【社労士試験の科目一覧】難易度や学習方法を徹底解説!
難易度・合格率
2025年10月30日
「社労士試験に挑戦したい。でも、10科目もある試験に合格なんてできるのだろうか?」
そんな不安を感じていませんか?
社会保険労務士(以下、社労士)は、専門性の高い国家資格である一方、出題範囲が広く、科目ごとの難易度も様々です。そのため、最初の一歩で戸惑う方が多いのも事実です。
ですがご安心ください。社労士試験は、科目の特性を理解し、効率よく学習することで、誰でも合格を目指せる試験です。
本記事では、社労士試験の全10科目を難易度や特徴ごとにわかりやすく解説し、限られた時間でも合格に近づくための具体的な学習戦略もご紹介します。
「何から始めればいいか分からない」という方も、この記事を読めば学習の道筋が見えてくるはずです。本記事が、社労士試験合格への第一歩となれば幸いです。
【目次】
1. 社労士試験とは
まずはじめに、社労士試験の科目一覧と試験形式、配点について説明をしていきます。
1-1. 社労士試験の科目一覧
社労士試験科目は、大きな分類として「労働関係」と「社会保険関係」に分かれます。内容としては、労働関係科目が6科目、社会保険関係科目が4科目あり、詳細は以下の通りです。
| 【労働関係科目】 ・労働基準法 ・労働安全衛生法 ・労働者災害補償保険法(労災保険法) ・雇用保険法 ・徴収法 ・労務管理その他の労働に関する一般常識 |
| 【社会保険関係科目】 ・健康保険法 ・国民年金法 ・厚生年金保険法 ・社会保険に関する一般常識 |
科目は一つずつ独立しているわけではなく、雇用保険法と労災保険法、国民年金法と厚生年金保険法など、多くの科目が関連性を持っています。そのため、試験合格のためには全体を体系的に学習していくことが大切なのです。
1-2. 試験科目の配点と合格基準
社労士試験の合格を掴むためには、試験の全体像を把握することが不可欠です。ここでは、対策を立てる上で基本となる「出題形式」「配点」「合格基準」について解説します。
【出題形式】
①選択式試験(10:30~11:50)
文中にある空欄を埋める文章・単語を選択肢から選ぶ形式
②「択一式試験」(13:20~16:50)
質問に対する回答を5つの選択肢から選ぶ形式
【配点】
①選択式
各問1点・各科目5点満点・合計40点満点
※労働基準法と労働安全衛生法はあわせて1科目として扱われます
※労働保険徴収法は、原則として労災保険法と雇用保険法の一部として出題されます
②択一式
各問1点・各科目10点満点・合計70点満点
※社一と労一はあわせて1科目として扱われます
【合格基準】
①総得点の合格基準
選択式・択一式それぞれで、原則として7割の得点を取ること。
(選択式:40点満点中28点以上/択一式:70点満点中49点以上)
②科目別の合格基準
全科目において、定められた最低得点をクリアすること。
(選択式:3点/択一式:4点)
※上記の合格基準点は原則の数字であり、当該試験における平均点や得点分布を考慮して、年度ごとに調整が行われる場合があります。
各科目に合格基準点(合格するために最低限必要な点数)が設定されているのです。そのため、合計点がどれだけ高くても、1科目でも基準点に届かなければ不合格になります。社労士試験の難易度が高いと言われる要因の一つとして、この合格基準の厳格さが挙げられます。
社労士試験の合格のためには「すべての科目をバランスよく学習し、苦手科目を作らない」学習が重要なのです。
※こちらも併せてお読みください。
→ 社労士試験とは?試験日程や科目・合格点など試験内容について分かりやすく解説
2. 【科目別】特徴と難易度ランキング
ここからは、科目ごとの特徴を、難易度ごとに紹介していきます。
2-1. じっくり取り組むべき高難度科目
はじめに、特に学習に時間と工夫が必要となる、難易度の高い4科目を紹介します。これらの科目は、試験範囲が広く専門用語も多いため、受験生が苦手意識を持ちやすい科目です。ただし、厚生年金保険法は、しっかりと学習することができれば比較的得点しやすい科目でもあります。
【健康保険法】
健康保険は、労働者とその家族が業務外で病気・怪我・出産・死亡などに直面した際に保険給付を行う制度です。
普段の生活で触れる機会も多いため、学習内容をイメージしやすく、比較的スムーズに理解できるでしょう。しかしその一方で、学習範囲は非常に広く、専門的で細かい知識が問われるのがこの科目の難しさです。
運営主体である「協会けんぽ」と「健康保険組合」の違いや、細かい給付のルールなど、複雑な制度に苦手意識を感じる方も多くいます。また、給付に関しては次に紹介する労災保険法と混同しやすいため、注意も必要です。
試験範囲の広い健康保険法では、まず全体像を把握した上で、被保険者・保険給付・費用負担といった頻出テーマに絞って学習を進めることで、「合格基準点落ち」の回避を目指すことが重要です。
【厚生年金保険法】
厚生年金保険は、主に会社員などを対象とした公的年金制度です。日本の年金制度において「2階部分」と位置づけられ、「1階部分」である国民年金と密接に関連しています。
この科目は、度重なる法改正で制度が複雑な上に学習範囲も膨大で、社労士科目の中でも特に難易度が高いとされています。
国民年金とセットで学習できる反面、両者の規定を混同しやすいという難しさもあるため、理解を進めるためには体系的な学習が不可欠です。まずは土台となる国民年金法を固め、その上で厚生年金制度を比較しながら整理していくと、効率的に知識を定着させることができます。
【社会保険・労務管理その他の労働に関する一般常識】
社労士試験における2つの一般常識科目は、多くの受験生が苦手意識を持つ科目です。
「労務管理その他の労働に関する一般常識」では、主要な労働法以外の法律(労働組合法、パートタイム労働法、労働者派遣法など)や労務管理の知識、さらに厚生労働白書や各種統計データからの出題が中心となります。
「社会保険に関する一般常識」では、主要な社会保険法以外の法律(国民健康保険法、介護保険法、児童手当法など)や社会保障制度の歴史的背景などが問われます。
両科目とも出題範囲が広く、特に統計や白書のデータは数字に関連性がないものも多く覚えにくい傾向があります。効果的な学習法としては、頻出部分を効率的に押さえ、基本的な内容と概数を記憶することです。
あまり深追いして時間を費やしすぎないよう、メリハリをつけた学習が求められます。
2-2. 着実に固めたい中難度科目
続いて、中難易度の3科目を紹介します。これらは専門知識が問われるものの、学習のポイントさえ押さえれば、安定して得点できるのが特徴です。
【国民年金法】
国民年金は、原則として日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人に加入義務がある基礎的な年金制度です。
社労士試験では給付に関する事項が出題の中心となりますが、馴染みの薄い専門用語や複雑な制度も多く、覚えるべき内容が膨大であるため、難易度の高い科目とされています。
しかし、国民年金法は年金制度の基礎であり、厚生年金保険法などの関連科目の学習を進める際にも重要な土台となるため、制度の背景や全体像をきちんと理解していくことが不可欠です。
効果的な学習法としては、まず基本的な被保険者や保険給付の概念をしっかり理解することが大切です。その上で過去問などの問題演習を通じて出題傾向に沿った知識を積み上げていくことで、確実に得点する力を身につけることができます。
【労災保険法(労働保険徴収法を含む)】
労災保険は、業務中や通勤途中のケガなどに対して保険給付を行う制度です。択一式では、保険料のルールを定めた労働保険徴収法と合わせて出題されます。
この科目は、やや馴染みのない専門用語が出てくるものの、試験範囲が比較的コンパクトで、大きな法改正も少ないため、学習した分だけ安定して点数が伸びやすいです。
試験では基本的な論点が繰り返し問われる傾向があり、特に保険給付や業務・通勤災害の判定に関する部分等が頻繁に出題されます。そのため、細かい数字に深入りするよりも、まずは過去問演習を通じて頻出論点を徹底的に固めることが重要な科目となります。
【労働安全衛生法】
労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保するために、事業者が遵守すべき義務や基準を定めた法律です。社労士試験では労働基準法とあわせて出題されます。
この科目は、試験範囲のボリュームは少ない一方で、専門性が非常に高い用語が多く使用されています。例えば、特定機械の扱いや有害物質の管理などの内容は多くの方にとって馴染みがなく、つまずきやすいポイントです。
あまり細かな知識まで深入りせずに、安全衛生管理体制や健康診断の受診基準など、頻出論点に学習を集中させ、基礎的な問題で確実に得点できる力を養うことが得点につながります。
2-3.比較的取り組みやすい科目
最後に紹介するのは、これまでの科目と比べて、比較的学習を始めやすい3科目です。比較的身近なテーマが中心で、内容も専門的すぎないため、多くの方が抵抗なく取り組めるでしょう。
【雇用保険法】
雇用保険法は、労働者が失業した際の生活保障や再就職支援、在職中の継続雇用支援などを目的とした社会保険制度を定めた法律です。
私たちの生活に密着した制度がテーマなので、比較的イメージしやすく、多くの受験生が得点源にしやすい科目です。
試験では基礎的な知識を問う問題が中心ですが、給付日数や支給要件といった「数字」を正確に暗記していないと解けない問題が多い点には注意が必要です。
択一式試験では、労災保険法と同様に、労働保険徴収法とセットで出題されます。
複数の給付制度があるため、金額や日数を混同しやすいことが注意すべきポイントです。体系図などで全体像を整理し、頻出論点に絞って基礎を繰り返し学習することが重要です。正しい方法で対策すれば、着実に得点できる科目と言えるでしょう。
【労働基準法】
労働基準法は、すべての労働関連科目の土台となる重要な科目です。労働者の保護を目的に、働き方の最低ルールを定めた法律であり、社労士の学習に限らず、働くすべての人にとって知っておくべき知識が詰まっています。有給休暇や残業といった聞き馴染みのあるテーマも多いため、比較的親しみやすい科目と言えるでしょう。
しかし、試験では法律の条文だけでなく、行政解釈である「通達」や裁判例である「判例」からも広く出題されるため、単純な暗記学習だけでは対応できません。
個別の知識をただ覚えるのではなく、「なぜこのルールがあるのか」という法律の根本的な考え方を理解すること、そして判例や条文の独特の表現に慣れることが、得点の鍵となります。
3. 合格のための効率的な学習方法
これまで説明してきたように、社労士試験では、原則として全10科目の広大な範囲の学習が必要です。そのため、合格を掴み取るには各科目をいかに効率良く学ぶかが重要となります。
ここからは、合格のための具体的な学習方法を解説していきます。
3-1. 時間配分を考えて学習する
社労士試験合格への道のりで最も重要な鍵を握るのが時間管理です。試験範囲は非常に広大であるため、計画性なく学習を進めると、気づいた時には試験日までに学習が間に合わないという事態に陥りがちです。
そうならないためにも「いつまでに、どの科目を終わらせるか」「どの時期から過去問に取り掛かるか」といった、学習スケジュールをしっかりと作成する必要があります。計画性のある学習が、日々の学習の質を高め、合格への近道となります。
※社労士試験合格のために必要な勉強時間やスケジュール管理については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 社労士試験の勉強時間とは?最短で合格するための勉強方法とスケジュール管理のコツ
3-2. 苦手科目をなくす
社労士試験において避けて通れないものが「苦手科目の克服」です。この試験の特徴として、総合得点が合格ラインを超えていても、たった1科目でも合格基準点を下回ると不合格になるという厳しい判定基準があります。つまり、苦手科目を放置することは、他の科目でどれだけ高得点を取っても合格を逃す大きな要因となるのです。
そのため、苦手に感じる科目があっても、全科目で安定して基準点をクリアできる実力をつけることが必要になります。
3-2-1. まずは全体像をつかむ
苦手科目を攻略する第一歩は、まず科目の全体構造を理解することです。制度の意味や背景を理解せずに、ただ数字や例外規定を暗記しようとすると、なかなか記憶が定着しません。
例えば、雇用保険の給付額や支給日数を覚えるとき、「なぜその金額なのか」「どういう考え方で日数が決まるのか」という制度設計の意図を理解していると、単なる丸暗記ではなく論理的な記憶となります。法律の成り立ちや背景を知ることで、科目への心理的な抵抗感も和らいでいくはずです。
3-2-2. 苦手範囲を集中的に学習する
全体像を掴んだ上で、それでも理解が追いつかない箇所があれば、期間を決めてそこを集中的に学習するアプローチも効果的です。
ただし、やみくもに全範囲を完璧にしようとすると、貴重な時間を浪費するだけになってしまう可能性があります。注力すべきなのは「頻出範囲にもかかわらず、何度も間違えてしまう部分」です。試験傾向を踏まえ、重要度の高い苦手箇所から優先的に克服していくことで、限られた学習時間を最大限に活用できます。
3-3. 一般常識対策を立てる
社労士試験の一般常識は、出題範囲が広く対策が難しい科目であるため、早い段階から学習を始める必要があります。
ただし、全てを完璧に覚えようとするのではなく、過去問を分析して頻出テーマに学習を絞り込むことが大切です。 特に、頻出の厚生労働白書・労働経済白書や法改正情報は重要な得点源となるため、必ず最新動向の把握をしておく必要があります。独学での情報収集が難しい場合、受験指導校が提供する「法改正・白書対策講座」などを活用することが非常に有効です。
※伊藤塾の「2026年合格目標 社労士 合格講座」もぜひご活用ください。
3-4. 過去問演習で出題形式に慣れる
試験合格を掴み取るためには、過去問演習によるアウトプットが不可欠です。
テキストを読んだりノートをまとめたりするインプット学習だけでは、記憶が効率的に定着せず、自分の苦手箇所の把握も難しいため、合格基準に達することができません。
過去問を解くことにより、以下のようなメリットを得られます。
・各科目の出題傾向や頻出論点がわかる
・出題の言い回しや引っかけ問題のパターンに慣れる
・自分の知識の定着度や、理解が曖昧な科目を把握できる
過去問演習では、問題の正誤だけでなく、なぜその答えになるのかを理解することが重要です。間違えた問題は必ず復習し、関連する法令や制度の背景について考える癖をつけましょう。さらに、過去問は一度だけでなく、何度も繰り返し解くことで、知識の定着につながります。
5.よくあるQ&A
Q1.どの科目から勉強すれば良いですか?
A1. 初学者は「労働基準法」から始めるのがおすすめです。
労働基準法は他の法令の基礎となる科目であり、社労士として学習する知識の土台となるため、理解することで全体の学習がスムーズになります。
Q2.苦手科目は捨てても良いですか?
A2. 社労士試験では苦手な科目であっても捨てることはできません。
合格のためには各科目ごとの合格基準点を超えなければいけないため、苦手科目であっても、最低限の点数を取得できるレベルまで学習を進める必要があります。要点を抑えた効率的な学習により、無駄な時間を費やさずに必要な知識をつけることができるはずです。
Q3.科目あたりの勉強時間の目安はどのくらいですか?
A3. 1科目あたりの目安は100時間程度です。
これは、社労士合格のために必要な標準学習時間である1000時間を10科目換算にした数字です。
ただし、科目の難易度によっても差がありますし、受験生の実務経験の有無や学習方法によっても必要な勉強時間は異なるでしょう。また、受験指導校を利用することによって大幅に時間短縮できる可能性もあります。
※社労士試験合格のために必要な勉強時間については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 社労士試験の勉強時間とは?最短で合格するための勉強方法とスケジュール管理のコツ
6.社労士試験10科目の特徴を理解し効率的な学習を
本記事では、社労士試験の科目、難易度別の特徴、効率的な学習方法について解説しました。
主なポイントは以下のとおりです。
◉社労士試験の科目
社労士試験は「労働関係科目」(労働基準法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、雇用保険法、徴収法、労務管理その他の労働に関する一般常識)と「社会保険関係科目」(健康保険法、国民年金法、厚生年金保険法、社会保険に関する一般常識)の計10科目で構成されます。試験は選択式と択一式で行われ、それぞれ総得点基準と科目別基準点が設定されています。特に科目別基準点は厳格で、1科目でも基準点を下回ると不合格となるため、全科目をバランス良く学習し、苦手科目を作らないことが重要です。
◉科目別の特徴と難易度
・高難度科目:国民年金法、厚生年金保険法、社会保険・労務管理その他の労働に関する一般常識
これらの科目は、専門用語が多く覚える内容が膨大であり、法改正も頻繁なため、じっくり取り組む必要があります。
・中難度科目:健康保険法、労災保険法(労働保険徴収法を含む)、労働安全衛生法
これらの科目は、専門知識が問われますが、ポイントを押さえれば安定した得点が見込めます。
・入門科目:雇用保険法、労働基準法
身近なテーマが多く、比較的取り組みやすい科目ですが、正確な暗記や法律の根本的な理解が求められます。労働基準法は全労働関連科目の土台となります。
◉合格のための効率的な学習方法
・時間配分:広大な試験範囲をカバーするため、計画的な学習スケジュール作成が不可欠です。
・苦手科目克服:1科目でも基準点を下回ると不合格となるため、苦手科目も最低限の点数を取れるレベルまで学習を進める必要があります。まずは全体像を把握し、頻出かつ苦手な範囲を集中的に学習することが効果的です。
・一般常識対策:出題範囲が広く対策が難しい科目ですが、過去問分析で頻出テーマに絞り、厚生労働白書や法改正情報を把握することが重要です。
・過去問演習:アウトプット学習は知識の定着に不可欠です。過去問を解くことで出題傾向や頻出論点、自分の知識の定着度を把握し、繰り返し学習することで得点力を高めます。
・初学者は労働基準法から学習を始め、全科目をバランス良く学習することが合格への鍵となります。
以上です。
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