海事代理士の年収は?実は稼ぎやすい?海事代理士の隠れた魅力を解説

基本情報

「海事代理士の平均年収はどのくらい?」
「海事代理士って儲かるの?」

このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「海の法律家」と言われている「海事代理士」ですが、ウェブ上に掲載されている情報は少なく、実態を知る人はあまり多くありません。しかし、グローバル化によって、ここ数年「海事代理士」の注目度は急増しています。

「行政書士」などの資格と組み合わせて、高年収を得る海事代理士も増えており、試験の受験者数も、ここ数年で増えています。海事代理士試験の筆記受験者は、2022年(令和4年)の361人から2025年には435人になりました。
(出典:国土交通省「令和4年 海事代理士試験(筆記試験)合格者の発表」「令和7年海事代理士試験筆記試験実施状況について」)

本記事では

  •  海事代理士の年収の実態
  •  海事代理士が稼ぎやすい理由
  •  海事代理士を取得することで大きく年収がアップする人の特徴

について、解説します。海事代理士に興味がある方は、是非ご一読ください。

1. 海事代理士の平均年収は500万?

海事代理士の平均年収は「500万円程度」と言われることが多いですが、公的なデータは存在しません。実際のところは「100万円から1000万円以上」と、人によって大きな差があるのが実情です。

その理由の一つとして、他の士業と兼業で働いている海事代理士が多いことが挙げられます。例えば、行政書士や司法書士が、クライアントからのニーズに応えるために、海事代理士の資格を取得して、売上が急増するケースは珍しくありません。

海事代理士は、士業の中でも特に個人差が大きい職種です。一般的な平均年収を算出するのは困難だといえるでしょう。

とはいえ、海事代理士は常に一定の需要がある仕事です。日本は海に囲まれた島国であり、海上輸送は、国内外の物流を支える重要な役割を担っているからです。「海の法律家」としての高度な専門性を活かして、しっかりとしたスキルと人脈を構築することができれば、高収入を得られる可能性は十分にあります。

なお、年収の個人差が大きい背景には、報酬の決め方もあります。海事代理士法第22条は、海事代理士が業務の開始前に報酬額を自ら定め、事務所に掲示するよう求めています。全国一律の報酬基準がないため、同じ手続でも事務所によって受け取る報酬が異なります。
(出典:国土交通省九州運輸局「海事代理士法」)

海事代理士だけを対象とした年収統計は、国土交通省・厚生労働省のいずれからも公表されていません。そこで、収入を考える手がかりになる公的データを次の表にまとめました。

項目公的データ
海事代理士の年収統計公表なし
行政書士の賃金(年収)※参考583.3万円(2025年の賃金構造基本統計
調査を厚生労働省job tagが加工した値)
行政書士の求人賃金(月額)※参考28.8万円(2025年度(令和7年度)の
ハローワーク求人統計)
海事代理士試験の筆記受験者数441名(2024年(令和6年))、
435名(2025年)
海事代理士試験の筆記合格者数229名(2024年)、230名(2025年)

参考値の行政書士は、本記事で兼業先として取り上げている士業です。job tagの年収は職業分類単位の統計を加工した値で、海事代理士として開業した人の収入をそのまま示すものではありません。
(出典:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)行政書士」)
(出典:国土交通省「令和7年海事代理士試験筆記試験実施状況について」「令和6年海事代理士試験実施状況について」)

※海事代理士試験の合格率や勉強時間については、こちらの記事で詳しく解説しています。

2. 海事代理士の仕事内容

海事代理士は、「海事法令のスペシャリスト」です。船舶の登録や申請、免許更新に必要な書類を作成し、行政機関への手続きを代行することを主な仕事内容としています。
(出典:国土交通省「海事代理士になるには」)

例えば、新しく船を買った人から依頼を受け、行政機関に船の登録をしたり、定期的な船舶検査の手続きを代行したりすることが、具体例として挙げられます。

また、マリンスポーツを楽しむ人達から依頼を受けて、モーターボートやヨットの免許証の更新手続きを代行することも、海事代理士の仕事です。海事代理士は、船を所有する人や海で働く人と、行政機関との間に立ち、必要な書類を作成して、手続きをスムーズに進めていく役割を担っているのです。

海の安全を守るためには、「どんな人が、どこに、どんな船を持っているか」を行政機関が正確に把握し、船の安全性を確認することが必要不可欠です。そのための手続きの専門家として、海の安全を支えていくことが、海事代理士の役割だといえるでしょう。

※法律関係の仕事全体の中での海事代理士の位置づけや、ほかの士業との年収比較については、こちらの記事で詳しく解説しています。

3. 海事代理士は儲かる?年収アップにつながる3つの理由

海事代理士は、実は、一般的に想像されている以上に稼ぎやすい職業です。ここでは、「海事代理士」資格の取得が、年収アップにつながる3つの理由を解説します。

3-1. 競合が少なく、独占的に仕事を受注できるから

海事代理士の登録者数は、国の統計として公表されていません。もっとも、新たに資格を得る人の数は限られており、海事代理士試験の筆記合格者は2025年で230人でした。
(出典:国土交通省「令和7年海事代理士試験筆記試験実施状況について」)

同じく登記などの手続を担う司法書士は、2025年度の試験合格者が751人です。海事代理士試験の筆記合格者がその3分の1以下にとどまる海事代理士は、新規の競合が生まれにくい資格だといえるでしょう。
(出典:法務省「令和7年度司法書士試験の最終結果について」)

そのため、1つのジャンルで実績を作ると、比較的容易にそのジャンルでの独占的な地位を築くことができます。新規参入も少ないため、寡占状態になるケースも珍しくありません。特に、港湾の多い地域では、海事代理士の需要が高く、安定した収入を得られる可能性が高くなります。特定の分野で専門性を高めていけば、海事代理士として、大きな収益を上げていくことができるでしょう。

3-2. リピート率が高いから

海事代理士の仕事は、ひとたび軌道に乗ると、安定した経営を続けやすい特徴があります。これは、海事業界の慣習として、一度クライアントと信頼関係が構築されると、その後も長期にわたってリピートされる傾向があるからです。

例えば、船舶の登記や各種検査の手続き、許可申請などは、最初に代理人を務めた海事代理士に対して、2回目以降も継続して依頼が行われます。

船舶に関する手続きは、陸の手続き以上に複雑な場合が多く、海事代理士を変更して手続きが滞ると、莫大な損失に繫がるからです。

もちろん、顧客からの信頼を得るためには、高い専門性とサービス品質の担保が欠かせません。しかしこれらを実現できれば、海事代理士として、安定した経営基盤を築くことができるでしょう。

3-3. 法律で守られた独占業務があるから

海事代理士法で守られた独占業務を持っていることも、海事代理士の専門性の高さを裏付けている要因の1つです。

船舶の登記については、弁護士、司法書士も行えます。しかし、その後の船舶国籍証書取得や船舶検査などは、船舶所有者または海事代理士のみが行うことのできる業務とされています。

海事代理士法第17条は、海事代理士でない者が、他人の委託により業として第1条の手続を行うことを禁じています。ただし、他の法令に別段の定めがある場合は例外とされています。
(出典:国土交通省九州運輸局「海事代理士法」)

これらの業務は、海事代理士の独占業務であり、海事代理士でない者が行うことはできません。この独占業務の存在は、海事代理士の需要を支える大きな要因になっています。
なお、行政書士は当分の間、船員職業安定法と内航海運業法に基づく手続に限り、海事代理士の登録がなくても業として行えます(平成16年法律第71号附則第19条)。行政書士が船舶法や船舶安全法などの手続まで業務を広げるには、海事代理士の資格が必要です。
(出典:国土交通省九州運輸局「海事代理士法」)

4. 海事代理士で大きく年収が上がる人の特徴

ここでは、海事代理士の資格取得が特に有利に働く人の特徴を2つ紹介します。

4-1. 行政書士・司法書士・社労士などの資格保有者

行政書士、司法書士、社労士などの資格を既に保有している人にとって、海事代理士になることは、年収アップに直結します。海事代理士を取得することで、仕事の幅が広がり、他の士業と大きく差別化できるからです。

例えば、行政書士や司法書士の職務領域でも、実務上「海事代理士」の知識が無いと、スムーズに手続きが進まないケースがあります。

それゆえ、海事代理士は海事関連の企業から高く評価されています。海事代理士であれば、船舶や海運業界に特化した専門家として、企業も安心して業務を任せることができるのです。

海事代理士は「海に関する法律の専門家」であり、「陸の法律家」とは異なる領域の専門知識を持っています。そのため、海に関連する事案を扱う際は、他の士業の職務領域であったとしても、海事代理士の知見が非常に重宝されるのです。既に他の士業の資格を持っている人は、海事代理士の資格を取得することで、より専門性を高め、年収をアップさせることができるでしょう。

※行政書士と組み合わせやすい資格については、こちらの記事で詳しく解説しています。

4-2. 海や船に関わる仕事をしている人

海や船に関わる仕事をしている人も、海事代理士の資格を取得することで、大幅に年収をアップできる可能性が高いです。

例えば、船会社や港湾関連会社、造船所などで働いている人は、船舶や海運業界に精通しているため、海事代理士の業務にも役立つ実務経験や、ネットワークを持っています。

これらの人が海事代理士の資格を取得することで、副業として、海事代理士としての業務も行えるようになります。その結果、収入源を増やし、年収アップにつなげることができるのです。また、独立して海事代理士事務所を開業することも選択肢の一つです。本業で培った知識と人脈を活かして、海事代理士として開業することで、高い収入を目指すことができるでしょう。

5. 海事代理士に関するよくある質問(FAQ)

海事代理士は海の近くでないと働けない?

海事代理士だからといって、必ずしも海の近くで働く必要はありません。

確かに、海事代理士の業務は、船舶や港湾に関連することが多いため、海の近くで働くことが多いのは事実です。しかし、現在ではインターネットの普及により、多くの業務をオンラインで進めることができます。そのため、必ずしも海の近くに事務所を構える必要はなく、都心部などでも十分に仕事をすることができます。

海事代理士の資格だけでも独立できる?

海事代理士の資格だけで独立し、生活している人もいます。海事代理士の業務は、船舶の登録や登記など、非常に専門性の高い仕事が多いため、実績を積んでいけば、一定の需要は見込めるでしょう。

ただし、海事代理士の仕事だけでは、案件数がそれほど多くないのも事実です。そのため、合格後すぐに開業するようなケースでは、収入面での不安定さは避けられません。

多くの海事代理士は「行政書士」や「司法書士」等とのダブルライセンスを取得して、仕事の幅を広げています。他の資格との相乗効果を発揮させていくことで、安定した収益を見込むことができるでしょう。

6. 海事代理士の年収と隠れた魅力についてのまとめ

最後に、要点をまとめます。

  • 「海事代理士」は、海に関連する法律のスペシャリスト
  • 「海事代理士」の年収は個人差が大きいが、中には1000万以上稼ぐ人もいる
  • 競合が少なく、見かけ以上に稼ぎやすい資格
  • 海事法令については、弁護士以上の専門性の高さを持っている
  • 士業資格保有者や、海の仕事に関わっている人は、年収アップに直結する可能性大

「海の司法書士」「海の行政書士」とも言われる「海事代理士」。スケールの大きな巨大船舶に関する仕事から、身近なマリンスポーツに関わる仕事まで、海事代理士の仕事は多岐に渡っています。

日本が海に囲まれている島国である以上、「海事代理士」は、今後も重要な法律資格であり続けるでしょう。

「行政書士」「司法書士」などの仕事と組み合わせて、高い年収を得られる可能性も高く、「海で働きたい」「海に関わる仕事をしたい」という方にとっては、天職になるかもしれません。

行政書士の業務と並行して海事代理士試験に挑戦した方は、合格までの道のりを次のように振り返っています。

合格者の声

鈴木裕満さん

「行政書士業務と関連して海での仕事もしたく受験しました。この講座の教材だけで間違いなく合格点まで持っていけます。さらにアウトプット講義と模試で十分な演習も行うことができました。独学での習得を目指したこともありますが雲をつかむような感じで、何をしたらいいかわからず早々に断念しました。このような難解な試験を体系的に学習できる機会は大変貴重なものと思います。」
出典:伊藤塾「海事代理士試験」

「海事代理士」に興味のある方、試験に合格したい方は、ぜひ伊藤塾へご相談ください。

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伊藤塾 行政書士試験科

著者:伊藤塾 行政書士試験科

行政書士資格を保有する講師・合格経験者で構成された専門チームが監修・執筆しています。合格率約14%の行政書士試験について、出題傾向・効率的な学習法・他資格とのダブルライセンス戦略まで、法律系資格指導約30年の実績をもとに正確にお届けします。