宅建士試験の5問免除とは?範囲や申込み・登録講習について詳しく解説

基本情報

2025年10月06日

法律系の国家資格である宅建士試験合格を目指す場合、人によっては「5問免除」の制度を利用できる場合があります。試験全体50問のうち最後の5問(「税・その他」の中の「その他」から出題される範囲)が免除され、合格ラインも通常より5点低く設定されるこの制度を使えば、合格により近づくことができるでしょう。

しかし、この5問免除は誰でも活用できる制度ではなく、申請には一定の条件があります。

この記事では、宅建士試験における「5問免除」の制度について解説したうえで、5問免除制度を利用するための条件や申請方法、メリット・デメリットや制度を活用した場合の合格率などについて解説していきます。

宅建士試験合格を本気で目指す方にとって有益な情報を提供いたしますので、ぜひ最後までご覧ください。

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1. 宅建士試験における「5問免除」とは

宅建士試験における5問免除制度とは、試験問題全50問のうち特定の5問が免除される制度です。「税・その他」の分野における「その他」から出題される5問について解答する必要がなくなり、その分、合格基準点も5点低く設定されます。

試験時間は一般受験者よりも10分短くなりますが、解答する問題も45問に減るので法律系の科目に集中して取り組むことができます。

2. 宅建士試験で5問免除になる範囲・問題

5問免除制度を利用しても、自分の好きな問題を免除してもらえるわけではありません。5問免除制度で免除になる範囲は、以下の通りです。

・宅地及び建物の需給に関する法令並びに実務に関する科目(例年:問46〜48)
・土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関する科目(例年:問49・50)

例えば、令和5年度に実施された宅建士試験では、次のような問題が免除の対象になっています。

【問 48】 次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 令和3年度宅地建物取引業法の施行状況調査(令和4年9月公表)によれば、令和4年3月末における宅地建物 取引業者の全事業者数は14万業者を超え、8年連続で増加した。
2 令和5年地価公示(令和5年3月公表)によれば、令和4年1月以降の1年間の地価について、地方圏平均では、全用途平均、住宅地、商業地のいずれも2年連続で上昇し、工業地は6年連続で上昇した。
3 建築着工統計調査報告(令和4年計。令和5年1月公表)によれば、令和4年の民間非居住建築物の着工床面 積は、前年と比較すると、工場及び倉庫は増加したが、事務所及び店舗が減少したため、全体で減少と なった。
4 年次別法人企業統計調査(令和3年度。令和4年9月公表)によれば、令和3年度における不動産業の売上高 営業利益率は11.1%と2年連続で前年度と比べ上昇し、売上高経常利益率も12.5%と2年連続で前年度と比 べ上昇した。
引用:令和5年度 問題 問48|REITO 一般財団法人不動産適正取引推進機構

【問 50】 建物の構造と材料に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1 鉄筋コンクリート構造は、地震や風の力を受けても、躯体の変形は比較的小さく、耐火性にも富んでいる。
2 鉄筋コンクリート構造は、躯体の断面が大きく、材料の質量が大きいので、建物の自重が大きくなる。
3 鉄筋コンクリート構造では、鉄筋とコンクリートを一体化するには、断面が円形の棒鋼である丸鋼の方が表面に突起をつけた棒鋼である異形棒鋼より、優れている。
4 鉄筋コンクリート構造は、コンクリートが固まって所定の強度が得られるまでに日数がかかり、現場での施工も多いので、工事期間が長くなる。
引用:令和5年度 問題 問50|REITO 一般財団法人不動産適正取引推進機構

免除の対象となる問題は、宅建士試験の試験科目でもある権利関係(民法等)や宅建業法等の法律系の出題と異なり、宅建士として働く上での一般常識のような内容になります。

法律的な知識がなくても解ける問題ですが、統計問題や土地・建物の形質や種別に関する問題については苦手意識を持っている人も多いです。全体の75%程度得点できなければ不合格になる試験なので、この分野に関する問題はできる限り得点しておきたいところです。1点を争う宅建士試験において、5問免除してもらうメリットは大きいと言えるでしょう。

3. 宅建士試験で5問免除してもらうための登録講習とは?

宅建士試験で5問免除してもらうための条件や、登録講習の流れなどについて確認していきましょう。

3-1. 宅建士試験で5問免除になるための条件

宅建士試験で5問免除になるための条件は、以下の通りです。

・宅地建物取引業に従事している人(従業者証明書(宅建業法第48条第1項)を所有している人)が登録講習を受け、登録講習修了試験に合格すること
・登録講習修了試験合格後、3年以内に行われる宅建士試験であること

5問免除制度の対象者は、登録講習を受けて登録講習修了試験に合格した者です。

登録講習とは、宅地建物取引業に従事している人(従業者証明書(宅建業法第48条第1項)を所有している人)を対象に行われる講習です。すでに宅地建物取引業の仕事をしている人が一定の講習を受けて試験に合格することで、免除対象となる知識については習得済みであるとみなされます。

登録講習は2か月の通信教育と合計2日間のスクーリング(講習)で構成されていて、受講するには費用がかかります。

実務経験期間に関係なく、派遣社員・アルバイト・パートでも従業者証明書を持っていれば登録講習を受講できるので、業務で必要な方が資格を取得しやすいように配慮されています。

ただし、過去に宅地建物取引業に従事していたとしても、現時点で宅地建物取引業に従事していなければ講習を受講できないことに注意が必要です。

3-2. 宅建士試験で5問免除になるまでの流れ・登録講習は1日かかる?

宅建士試験で5問免除になるまでの流れは、以下の通りです。

【受講申込み】

登録講習を実施している機関に講習の申請をします。インターネットもしくは郵送での申請が可能ですが、申請期間は実施機関により異なるので注意が必要です。なお、実施機関は以下のページから確認できます。

参照:登録講習の登録講習機関一覧|国土交通省

どこで受講しても基本的なカリキュラムは同じですが、講習の時間割や講習費用が異なる場合があります。

なお、宅建士試験は毎年10月の第3日曜日に実施されるので、それまでに登録講習を修了できるよう申し込みを行う必要があります。

【通信教育】

申し込みが完了すると1週間から10日程度で自宅に教材が届くので、その教材を使って通信教育を行います。勉強スケジュールは自分で組み立てることができ、内容的には概ね2か月程度で学習できるボリュームとなっています。講義に関するWeb・DVDは基本的になく、課題等の提出義務もないことがほとんどです。

なお、学習する内容は5問免除となる部分だけでなく、それ以外の宅建士試験で出題される項目についても学ぶことになります。

・宅地建物取引業法その他関係法令に関する科目
・宅地及び建物の取引に係る紛争の防止に関する科目
・土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関する科目
・宅地及び建物の需給に関する科目
・宅地及び建物の調査に関する科目
・宅地及び建物の取引に係る税務に関する科目
参照:登録の手引き|国土交通省


【スクーリング受講・修了試験に合格】

通信講習後、約2日間のスクーリング(合計10時間程度の講義)を受講します。スクーリングが行われる会場は実施機関により異なりますが、基本的に欠席・遅刻・早退・途中退室が認められません。申し込み時にスクーリングの日程や会場等をしっかり確認しておくようにしましょう。

スクーリングの最後に、通信教育やスクーリングで学んだ内容を基に修了試験が実施されます。4肢択一式の全20問程度で、試験時間は1時間、7割(14問)以上の正解を修了の要件としているケースが多いです。基本的に修了試験は1回のみで、追試・再試験等はありません。奇問・難問は出題されないので、講義をしっかり理解していれば合格することができるでしょう。

なお、実施機関によってはスクーリングを1日で完結できるコースも存在します。

【登録講習修了の情報の通知】

修了試験に合格すると、1週間程度で「登録講習修了者証明書」が郵送されます。これで、宅建士試験において5問免除してもらう要件が整ったことになります。

【宅建士試験申し込み】

登録講習修了者証明書を受け取ったら、宅建士試験を申し込む際に免除の申請を行います。

3-3. 令和7年度(2025年度)の申込期限

登録講習の申請期限は実施機関により異なります。詳細は登録講習の登録講習機関一覧|国土交通省のページから各実施期間のホームページで講習日程を確認しましょう。

また、5問免除の申請は宅建士試験の申し込みの際に行います。 

令和7年度(2025年度)の試験日程は、以下の予定となっています。

【参考:令和7年度宅建士試験の申込日程】

官報公告2025年6月6日
インターネット
申込み
2025年
7月1日〜7月31日
試験案内
配布期間
2025年
7月1日〜7月15日
申込み
受付期間
2025年
7月1日〜7月15日

参照:宅建試験のスケジュール|不動産適正取引推進機構

4. 宅建士試験で5問免除のメリットとデメリット

宅建士試験で5問免除を活用する1番のメリットは、合格率が上がることです。免除された分合格基準点も下がるので、5問免除の対象となる問題で失点するリスクを負う受験生よりは合格基準点に達しやすくなります。

また、免除科目に充てる勉強時間を他の法律系科目の勉強時間に充てられることも、5問免除制度のメリットの一つと言えるでしょう。

一方、デメリットとしては、5問免除してもらうためには登録講習を受けなければならず、そのための時間と費用が余分にかかってしまうということが挙げられます。社会人などで勉強時間を確保しにくく本試験の勉強だけで手一杯になっている人にとって、通信教育やスクーリングに時間を割けない人もいるでしょう。仕事や家庭の事情で平日日中に時間が取れない人は、講義を受けることすら難しいかもしれません。修了試験で落ちてしまうリスクや1万5,000〜2万円程度の講習費用がかかることを考えると、5問免除を選択することに躊躇してしまう人も少なくないでしょう。

5. 宅建士試験で5問免除を活用した場合の合格率

令和6年度に実施された宅建士試験では、全体の合格率および登録講習修了者(5問免除対象者)の合格率は以下のような数字となりました。

【令和6年度 宅建士試験の結果】

申込者数301,336人
受験者数241,436人
合格者数44,992人
合格率全体18.60%
登録講習
修了者
21.90%

参照:令和6年度宅地建物取引士資格試験結果の概要|不動産適正取引推進機構

令和6年度の結果を見ると、全体の合格率よりも登録講習修了者の合格率の方が高くなっています。

登録講習修了者は全員が宅地建物取引業に従事している人であり、かつ修了試験に合格している人です。宅建業法や法令上の制限で出題される各種法律知識についての理解度が高いことも、未経験者を多く含む全体の合格率より高くなっている理由のひとつと考えられます。

しかし、5問免除されればその分合格基準点も下がることから、あと1点で涙を呑んだというような受験生にとっては、合格できる確率が高くなるかもしれません。もし免除制度を活用できる立場にあるのであれば、登録講習を受けることを検討してみるのもよいでしょう。

6. 宅建士試験では5問免除があっても確実に合格できるとは限らない

宅建士試験の5問免除制度は、得点力に自信がない受験生にとっては魅力的な制度ではありますが、5問免除されたからといって必ずしも試験に合格できるわけではありません。

免除後の合格基準点を超えなければいけないことを考えると、免除対象ではない法律系科目は一般受験者と同じように勉強する必要があります。

不動産業界に勤めている方の場合、不動産取引に関する場面を想定しやすいことから、宅建業法などの科目については高得点を取りやすいかもしれません。一方で、権利関係(民法等)や法令上の制限(都市計画法や建築基準法等)に関する分野については、5問免除者であってもしっかり勉強しておかなければ得点することは難しいでしょう。

近年、問題文の長文化や個数問題の増加などにより、宅建士試験の難易度は年々上がってきています。暗記に頼った勉強法では未知の問題が出題された際に対応できない可能性もあるので、法令・規制の趣旨を常に意識した勉強が重要になってくるでしょう。

独学で宅建士試験に挑む方もいますが、勉強する範囲を絞り効果的に得点するための知識を身につけたいのであれば、受験指導校を活用することをお勧めします。

法律初学者でもすぐに理解できるよう図や表を用いて解説してくれたり、正解を導くためのコツやひっかけポイントを教えてくれたりするので、最短で宅建士試験に合格するための実力を身につけることができます。

これから宅建士試験に挑もうと考えている方は、まずは本試験の問題を解いてみましょう。その上で「独学では難しそう」「安定して合格基準点を超える得点を取れるようになりたい」「他の受験生と切磋琢磨して、モチベーションを維持したい」と考える場合は、受験指導校の講座受講を検討してみましょう。

7. まとめ

◉宅建士試験における5問免除とは、全50問のうち5問(「その他」から出題される問題)が免除される制度
◉宅建士試験で5問免除を受けるためには、登録講習を受けて登録講習修了試験に合格する必要がある
◉5問免除を受ければ、その分、合格率が上がる
◉5問免除になったからといって、必ずしも試験に合格できるとは限らない

宅建士試験の5問免除制度は積極的に活用すべきですが、それだけで合格できるほど宅建士試験は簡単な試験ではありません。「宅建士試験は誰でも受かる簡単な試験」だと考えていると、合格に手が届かない可能性が高くなるでしょう。

いち早く合格して次のステップに進むためにも、5問免除と併せて受験指導校の利用も検討してみてはいかがでしょうか。「宅建士試験に今年中に合格したい!」という強い想いがある方は、ぜひ法律専門の受験指導校である伊藤塾をご活用ください。

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伊藤塾 宅建士試験科

著者:伊藤塾 宅建士試験科

伊藤塾宅建士試験科が運営する当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、宅建士試験に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。