行政書士試験の記述式は部分点を狙え なぜ捨ててはダメなのか理由を解説

勉強法

行政書士試験の合否を分ける、配点60点の記述式問題。
「いつまでたっても書けるようにならない…」という苦手意識から、「いっそのこと捨ててしまおうか…」と考えている方もいるのではないでしょうか。

確かに、理論上は記述式を捨てても、行政書士試験に合格することはできます。
合格点180点に対して、択一式と多肢選択式の満点は240点。ならば、「記述は苦手だから、そちらに集中した方が効率的だ」という考え方も一理あるでしょう。

しかし実際には、その方法は決しておすすめできません。なぜなら、択一式・多肢選択式で8割以上の得点を目指すよりも、記述式で部分点を拾っていくほうがはるかに簡単で、合格できる可能性も高いからです。

この記事では、データに基づき「なぜ記述式を捨ててはいけないのか」を明らかにするとともに、「部分点の取り方」や多くの受験生が気になるであろう「採点の仕組み」を紹介するほか、「過去問を使った記述式の実演動画」や「科目別の対策」なども解説して、記述式への苦手意識を払拭するサポートをしていきます。
ぜひこの記事を読んで、記述式を得点源に変えていきましょう。

1. 行政書士試験の記述式を捨てるのはNG!部分点を狙おう

行政書士試験の記述式対策では、「完璧な答案を書かなければ」とプレッシャーを感じている人が多いようです。その結果、いつまでたっても解答が書けるようにならず、苦手意識をもってしまい、「捨てる」という考えに至っています。
しかし、記述式で本当に大切なのは、自信をもって書けるようになることではなく「部分点」を取ることです。

1-1. 記述式0点で合格点を超えるのは難しい

まず、記述式を捨てると、合格は基本的に「運任せになる」と思ったほうがいいでしょう。
択一式・多肢選択式だけで180点を超えるには、10年に一度しか出題されないようなマイナー論点や、重箱の隅をつつくような細かい問題の対策も必要になるからです。

以下のデータをご覧ください。
これは、2025年度(令和7年度)行政書士試験について、択一式と多肢選択式の問題の正答率別の出題数をまとめたものです。
正答率80%以上の問題にすべて正解したら78点分になるという具合に、各正答率帯の問題にすべて正解すると、合計何点取れるのかを計算しています。

※択一式は法令等と基礎知識の5肢択一式(1問4点)の問題数、多肢選択式は空欄の数(空欄1つ2点)で数えています。

正答率択一式多肢選択式
(空欄)
合計点
(累計点)
その正答率帯までの
問題をすべて正答
したときの合否
80%以上17題5個78点 (78点)不合格
70%以上80%未満12題2個52点 (130点)不合格
60%以上70%未満8題2個36点 (166点)不合格
50%以上60%未満3題0個12点 (178点)不合格
50%未満14題3個62点 (240点)合格

(出典:伊藤塾YouTube「2025(令和7)年度 行政書士 本試験分析会 1日目」)

行政書士試験研究センターが公表した2025年度試験の合否判定基準でも、試験全体の合格基準点は180点です。表のとおり、2025年度は正答率50%以上の問題をすべて正解しても178点にとどまり、180点に2点届きません。つまり、記述式0点で行政書士試験に合格するには、正答率50%以上の問題を1問も落とさないことを絶対条件にしつつ、正答率の低い難問も積極的に拾っていく必要があるということになります。
(出典:行政書士試験研究センター「令和7年度行政書士試験合否判定基準」)

一方で、行政書士試験は、そもそも8割・9割といった得点を狙うような試験ではありません。
いわゆる「重箱の隅をつつく」ような細かい知識問題も出題されており、なかには受験指導校のプロ講師ですら即答できない問題もあります。
そのような難問も含めて対策をするのは、記述式で平均的な点数を取るよりも、よほど難しいです。

なお、講師陣が問題ごとにつけたランクで見ると、2025年度の択一式(多肢選択式を含む)はAランク128点分、Bランク64点分、Cランク48点分でした。AランクとBランクを合わせても192点分で、180点との差は12点しかありません。記述式に頼らない場合は、基本問題をほとんど落とせない構造です。
(出典:伊藤塾YouTube「2025(令和7)年度 行政書士 本試験分析会 1日目」)

1-2. 合格者でも「完璧な答案」は書けない!平均点は30点前後

かといって、「記述式で満点を狙う」というのも正しい戦略ではありません。実は、合格者でさえも、記述式を完璧に解答できている人はほとんどいないからです。
公表されているデータはありませんが、伊藤塾の行政書士試験科「坂本講師」の分析によると、合格者の平均点はおおよそ30点前後。もし40点もあればかなり高得点の部類に入るそうです。
(出典:伊藤塾 行政書士試験「【行政書士試験】本試験までの残り1週間!超直前期の過ごし方」)

つまり、合格者でさえ「記述式が解けた」と感じている人はごく少数しかおらず、ほとんどの人が記述式に苦手意識を持ちつつも、なんとか部分点をかき集めて合格しているのです。

実際、記述式が難化した2025年度(令和7年度)試験では、伊藤塾の本試験分析会の参考データで、民法の記述式の完答者は問題45が2.5%、問題46が4.2%にとどまりました。例年は2〜3割程度とされる完答者が、大きく減った年です。完答をねらうより、書けるキーワードを積み上げて部分点を確保する対応が現実的だったといえます。
(出典:伊藤塾YouTube「2025(令和7)年度 行政書士 本試験分析会 2日目」)

  • 択一式と多肢選択式で正答率の高い問題を取りこぼさずに、150点〜160点を目指す。
  • 記述式は、部分点を積み重ねて、3問あわせて30〜40点を目指す。
  • 択一式と多肢選択式、記述式の合計で180点を突破する。

これが行政書士試験の王道の合格パターンです。
もし1問でも記述式に完答できれば、かなり良い結果だと考えてよいでしょう。記述式は1問あたり10点取れれば十分、というイメージでいると、心理的なハードルもかなり軽くなるはずです。

2. 記述式の部分点はどう採点される?気になる採点者の目線

では、記述式の部分点はどのような基準で採点されるのでしょうか。2章では、模擬試験などで採点者が意識しているポイントをお伝えします。

【記述式:部分点の採点ポイント】

  • 条文・判例などの「キーワード」が書けているか
  • 問題に対する解答になっているか

なお、行政書士試験の正式な採点基準は公表されていません。
ここでお伝えする内容は、あくまでも模擬試験などで評価している内容です。合格者の声などから予想したものではありますが、本試験と完全に一致するものではない点、あらかじめご了承ください。

2-1. 条文・判例など、部分点の対象となるキーワードが書けているか

採点ポイントの1つ目は、「解答に条文・判例などのキーワードが書けているか」です。
キーワードとは、たとえば「第三者の定義」「手続きの名称」「法律行為の要件や効果」など、その問題の規範となる用語を指します。こういったキーワードが答案に含まれていれば、模範解答とまったく同じ文章ではなくとも、部分点がつく可能性は高いです。

より具体的にイメージしていただくために、伊藤塾にて開催された2025年度の第1回公開模擬試験で出題した問題(地方自治法における住民訴訟)について、担当の藤田講師がどのように採点したか、そのポイントをご紹介します。

部分点がついた
キーワード
藤田講師の採点ポイント
「住民監査
請求」
(6点)
(1)比較的多くの答案で、本キーワードを記述すること
ができていました。

(2)「住民審査請求」や「住民監査」等、正確な理解

が疑わしい答案については、加点できませんでした。
「A市長」
(4点)
(1)本キーワードについては、正確に記述すること
ができていた答案は、3割程度にとどまりました。

(2) 他方、「A市」と記述している答案が非常に

多かったです。いま一度、抗告訴訟の被告と
住民訴訟の被告について、ご自身のテキストを
確認しておきましょう。
「Bらに
損害賠償請求
することを
求める」
(4点)
(1)本キーワードは、住民Xは、「損害賠償請求
『することを求める』ことができる」にとどまる、
というところがポイントです。要するに、直接Bら
に損害賠償請求することはもちろん、A市長に代位
して損害賠償請求することもできない、ということ
です。

(2) その観点からすると、本キーワードについて正確に

解答することができていた答案は、ほとんどありま
せんでした。もっとも、同様の趣旨が読み取れる
ものについては、加点しています。
「住民訴訟」
(6点)
(1)比較的多くの答案で、本キーワードを記述する
ことができていました。

(2)なお、住民訴訟と住民監査請求は、「住民監査
請求を経て、住民訴訟を提起する」という関係にある

ため、「住民訴訟を経て、住民監査請求をする」
等、住民監査請求前置主義についての理解が疑わしい

ものについては加点できませんでした。

(引用:伊藤塾note「【先行公開】第1回 公開模擬試験 採点講評 完全版」)

このように、「住民監査請求」や「住民訴訟」といったキーワードが答案に含まれていれば、そのキーワードごとに設定された点数が加算されていく、というイメージです。
ただし、藤田講師のコメントにもあるように、単語が似ていても法的に不正確だったり、キーワードが書けていても制度の理解が根本的に間違っていたりすると加点されません。

2-2. 問われている内容に対して、正面から答えているか

採点ポイントの2つ目は、「問題文で問われていることに答えているか」です。
どれだけ正しいキーワードをたくさん書いても、設問の趣旨から外れた解答をしてしまうと、大幅な減点、あるいは0点になってしまいます。

たとえば、問題文で「Aは、誰を被告として、どのような訴えを提起すべきか」と問われたとします。この場合、解答には「誰が被告か」と「どの訴訟か」という2つの要素をどちらも含める必要があります。したがって、答案は「Aは、〜を被告として、〜訴訟を提起する」という形式になります。これ以外はありえません。

しかし、実際の答案では、問われている内容に対する答えになっていなかったり、自分が知っている知識をただ書き連ねてしまったりといった答案が散見されます。

(例)Aの訴えが認められるには、法律上の利益を有し、

出訴期間内に訴えを提起する必要がある など

これでは、「①誰を被告として、②どのような訴えを提起すべきか」という問いの答えになっていません。いくら法律的な理解が正しくても、規範となるキーワードが入っていても、部分点はつきにくいでしょう。

当たり前のように思えますが、意外とここで減点になっている方は多いです。
答案を書き出す前に、まず「何を問われているのか」を読解して、その問いの形式に沿って答えることを徹底しましょう。

3.【実際どう解く?】過去問で記述式試験の現場検証をしてみました!

では、実際の試験では、どのように記述式の問題を解いていけばよいのでしょうか。
より具体的なイメージをつかむために、伊藤塾・行政書士試験科パーソナルトレーナーの高木さんに実際の過去問を解いてもらい、藤田講師の解説も交えながら、当時の思考過程などを深掘りしていただきました。

「どのように問題文を読んでいくのか」「どのキーワードに注目するか」「時間配分はどうするか」など、試験本番で使える実践的なコツが満載です。
行政書士試験の記述式に苦手意識がある方は、ぜひご覧ください。

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4. 行政書士試験の記述式を捨てずに部分点を取る勉強法

動画で具体的な解き方のイメージがつかめたら、次はその技術を自分のものにするための、具体的な勉強法を3つご紹介します。

  • 択一式の問題を解くときに、常に記述式の視点を持つ
  • 事実関係を正確に整理する練習をする
  • 問題の言い回しを「そのまま」活用するクセをつける

これらを、日々の学習に加えるだけで、記述式への対応力は大きく変わってきます。

4-1. 択一式の問題を解くときに、常に記述式の視点を持つ

まずは、択一式の問題を解くときも、常に記述式の視点を持ちましょう。
ただ正解を選ぶだけでなく、「この問題の根拠となっている条文や判例のキーワードは何か?」と自分に問いかけ、すぐに答えを思い出す習慣をつけるようにしてください。

たとえば、代理に関する択一問題を解いたときは、「もしこの論点が記述式で問われたら、どのようなことが聞かれるだろう?」と一度立ち止まって考えてみましょう。
そこからさらに、「表見代理なら3つの類型があって、それぞれの要件として○○と△△が必要だ…」というように、知識を深掘りしていくのです。

もしキーワードがすぐに浮かばなければ、それはまだ知識が曖昧な証拠です。
面倒くさがらずに、その都度テキストに戻って確認しましょう。
この地道な繰り返しが、記述式の本番でキーワード(規範)をスムーズに引き出す力になります。

4-2. 事実関係を正確に把握するトレーニングをする

次に、問題文の事実関係を正確に把握するトレーニングを行いましょう。
記述式の問題、特に民法では、登場人物や法律関係が複雑に絡み合っていることが多く、頭の中だけで考えていると、いつの間にか登場人物の関係を取り違えてしまいます。
事実関係を間違えると、いくら正しい知識があっても、根本的に見当違いの解答になってしまい、部分点は期待できません。

これを防ぐためには、問題文を読んだら、まず登場人物の関係性を簡単な図に書き出すクセをつけるのが効果的です。

たとえば、「AがBに土地を売り、BがCに転売した」というような事案なら、「A→B→C」と矢印でつなぐだけでも、頭の中が驚くほどクリアになります。この一手間が、ケアレスミスを防ぎ、解答の精度を大きく高めてくれるのです。

4-3. 問題の言い回しを「そのまま」活用するクセをつける

最後に、問題文の末尾の表現を「そのまま」利用するクセをつけましょう。
これは、問われていることと違う内容を答えてしまうミスを防ぐ、最も簡単かつ効果的な方法です。

たとえば、

  • 「~を請求できるか。」と問われたら、「~請求することができる。」または「~請求することはできない。」と結ぶ。
  • 「誰を被告とすべきか。」と問われたら、「~を被告とすべきである。」と結ぶ。

というように、できる限り問題文と同じ言い回しで解答するクセをつけましょう。
一見、簡単そうに見えますが、本番の緊張感から、つい思いついた内容をそのまま書いてしまい、終わってから「問いに答えていなかった」と気づくという人は本当に多いものです。
すぐには身につきませんので、普段の勉強から常に意識して取り組みましょう。

※行政書士試験の記述式について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。

5.【科目別】記述式の対策ポイント

ここからは、科目ごとの特性に合わせた、より具体的な対策のポイントを見ていきましょう。
記述式問題は、行政法から1問、民法から2問が出題されますが、両科目で少し性質が異なります。科目ごとの特性に合わせた対策をすることで、より効率的に得点力を伸ばすことができます。

5-1. 行政法の記述式対策

行政法の記述式は、出題範囲が比較的限られており、対策を立てやすいのが特徴です。
以下は、伊藤塾の坂本講師が2025年度本試験分析会で、2006年度から2025年度までの記述式本試験問題全20問について、出題分野を分析した結果です。

行政法の記述式 テーマ別分析

(出典:伊藤塾YouTube「2025(令和7)年度 行政書士 本試験分析会 1日目」)

行政法の記述式20問のうち、行政事件訴訟法が13問(65%)を占め、行政法の一般的な法理論と行政手続法が各3問、地方自治法が1問でした。行政不服審査法と国家賠償法からは出題されていません。

ご覧のとおり、行政事件訴訟法からの出題が圧倒的多数を占めています。

この傾向は直近も続いており、2025年度試験まで4年連続で行政事件訴訟法から出題されています。坂本講師によると、記述式で被告が問われたのは2025年度で9回目(4年連続)、どのような訴訟を提起すべきかという訴訟選択が問われたのは7回目です。
(出典:伊藤塾YouTube「2025(令和7)年度 行政書士 本試験分析会 1日目」)

したがって、行政法の記述式対策は、まず行政事件訴訟法に力を入れるのが、最も効率的かつ得点に結びつきやすいということになります。
特に、行政事件訴訟法に関する「訴訟類型」と「被告適格」は、優先して押さえておきたい最重要テーマです。

①. 訴訟類型は記述式の超頻出論点

行政法の記述式で最もよく問われるのが、行政事件訴訟法の「訴訟類型」です。
たとえば、2022年度本試験のように、「どのような訴訟を起こすことが適切か」と問われる問題が典型的なパターンです。

2025年度も、委員の利害関係という裁決固有の手続き上の瑕疵を主張する場面で、どのような抗告訴訟を提起すべきかが問われました。伊藤塾の速報集計では「裁決の取消訴訟」と書けた答案は53%で、単に「取消訴訟」や「処分の取消訴訟」と書いた答案は得点になりにくいと解説されています。
(出典:伊藤塾YouTube「2025(令和7)年度 行政書士 本試験分析会 1日目」)

取消訴訟、無効等確認訴訟、義務付け訴訟、差止め訴訟といった主要な訴訟について、それぞれどういう場合に使えるのか(訴訟要件)を理解しておきましょう。特に、義務付け訴訟や差止め訴訟に特有の要件(例:「重大な損害を生ずるおそれ」など)は、他の訴訟との違いを意識しながら正確に覚えることが必要です。

合格者の中には、訴訟類型を選択するための流れを樹形図などにまとめていた、という方もいました。

◉実際に合格者が使っていたテキストの例

訴訟類型は、それぞれを個別に暗記するのではなく、まず全体像をおさえた上で、どのような場合にどの訴訟を選択するのか、という判断の流れを身につけましょう。

②. 被告適格も部分点がつきやすい

訴訟類型とよくセットで問われるのが、「誰を被告とすべきか」(被告適格)です。
これも行政事件訴訟法の頻出項目であり、正確な理解が求められます。

苦手な人が多いですが、仮に他の部分が間違っていても、被告適格さえ正しく書けていれば、そこだけで部分点がつく可能性もあります。

「国」なのか、それとも「行政庁(大臣・知事など)」なのか、あるいは「地方公共団体」なのか。事案に応じて的確に判断できるようになりましょう。

2025年度の問題でも、「Y市を被告として」と書けた答案は88%と、3つのキーワードの中で最も高い正答率でした(伊藤塾の速報集計)。処分庁が国または公共団体に属するかどうかで被告を判断する手順を、確実に押さえておきましょう。
(出典:伊藤塾YouTube「2025(令和7)年度 行政書士 本試験分析会 1日目」)

※行政法の勉強法について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。

5-2. 民法の記述式対策

行政法とは対照的に、民法は出題範囲が膨大です。
そのため、民法の対策は、個別の知識を追いかけるよりも、なぜその結論になるのかという法的な「考え方」を深く理解することが重要になります。

それと同時に、民法全体の体系を頭に入れておき、「今、自分は何を問われているのか」を判断できる力を養っておきましょう。

たとえば「誰に対して何を根拠に請求できるか」が問われたら、まず物権か債権かを考え、債権であれば、当事者の意思に基づく場合(契約)か、意思に基づかない場合(事務管理・不当利得・不法行為)かと、民法の全体構造から絞り込んでいく、といった具合です。

民法の全体構造

(出典:伊藤塾YouTube「2025(令和7)年度 行政書士 本試験分析会 2日目」)

このように、常に全体から個別の論点へ「寄せていく」ようなイメージで考える視点を身につければ、初めて見る問題でも、どの知識を使えばよいか瞬時に判断できるようになります。

2025年度本試験分析会で平林講師は、民法の記述式を「知識型」と「思考型」に分けて考えることを勧めています。

  • 知識型:覚えた条文や判例がほぼそのまま問われるタイプ。択一式で出題されたことのある条文知識なら正答率は高く、択一式で出題されていない判例知識が問われると、正答率は大きく下がります。
  • 思考型:テーマが示されず、その場で考えて答えを出すタイプ。民法の全体構造から考える手順を身につけておけば対応できます。

2025年度の問題45は、択一式で出題されたことのない判例知識を問う知識型の問題で、伊藤塾の参考データ(約140人の答案)では完答者が2.5%でした。例年の完答者は2〜3割程度とされており、平林講師はこのタイプについて、無理に対策すると覚える量が大きく増えるため深追いしなくても合格できると助言しています。

一方、問題46は、費用の償還を何を根拠に請求できるかというテーマ自体を考えさせる思考型の問題でした。誰に対して何を根拠に請求するかを、物権か債権か、契約があるかと順にたどれば「事務管理」にたどり着けます。参考データでは85.8%が事務管理を書けていた一方、償還できる費用の法的性質(有益な費用)まで書けた答案は少なく、完答者は4.2%にとどまりました。

平林講師の見立てでは、2025年度の合格者レベルの平均は、問題45で要素を1つ書けたかどうか、問題46で事務管理は指摘できたものの有益な費用までは書けていない程度です。民法の記述式も、完答をねらうより、書ける要素を1つずつ積み上げることが現実的です。
(出典:伊藤塾YouTube「2025(令和7)年度 行政書士 本試験分析会 2日目」)

「答え」を覚えるのではなく、その結論に至る「考え方」を理解する。そして、常に民法の全体像を意識し、そこから個別の論点を特定していく。この視点こそが、膨大な量の知識を求められる民法を攻略するカギとなるのです。

※民法の勉強法について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。

6. 試験直前1週間の記述式対策は?超直前期の過ごし方

ここまで、記述式で部分点を取るための考え方や勉強法をお伝えしてきました。
行政書士試験全体の5分の1の配点を占める記述式問題。ここで、いかに得点を伸ばすことができるかが、合格に直結してきます。
最後に、坂本講師から今年度の出題予想を詰め込んだ「記述式で一発逆転!出題予想演習」の活用法や記述式の得点目標の捉え方などをお伝えします。

最後に、2026年度試験の1週間前に、伊藤塾の講師陣が「超直前期の過ごし方」を語り合ったライブ配信から、記述式に関わるアドバイスを中心に紹介します。

2026年度の行政書士試験は、2026年11月8日(日)午後1時から午後4時までの3時間で実施されます。(出典:行政書士試験研究センター「令和8年度行政書士試験のご案内」)

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6-1. 記述式で部分点を取る答案の書き方は?

記述式で部分点を取るには、模範解答どおりの文章を目指すより、問いに正面から答え、得点につながるキーワードを書くことが先決です。配信では、講師陣が次の点を挙げていました。

  • 問いの言い回しをできる限りそのまま使い、表現をアレンジしない(坂本講師)
  • 問題文の指示に従う。「〜を除く」と書かれているのに除外対象について書くと、問題文を読んでいないと受け取られる(藤田講師)
  • 何を書くか迷ったら、問われていることだけを書く。問題文の事情を使い切っている答えのほうが正解に近い(坂本講師・平林講師)
  • AやBが登場する事例型の問いは具体的な内容で、法律上の名称を問う問いは法律用語で答える(平林講師・藤田講師)
  • 漢字を忘れたときは、同じ意味の別の表現に言い換えて書く(井内講師)

平林講師によれば、本試験では表現が模範解答と違っても、同じ趣旨が書けていれば点がついている印象だといいます。藤田講師も、2025年度の民法の記述式では「事務管理」というキーワードを書けたかどうかで点数が分かれたと振り返っています。完璧な文章よりも、キーワードを正確に書くことが優先です。

6-2. 直前期の記述式対策は過去問と解答例の見直しが中心

試験直前の1週間は、記述式のために新しい問題を解き進めるより、これまでに解いた過去問や模試の問題と解答例を読み返す使い方が勧められていました。

坂本講師は、直近3〜5年分の過去問で、問いの組み立てや解答例が何を書かせているかを確認するとよいと話しています。記述式では制度の名称や入り口の要件といった大枠が問われることが多く、細かい知識を追いかけすぎないことが大切です。

平林講師と藤田講師は、記述式の問題と解答例を読み物として眺め、制度が使われる場面をイメージする使い方を紹介していました。井内講師は、択一式の問題を解くたびに趣旨や結論を自分の言葉で説明しておくことが、そのまま記述式の対策になったと話しています。

合格者の記述式の平均が30点前後であることをふまえると、直前期の軸はあくまで択一式です。記述式は、基本の確認に時間を充てる位置づけと考えましょう。

6-3. 本試験当日に時間切れを防ぐ解き方

本試験では、記述式に時間を残すためにも、解けない問題を飛ばす判断が欠かせません。

藤田講師は、正答率の高い文章理解の3問を時間切れで落とさないよう、マイナーなテーマや苦手な問題は1周目で飛ばすことを勧めています。平林講師と井内講師は、問題文が長い問題と、学習した覚えのない問題を飛ばす目安に挙げていました。

坂本講師によれば、法令等の択一式40問のうち、平均10問程度は解答が難しいCランクの問題です。2択まで絞って決めきれないときは、第一印象の選択肢がわかる印を問題用紙に残し、明確な根拠がない限り答えを変えないことが、講師陣に共通する経験でした。

また、マークシートの問題番号の横に印を書き込むのは避けましょう。予備のシャープペンシルや消しゴムを用意しておくと、当日のトラブルにも慌てずに済みます。

7. 行政書士試験の記述式の部分点に関するよくある質問(FAQ)

択一式で得点力の高い受験生は、記述式対策を後回しにしても大丈夫でしょうか?

結論から言えば、記述式対策を捨てることは推奨されていません。択一式・多肢選択式の満点(240点)だけで合格点(180点)を超えるためには、正答率の低い難問も積極的に拾う必要があり、これは記述式で平均的な点数を取るよりもはるかに難しいからです。
2025年度本試験分析会でも、正答率50%以上の問題をすべて正解した場合の得点は178点で、180点に届きませんでした。

記述式の解答において、最終的な結論が間違っていた場合でも、途中のキーワードは採点対象になりますか?

採点ポイントの前提として、「問題文で問われていることに対して正面から答えているか」が重要であり、設問の趣旨から外れた解答は大幅な減点、あるいは0点になる可能性があります。しかし、結論が間違っていたとしても、問題の規範となる正しいキーワードが含まれており、かつ法的に不正確な記載がなければ、そのキーワードに対して部分点がつく可能性は高いと考えられます。

記述式対策において、行政法と民法のどちらに、より多くの時間を割くべきでしょうか?

記述式は行政法から1問、民法から2問出題されますが、対策の性質が異なります。行政法は出題範囲が比較的限られており、特に行政事件訴訟法の「訴訟類型」と「被告適格」が頻出テーマです。
一方、民法では、個別の知識よりも法的な「考え方」や「体系」を深く理解する必要があるため、その習得に時間を要します。そのため、「記述式で確実に部分点を取る」という戦略においては、行政法(行政事件訴訟法)の頻出論点に時間を割くことが効率的ではありますが、両科目の特性に合わせた対策とバランスを意識することが重要です。

8. 行政書士試験の記述式は部分点を狙う理由のまとめ

本記事では、行政書士試験において記述式問題を「捨てる」という選択は、極めてリスキーな戦略であり、合格を目指す上では、徹底して「部分点」を狙う戦略が王道であることを解説しました。
以下にポイントをまとめます。

◉記述式を捨てるべきではない理由

  • 択一式・多肢選択式(満点240点)だけで180点を超えるためには、正答率50%以上の問題をすべて正答すること(2025年度はこれだけで178点)に加え、正答率の低い難問も積極的に拾う必要があり、これは記述式で部分点を拾うよりもはるかに難しいといってよいでしょう。
  • 記述式3問合計で30〜40点(1問あたり10点取れれば十分)を目標に部分点を積み重ねて、択一・多肢選択式の得点(150点〜160点)と合わせて180点を突破するのが王道の合格パターンです。

◉記述式の採点基準と部分点の狙い方

  • 正式な採点基準は公表されていませんが、採点者の目線では条文・判例などの「キーワード」が書けているかが重要です。模範解答と全く同じでなくとも、キーワードごとに設定された点数が加算されるイメージです。
  • 「問題文で問われている内容に対して正面から答えているか」が重要であり、問われた形式(例:「誰を被告として、どのような訴えか」)に沿って解答することを徹底しないと、大幅な減点または0点になる可能性があります。

◉得点力を高める具体的な勉強法

  • 日々の学習では、択一式の問題を解くときも「記述式の視点」を常に持ち、根拠となる条文や判例のキーワードをすぐに思い出す習慣をつけることで、知識を深掘りすることができます。
  • 特に複雑な事案(民法など)では、事実関係を正確に整理するトレーニングとして、登場人物の関係性を簡単な図に書き出すクセをつけ、ケアレスミスを防ぎましょう。
  • 解答のミスを防ぐため、問題文の末尾の表現(例:「〜を請求できるか。」)を「そのまま」解答に活用するクセをつけましょう。

◉科目別の記述式対策の要点

  • 行政法は出題範囲が比較的限られており、過去の出題の傾向(2006年度から2025年度までの20問のうち行政事件訴訟法が13問・65%を占め、2025年度まで4年連続で出題)から、行政事件訴訟法の「訴訟類型」と「被告適格」に集中して時間を割くことが、最も効率的に得点に結びつきます。
  • 民法は出題範囲が膨大なため、個別の知識ではなく、「なぜその結論になるのか」という法的な「考え方」と、民法全体の「体系」を深く理解し、常に全体像から論点を特定する視点を養うことが攻略のカギとなります。

「記述式で部分点を確実に取る」技術は、行政書士試験の合否を分ける最重要ポイントです。

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伊藤塾 行政書士試験科

著者:伊藤塾 行政書士試験科

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