【司法試験の選択科目】どの科目を選ぶべき?合格しやすい選択科目とは?
司法試験
2025年10月31日
司法試験は、憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法のほかに、選択科目を受験する必要があります。
しかし、選択科目の勉強を始める前に、どの選択科目を選べばいいのか分からないという方もたくさんいらっしゃるでしょう。
どの科目が有利でどの科目が不利なのか、科目ごとにどんな勉強法でどのくらいの勉強時間が必要なのか、みなさんが気になる疑問について解説していきます。
2026年以降司法試験・予備試験ではパソコン受験が必須
そこで伊藤塾ではCBTシステムをリリースいたしました。
>>> いますぐCBTシステムをご確認下さい <<<
【目次】
1.選択科目とは?
1-1.選択科目はとても大事!
選択科目は、倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法)の8つの科目の中から一つ選びます。
これまでは司法試験にしか選択科目はありませんでしたが、令和4年度から、予備試験論文式試験の一般教養科目が廃止され導入されました。そのため、予備試験を受ける方もしっかりと対策する必要があります。
司法試験の憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法は2時間で答案用紙8頁で答案を作成するのに対して、選択科目は3時間で、答案用紙4頁の問題を2問、合計8頁で答案を作成します。そのため、どの科目よりも時間が長く、じっくりと問題に向き合うことが求められます。
さらに、司法試験の1日目の最初に解く科目なので、選択科目の出来によってその後の5日間のメンタルを左右するかもしれません。選択科目で快調な滑り出しをすることで自信を持って残りの科目に望むことができるため、点数だけでなくとても大事な科目です。
1-2.人気な科目は労働法?
選択科目で不動の人気を誇るのは労働法です。その他にも近年、経済法の人気が上がってきているなど選択科目の受験者の動向には目が離せません。
以下の表は2024年度(令和6年度)の選択科目別の受験者数と合格者数です。
| 受験者数 | 受験者全体に 対する割合 |
合格者数 | 合格者全体に 対する割合 |
|
| 労働法 | 1,072人 | 28.6% | 503人 | 31.6% |
| 経済法 | 789人 | 21.1% | 344人 | 21.6% |
| 倒産法 | 566人 | 15.1% | 255人 | 16.0% |
| 知的財産法 | 552人 | 14.7% | 229人 | 14.4% |
| 国際関係法(私法) | 373人 | 10.0% | 145人 | 9.1% |
| 租税法 | 199人 | 5.3% | 62人 | 3.9% |
| 環境法 | 124人 | 3.3% | 28人 | 1.8% |
| 国際関係法(公法) | 71人 | 1.9% | 26人 | 1.6% |
2024年度(令和6年度)も労働法の人気は変わらず、受験者の約3人に1人近くが労働法を選択しています。次に人気なのが経済法で受験者の5人に1人が経済法を選択しています。
各科目の受験者全体に対する割合と合格者全体に対する割合に大きな差はないため、どの科目を選んだ方が有利などということはあまりないことが分かります。
しかし、労働法、経済法などの受験者が多い上位3科目は、受験者全体に対するの割合よりも合格者全体に対する割合の方が若干高い一方で、環境法、国際関係法(公法)などの受験者数下位4科目は受験者全体に対する割合よりも合格者全体に対する割合の方が若干低くなっています。
そのため、たくさんの人が選ぶ科目を受けた方が合格率が少し高く、ほんの少しだけ有利になっているのかもしれません。これには、受験者が多い科目の方が再現答案や問題集などが充実していて過去問研究をやりやすいこと、周りに受験生が多く情報共有をしやすいことなどが関係しているのかもしれません。
2.科目ごとの特徴
選択科目の合格者数や人気度だけではどの科目を選択すべきかの決め手に欠けます。では、それぞれの科目ごとの特徴はどのようになっているのでしょうか。
2-1.労働法
労働法は、司法試験に合格して実務家になったあとに、最も使う可能性が高い法律と言っても過言ではありません。また、大学の授業などで履修されている方もとても多いはずです。このような理由から労働法を選択する方は非常に多くなっています。
労働法は馴染みのある法律であり、選択者数が多く資料も充実していることから、誰でも勉強に取り掛かりやすい科目といえます。
しかし、その一方で、教科書は非常に分厚いことで有名です。判例中心の勉強になるため、勉強のやり方は行政法に似ていると考えるとよいでしょう。
2-2.経済法
経済法では、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」いわゆる独占禁止法について勉強します。労働法に次いで人気が高く、年々受験者数が増加しています。企業法務などに進むことを考えている方は興味を持つかもしれません。
経済法は、覚える量が少ないと言われており、短期間でマスターすることを目指す人から人気です。実際に、扱う法律の条文の数はとても少なく、インプットにかかる時間は短く済むでしょう。刑法のようにどの行為がどの条文に違反するかを考える科目なため、刑事系科目や事実認定が得意な方に好まれる傾向にあります。
2-3.倒産法
倒産法では、破産法と民事再生法について勉強します。1割ちょっとの方が倒産法を選択しており、安定の人気をキープしています。受験者の合格率が高いとも言われているため、合格に近い方が多く選択するのかもしれません。
倒産法は、民事系の科目と親和性が高い一方で、あてはめ能力が非常に重視されます。民事系の知識とあてはめのスキルという司法試験にとってとても大切な力が問われるため、倒産法の選択者は合格に近づくのかもしれません。
2-4.知的財産法
知的財産法では、特許法と著作権法について勉強します。特許や商標など日々の生活で少し馴染みのあることについて、詳しく知ることができます。経済法と同様に企業法務などに進むことを検討している方には親和性が高いでしょう。
知的財産法では、特許権や著作権という形のない権利について勉強するため、その権利の性質や条文の使い方をマスターすることが大切になります。さらに、判例の学習もとても大切になってきます。判例では、意外な身近なものについて取り上げられていることもあり、興味が湧いてくるかもしれません。
インプット量としては労働法ほど多くはなく、経済法や国際私法ほど少なくはないといった分量になりますが、知財分野については近年法改正が頻繁になされているため、毎年知識のアップデートが必要になってくるでしょう。
過去問に当たる際には、その部分の法改正がなされていないか、あらかじめ確認する必要があります。
2-5.租税法
租税法では、主に所得税法について勉強します。所得税は今後の生活で避けて通ることのできないものなので勉強をしておくことで日常生活にも役立つかもしれません。受験者数は1割に満たないため、あまり人気な科目とはいえませんが、5%以上はキープしています。
租税法の人気があまり高くない理由として、租税については税理士などの専門分野であり、租税について独立で扱っている法律事務所が少ないため、実務的な観点で見ると選択しずらい法律であることや、税理士試験や公認会計士試験以外で、司法試験用の教材が少ない事が挙げられます。
租税法は、他の科目に比べてインプットの量が少ないと言われています。そのため、基本書の内容を把握して、判例を理解すればしっかり結果がでるはずです。税金に興味がある方は選んでみるといいかもしれません。
2-6.環境法
環境法では、環境10法と呼ばれる法律を勉強します。具体的には、環境基本法、環境影響評価法、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、土壌汚染対策法、循環型社会形成推進基本法、廃棄物処理法、容器包装リサイクル法、自然公園法、地球温暖化対策推進法の10個の法律です。
環境法は受験者数が少ない科目として知られています。行政法と密接に関係するため、行政法に興味がある方や得意な方が選択する傾向にあります。
インプット量は比較的少なく済みますが、法律としての歴史が浅く、司法試験用の教材が少ないため、試験対策としての勉強がしづらい点が、受験者数が少ない理由の一つになります。
受験仲間も見つけづらいかもしれません。
ただし、選択者が少ない分ライバルは少なく、しっかり対策を行えば上位の評価を受けることができるでしょう。
なかなか馴染みのない法律かもしれませんが、環境保護などの注目度が高まっているため、今後人気になっていくかもしれません。
2-7.国際関係法(私法)
国際関係法(私法)では、法の適用に関する通則法や訴訟法の国際裁判管轄に関する部分について勉強します。日本とは異なる法律が適用される外国の私人との間の紛争の解決をどうすべきかなどが勉強の中心になります。
国際関係法(私法)のインプット量は他の科目と比べて少ないと言われており、出題範囲や出題パターンの傾向も掴みやすい事から、近年人気が上がってきている科目の一つになります。
たしかに、日本で過ごしている方にはあまり馴染みのない法律かもしれませんし、渉外系の事務所でなければあまり関わりのない分野かもしれません。
しかし、渉外案件を扱う事務所では必須の法律ですし、グローバル化が急速に進む現代では今後需要が高まっていくでしょう。
コスパ重視で選択科目を選ぶのであれば、国際関係法(私法)はおすすめの科目になります。
2-8.国際関係法(公法)
国際関係法(公法)では、国際法、国際経済法、国際人権法の3つの法律について勉強します。選択科目の中では最も人気がない科目ですが、国際法という国と国の間に適用される法律というとても興味深い分野です。
選択科目の中では、唯一、日本の裁判所の判例ではなく国際司法裁判所の判例などを学ぶ必要があります。また、国際機関についての知識も必要になるため、単なる法律の理解だけではなく、国際社会について学ぶことができるでしょう。
一方で、司法試験用の教材の数はかなり少なく、基本所や判例集で勉強する必要があるため、他の科目よりもかなり勉強のしにくさを感じるかもしれません。
また、実務においても、外務省の職員や国連職員等の国際機関を目指す人など、特定のキャリアパスを考えている人以外は、ほとんど触れる事のない分野の話になるため、実務的な重要度は低いです。
ライバルが少ない分、相対的に上位の評価を受ける可能性もあるため、国際政治や国際情勢に興味がある方は選択してみてもいいでしょう。
3.どの科目を選ぶのが有利?
ここまでの全ての科目の特徴を聞いてもどの科目を選択するのが正しいのかよく分からない方もいるでしょう。
これから選択科目を勉強する方は、科目を選ぶ基準として、①どの科目がいい点数を取れるのか、②どの科目が勉強量が少ないのか、③どの科目が将来の実務で役に立つのかなどをあげると思います。
その中でどういう優先順位で選択科目を選ぶのがよいでしょうか。
3-1.点数の取りやすさは関係ない
選択科目の中でどの科目が点数を取りやすいかなどを基準に選択科目を考えているかもしれません。
しかし、点数の取りやすさはどの科目でも変わりません。科目ごとに問題の難しさそのものに多少の違いがあったとしても、点数は科目ごとに調整されたうえで決まります。
そのため、絶対的な点数取りやすさというよりは、あくまで同じ科目を選んだ者の中でどのくらいの立ち位置にいることができるのかがカギになります。
3-2.科目ごとに勉強時間あまり変わらない
相対的にインプットの量が少ないと言われているのは、経済法や国際私法と言われています。しかし、インプットの量が少ないことは、必ずしもアウトプットの量が少ないことを意味しません。
すなわち、インプットが早く終わっても、どの科目でもたくさん過去問演習をすることが求められるので、結局のところ勉強時間に大きな偏りはないといえるでしょう。
そのため、勉強時間の少なさを基準にするよりも、自分はインプットとアウトプットのどちらにたくさん時間をかける方が望ましいのか、インプットとアウトプットのどちらの勉強が好きなのかなどを考えるとよいでしょう。
3-3.選択科目と将来のプラクティスは関係ない
選択科目で選んだ法律を将来の自分の専門分野にする弁護士は少なくありません。もっとも、将来実務で携わりたい法律を選択する必要が必ずしもあるわけではありません。
というのも司法試験の受験で勉強する範囲は、あくまで基本的な理解にすぎません。実務の世界について勉強するわけではないので、将来の専門分野とはあまり関係がないと言われています。
自分が将来実務でやりたい法律分野よりも、自分が勉強するのに向いていそうな科目を選ぶことが好ましいでしょう。
3-4.迷ったら人気の科目を
選択科目で迷った場合の鉄則は、人気の科目を選ぶことです。
先ほども説明した通り、選択科目の点数は、その選択科目を選んだ人の中で自分がどのくらいできているかによって決まります。つまり、周りの人と自分の差を、常に意識しながら勉強することが大切です。
そうすると、選択者が多い科目は、過去の司法試験の再現答案や周りで合格を目指す受験者がたくさんいるため、周りとの差を意識しやすい環境に身をおくことができます。たくさん受験者がいてたくさんのデータが蓄積されていれば、その分過去問研究も捗ります。
もしも迷ったら人気のある科目を選んでみるとよいでしょう。
4.司法試験の選択科目に関するFAQ
Q.司法試験の選択科目とは何ですか?
A.司法試験では、憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法の7科目に加えて、8つの選択科目から1つを選んで受験する必要があります。選択科目は、倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法)です。
Q.選択科目の試験形式は他の科目と違いますか?
A.はい。他の科目が2時間で答案用紙8頁なのに対し、選択科目は3時間で4頁の問題を2問、合計8頁を作成します。時間が長く、じっくり問題に向き合えるのが特徴です。
Q.選択科目は重要ですか?
A.とても重要です。司法試験1日目の最初に解く科目なので、その出来が5日間のメンタルを左右します。また、予備試験でも令和4年度から導入されているため、しっかりとした対策が必要です。
Q.最も人気のある選択科目は何ですか?
A.労働法が最も人気で、2024年度は受験者の約28.60%(約3人に1人)が選択しています。次に人気なのが経済法で21.10%(約5人に1人)です。
Q.どの科目を選ぶのが有利ですか?
A.科目ごとに点数は調整されるため、特定の科目が有利ということはありません。ただし、受験者が多い科目(労働法、経済法など上位3科目)は、再現答案や教材が充実しているため、情報収集や対策がしやすい利点があります。
Q.選択科目で迷っています。どう決めればいいですか?
A.以下の順で検討することをお勧めします。
- まず各科目の内容に目を通してみる
- 自分の直感で「合いそう」と思った科目を選ぶ
- 迷ったら人気科目(労働法、経済法)を選ぶ
- インプット重視かアウトプット重視か、自分の学習スタイルを考慮する
Q.将来の実務を考えて選択科目を選ぶべきですか?
A.必ずしもその必要はありません。司法試験で勉強する範囲は基本的な理解にすぎず、実務で必要な知識とは異なります。将来の専門分野よりも、自分が勉強しやすい科目を選ぶ方が良いでしょう。
5.まとめ
ここまで読んだみなさんは受験する科目についてなんとなく決まったでしょうか。
もうすでに興味がある科目や勉強を進めている科目があるならば、決めるのは簡単かもしれません。そうでない方はなんとなく人気のある科目にしようかななどと考えているかもしれません。
いろいろな考慮要素があると思いますが、一番簡単で間違いないのは、一度それぞれの科目に目を通してみることです。そのなかで、「この科目は自分にあっているかも」と思ったらその直観を信じて選んでみてください。
また、伊藤塾では、選択科目を担当する各講師が、科目の特徴や講義の内容についてお伝えしています。科目選びの一助となれば幸いです。
伊藤塾では、「盤石な基礎」と「合格後を考える」を指導理念に、司法試験合格はもちろんのこと、合格後の活躍まで見据えたお一人おひとりへの丁寧なサポートで、受講生の皆様を全力で支えています。
無料の体験受講や説明会も実施していますので、司法試験の受験に興味をお持ちの方は、ぜひ一度伊藤塾までお問い合わせください。
2024年 司法試験合格者1,592人中 1,436名(90.2%)※1
2024年 予備試験合格者 449人中 405名(90.2%)※2
が伊藤塾有料講座の受講生でした。
※1(講座内訳:入門講座698名、講座・答練337名、模試401名)
※2(講座内訳:入門講座231名、講座・答練126名、模試48名)
なぜ、伊藤塾の受講生は、これほどまでに司法試験・予備試験に強いのか?
その秘密を知りたい方は、ぜひこちらの動画をご覧ください。
