女性裁判官の割合や歴代最高裁女性判事の人数は?裁判所は女性が働きやすい環境なのか解説

法曹

2025年10月31日

2023年11月、弁護士として多方面で活躍されていた宮川美津子弁護士が、最高裁判所の判事に任命されました。

最高裁判所の判事と聞くと、どちらかというと男性のイメージが強く、女性が就任するイメージがないという方もいらっしゃることでしょう。

結論として実際、裁判官全体における女性の割合は決して多いとは言えません。

しかし、法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)の中では、裁判官こそが最も女性の割合が高い職種であり、意外にも女性が働きやすい環境整備が積極的に進められている魅力的な仕事でもあります。

近年、ジェンダー平等を実現するための取り組みは様々な分野で行なわれていますが、司法の世界でも年々その動きは広がりを見せています。

この記事では、女性裁判官を目指している人にとって有益な情報を提供できるよう、女性裁判官が直面している問題・課題とその解決策について詳しく解説していきます。

女性が司法の世界で輝ける理由についても解説していますので、女性で裁判官を目指す方はぜひ最後までご覧ください。

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1.女性裁判官の人数や割合はどれくらい?

日本弁護士連合会が公表している、簡易裁判所の判事を除く女性裁判官の割合の推移に関するデータは、次の通りです。

【簡易裁判所の判事を除く女性裁判官の割合の推移】

 裁判官数女性の割合
令和6年(2024年)2,777人29.0%
令和5年(2023年)2,770人28.7%
令和4年(2022年)2,784人28.2%
令和3年(2021年)2,797人27.2%
令和2年(2020年)2,798人27.0%

参照:裁判官数・検察官数・弁護士数の推移|弁護士白書2024年版(日本弁護士連合会)

過去5年間の女性裁判官の割合を見てみると、概ね27〜29%前後で推移していることが分かります。

たしかに、裁判官全体の3割弱程度しか女性がいないことを考えると、まだまだ女性裁判官の数は多いとは言えません。

しかし、上記参考資料によると、平成17年(2005年)における女性裁判官の割合は16.5%となっていることから、そこから右肩上がりで女性の割合が上昇していることが分かります。

なお、令和6年(2024年)の検察官における女性割合は28.0%、弁護士における女性割合は20.1%となっており、裁判官における女性の割合は、法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)の中でも一番高い数字になっています。

1-1.女性の歴代最高裁判事(裁判官)

冒頭で述べた通り、2023年(令和5年)11月に、女性弁護士として多方面で活躍されていた宮川弁護士が最高裁判所の判事に就任しました。そのため、2025年5月現在、最高裁判所の15人の裁判官のうち、女性判事は3人(20%)となっています。

また、最高裁判所の歴代判事を遡ってみると、女性判事は、宮川裁判官を入れて全部で9人となっています。
参照:最高裁判所判事一覧表|裁判所

なお、2024年4月から9月に放映されたNHK連続テレビ小説「虎に翼」で主人公のモデルとなっているのが、日本初の女性弁護士の1人であり、初の女性判事及び家庭裁判所長である三淵嘉子(1914~1984年)さんだそうです。気になる方はぜひチェックしてみてください。

1-2.司法試験の女性合格率

裁判官になるには司法試験に合格する必要がありますが、そもそも司法試験合格者における女性の割合はどれくらいなのでしょうか。

過去5年間の女性合格者の割合は次の通りです。

【司法試験合格者における女性の割合の推移】

 合格者数女性合格者数女性合格者の割合
令和6年(2024年)1,592人481人30.2%
令和5年(2023年)1,781人524人29.4%
令和4年(2022年)1,403人389人27.7%
令和3年(2021年)1,421人395人27.8%
令和2年(2020年)1,450人367人25.3%

参照:司法試験の結果について|法務省

過去5年間の司法試験の女性合格率の推移を見てみると、概ね25〜30%前後で推移しています。

近年、女性合格者の割合は年々増加傾向にあるとはいえ、まだまだ合格者全体の2〜3割というのが実状です。

今後、司法試験における女性合格者の割合が増えていけば、女性裁判官の数もおのずと増えていくでしょう。

2.裁判所は女性が働きやすい!?

女性裁判官に限りませんが、女性が仕事を続けるうえで直面する主な課題は、なんといっても家庭(家事・育児・介護など)との両立(ワーク・ライフ・バランス)でしょう。

そういった視点から考えた場合、裁判官という仕事は、むしろ女性が続けやすい仕事であると言えそうです。

令和3年3月に最高裁判所にて制定された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく裁判所特定事業主行動計画」における「第1 目的等」には以下のようにしるされています。

働きやすい職場環境の整備を進めるとともに、男女全ての裁判官・職員の「働き方改革」により、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を実現するよう取り組んできたところであるが、引き続き、 国民の期待に応える司法サービスの一層の充実を図るためにも、 女性の活躍の推進に取り組み、多様な人材を活かす方策を進め、育児や介護を担う男女を含む組織全員の力を最大限発揮できるようにすることが必要である。

同計画では、

第4 長時間勤務の是正等男女双方の働き方改革

第5 家事、育児や介護をしながら活躍できる職場環境の整備

などにも言及しており、男女ともに働きやすい環境を整備していくことに積極的であることがうかがえます。

さらに、元最高裁判所裁判官の鬼丸かおるさんは、自身の法曹人生を振り返り、次のように述べています。

弁護士は、自分の働き方をコントロールできます。仕事の量を減らしたり、夜に仕事を入れないようにしたりといったことが可能なので、子育てと仕事を両立しやすい仕事ではないでしょうか。

裁判官も、自分の仕事をコントロールできます。概して、法曹界は、女性が働きやすい環境が整えられた世界だと感じます。」
参照:女性法曹に聞く法曹の魅力|愛知弁護士会

鬼丸さんがおっしゃるように、「法曹界は、女性が働きやすい環境が整えられた世界だ」という事実について、もっと世の中に広く認知されたなら、法曹界にチャレンジする女性が増え、女性裁判官、女性弁護士、女性検察官なども増えていくのかもしれません。

3.女性が司法の世界で輝ける理由

共感性が高く、細かい部分まで気を使える女性裁判官が増える事で、法曹界に新しい風を吹かせる事ができるでしょう。

公平・公正な裁判において、女性が裁判官を担当したからといって司法の判断が180度変わるわけではありません。

しかし、女性ならではの視点や感性を持った女性裁判官が議論の場に加わることで、より深い議論ができるようになります。

女性が直面している問題や課題に対して、自身の経験を基にした意見を述べることができるのは、女性でなければできない仕事だと言えるでしょう。

※女性の検察官や弁護士の活躍については、以下の記事でも詳しく解説しています。

4.女性裁判官に関するよくある質問(FAQ)

Q1.諸外国における女性裁判官の割合は?

A.男女共同参画局が公表しているデータによると、諸外国における女性裁判官の割合は次の通りです。

ドイツ56.30%
フランス33.30%
アメリカ33.30%
日本13.3%(※1)
イギリス10.00%

参照:諸外国の裁判所裁判官に占める女性の割合(令和4(2022)年4月)|男女共同参画局
※1 令和4年(2022年)4月時点での統計です。令和5年(2023年)11月に女性裁判官が就任したため、2025年5月現在では、最高裁判所の女性判事の割合は20%となっています。
※2 ドイツは「連邦憲法裁判所」、フランスは「憲法院」、アメリカは「連邦憲法裁判所」、日本は「最高裁判所」、イギリスは「連合王国最高裁判所」における女性裁判官の割合になります。

この数字を見ると、日本の女性裁判官の割合は、諸外国と比べても低い数字となっていることがわかります。

Q2.女性裁判官の年収はどれくらい?

A.裁判官の報酬は「裁判官の報酬等に関する法律」で定められていて、男女でその報酬額は変わりません。そのため、性別による収入の差別がない職場として、女性にとっては非常に魅力的な職場と言えるでしょう。
参照:裁判官の報酬等に関する法律

裁判官としてのキャリアは、等級表における「判事補12号」、もしくは「簡易裁判所判事17号」からスタートし、経験年数により段階的に昇給する仕組みになっています。そのため、罷免をされない限り、女性であっても俸給の減額を受けることはありません。

なお、裁判官の年収について具体的な金額を知りたい方は、こちらの記事もご覧下さい。

Q3. 裁判所の育児休業や時短勤務の実際の利用率は?

A.最高裁判所が公表する「育児休業取得率及び取得期間の分布状況、配偶者出産休暇及び育児参加休暇の取得率並びに合計取得日数の分布状況(令和5年度)」などによれば、育児休業の取得者率は、男性78.2%女性97.4%と増加傾向にあります。これは、制度の利用が着実に浸透してきていることを示しています。

5.裁判所は女性が働きやすい環境なのかまとめ

Q1.日本の女性裁判官の現在の割合はどのくらいですか?

A.現在、全裁判官中の女性裁判官の割合は29.0%です。最高裁判所の判事15人の中で女性裁判官は3人(20%)を占めています。

Q2.法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)の中で、女性の割合が最も高いのはどの職種ですか?

A.法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)の中で、裁判官が最も女性の割合が高い職種です。令和6年(2024年)のデータでは、裁判官における女性割合は29.0%、検察官は28.0%、弁護士は20.1%となっています。

Q3: 女性裁判官の割合は過去にどのように推移していますか?

A.過去5年間の女性裁判官の割合は概ね27〜29%前後で推移しており、令和6年(2024年)の女性裁判官の割合は29.0%です。平成17年(2005年)の女性裁判官の割合が16.5%であったことから、そこから右肩上がりで女性の割合が上昇していることが分かります。

Q4: 裁判所は女性にとって働きやすい環境ですか?

A.裁判所は、女性が働きやすい職場環境が整備されており、積極的に環境整備が進められている魅力的な仕事です。最高裁判所は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく裁判所特定事業主行動計画」を策定し、男女全ての裁判官・職員のワーク・ライフ・バランス実現や、育児や介護を担う男女を含む組織全体の力を最大限発揮できるよう取り組んでいます。元最高裁判所裁判官の鬼丸かおる氏も、法曹界は女性が働きやすい環境が整えられた世界だと述べています。

Q5: 女性裁判官が増えることで司法の場にどのような影響がありますか?

A.共感性が高く、細かい部分まで気を使える女性裁判官が増えることで、法曹界に新しい風を吹き込むことが期待されています。女性ならではの視点や感性を持った女性裁判官が議論の場に加わることで、より深い議論が可能となり、女性が直面している問題や課題に対して自身の経験を基にした意見を述べることができるなど、その活躍が期待されています。

Q6.諸外国と比較して、日本の女性裁判官の割合はどのような状況ですか?

A.男女共同参画局が公表しているデータによると、2022年4月時点の最高裁判所における女性裁判官の割合は、ドイツが56.30%、フランスとアメリカがそれぞれ33.30%であるのに対し、日本は13.3%諸外国と比べても低い現状を示しています。なお、2023年11月に女性裁判官が新たに最高裁判事に就任したため、2025年5月現在では最高裁判所の女性判事の割合は20%となっています。


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著者:伊藤塾 司法試験科

伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。