
このように、企業の「人」に関するあらゆる面をサポートするのが、社労士の主な業務です。労働者が安心して働ける環境を整備することにより、企業全体の健全な発展に貢献するという、社会貢献性の高い役割が求められています。
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1-2.これからの社労士に求められる役割とスキル
現代の社労士は、従業員の多様な働き方や頻繁な法改正への対応が求められます。数いる社労士の中で企業から求められるためには、主に以下のようなスキルが必要です。
①法改正への対応力があること
企業のハラスメント対策や従業員の育児介護と仕事の両立支援など、企業の労務管理に関する法律は、頻繁に改正されています。常に最新の法改正をチェックし、顧問先に向けて情報提供することが求められます。
②個別に最適な解決策を提示できること
AIの進化により、定型的な手続きやマニュアル通りの回答の価値は低下しています。これからの社労士に求められるのは、コミュニケーションを通じて各企業の本質的な課題を正確に把握し、個々に合わせた解決策を提案できる力です。
③デジタル対応力があること
あらゆる業務で電子化が進む現代において、社労士業務でもITの活用が不可欠です。クラウド型勤怠・給与管理システムの導入支援や各種行政手続きのオンライン化に精通することは、顧問先企業と社労士双方の業務効率を飛躍的に向上させる鍵となり、求められる社労士の要素となり得ます。
このように、現代において「需要のある社労士」とは、法律知識だけでなく、コミュニケーション能力やITスキルなども併せ持つことが重要になります。
2.なぜ社労士は就職に有利なのか?
社労士資格は、就職・転職において高く評価され、有利に働くことが期待できます。
2-1.独占業務による市場価値の高さ
前述した通り、労働・社会保険に関する手続き代行や就業規則の作成・届出は、法律で定められた社労士の独占業務です。つまり、これらの業務は社労士資格を持たない人には行うことができず、他に替えることができません。
このような専門性の高い独占業務があるからこそ、社労士は社会的に必要とされ、高い市場価値が生まれます。そのため、就職や転職の際にも、社労士資格を持っていることが大きな強みとなるのです。
2-2.全ての事業者に不可欠な「人事労務」専門家としての需要
従業員を一人でも雇うと、人事労務に関する手続きが必ず発生します。そのため、社労士が扱う業務は、規模や業種を問わず、あらゆる事業者にとって必要不可欠です。
人の雇用がある限り社労士の仕事はなくならないため、景気や流行りなどにも左右されにくい、常に社会に必要とされる専門職であると言えます。
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3.社労士の代表的な就職先とキャリアプラン
社労士資格を活かせる就職先は多岐にわたります。ここでは代表的な4つのキャリアプランをご紹介します。
3-1.社労士事務所・社労士法人
社労士事務所への就職は、最も代表的な就職先の1つです。社労士業務を専門とする環境で、様々な業種・規模の事業所の人事労務に携わることにより、社労士としての実務の全体像を把握しながら、応用力を養うことができます。
経験豊かな先輩社労士の指導のもとで経験を積めるため、未経験から社労士のキャリアをスタートさせることが可能です。将来の独立開業を目指す人にとっても、実務能力の向上はもちろん、事務所経営の仕方や人脈を築くための貴重なステップとなるでしょう。
3-2.一般企業(人事労務)でのキャリア
企業内での人事労務部門の中心となって携わることも、社労士としての主なキャリアの選択肢の1つです。社内における人事労務の専門家として活躍することで、組織に不可欠な人材としてキャリアを築くことができます。特定の企業に特有の実務も多いため、社労士事務所で培われるような「幅広い実務経験」とは異なりますが、組織の中核を担う人事労務に携わることにより、企業にとって「代替の効かない存在」へと成長できるのが大きな魅力です。
さらに、社労士資格が専門性の証として評価され、昇進や昇格で有利になるケースも少なくありません。企業の成長を内部から支え、一つの組織に腰を据えて貢献したいと考える人に最適な選択肢です。
3-3.税理士事務所・弁護士事務所
税理士法人や弁護士法人など、他の士業と連携する事務所も、社労士の就職先の1つとして挙げられます。
こうした事務所は、クライアントが抱える様々な課題にワンストップで対応できることを強みとしており、労務分野の専門家である社労士の需要が高まっています。働く側にとっても、社労士としての専門性を発揮しながら、税務や法務といった他分野の実務に日常的に触れられるメリットがあります。これにより、一つの専門分野に留まらない広い視野と多角的な課題解決能力を養うことができます。
専門性の幅を拡げながらキャリアを構築したい人にとって、理想的な職場環境といえるでしょう。
3-4.独立開業という選択肢
社労士資格は、業務の専門性の高さから「独立開業」という道が開きやすいことも、大きな魅力の1つです。社労士には独占業務があるため、一般的な起業と比べて事業が軌道に乗りやすく、安定した基盤を築きやすいのが特徴です。
開業するためには資格取得と合わせて実務経験または指定講習の受講が必要となりますが、独立後は自分の裁量で働き方を決め、努力と成果次第で高収入を目指すことも可能になります。また、定年という概念がないため、生涯にわたって専門家として活躍し続けることができます。
自らのビジョンで事業を運営したい人にとって、大きな目標となる働き方です。
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4.【年代別】社労士資格を活かした就職・転職のポイント
社労士資格を活かしたキャリアの作り方は、年代によっても変化していきます。
4-1. 20代:社労士キャリアの土台作り
学生時代など20代のうちに社労士資格を取得することは、就職やキャリア形成において他者との大きな差別化要因となります。
就職活動においては、若くして難関資格を突破したという実績が、高い学習意欲や目標達成能力の何よりの証明となり、企業の採用担当者からも高く評価されるでしょう。
キャリア形成としては、たとえば最初のステップとして社労士事務所や社労士法人を選ぶことで、実務の基礎を確実に固めながら、多様な業務に触れることができます。そうした経験を重ねるうちに、「自分が社労士としてどのように働きたいか」が明確になっていくはずです。
企業の人事部門として中核を担う役割を選択したり、独立開業を目指したりなど、自分が望むキャリアの道筋が見えてきたとき、確かな実務や知識の基盤があるからこそ、スムーズにキャリアチェンジが可能になります。20代という早い段階での資格取得と実務経験を積むことは、30代以降のキャリア選択肢を大きく広げる貴重な土台となります。
4-2. 30代:専門性を活かした中途採用
社会人経験を積んだ30代は、これまでの職務経験と社労士資格を効果的に組み合わせることで、独自の市場価値を創り出すことが可能です。社労士業務が未経験の場合、20代と比較して採用のハードルは高まる傾向にありますが、前職での専門知識やスキルを社労士資格と掛け合わせることで、差別化された強みを持つ人材として評価されやすくなります。
例えば、営業経験者であれば「コミュニケーション能力に長けた社労士」として、IT業界出身者なら「デジタルツールの活用に強い社労士」など、その独自の経験を武器にできます。
30代にとっての社労士資格は、前職の経験と組み合わせることが、唯一無二の専門家として自分の市場価値を高めていける鍵となるのです。
4-3. 40代・50代:経験と資格によるセカンドキャリアへの道
40代・50代にとって、社労士資格はこれまで築き上げてきた自らの市場価値をさらに高めるための強力な武器となります。
この年代の未経験での転職は容易ではない部分もありますが、長年培ってきた業界知識、マネジメント経験、人脈といった豊富な「経験値」を、社労士資格という専門性と結びつけることで、これまでの経歴を元にした新たなステップを踏むことができます。
例えば、勤めてきた企業の人事・労務部門の責任者として組織の中核を担う役割や、今まで携わってきた業界企業に対する人事コンサルタントなど、これまでの経験を土台としたポジションへの道が開けます。
また、セカンドキャリアとしての「独立開業」という選択肢も視野に入れられます。これまで構築してきた専門知識や人脈を基盤に、自身の強みを前面に打ち出した社労士事務所の開業が可能となります。
40代・50代の社労士資格は、長年のキャリアで培った経験と人脈といった資産に、専門性を加えて「形」にする鍵となり得ます。経営層のパートナーや組織を導く指導者として、若手にはない深みと説得力のある存在になることができます。
5.未経験者の就職・転職のポイント
未経験で社労士としてのキャリアの一歩を進める際は、他者との差別化ができるような独自性をアピールする必要があります。
5-1.強みや経験を活かした「自分らしさ」や「専門性」の確立
まずは、自分の中にある「自分らしさ」や「専門性」を明確にしておくことが大切です。そのためには、これまでの経験やスキルを棚卸しし、社労士業務とどのように結びつけることができるのかを具体的に考えてみましょう。たとえば、顧客対応の経験があればコンサルティング業務に、経理経験があれば給与計算や社会保険手続きに活かすことができます。このように、これまでのキャリアの中で培ったスキルや知識は、必ず何らかの形で社労士業務に役立てることができます。
自分の強みを明確にすることで、未経験であっても「価値のある人材」として高く評価される可能性が高まります。
5-2.自分が目指す働き方の明確化
社労士として活躍をしたいのであれば、「なぜ社労士になりたいのか」「社労士として何を成し遂げたいのか」を具体的に表現できる必要があります。具体例としては、多くの企業の人事労務をサポートしていきたい、1つの企業でその会社の人事労務の専門家として従事したい、将来独立を目指している、などといったことです。
社労士としての目標を明確にすることで、就職や転職の際に企業に人間性や熱意が伝わり、採用担当者にも良い印象を持たれやすくなります。
5-3.社労士資格を補完するスキルの獲得
社労士資格を持つ人が増加する中で、自分の価値を高めるには、社労士としての知識だけでなく、そのほかのスキルも併せてアピールすることも重要になります。
たとえば、簿記やファイナンシャルプランナー、年金アドバイザーなどの関連資格を取得し、それらが企業の実務にどのように役立つかを伝えることで、自分の専門性を幅広くアピールできます。さらに、学習意欲や社労士業務への積極的な姿勢を示す材料にもなり得ます。
このようにプラスアルファのスキルや資格を取得し、業務への貢献度や将来性を具体的に伝えることで、他の資格保有者との差別化につなげることができます。
6.社労士の就職に関するQ&A
最後に、社労士の就職に関するよくある質問にお答えします。
Q1.社労士資格があっても就職できないケースはありますか?
A.「資格さえあれば誰でも簡単に就職できる」わけではありません。しかし、適切な準備とアプローチによって、社労士資格は就職に有利に働きます。就職できないケースの多くは、自身の強みを上手くアピールできていなかったりすることなどが原因です。社労士の需要は高まっているため、資格を持っていることは就職市場での大きなアドバンテージとなります。
Q2.新卒でも社労士資格を持っていた方が良いですか?
A. 新卒の段階で社労士資格を持っていることは、就職において大きなメリットがあります。在学中に難関資格を取得したという事実は、計画性や継続的な努力ができる人材であることの何よりの証明になります。特に社労士事務所や企業の人事部を志望する場合、他の学生と大きく差をつけることができるでしょう。
Q3.転職するつもりがなければ資格は不要ですか?
A. 転職予定がなくても、現在のキャリアで活用できる可能性があります。現職に留まる場合でも、社労士資格の学習で得た知識は、自社の労務管理やコンプライアンス体制を理解する上で非常に役立ちます。専門知識を持つことで社内での発言力が増し、キャリアアップや昇進に繋がる可能性も十分にあります。企業への貢献度を高める自己投資として、非常に価値ある資格です。
7.社労士資格は就職に有利!大きな可能性と魅力・総まとめ
本記事では、社労士の就職に関して年代別キャリアプランや成功のポイント、社労士資格の持つ大きな可能性などについて解説しました。
ポイントを以下にまとめます。
・社労士資格は、社会的需要が高く、就職・転職を含むキャリア形成において大きな強みとなります。
・社労士の主な業務は、労働法や社会保険の専門家として企業の人事手続きや労務相談に携わることで、独占業務と非独占業務に分かれます。
・現代の社労士には、頻繁な法改正への対応力、個別最適な解決策を提示するコミュニケーション能力、デジタル対応力が特に求められています。
・社労士が就職に有利な理由は、独占業務による市場価値の高さと、規模や業種を問わず全ての事業者に不可欠な「人事労務」の専門家としての需要があるためです。
・代表的な就職先としては、社労士事務所・社労士法人、一般企業の人事労務部門、税理士事務所・弁護士事務所、そして独立開業といった多様なキャリアプランが存在します。
・年代別キャリアプランとして、20代はキャリアの土台作り、30代は職務経験と資格の組み合わせによる専門性の確立、40代・50代は豊富な経験値と資格を活かしたセカンドキャリアの構築が可能です。
・未経験者が社労士として成功するためには、自身の強みや専門性を明確にし、目指す働き方を具体化し、関連スキルを補完することが重要です。
・社労士資格を持つことは就職市場で大きなアドバンテージであり、新卒の就職活動や現職でのキャリアアップ・昇進にも有効です。
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