司法書士になるには?受験資格・難易度・高卒でもなれるのかなど詳細解説

試験詳細

2025年10月02日

司法書士は、法律系の国家資格の中でも特に人気の高い資格です。「街の法律家」として困っている人の役に立ちたいと考えている方も多いと思います。

司法書士として働くためには、司法書士試験に合格する必要がありますが、何か特別な受験資格が必要なのか、試験の難易度はどれくらいなのか、気になることも多いでしょう。

この記事では、司法書士試験の受験資格について詳しく解説するだけでなく、司法書士になるための方法や司法書士試験合格後の流れ、司法書士試験の難易度等についてわかりやすく解説していきます。

司法書士試験を受験するかどうか迷っている方にとって有意義な情報を提供しますので、ぜひ最後までご覧下さい。

1.司法書士に受験資格はなし!

結論から言うと、司法書士試験には受験資格は一切設けられていないため、性別・年齢・学歴・職業・国籍問わず誰でも受験することができます。また、受験回数の制限もないので、納得いくまで何回でも受験することができます。

ただし、未成年者の場合、たとえ試験に合格しても司法書士登録ができないことに、注意が必要です。

司法書士として仕事をするためには、日本司法書士会連合会に備えられている司法書士名簿に登録する必要があります。未成年者の場合、この登録をすることができません。つまり、たとえ司法書士試験に合格したとしても、18歳になるまでは、司法書士として仕事ができないことになります。

また、たとえば副業が禁止されている公務員の場合、司法書士試験に合格したとしても、仕事が休みの日に副業として司法書士の活動をすることはできません。そのため、公務員が司法書士として業務を行なうためには、公務員から司法書士に転職するしか選択肢がないことになります。

2.司法書士になるための2つの方法とは?

司法書士になるためには、次の2つのいずれかの方法で司法書士資格を取得する必要があります。

司法書士になるための2つの方法
◉司法書士試験に合格する
◉法務大臣の認定を受ける

一般的には、司法書士試験に合格することで司法書士としての資格を取得するのが一般的です。しかし、一定の要件を満たせば、司法書士試験に合格することなく、司法書士としての資格を取得することができます。

ここでは、司法書士になるための2つの方法について、詳しく解説していきます。

2-1.司法書士試験に合格する

司法書士を目指すほとんどの人が通る王道のルートは、司法書士試験に合格して司法書士の資格を取得するルートです。

司法書士試験は年齢・性別・学歴・国籍等に関係なく誰でも受験できる国家試験です。試験は毎年1回で、7月に筆記試験、その後、筆記試験の合格者のみ10月に口述試験が行なわれます。

試験科目は11科目で、不動産登記法と商業登記法については記述式の問題も出題されるなど、比較的難易度の高い試験となっています。

ただし、令和6年度(2024年度)に行なわれた司法書士試験では、合格者の年齢は20歳から73歳とかなり幅広くなっており、平均年齢も41.50歳と、他の資格試験に比べて比較的高い数字となっています。
参照:令和6年度司法書士試験の最終結果について|法務省

このことから、学生のうちから資格取得を目指すことも、仕事をしながらセカンドキャリアを考えて資格を取得することも、可能な試験となっていることがわかります。

2-2.法務大臣の認定を受ける

司法書士試験に合格しなくても、一定の条件を満たして法務大臣の認定を受ければ、司法書士として仕事をすることができます。

司法書士の資格について定めた「司法書士法」および「司法書士の資格認定に関する訓令」では、司法書士の資格について、次のように規定しています。

(資格)
第四条 次の各号のいずれかに該当する者は、司法書士となる資格を有する。
一 司法書士試験に合格した者
二 裁判所事務官、裁判所書記官、法務事務官若しくは検察事務官としてその職務に従事した期間が 通算して十年以上になる者又はこれと同等以上の法律に関する知識及び実務の経験を有する者であって、法務大臣が前条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力 を有すると認めたもの
引用:司法書士法4条|e-Gov法令検索

第1条 次に掲げる者は,法務大臣に対し,資格認定を求めることができる。
(1) 裁判所事務官,裁判所書記官,法務事務官又は検察事務官として登記,供託若しくは訴訟の事務 又はこれらの事務に準ずる法律的事務に従事した者であって,これらの事務に関し自己の責任において判断する地位に通算して10年以上あったもの
(2) 簡易裁判所判事又は副検事としてその職務に従事した期間が通算して5年以上の者第2条 司法書士の業務を行うのに必要な知識及び能力を有するかどうかの判定は,口述及び必要に応じ筆記の方法によって行う。
引用:司法書士の資格認定に関する訓令|法務省

ここに規定する職業に該当し、5年もしくは10年以上実務経験を積んだ場合には、口述試験等で司法書士の業務を行なうのに必要な知識及び能力を有すると認定されることで、司法書士としての資格を取得することができます。

ただし、この制度を利用して司法書士の資格を取得する人が多いわけではなく、実質的には該当する職業の人が、定年退職したあとに司法書士として働くための制度となっています。そのため、学生や一般の社会人が司法書士になるための王道ルートは、司法書士試験を受験するルートであると言えます。

3.司法書士試験を受験してから司法書士になるまでの流れ

司法書士試験を受験してから司法書士として働くまでの流れは、次の通りです。

司法書士試験に合格して司法書士になるまでの流れ
司法書士試験
に合格する
7月の第1
日曜日
筆記試験
9月下旬〜
10月中旬
筆記試験合格発表
10月中旬〜
下旬
口述試験
11月上旬〜
中旬
最終合格発表
新人研修を
受ける
12月〜3月中央研修
ブロック研修
司法書士会研修(配属研修)
日本司法書士連合会に登録する

司法書士試験に合格しても、新人研修を受け司法書士として登録をしない限り、司法書士として仕事をすることはできません。ここからは、司法書士試験に合格し、司法書士として仕事をするまでの流れについて解説していきます。

3-1.司法書士試験に合格する

まずは、司法書士試験に合格して、司法書士の資格を取得する必要があります。

司法書士試験の合格率は、例年4〜5%前後で推移しており、令和6年度(2024年度)に行なわれた司法書士試験の合格率は5.3%でした。

合格率だけ見ると、一部の優秀な人しか合格できないような、奇問難問が出題される試験のように感じるかもしれませんが、基礎基本をしっかりと定着させることができれば、最短で1年以内に合格することも十分可能です。

※なお、司法書士試験の合格率や合格までに必要な勉強時間については、こちらの記事をご覧下さい。

3-2.新人研修を受ける

司法書士試験に合格後、司法書士として活動するためには、まず、新人研修(主催:日本司法書士会連合会)を受けることが義務付けられています。

司法書士として業務を行うために必要な執務姿勢と実務能力を身につけることを目的とした研修となります。

新人研修は、「中央研修」「ブロック研修」「司法書士会研修(配属研修)」の3つに分かれており、例年12月〜翌年3月に渡って開催されます。各研修では、それぞれ次のような研修を受けることになります。

【司法書士の新人研修で行なわれる主な内容】

中央研修一番最初に受けることになる研修で、司法書士として働くために必要な倫理観や主な業務内容、職責などの、基本的なことについて学ぶ全体的な研修
ブロック研修全国8ブロックに分かれて実施される研修で、実務の現場で必要となる知識を学びます。主に、不動産登記、商業登記、成年後見、消費者問題などの実践的な業務を取り扱い、最低限の実務知識を身につけます。
司法書士研修
(配属研修)
各司法書士事務所に配属され、実際の現場での実務を通じて、業務知識やノウハウを身につけるための研修です。
業務内容は配属される事務所によって異なりますが、実際に申請書を作成したり、登記所や市役所等を訪問して、登記申請や各種申請を行なったります。

この新人研修は、司法書士試験に合格後、1年以内に司法書士登録を行なう予定のある方が受ける研修です。司法書士登録をするためには必須の研修ですが、資格を取得しても司法書士として働く予定がない場合には、すぐに研修を受ける必要はありません。

一度司法書士試験に合格してしまえば、自分の好きなタイミングで司法書士登録を行なうことができます。そのため、司法書士の資格を活かして一般企業の法務部で働いたり、法律の知識と前職の経験を活かして企業のコンサルティングを行なう場合など、すぐには登録しない方もいます。

なお、より幅広い業務を扱えるようになる「認定司法書士」になるためには、新人研修のほかに「特別研修」を受けて、「簡裁訴訟代理等能力認定考査」と呼ばれる試験に合格する必要があります。

特別研修では、訴訟代理業務に必要な能力を身に付けるために、訴状や答弁書の作成を行なったり、模擬裁判や実際の裁判の傍聴などを行ないます。特別研修は、司法書士となる方全員に必須となる研修ではありませんが、認定司法書士となることにデメリットはないため、毎年多くの合格者が研修を受けています。

3-3.日本司法書士連合会に登録する

新人研修を無事に終えたら、司法書士として業務を行なうために、各都道府県の司法書士会を通して、日本司法書士会連合会の司法書士名簿に登録することになります。

司法書士として登録が完了しないうちは、司法書士としての業務を行なうことはもちろん、司法書士という肩書きを付した名刺を発行したり、履歴書に司法書士(登録済み)と記載することはできませんので、注意が必要です。

なお、登録には登録手数料や登録免許税のほかに、各都道府県の司法書士会に入会する手数料や年会費を支払う必要があります。司法書士として業務を行なう予定がある場合には、あらかじめ登録の際にかかる費用を用意しておくのが無難です。

4.司法書士試験の免除制度とは?

司法書士試験には、一定の条件を満たすと試験が免除される免除制度が存在します。

免除制度は、大きく「試験免除」と「筆記試験免除」の2つに分かれていますが、それぞれ免除される要件が異なります。ここでは、それぞれの免除制度について、詳しく解説していきます。

4-1.試験免除

司法書士試験における試験免除とは、司法書士試験そのものが免除される場合を指します。具体的には第2章で解説した特定の職業に就いて、一定期間業務をこなした方が対象となります。

ただし、試験免除とは言っても、あくまでも筆記試験が免除されるだけです。たとえ、司法書士法4条の特定の職業に該当するものであっても、口述試験等を行ない、司法書士の業務を行なうのに必要な知識及び能力を有すると認められる必要があります。

4-2.筆記試験免除

司法書士試験における筆記試験免除とは、司法書士試験の筆記試験合格者のうち、口述試験に合格できなかった場合に、翌年の筆記試験が免除される制度のことです。

司法書士試験の口述試験は、例年ほぼ100%の合格率となっているため、この免除制度を利用するケースはあまりないかもしれません。

しかし、病気やけがなど、口述試験を満足いく状態で受けられないケースも存在するため、このような場合に筆記試験が免除されるのは、受験生にとって大きなメリットであるといえます。

5.司法書士試験の難易度とは?

司法書士試験の合格率は例年4〜5%程度で推移しており、合格率だけ見れば非常に難易度の高い試験だと言えるかもしれません。そのため、難関大学の法学部を卒業しているような人でない限り合格できない試験だと勘違いしてしまい、試験にチャレンジすることを諦めてしまう人もたくさんいます。

しかし、司法書士試験は、勉強の方向性さえ間違えなければ誰でも合格できる試験であり、秀才しか合格できないような特殊な試験ではありません。

司法書士試験の難易度が合格率から受ける印象よりも高くないと言える理由の一つは、主な試験形式がマークシートであることです。

たしかに、不動産登記法と商業登記法については記述式の問題も出題されますが、択一式の問題については全てマークシート方式で出題されるため、基本的な知識をしっかり身につけることを意識して勉強すれば、合格点に手が届くようになる試験です。

また、司法書士試験の合格者には、幅広い年齢層の方や、さまざまなバックボーンを持った方がいます。むしろ、社会人経験があればその分理解しやすい法律科目もあることを考えると、年齢や学歴で試験にチャレンジすることを諦めてしまうのは、もったいないと言えるでしょう。

※なお、司法書士試験の難易度については、こちらの記事もご覧下さい。

6.高卒でも司法書士試験合格は十分可能

高卒でも司法書士試験に合格することは十分可能です。高卒だからという理由で、チャレンジするのを諦めてしまうのは非常にもったいないことです。

たとえ大学を卒業していたとしても、司法書士試験に出題されるような本格的な試験勉強をしたことがある人は少ないことを考えると、基本的には学歴に関係なくスタートは横並びと考えてよいのです。

6-1.最短での合格を目指すなら受験指導校を利用しよう

司法書士試験に独学で合格しようと考えている方も多いと思いますが、最短で司法書士試験に合格したいのであれば、受験指導校を利用して効率良く勉強することをおすすめします。

司法書士試験の試験科目は合計11科目もあり、法律初学者にとっては内容を理解することすら難しく、全体像を把握するまでにかなりの時間がかかってしまう可能性があります。

また、会社法などは、社会人経験がないとイメージがしづらい科目であり、そもそも登記を見たことがない人にとっては、不動産登記法や商業登記法などを一から学ぶことはかなりの労力になるでしょう。

特に、社会人が働きながら合格を目指すのであれば、少ない勉強時間で確実に試験で使える知識を身につけていく必要があるため、遠回りの勉強をしていてはいつまで経っても合格することができません。

その点、受験指導校であれば、試験合格に必要な知識が網羅された実践的なテキストを使用して、効率良く必要な知識を身につけることができます。

また、講師の的確なアドバイスや、他の受験生と切磋琢磨することで、最後まで勉強のモチベーションを保ちながら学習を進めることができるでしょう。

人生における時間は有限です。次のステージにいち早く進むためにも、受験指導校を利用し、無駄のない効率的な学習で、最短合格を目指してみてはいかがでしょうか。

7.まとめ

司法書士試験の最も魅力的なことの一つが、受験資格が一切必要なく、性別・年齢・学歴・職業・国籍問わず誰でも受験できることです。

また、受験回数の制限もないので、何回でも試験にチャレンジすることができます。

法律系の国家資格の中でも難関試験と言われる司法書士試験ですが、正しい方向で勉強をコツコツと継続すれば合格を手にすることができる資格です。

性別・年齢・学歴・職業・国籍などの理由で、司法書士として活躍する夢を諦めないでほしい。これが私たちの願いです。

伊藤塾 司法書士試験科

著者:伊藤塾 司法書士試験科

伊藤塾司法書士試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法書士試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法書士試験に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。