国際弁護士とは?国際弁護士になる方法や年収・求められるスキルを解説
基本情報
【記事のポイント】
- 資格の有無:「国際弁護士」という独立した資格は存在せず、国ごとに分かれた弁護士資格を持つ人の総称で、活動実態は3つのパターンに大別される。
- なり方:日本を拠点とするなら、まず日本の弁護士資格取得が王道。予備試験ルートで司法修習まで約3年、法科大学院経由で約5年が目安となる。
- 年収水準:取り扱う案件の難易度と希少性から、一般的な弁護士より高い水準になりやすい傾向がある。五大法律事務所では初年度から高収入の例もみられる。
- 必要スキル:求められるのは日本の弁護士資格・対象国の法律知識・高い語学力の3つ。海外資格のみでは日本での弁護士業務はできない点に注意が必要。
- 渉外との差:業界では国際案件を扱う日本資格保有者を「渉外弁護士」と呼ぶ。渉外弁護士は国際弁護士の1パターンにあたり、両者の業務は重なる部分が多い。
一般的に「国際弁護士」とは、国際的な案件を取り扱う弁護士のことをいいます。
みなさんも、テレビや新聞などのメディアで「国際弁護士」の肩書で活躍している人を思い浮かべることができるでしょう。
しかし、実際には「国際弁護士」という資格はありません。
国際弁護士の肩書で活動している人には、3つのパターンがあります。
「国際弁護士」を目指すなら、どのパターンの「国際弁護士」を目指すのかをしっかりとイメージする必要があるでしょう。
今回は、「国際弁護士」の3つのパターンや活躍する舞台について触れたうえで、国際弁護士になる方法や年収、求められるスキルについて解説します。国際弁護士を目指す方、国際弁護士に興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
【目次】
1. 国際弁護士とは?
国際弁護士とは、国際的な案件を取り扱う弁護士のことをいいます。国際的な案件の例としては、国内企業の海外進出に伴う法務や、国内企業と海外企業とのクロスボーダーの取引やM&A案件などが挙げられます。
基本的に、弁護士資格は国ごと(アメリカは州ごと)に独立しており、世界中で活動できる「国際弁護士」資格というものは存在しません。たとえば、日本の弁護士資格は、日本国内で弁護士として活動するための資格であり、海外で弁護士としての活動を行うことはできません。
現在、「国際弁護士」という肩書で活動している人には、次の3つのパターンがあります。
◉日本の弁護士資格で海外案件を取り扱う人
◉日本と海外両方の弁護士資格を保有している人
◉海外の弁護士資格のみ保有している人
以下、それぞれのパターンについて詳しく見ていきましょう。
1-1. 日本の弁護士資格で海外案件を取り扱う
日本の弁護士資格のみを保有している人で、国際的な案件を多く取り扱う人は「国際弁護士」を名乗ることがあります。弁護士の業界では、「渉外弁護士」とも呼ばれることも多いです。
日本の五大法律事務所や外資系の法律事務所では、日本企業から依頼を受けて海外企業との契約・交渉案件を多く取り扱っています。
渉外弁護士として活躍する人は、時差の関係で業務が深夜にまで及ぶ激務を続けている人がほとんどです。
日本での経験を積んだのちに、海外に留学して両方の弁護士資格を取得する人も多くいます。
1-2. 日本と海外両方の弁護士資格を保有
日本と海外で複数の弁護士資格を保有している人です。このパターンでも、弁護士資格は国や州ごとで異なるため、全世界で弁護士活動ができるわけではありません。
外資系の法律事務所では、日本の弁護士が事務所に籍を置きつつ、アメリカに留学するなどして海外の弁護士資格を取得する例が多く見られます。
両方の弁護士資格を保有していると、日本で弁護士活動をしつつ、海外での弁護士活動も行えるため、活動の幅は大きく広がります。さらに、海外のクライアントからの信頼も得られやすいでしょう。
日本と海外両方の弁護士資格を保有しているメディアで活躍する有名人としては、八代英輝さんがいます。八代さんは、日本で裁判官を歴任したのちに弁護士登録し、さらにはニューヨーク州の弁護士資格も取得しています。
1-3. 海外の弁護士資格のみ保有
海外の弁護士資格のみを保有している人も、日本で「国際弁護士」を名乗っていることがあります。
海外の弁護士資格を保有していても、日本の弁護士資格を保有していない人は、原則として日本での弁護士業務を行うことはできません。
ただし、日弁連で「外国法事務弁護士」として登録すれば、日本でも一定条件のもとで自分が資格を有する国の法律事務を取り扱うことができます。なお、この場合でも、日本の裁判所で代理人となることはできません。
参照:日本弁護士連合会「外国法事務弁護士とは」
海外の弁護士資格のみを保有する有名人には、湯浅卓さんがいます。湯浅さんはかつて、国際弁護士としてメディアで多く露出していましたが、ニューヨーク州とワシントン州の弁護士資格を保有するのみで日本の弁護士資格は保有していません。
2. 国際弁護士が活躍する場面
国際弁護士が活躍する場面としては、次のような案件が挙げられます。
◉日本企業と海外企業との取引・契約案件
◉日本企業と海外企業とのM&A案件
◉複数の国の法律が問題となる案件
◉国際的な特許、商標、ライセンスが問題となる案件
◉語学力が求められる案件
◉国際裁判の代理人として活動する案件
日本の弁護士資格だけを取得している人の多くは、海外の法律や判例についての知識を持っていません。外国人とコミュニケーションするための語学力を持ち合わせていない方もいらっしゃるでしょう。
そのため、海外の法律知識や語学力を有する国際弁護士は、日本の弁護士が取り扱えない案件を取り扱えるという点で大きな需要があります。さまざまな分野でのグローバル化が進む現代においては、国際弁護士の需要は高まり続けることが予想されます。
3. 国際弁護士になるには?
国際弁護士になるには、少なくとも日本か海外いずれかの弁護士資格を取得する必要があります。
日本を拠点として活動するのであれば、まずは日本での弁護士資格を取得してから必要に応じて海外の弁護士資格を取得するのがおすすめです。
ここでは、日本の弁護士資格の取得方法と、海外の弁護士資格の取得方法をそれぞれ解説します。
3-1. 日本の弁護士資格の取得方法
日本の弁護士資格を取得するまでの流れは、次のとおりです。
司法試験の受験資格を取得する
(予備試験or法科大学院)
↓
司法試験に合格する
↓
司法修習を修了する
日本の弁護士資格を取得するには、予備試験からの最短ルートでも約3年かかります。
※日本の弁護士資格を取得するまでの流れについて詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
3-2. 海外の弁護士資格の取得方法
海外の弁護士資格は、国や州ごとに分かれており、取得方法もさまざまです。ここでは、アメリカのニューヨーク州を例に、弁護士資格の取得方法を紹介します。
◉日本の大学か法科大学院を卒業して法学の学位を取得する
◉ABA(American Bar Association)認定ロースクールのLL.M.コースを修了して司法試験の受験資格を取得する
◉ニューヨーク州の司法試験に合格する
アメリカでは、司法修習の制度はありません。司法試験に合格し、全州統一法曹倫理試験(MPRE:Multistate Professional Responsibility Examination)で各州の基準点を満たすと、すぐに弁護士として活動できます。
全州統一法曹倫理試験は、ロースクールの在学中に受験する人が多いようです。
※米国弁護士資格について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
4. 国際弁護士の年収は?
国際弁護士として活動するには、海外の弁護士資格や語学力などが必要です。また、取り扱う業務の範囲も一般的な弁護士よりも広いため、国際弁護士を名乗る人の年収は必然的に高くなっています。
厚生労働省が発表する賃金構造基本統計調査の令和3年版では、弁護士の平均年収は、945万3,600円となっています。
一方、日本の五大法律事務所では、初年度の年収が1,000万円を軽く超える数字となっています。
特に、渉外弁護士の年収は初年度から弁護士全体の平均を超えており、一般的な弁護士より高い年収を得ていることは明らかです。
※五大法律事務所について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
国際弁護士の年収が高い理由としては、
◉取り扱う案件の難易度が高い=報酬が高い
◉国際的な案件に対応できる弁護士が少ない=需要が高い
といった点が挙げられます。需要が高く、1件当たりの報酬が高い案件を取り扱うため、国際弁護士は高収入を得やすいといえるでしょう。
5. 国際弁護士に求められるスキルは?
日本を拠点として「国際弁護士」として活躍するには、次のスキルが求められます。
◉日本の法律知識(弁護士資格)
◉海外の法律知識(弁護士資格)
◉語学力
日本で「国際弁護士」として活躍するには、日本の弁護士資格を取得したうえで、海外の弁護士資格も取得するのがおすすめです。海外の弁護士資格のみでは、日本での弁護士活動を行えないため、日本で「弁護士」を名乗って活躍することは難しいでしょう。
以下では、それぞれのスキルについて詳しく見ていきましょう。
5-1. 日本の法律知識
日本を拠点として「国際弁護士」として活動するのであれば、日本の法律知識(弁護士資格)は欠かせない要素です。
日本企業と海外企業との契約交渉や、M&A案件などを取り扱う際も、日本の法律知識があることが前提となります。
日本と海外とでは法律の内容は違いますが、法律を解釈する思考方法や法律を具体的な事例に応じて使い分ける能力は、どの国の法律を取り扱う場合でも必要な能力です。
日本の法律を学ぶ過程で、法律の思考方法や使い方を身に付けておくことが、海外の法律を学ぶ際にも助けとなるでしょう。
5-2. 海外の法律知識
法律は国や州によってさまざまです。国際弁護士として法律を取り扱う場合、対象となる国や州の法律についての専門的知識は欠かせません。
海外の弁護士資格を取得する場合には、試験に合格するために法律や判例などの知識が必要となるのは当然ですが、日本の弁護士資格で海外案件を取り扱う場合にも海外の法律について正確に理解する必要があります。
五大事務所や外資系の法律事務所で勤務する弁護士は、海外の弁護士資格を取得していない人でも、取り扱う案件ごとに海外の法律を勉強しています。
5-3. 語学力
国際弁護士として活躍するには、語学力は必須の要素です。
法律には専門用語が多くありますが、それは海外の法律でも変わりません。専門用語の多い法律を取り扱うには、その国における高い語学力が求められます。
もちろん、海外の弁護士資格を取得するにも高い語学力が求められますので、語学力がなければ国際弁護士としてのスタートラインにも立てないでしょう。
6. 国際弁護士に関するよくある質問(FAQ)
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国際弁護士の年収はどれくらいですか?
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国際弁護士のなかでも五大法律事務所に所属する渉外弁護士は、初年度から年収1,000万円超のケースが多くあります。日本弁護士連合会の弁護士白書2023年版によると、弁護士全体の収入中央値は1,500万円、5%調整平均は2,082万円となっています。
また、国際弁護士は語学力と海外法律知識が必要で対応できる人数も限られているため、案件単価と需要の両面から一般弁護士より高い収入水準を得やすい傾向にあります。
出典:弁護士白書2023年版(日本弁護士連合会)
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国際弁護士になるには何年くらいかかりますか?
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日本の弁護士資格は、予備試験ルートで合格できれば司法修習を含めて約3年、法科大学院を経由するルートでは合計5年程度が目安となります。さらに米国ロースクールのLL.M.コースで海外資格を取得する場合、1〜2年の留学期間が追加で必要となります。
日本資格と海外資格の両方を保有するパターンを目指すなら、トータルで5〜7年程度の学習・実務期間を見込むのが現実的です。
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国際弁護士と渉外弁護士の違いは何ですか?
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「渉外弁護士」は業界用語で、日本の弁護士資格を持ち国際案件を取り扱う弁護士を指します。「国際弁護士」はメディアで広く使われる呼称で、日本資格で海外案件を扱う人・日本と海外両方の資格保有者・海外資格のみの保有者の3パターンの総称として用いられます。
実態としては「渉外弁護士」は「国際弁護士」の1パターンに含まれる関係にあり、業務範囲は重なる部分が多くあります。
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日本の弁護士と国際弁護士はどちらが難しいですか?
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国際弁護士は日本の弁護士資格を前提として、海外の法律知識と高度な語学力を追加で求められるため、習得すべきスキル面では国際弁護士のほうが難易度が高くなります。日本の弁護士資格そのものも司法試験合格を伴う高難度資格です。
日本での実務経験を積んだ後に海外留学で資格を取得する人が多いのは、難易度の高さを段階的に乗り越えるアプローチが現実的だからです。
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国際弁護士という独立した資格はありますか?
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「国際弁護士」という独立した資格は存在しません。弁護士資格は国ごとに独立しており、米国はさらに州ごとに分かれています。世界共通で活動できる単一の弁護士資格は世界中どこにも存在しません。
「国際弁護士」と名乗っている人は、日本資格のみで海外案件を扱う・両方の資格を保有する・海外資格のみを保有するの3パターンのいずれかに該当します。
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国際弁護士を目指すなら大学はどこへ進学すべきですか?
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国際弁護士を目指す第一歩として、日本の弁護士資格取得が現実的な王道となるため、予備試験合格や法科大学院進学を視野に入れた法学部進学が有力な選択肢となります。なお法学部以外の出身者でも、予備試験ルートで弁護士を目指す道は開かれています。
将来的に米LL.M.等の海外資格取得を見据える場合、在学中から英語の読解・交渉能力を高めておくことが大きなアドバンテージとなります。
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英語ができないと国際弁護士にはなれませんか?
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国際弁護士として活動するには、英語を中心とした高い語学力が事実上の必須条件となります。法律文書は専門用語が極めて多く、契約交渉や国際裁判では正確な読解と表現が求められます。海外弁護士資格の取得試験も基本的に現地語で実施されます。
ただし、まずは日本の弁護士資格取得を優先し、合格後に語学力を集中して伸ばすキャリアパスを取る人も多く、段階的な習得は十分可能です。
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国際弁護士の仕事は激務だと聞きますが本当ですか?
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渉外弁護士の業務は、海外オフィス・海外クライアントとの時差の関係で深夜・早朝対応が発生しやすく、激務になりやすい傾向があります。クロスボーダー案件は緊急性の高い交渉や即応対応が多いことも理由として挙げられます。
その一方で報酬は一般弁護士より高水準で、五大法律事務所では初年度から年収1,000万円超のケースもあり、業務量と報酬がバランスする面もあります。
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海外の弁護士資格だけで日本でも働けますか?
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海外の弁護士資格のみを保有する場合、原則として日本での弁護士業務は行えません。ただし、外国弁護士資格を有し、所定の実務経験などの要件を満たしたうえで法務大臣の承認を受け、日本弁護士連合会に「外国法事務弁護士」として登録されれば、自分の資格国(原資格国)の法律事務を一定の条件のもとで日本国内で取り扱うことができます。
ただし、外国法事務弁護士は日本の裁判所での代理人や日本法に関する独占業務などには従事できず、活動範囲は原資格国法や指定法に限定されます。
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国際弁護士はどんな案件を担当しますか?
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国際弁護士の主な業務は、日本企業の海外進出支援、クロスボーダーM&A、国内外企業間の契約交渉、国際特許・商標・ライセンス案件、複数国の法律が絡む紛争処理、国際裁判の代理など多岐にわたります。
語学力と海外法律知識を持つ弁護士は限られており、グローバル化が進む現代において需要は継続的に高まると見られる分野です。
7. 国際弁護士になる方法や年収・求められるスキルのまとめ
国際弁護士は、国をまたいだ幅広い活躍ができ、高収入も得られる魅力的な仕事です。しかし、国際弁護士として活躍するには、日本の法律知識を前提とした高いスキルが求められます。
国際弁護士を目指す方は、まずは日本の弁護士資格の取得を目指すことをおすすめします。
司法試験に合格する過程で正しい法律の学び方を身に付けておけば、海外の法律を学ぶ際にも大きな力となるでしょう。
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