司法書士を副業ですることは可能?仕事内容や収入・注意点を解説

キャリア

2025年10月02日

「司法書士の資格を取ったら、副業でも稼げる?」
「会社員を続けながら、司法書士として働くことはできるの?」

このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

結論から言うと、副業で司法書士業務を行うことは可能です。ただし、すべての業務が副業に向いているわけではありませんし、いくつか注意点もあります。

本記事では、副業の司法書士が扱える具体的な仕事内容や報酬の目安、メリット・デメリットについて解説します。さらに、知っておくべき実務上の取扱いも取り上げました。

司法書士になって副業で働きたいと考えている方は、ぜひ最後まで読み進めてください。

1.副業で司法書士を行うことは可能

1-1.副業での司法書士業務を禁止する法律はない

結論として、本業に就きつつ副業で司法書士の業務を行うことは可能です。

司法書士の業務について規定している「司法書士法」には、兼業を禁止する規定が存在しないからです。

実際、司法書士会が司法書士登録を行っている方を対象に行ったアンケートでは、司法書士以外での売上(収入)があるかどうかについて、「会社員としての所得がある」と回答した人が62人(6.8% ※回答者は全体で908人)となっています。無回答者が1,649人もいるため、兼業している方の割合はもう少し多くなると推測されます。

1-2.司法書士会によっては副業に否定的なケースがある

一方で、司法書士会によっては副業に否定的なケースもあります。

これは、副業として司法書士業務を行う場合、司法書士法で定められた義務を遵守できないおそれがあるからです。

特に問題となりやすいのが、「依頼に応ずる義務」と「秘密保持の義務」です。

1-2-1.依頼に応ずる義務

(依頼に応ずる義務)
第二十一条 司法書士は、正当な事由がある場合でなければ依頼(簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除く。)を拒むことができない。

司法書士には「依頼に応ずる義務」が定められています。「正当な事由」が無い限り、やってきた依頼を断ることはできません。

本業の忙しさが正当な事由に含まれるのか、つまり「会社を休めない」などの理由で依頼を断れるのかはかなり微妙なラインでしょう。

実際、司法書士会によっては、「司法書士業務を副業で行うことを良しとしていない」という話も聞こえてきます。副業として活動したい場合は、必ず所属予定の司法書士会へ確認してみましょう。

1-2-2.秘密保持の義務

(秘密保持の義務)
第二十四条 司法書士又は司法書士であつた者は、正当な事由がある場合でなければ、業務上取り扱つた事件について知ることのできた秘密を他に漏らしてはならない。

副業で司法書士業務を行うなら、「秘密保持の義務」にも一層の注意が必要です。

例えば、会社で「不動産登記の依頼があって大変だった」といった何気ない会話をすることも、依頼者の特定につながれば守秘義務違反となるリスクがあります。

本業と副業の情報を完全に分離し、守秘義務を確実に守るための仕組みづくりが不可欠でしょう。

2.副業でできる司法書士業務の内容や報酬目安 

副業でできる司法書士業務には様々なものがあり、知識や経験、副業に使える時間などによりどんな業務を行えるかが異なります。

ここでは、副業でできる主な司法書士業務を3つご紹介します。

報酬単価副業との相性
相続登記★★★☆☆★★★☆☆
一般的な法律相談
契約書の作成
★★☆☆☆★★★☆☆
講演会や
セミナーの開催
★★★★☆※開業直後
★☆☆☆☆

※実績を積んだ後
★★★★★

2-1.相続登記

相続登記は、副業でも比較的扱いやすい業務の一つです。

戸籍などの資料収集は郵送で行えますし、法務局への登記申請もオンライン申請が活用できます。依頼者とも電話やメールでのやり取りが中心なので、平日に働いている会社員でも対応できるでしょう。

報酬の目安は、登記申請1件あたり2〜3万円程度が相場です。

ただし、相続人が多い案件や不動産が複数ある場合など、専門性が高い登記申請であれば、1件あたり10万円程度に設定されているケースもあります。

司法書士は自分で自由に報酬を設定できるため、他の事務所での報酬相場を確認しながら、自分が納得できる報酬を設定できます。

2-2.一般的な法律相談・契約書の作成

法律の専門家として、一般の方の法律相談や契約書の作成を副業で行うことも可能です。

法律相談であれば、本業が休みの土日に行うことができますし、各種契約書の作成であれば、本業の合間を縫って副業を行うことも可能です。

法律相談であれば、わざわざ直接会わなくても、電話やLINE、Zoomなどを利用して行うことができるため、本業を疎かにせず、空いた時間を有効活用して稼ぐことができます。

報酬の目安は、相談時間30分で5,000円程度、契約書1通につき1〜3万円程度が相場となっています。

2-3.講演会やセミナーの開催

司法書士の専門的知識を活かして講演会やセミナーを行うことで、その講師料をもらうこともできます。

講演の内容は、一般の方を対象とした相続に関する内容のものや、会社代表者向けに法改正や登記のポイントを解説するものなど、様々なものがあります。

報酬の目安は、1回2時間程度で3〜5万円程度が相場です。自身の経験や専門的知識を上手くアピールできれば、これだけで一定の収入を得ることができるでしょう。

セミナー開催は土日に行われることが多いため、副業との相性も抜群です。

ただし、副業を始めたばかりの司法書士がいきなり講師を引き受けるのは現実的ではありません。まずは相続登記などの実務経験を積み、専門分野での実績を作ることが大前提です。

3.「不動産登記」を扱うのは副業司法書士だと難しい

ここまで、司法書士業務には、副業でできる仕事もあることを説明しました。

一方で、司法書士のメイン業務でもある「不動産登記」を扱うのは難しいです。不動産登記の肝である「決済」は、平日9時から15時の間(銀行の営業時間内)に実施されるケースが大半だからです。司法書士は必ず決済に立ち会うため、平日の日中に自由に動けることが絶対条件となります。

「決済立会」では、売主・買主・不動産業者などが一同に集まり、司法書士が書類や本人性の確認を実施します。ドラマで話題となった「地面師詐欺」などを防ぐ役割も担っており、スタッフ(補助者など)に任せることはできません。さらに、決済後は、当日中に法務局へ登記申請をする必要があります。不動産取引では数千万円の金銭が動くため、登記申請の失敗は許されません。

決済当日以外にも、事前の調査や打ち合わせなど、平日対応が必要な場面も多くあります。急な日程変更が発生することも珍しくないのです。

上記のような理由から、本業で平日勤務している会社員が扱うことは、実務上不可能に近いと考えられます。

※こちらの記事も読まれています

→ 司法書士の不動産登記とは?仕事の種類や実際の流れ、報酬を徹底解説
→ 地面師とは?ドラマ化された55億円事件の真相と司法書士の役割を解説

4.副業で司法書士業務を行うメリット

働きながら副業で司法書士業務を行うメリットは、次の通りです。

◉独立開業して失敗するリスクを回避できる
◉年収を上げることができる
◉スキルアップで現職の質を高められる
◉経験を活かしてキャリアップできる

それぞれ、詳しく解説していきます。

4-1.独立開業して失敗するリスクを回避できる

働きながら副業で司法書士業務を行うことで、司法書士を本業で行う際のリスクを回避することができます。

司法書士を本業にし、例えば司法書士事務所で働くとなった場合、新人として一から仕事を覚えていく必要があるため、収入が今よりも下がってしまう可能性があります。

また、司法書士として独立開業した場合、経営が波に乗るまである程度の時間がかかります。

一方で、本業の傍ら副業として司法書士業務を行うのであれば、本業での収入源を確保した状態で司法書士業務をスタートさせ、リスクヘッジしながら司法書士業務に慣れていくことが可能である点が最大のメリットといえるでしょう。

※司法書士の独立開業については、こちらの記事で詳しく解説しています。

4-2.年収を上げることができる

副業で司法書士業務を行えるようになれば、その分年収を上げることができます。

さらに、副業で安定的に稼げるようになれば、自信を持って司法書士として独立開業に挑戦することもできるでしょう。

司法書士業務は、経験を積めば積むほど業務効率も上がり、短時間で効率良く稼ぐことも可能となります。結果的に、司法書士業務で現在の年収を超える収入を得ることも十分可能となるでしょう。

※司法書士の年収については、こちらの記事で詳しく解説しています。

4-3.スキルアップで現職の質を高められる

司法書士業務を副業で行うことにより、コミュニケーション能力や書面作成能力を上げられるため、自身のスキルアップに繋がります。スキルを活かせば、本職においても様々な業務に携われるようになるでしょう。

法律相談で磨いたコミュニケーションスキルは、会社内での人間関係を円滑にすることに役立ったり、クライアントとのやり取りにおいて良い影響を及ぼします。

また、実務を通して得た知識は、日常生活の様々な面で役立ちます。

業務を通して、スキルアップできるのも、司法書士業務を副業で行うメリットの1つです。

4-4.経験を活かしてキャリアップできる

司法書士としての経験を積むことで、自身のキャリアアップに良い影響を及ぼすことができます。

法律に関する専門的な知識を持っている司法書士は、転職活動において様々な企業から必要とされます。もし、資格だけでなく実務経験もあることをアピールできれば、今よりも条件の良い仕事ができる可能性が高くなるでしょう。

また、副業として司法書士としての経験を積んでおくことで、本業をやめたあとすぐに独立開業できるようになるのも、副業で司法書士業務を行う大きなメリットになります。

5.副業で司法書士業務を行う注意点

働きながら副業で司法書士業務を行う場合、次の点に注意してください。

◉司法書士として登録する必要がある
◉会社に副業の許可を取る必要がある
◉確定申告を行う必要がある
◉副業の司法書士はクライアントから選ばれにくい

以下、それぞれ詳しく解説していきます。

5-1.司法書士として登録する必要がある

たとえ副業であっても、司法書士として業務を行う以上、日本司法書士会連合会に備えられている司法書士名簿に登録する必要があります。

司法書士試験に合格しても、登録をしていなければ業務を行えないことに注意が必要です。

司法書士として登録するためには、新人研修を受けることが必須です。また、登録手数料や所属する司法書士会への年会費を支払う必要もあるので、ある程度の手間とお金がかかることを頭に入れておく必要があります。

副業で司法書士業務を行う予定がある場合には、登録手続きを進める前に、あらかじめ手続きにかかる費用を用意しておくのが無難です。

※司法書士登録する流れについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

5-2.会社に副業の許可を取る必要がある

今勤めている会社が副業を禁止している場合、副業で司法書士業務を行うことができません。

許可制であれば、あらかじめ許可をとることで、業務に支障のない範囲で副業を行うことができるでしょう。

一方で、就業規則で完全に副業が禁止されている場合には、勝手に副業を行ってしまうと減給や懲戒解雇などの対象になる可能性があります。

副業に関する規定は会社ごとに異なるので、あらかじめ就業規則をしっかり確認しておき、必要であれば副業の許可をとっておくようにしましょう。

5-3.確定申告を行う必要がある

会社に勤めている方であれば、会社が年末調整を行ってくれるため特別な手続きをする必要はありませんが、副業で年間20万円以上の所得がある場合には、別途確定申告を行う必要があります。

司法書士の仕事は高単価のものが多いため、業務量を調整していたとしても20万円を超えてしまう可能性が高いでしょう。

副業収入はあるにも関わらず、確定申告を怠った場合には、無申告加算税や重加算税などのペナルティが課される可能性があります。

手間はかかりますが、ペナルティを受けないためにも、必ず確定申告を行うようにしましょう。

5-4.副業の司法書士はクライアントから選ばれにくい

副業の司法書士は、クライアントから選ばれにくいという側面もあります。

依頼主の立場になって考えてみましょう。例えば、報酬・実績がほぼ同じ司法書士が2人いるとします。Aさんは司法書士を生業としており、Bさんは会社員として働きながら、副業で司法書士をしています。

2人を比較すると、Aさん(本業)に仕事を依頼したい人が大半でしょう。多くの人は、Bさんが副業だと分かった時点で不安を感じるはずです。特に、相続やマイホーム購入など、人生の節目に関わる仕事ほど、本業の司法書士が選ばれる傾向が強いです。

一般的に、副業という立場は大きなハンディになります。副業で成功するためには、このハンディを覆すだけの圧倒的な強みや営業力が必要です。

6.司法書士を副業でするのはもったいない!

ここまでの内容を読んで、「司法書士の副業って思っていたより大変そう」「副業では稼げないのかな?」と感じた方もいるかもしれません。

そんな方に伊藤塾からお伝えしたいのは、「司法書士を副業でするのはもったいない」ということです。

司法書士は高度な法律知識が要求される専門職です。一部の仕事は副業でも扱えますが、基本的に片手間で取り組める仕事ではありません。専門性が高いからこそ、報酬が高く、社会からも必要とされているのです。

そんな価値ある資格を副業で終わらせるのは、まさしく「宝の持ち腐れ」と言ってよいでしょう。

「司法書士業を、いきなり本業としてスタートするのはリスクが高い」と考える方もいますが、それは間違いです。司法書士業界は売り手市場で、資格があれば年齢に関わらず就職先に困ることはありません。万が一、最初の就職先が合わなくても、転職先はいくらでも見つかります。むしろ、副業として中途半端に取り組み、チャンスを逃してしまうことの方がリスクです。

せっかく司法書士になるのなら、ぜひ勇気を持って飛び込んでみてください。あなたの挑戦を、伊藤塾は全力で応援します。

※司法書士が就職に強い理由や就職先の探し方については、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。

7.副業で司法書士をはじめる前に知っておきたいこと

Q1. 司法書士は副業でできる?

A. 副業で司法書士を行うことは法律的には可能
司法書士法には兼業を禁止する規定がありません。実際に会社員として働きながら司法書士業務を行っている人も存在します。ただし、司法書士会によっては副業に否定的なケースもあるため、事前確認が必要です。

Q2. 副業司法書士が扱いやすい業務は?

A. 主に以下が副業向きです。
・相続登記(報酬目安:2~3万円/件)
・一般法律相談(報酬目安:約5,000円/30分)
・契約書作成(報酬目安:契約書1通につき1~3万円)
・講演・セミナー講師(報酬目安:1回2時間程度で3~5万円)
※オンライン対応や土日開催が可能なものが多く、副業と両立しやすい。

Q3. 副業司法書士が難しい業務は?

A. 不動産登記(決済立会)は副業としては難易度が高いです。
原則、平日9~15時に行われる決済立会いが必須で、申請も当日中に完了させる必要があるため、本業の就業時間と両立しづらいケースがほとんどです。

Q4. 副業司法書士を始めるメリットは?

A. メリットは以下の4点。
・収入面のリスクヘッジ:本業収入を維持しながら司法書士実務を経験できる
・年収アップ:本業+副業で収入を増やしつつ、経験を積むことができる
・スキル向上:書面作成・相談対応力が本職にも好影響
・キャリア形成:独立開業前に実績を積み、将来の飛躍につなげられる

Q5. 副業司法書士の注意点は?

A. 注意点は以下の4点。
・会員登録・研修:日本司法書士会連合会への登録と新人研修が必須
・会社規定の確認:就業先の副業許可を事前に取得
・確定申告:副業所得が年間20万円超なら自分で申告が必要
・顧客からの選ばれにくさ:本業司法書士に比べ信頼面でハンディがあるため、専門分野や営業力で差別化が必要

Q6. 副業司法書士を始める具体的なステップは?

A. 副業司法書士を始める5つのステップ
1.司法書士会へ登録手続き・新人研修を完了
2.勤務先の副業規定を確認し、必要なら許可申請
3.副業用の業務フロー・秘密保持体制を構築
4.小規模案件(相続登記・法律相談)から実績を積む
5.セミナー開催や専門分野開拓で収入アップを図る

Q7. 副業司法書士に向く人・向かない人は?

A.副業司法書士に向く人・向かない人は以下の通り。
・向く人:自分で時間管理ができ、オンライン対応や夜間・土日稼働が苦にならない方
・向かない人:平日日中しか動けず、依頼に柔軟に応じられない方

司法書士は高度な専門職であり、その価値を副業で終わらせるのは「宝の持ち腐れ」です。司法書士業界は売り手市場のため、本業として挑戦することをおすすめします。

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伊藤塾 司法書士試験科

著者:伊藤塾 司法書士試験科

伊藤塾司法書士試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法書士試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法書士試験に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。