司法書士試験の試験科目は?配点や問題数・合格するためのポイントを解説

試験詳細

2025年10月02日

司法書士試験に最短で合格するためには、試験科目や各科目の配点を正確に把握し、本番で効率良く得点できるような勉強をすることが重要です。

出題数も多く、配点が高い科目の勉強を疎かにして、自分の興味のある出題数が少ない科目の勉強を重点的に行なっても、司法書士試験の合格基準点には届かないからです。

この記事では、司法書士試験の試験科目や配点、問題数や合格基準点をまとめています。

各科目ごとの学習方法やポイントについても解説していますので、司法書士試験合格を目指しているのであれば、ぜひ参考にしてください。

1.司法書士試験の試験科目とは?

司法書士試験は大きく「筆記試験」と「口述試験」に分かれています。

まずは、筆記試験における試験科目を確認していきましょう。

1-1.筆記試験

司法書士試験の筆記試験における試験科目は、次の通りです。

主要4科目
試験科目出題数
① 民法20問
② 不動産登記法<択一式>
16問
<記述式>
1問
③ 商法(会社法)9問
④ 商業登記法<択一式>
8問
<記述式>
1問

マイナー科目
試験科目出題数
⑤ 民事訴訟法5問
⑥ 民事保全法1問
⑦ 民事執行法1問
⑧ 司法書士法1問
⑨ 供託法3問
⑩ 憲法3問
⑪ 刑法3問

司法書士試験の筆記試験で出題される試験科目は、全部で11科目です。

司法書士試験では、出題数の多い「民法、不動産登記法、商法(会社法)、商業登記法」を併せて「主要4科目」、出題数の少ない「民事訴訟法、民事保全法、民事執行法、司法書士法、供託法、憲法、刑法」を「マイナー科目」と呼んでいます。

合計出題数は、択一式が70問、記述式が2問となっていますが、主要4科目だけで択一式53問、記述式で2問出題されるため、択一式では全体の75.71%、記述式では全体の100%の出題率となっています。

そのため、司法書士試験では、主要4科目でいかに得点を伸ばせるかが合格へのカギとなっています。

1-2.口述試験

口述試験の試験範囲は、司法書士試験受験案内によると「筆記試験と同一内容」とされていますが、実際の試験では、不動産登記法・商業登記法・司法書士法の3科目からしか出題されていません。

口述試験は面接式の試験であり、司法書士の業務を行うために必要な一般常識が、計10問程度出題されます。

筆記試験の合格者であればほとんどの方が合格している試験ではありますが、本番の緊張や不慣れな面接形式での出題形式を加味すると、決して油断できない試験であるといえるでしょう。

2.司法書士試験の各科目ごとの配点と合格基準点

司法書士試験では、午前択一式問題・午後択一式問題・記述式問題の3つの合格基準点と総合合格基準点が設定されており、それぞれの合格基準点をクリアしなければ、合格を手にすることはできません。

たとえば、午前の部で満点を獲得したとしても、午後の部で合格基準点に満たない場合には不合格となります。

司法書士試験は相対評価の試験なので、合格基準点は毎年変動があります。

ここでは、2023年(令和5年)における合格基準点を確認してみましょう。

午前・午後試験科目配点合格基準点
(合格基準点/満点)
午前の部憲法9点78/105点
民法60点
刑法9点
商法・会社法27点

午後の部民事訴訟法15点75/105点
民事執行法3点
民事保全法3点
司法書士法3点
供託法9点
不動産登記法
(択一式)
48点
商業登記法
(択一式)
24点
不動産登記法
(記述式)
2問で70点
満点(※)
30.5/70点
商業登記法
(記述式)

総合得点211/280点以上

※ 記述試験については、令和6年度以降に実施する司法書士試験より、「2問で70点満点」から「2問で140点満点」と変更されることが発表されています。詳しくは、以下のページをご参照ください。
参照:【重要】司法書士試験筆記試験記述式問題の配点の変更について|法務省

また、午前択一式問題・午後択一式問題・記述式問題それぞれで合格基準点を満たしていたとしても、それだけでは総合合格得点に27.5点足りていないため、不合格となってしまいます。

そのため、司法書士試験に合格するためには、配点の高い主要4科目で確実に得点を稼ぎながら、マイナー科目も基礎的な問題を確実に得点するなど、苦手科目を作らないように満遍なく学習を進める必要があります。

3.司法書士試験に合格するためのポイントとは?

司法書士試験は、法律系の難関国家資格ですが、受験指導校などを利用して効率良く勉強を進めれば、働きながらでも十分合格することができる試験です。

ここでは、司法書士試験に合格するための3つのポイントを解説していきます。

3-1.出題数が多い主要4科目を重点的に勉強する

司法書士試験の勉強計画を立てる際には、出題数が多く配点も高い主要4科目を重点的に勉強することが重要です。

とくに民法は出題数がもっとも多く出題範囲も広いため、他の科目よりも時間をかけて徹底した基礎力を身につける必要があります。

また、不動産登記法や商業登記法は、択一式の出題数が多いだけでなく、記述式問題もそれぞれ1問づつ出題されます。

記述式問題は、時間をかけて答案を書く訓練をしておかないと、実際の試験で合格基準点を超える得点をとることは難しいでしょう。

科目数の多い司法書士試験では、科目ごとにメリハリをつけて勉強することが重要になってきます。

3-2.マイナー科目はバランスよく学習する

主要4科目に重点をおいて勉強するからといって、マイナー科目を捨て科目にしていいわけではありません。

出題数や配点が少ないため、勉強時間をあまりに使いすぎるのは効率の良い勉強方法ではありませんが、少しでも総合合格基準点に上乗せするためにも、マイナー科目は、基礎的な問題であれば確実に得点できるくらいの知識を身につけておく必要があります。

とくに、マイナー科目の中でも配点が高い民事訴訟法については、マイナー科目の中でも少し力を入れて勉強するなど、全体の科目をバランスよく勉強することが、司法書士試験合格のポイントになります。

3-3.全体の40%を占める記述式試験を攻略する

令和6年度以降に実施する司法書士試験では、今まで「2問で70点満点」だった記述式問題の配点が、「2問で140点満点」となることが法務省より発表されています。

令和5年度試験までは、記述式問題の配点割合は全体の25%でしたが、令和6年度試験以降は40%となり、記述式問題の重要度が高くなります。

記述式問題は、基礎的な知識が身についていることはもちろん、その知識の使い方をしっかり理解していないと、合格基準点を満たす得点をとることはできません。

択一式問題である程度の点数がとれていても、記述式問題の点数で伸び悩む受験生も多いため、勉強の初期段階から、受験指導校などを利用して効果的に学習することをおすすめします。

4.科目ごとの学習方法やポイント

司法書士試験の試験科目は全部で11科目にも及ぶため、それぞれの学習ポイントを頭に入れて勉強を進める必要があります。

ここでは、科目ごとの学習方法やポイントについて解説していきます。

4-1.民法

主要4科目の中でも特に出題数が多い民法は、他の科目との関連性も高く、重点的に勉強しなければいけない科目です。

出題範囲は多岐に渡りますが、民法の中でも特によく出題されているのは、「物権・担保物権」の分野です。

具体的には、所有権・抵当権・根抵当権などの権利関係に関する出題となりますが、これらの分野は、司法書士の主要業務である不動産登記業務と密接に関わっていることから、とくに出題される可能性が高い分野です。

もちろん、債権分野や相続分野からも出題されるので、全体を通して苦手な分野を作らず、バランスよく学習を進めていく必要があるでしょう。

民法では、基本的に条文知識や判例知識が問われます。勉強する際は、条文と判例をセットで理解して、知識を確実に定着させることが重要です。

また、司法書士試験では、条文を丸暗記しただけでは正解できない問題も多く、具体的な事例問題に対して、適切な条文をあてはめて正答を導く能力が試されます。

これは、司法書士試験が、司法書士の実務家としての問題解決能力を試す試験であることが理由です。

そのため、民法に限らず法律を学ぶ際には、知識を丸暗記するのではなく、具体的な問題をイメージしながら知識を定着させる事が重要です。

4-2.不動産登記法

主要4科目の1つである不動産登記法は、択一式問題だけでなく記述式問題も出題される科目なので、民法と同様、重点的に勉強する必要があります。

司法書士のメイン業務である不動産登記に関する知識を問われる科目ですが、日常生活で登記に関わらない人も多数いるため、多くの人にとって初めはとっつきにくい印象があるかもしれません。

択一式問題では、基本的に条文知識や先例知識が問われます。ただし、不動産登記法だけでなく、不動産登記令、不動産登記規則等の細かい条文の知識まで問われるため、普段の勉強から関連法令まで意識して勉強する必要があります。

不動産登記法の学習ポイントは、具体的な手続きをイメージしながら問題を解く事です。

とくに、記述式問題では、具体的な事例問題に対し、実際に登記申請書の一部を記述していくことになります。

もちろん、学習初段階では、ほとんど何も書く事ができないのが当たり前ですが、解答作成を重ねていくうちに、登記申請書のルールや雛形が頭に入るようになります。

よくわからないからと言って記述式問題の対策を後回しにするのではなく、早いうちから問題演習を重ねていく事が重要になるでしょう。

4-3.商法・会社法

商法・会社法では、商法から1問、会社法から8問の計9問が出題されます。

商法・会社法の知識は、司法書士の重要な業務である商業登記法と密接に関わってくる法律であり、実務に出てからも必須の知識となります。

特に条文の数が多い会社法では、非常に細かい条文知識まで問われることがあるため、付け焼き刃の知識では得点を伸ばす事ができません。

また、会社の組織やルールに関して規定している会社法は、社会人経験がない学生にとってはイメージしづらいことが多く、不動産登記法と同様にとっつきにくいと感じることがあるかもしれません。

問題演習を繰り返して知識を定着させることも重要ですが、細かい知識に関しては、全体像を把握するために、図式化して理解を定着させることも重要です。

苦手意識のある人も多い科目ですが、条文の構造さえ理解してしまえば、得点源にもなり得る科目です。

4-4.商業登記法

不動産登記法と同様に、記述式問題も出題される商業登記法では、会社法の知識をベースとした問題が多く出題されます。

不動産登記法と同じく登記関連の科目である商業登記法では、記述式問題の対策も兼ねて、具体的な登記申請をイメージしながら学習を進める事が重要です。

例年商業登記法の択一式問題では、会社法の知識があれば解ける問題も一定数出題されています。そのため、会社法の勉強と並行して商業登記法の勉強を進めると、しっかり知識を定着させる事ができます。

また、印鑑提出制度や法人登記など、商業登記法特有の問題も出題されますが、過去問の焼き直しである出題も多いため、過去問演習を中心に学習を進める事が、商業登記法で高得点を取るためのポイントになります。

4-5.民事訴訟法

マイナー科目の中でも出題数が多い民事訴訟法には独特のルールがあり、初めて学習する方には理解しづらい科目となっていますが、合格基準点に確実に達するためには、できれば5問中4問は得点したい科目です。

よく出題される分野は、処分権主義および弁論主義であるため、これらが適用される場面については、正確に理解しておく必要があります。

司法書士は「街の法律家」であり、認定司法書士となれば、訴額140万以下の民事事件の代理人として、民事訴訟に携わる事ができます。

そのため、基礎的な知識だけでなく、やや細かい知識まで問われるのが民事訴訟法の特徴となります。

4-6.民事執行法

民事執行法で問われるのは、基礎的な条文知識です。

出題範囲が広いにも関わらず、本番では1問しか出題されないことを考えると、あまり時間をかけて勉強するのは得策ではありません。

そのため、「勉強する際には過去問で問われている知識を完璧に理解することを目指して勉強し、出題された事がない知識が出題されたら落としても仕方がない」と割り切って勉強するのが、試験対策上有用であるといえるでしょう。

4-7.民事保全法

民事保全法では、基礎的な条文知識を問われる事が多く、比較的得点しやすい科目であると言えます。

制度自体も理解しやすい構造となっているため、制度の具体的なイメージを持ちながら、条文を中心とした学習するのが有効です。

4-8.供託法

供託法は、司法書士試験の試験科目の中でもそれほど難しい科目ではなく、しっかり学習すれば誰でも得点源にしやすい科目であると言えます。

択一式問題では3問出題されますが、過去に繰り返し問われている問題の焼き直しである事が多いため、過去問を繰り返し解く事で、全問正解をすることも十分可能な科目です。

4-9.司法書士法

司法書士法の頻出分野は、簡裁訴訟代理業務に関するルールおよび司法書士法人に関するルール、懲戒に関する問題や業務知識に関する問題です。

司法書士法は、実務家として活動するために必要な最低限の知識です。将来の自分が司法書士として活動することをイメージしながら学習を進めると、勉強のモチベーションを保つ事ができるでしょう。

4-10.憲法

全ての法律の根本となる憲法は、大きく人権と統治の2分野に分ける事ができます。

例年、憲法では人権の判例知識が1問、統治の条文知識が1問、憲法全体でやや細かい判例知識が問われる問題が1問出題されています。

憲法を学習する際には、人権では判例知識、統治では条文知識を正確に身につける事が重要です。

また、憲法ではあまり深入りし過ぎずに、司法書士試験で出題されるレベルの問題に絞って学習する事が重要です。

とくに、司法試験からの転向組の場合、憲法に深入りし過ぎてしまい、他の科目にかけるべき時間を減らしてしまいがちです。

あくまでも主要4科目をメインに学習し、憲法では過去問学習を中心として深入りしないように学習を進めると良いでしょう。

4-11.刑法

刑法の出題数は全体で3問と決して多くはありませんが、合格基準点を超えるためには、しっかりと得点したい科目です。

刑法では、具体的には、各論における財産罪の分野を重点的に学習する必要があります。条文知識に加え、学説や判例の理解も重要であるため、過去問学習をメインとして効率的に知識を定着させていく必要があります。

ただし、憲法と同じく、深入りはし過ぎないよう注意が必要です。

他の受験生が得点できる基礎的な問題を確実に得点できるよう、科目全体を通してバランスよく学習する事が必要です。

5.まとめ

司法書士試験の試験科目は全部で11科目と多いため、科目ごとにメリハリをつけて勉強することが重要です。

基本的には、主要4科目を重点的に学習し、マイナー科目については、基礎的な問題を確実に得点するための盤石な基礎力を身につけることを目標にすると良いでしょう。

また、令和6年度以降から配点比率が上がる記述式問題については、今まで以上に力を入れて学習する必要があります。

効果的な学習や最後まで勉強のモチベーションを維持するためには、受験指導校を利用して勉強するのがおすすめです。

本気で司法書士試験の合格を目指すなら、ぜひ伊藤塾を活用していただき、一緒に合格まで走り抜けましょう!

伊藤塾 司法書士試験科

著者:伊藤塾 司法書士試験科

伊藤塾司法書士試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法書士試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法書士試験に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。