退去立ち会いはしないほうがいい?4つの注意点と国民生活センターの見解

不動産の費用・お金

「退去立ち会いはしないほうがいい」は誤解です。国民生活センターは2024年度に1万3,277件の原状回復トラブル相談を受けており、立ち会って記録を残しつつ、納得できない書類にはサインしないことを推奨しています。(出典:国民生活センター

退去のたびに、SNSや知恵袋では「立ち会いはしないほうがいい」「サインしてしまって後悔した」という声が目に入ります。実際、立ち会い当日に強い口調で指摘されて反論できなかった、その場で書類にサインしたら高額請求が確定してしまった、といった相談は国民生活センターにも寄せられており、不安に感じる方が多いのも当然です。

ただし、立ち会いを避けても精算書は後日届くため、トラブル自体を回避できるわけではありません。むしろ国民生活センターが推奨しているのは、立ち会いに参加して記録を残し、当日の書類サインは避けるという対応です。本記事では、なぜ「立ち会いはしないほうがいい」と言われるのか、その背景にある2つの理由と、当日に必ず押さえたい4つの注意点を、国民生活センターと国土交通省の公式情報をもとに解説します。

1. 「退去立ち会いはしないほうがいい」は誤解

「退去立ち会いはしないほうがいい」は誤解です。国民生活センターは2026年2月17日公表の注意喚起資料で、退去時には貸主側と一緒に写真やメモで記録を残しながら現状を確認することを明確に推奨しています。

同センターには2024年度に1万3,277件の原状回復トラブル相談が寄せられており、立ち会いを避けることはトラブル回避策にはなりません。 この推奨内容は、国民生活センターが新生活シーズンを前に消費者へ向けて発表した「賃貸住宅退去時トラブルの対処法―入居時からできる対策―」の中で示されたものです。

退去する時は、入居時と同様に、できる限り貸主側と一緒に、写真を撮ったりメモを取ったりして記録を残しながら、賃貸住宅の現状を確認しましょう。原状回復費用については、国交省のガイドラインに基準が示されています。納得できない請求をされた場合は、貸主側に費用の明細等の説明を求め、費用負担について話し合いましょう。
(出典:国民生活センター「2026年2月17日公表 賃貸住宅の原状回復トラブルにご注意!」)

ただし、立ち会いに参加することと、当日その場で書類にサインすることは別問題です。立ち会いで記録を残しつつ、納得できない請求書類にはサインせず持ち帰る。これが国民生活センターの推奨と整合する、現実的にトラブルを避ける対応となります。 

ではなぜ「退去立ち会いはしないほうがいい」という声が広まっているのか、次章でその理由を確認します。

2. なぜ「退去立ち会いはしないほうがいい」と言われる?2つの理由

「退去立ち会いはしないほうがいい」という声が広まった背景には、主に2つの理由があります。1つは立ち会い当日にその場で不利な判断を求められやすいこと、もう1つは退去立ち会いが法律上の義務ではなく、参加しなくても退去自体は成立することです。それぞれ国民生活センターの実例と民法の条文に沿って確認していきます。 

2-1. その場で不利な判断を求められやすいから

退去立ち会いに不安が広がる最大の理由は、「当日その場で書類サインを求められ、借主側に検証する時間が与えられにくいこと」です。国民生活センターには2024年度だけで1万3,277件の原状回復トラブル相談が寄せられており、その多くが「強い口調で指摘されて反論できなかった」「身に覚えがないキズの修繕費を承諾させられた」というパターンです。 

これは国民生活センターが2023年2月1日に公表した注意喚起資料に掲載されている、以下のような事例で具体的に確認できます。 

【事例:20 年以上住んだマンションを退去した際、入居時から付いていたキズについて「最近付いたものだ」として修繕費用を請求された】

先月、60 歳代の叔母が、20 年以上住んだ3LDKの賃貸マンションを退去した。退去時の立会いで、管理業者と清掃業者から、壁や襖などのキズについて指摘され、叔母が入居前から付いていたと言ったが、業者が最近付いたキズだと強い口調で言うので怖くなり反論できなかった。入居時に付いていたことを証明できる写真などはない。
(出典:国民生活センター「住み始める時から、「いつか出ていく時」に備えておこう!―賃貸住宅の「原状回復」トラブルにご注意―」)

ただし、こうしたトラブルは立ち会いを欠席すれば防げるわけではありません。立ち会いに参加しなくても精算書は後日郵送で届き、内容に納得できなければ同じ交渉が必要になります。立ち会いを避けるのではなく、参加して記録を残しつつ書類サインだけは持ち帰るという対応が、国民生活センターの推奨と整合します。 

なお、立ち会いを欠席しても退去手続きそのものは成立する点について、次節で法律上の根拠を確認します。

2-2. 法律上は、退去立ち会いの義務はないから

退去立ち会いは、民法および賃貸借契約上、義務付けられている手続きではありません。賃貸借契約は、解約の意思表示(契約書に定める予告期間に基づく)と賃借物の返還(鍵の返却を含む)によって終了するため、立ち会いを欠席しても退去自体は成立します。 

民法第601条は賃貸借契約の本質を「賃借物の使用収益と賃料支払い」と定義しており、退去手続きにおいて立ち会いを義務付ける条文は民法・借地借家法のいずれにも存在しません。立ち会いを欠席したことを理由に違約金を請求されたり退去が認められなかったりすることはなく、立ち会いをしたかどうかと、原状回復費用を負担するかどうかは、法律上は別の問題として扱われます。 

ただし、立ち会いをしないと「いつ・どの状態で部屋を返したか」を証明する記録が残りません。後日精算書が届いた段階で「この傷は入居時からあった」と主張しても、客観的な証拠がなければ反論は難しくなります。法律上の義務がないことと、実務上参加すべきかどうかは別の判断軸として整理しておく必要があります。 

立ち会いに参加するなら何に注意すべきか、次章で「当日に押さえておくべき4つのポイント」を確認します。

3. 退去立ち会い当日に押さえるべき4つの注意点

退去立ち会いに参加するなら、事前準備として「契約書の特約条項の確認」、当日の対応として「写真持参・書類のサイン保留・部屋撮影」の3点を押さえます。この4つを実行することで、国民生活センターに毎年寄せられる1万3,000件超の原状回復トラブル相談で典型的に発生する「身に覚えのない請求」「強い口調による承諾誘導」を、客観的な根拠で防ぐ準備が整います。

それぞれの注意点を、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」と民法第621条に紐づけて確認します。 

3-1. 賃貸借契約書の特約条項は何を確認すべきか

立ち会い当日までに必ず確認したいのは、賃貸借契約書の特約条項です。特に以下の3点が、退去費用の総額を大きく左右します。

  • ハウスクリーニング費用は誰が負担するか、金額はいくらか
  • エアコンクリーニング費用や畳の表替えなどの修繕費用がどちらの負担になっているか
  • 「通常損耗も借主の負担とする」といった文言がないか

これらの特約がなければ、借主が負担すべき費用が高額になることは基本的にありません。2020年4月施行の改正民法第621条では、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化」は借主の原状回復義務から除かれると明記されており、家具設置によるカーペットのへこみ、日焼けによる壁紙の変色などの修繕費は、貸主負担となるためです。

ただし「通常損耗も借主の負担とする」といった特約が設けられている場合でも、国土交通省のガイドラインは、最高裁判例と消費者契約法を踏まえ、特約が有効に成立するには「特約の必要性があり暴利的でないこと」「借主が特別の負担を認識していること」「借主が特約による義務負担の意思表示をしていること」の3要件を満たす必要があると示しています。要件を満たさない一方的な特約は無効と判断される余地があります。

※退去費用の考え方や、借主が払わなくていい費用については以下の記事で詳しく解説しています。

3-2. 入居時に撮影した写真があれば持参する

入居時に部屋の状態を撮影した写真があれば、退去立ち会いの当日に必ず持参します。

原状回復トラブルで最も多いのが「入居前からあったキズなのに、自分が付けたものとして請求された」というケースで、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」も、入居時と退去時の物件状況確認書を双方で作成・保管することを推奨しています。 写真があれば「この傷は入居時からありました」と客観的な証拠として提示でき、不当な請求を回避しやすくなります。逆に写真がなければ、業者が「最近付いたキズだ」と主張した場合、口頭での反論は通りにくくなります。

 なお、写真がない場合でも、不動産会社が入居時に交付した「物件状況確認書」「現況確認書」が手元に残っていないかを退去前に確認します。これらの書面に「入居時から既存」と記載された箇所は、退去時に借主負担を主張できる根拠書類になります。

3-3. 書類にサインを求められても、納得できないなら持ち帰る

立ち会い当日に書類へのサインを求められても、内容に少しでも疑問や納得できない点があるなら、その場でサインせず持ち帰ります。

サインは「借主が請求内容に同意した」という意思表示とみなされ、後から「この請求はおかしい」と気づいても撤回が難しくなるためです。 立ち会いの短時間で、提示された金額や項目が国土交通省ガイドラインの基準に沿った正当な請求かどうかを判断するのは現実的ではありません。「サインしないと退去にならない」と言われても、賃貸借契約は解約の意思表示と鍵の返却で終了するため、サインの有無と退去手続きの完了は別問題です。内容に違和感があれば「相場や内容を確認したいので、いったん持ち帰らせてください」と伝えれば足ります。

国民生活センターに寄せられる相談の多くが、この場面で「強く言われて怖くなりサインしてしまった」というケースです。サインは法的拘束力を持つ意思表示であり、立ち会い当日の最大の判断局面と位置づけて対応します。

3-4. 退去時の部屋の状態をスマホで撮影して残す

退去立ち会い当日は、部屋の状態を自分のスマホで撮影して記録に残します。後日届く精算書と照らし合わせて「ここに傷がある・なかった」を検証する材料になり、立ち会い時の記憶だけに頼ることを避けられます。 

撮影対象は、「各部屋の全景・気になるキズや汚れ・立ち会い中に業者から指摘された箇所」の3つです。指摘された箇所はその場で撮影しておくと、後日「業者が言うほど大きな傷ではなかった」「これは通常損耗の範囲内ではないか」と落ち着いて検証できます。 スマホ撮影には日付情報が自動的に付与されるため、退去日時点の物件状態を客観的に証明する記録として機能します。これは国土交通省ガイドラインが示す「貸主・借主双方による現況確認」の借主側からの実行手段にあたります。

以上の4つの注意点を実行することで、退去立ち会いに参加する場合のリスクは大きく下げられます。次章では、こうした原状回復トラブルが実際にどれだけ発生しているのか、国民生活センターの最新データから確認します。

4. 賃貸の原状回復トラブルは2024年度に1万3,277件にのぼる

国民生活センターによると、賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル相談は、2024年度に1万3,277件寄せられました。これはPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に2025年5月31日時点で登録された件数で、過去3年間ほぼ同水準で推移しており、毎年1万件を超えるトラブルが発生しています。

▼ 賃貸住宅の原状回復トラブル相談件数の推移

年度相談件数
2022年12,885件
2023年13,273件
2024年13,277件

出典:国民生活センター「賃貸住宅の原状回復トラブル」

ただし、この1万3,277件はあくまで「相談として国民生活センターに届けられた件数」にすぎません。「面倒だから諦めた」「金額が小さいから払って済ませた」といった、相談に至らない潜在的なトラブルも一定数存在すると考えられます。 

なお、原状回復トラブルは賃貸住宅に関する相談のなかでも最も多く、賃貸住宅相談の約4割を占めています。賃貸住宅をめぐる消費者トラブルのなかで、退去時の原状回復は最大のリスク要因と位置づけられます。 

賃貸住宅に関する相談の内訳(2024年度)

出典:国民生活センター「住み始める時から、「いつか出ていく時」に備えておこう!」

進学で一人暮らしを始めるとき、就職や転職を機に引っ越すとき、結婚や同棲で新居を借りるときなど、人生のなかで賃貸住宅に住む機会は誰にでも訪れます。原状回復をめぐるトラブルは特定の人だけに起きる問題ではなく、賃貸住宅を借りるすべての人にとって備えるべきリスクです。 トラブルから自分を守るためには、退去立ち会い当日の対応だけでなく、契約・原状回復・敷金精算に関する基本的な不動産知識を体系的に身につけておくことが有効です。 

※トラブルの実態と法律上のルールについて詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。

こうした不動産知識を体系的に学べる方法として、次章では宅建士(宅地建物取引士)試験を取り上げます。

5. お金で損しないための不動産知識を体系的に学べるのが宅建士試験

退去立ち会いに限らず、不動産取引のトラブルから自分を守るための知識を体系的に学べるのが、宅建士(宅地建物取引士)試験です。2025年度(令和7年度)の受験者数は245,462人で、不動産業界で働く方だけでなく、学生・主婦・他業界の社会人など幅広い層が学ぶ国家資格となっています。令和7年度宅地建物取引士資格試験結果の概要|不動産適正取引推進機構

5-1. 宅建士試験で学ぶのはどんな知識か

宅建士試験で学ぶのは、賃貸・購入・相続・売却まで、不動産のあらゆる場面で実際に使える知識です。本記事で扱った「特約条項」「原状回復」「通常損耗」のほか、以下のテーマも出題範囲に含まれます。 

  • 部屋を借りる前に、契約書のどこを確認しておけばいいか
  • 借主には法律上どんな権利が認められているか
  • マイホームを買うとき、住宅ローンや登記はどう進めるか
  • 親から不動産を相続したら、最初に何をすべきか

不動産取引では、契約書や重要事項説明書を渡されても専門用語が多く、貸主や仲介業者の説明を鵜呑みにするしかない場面が多くあります。宅建士の知識があれば、提示された条件や請求が宅建業法・民法・国土交通省ガイドラインの基準に沿った正当なものかを自分で判断でき、根拠を持って交渉できるようになります。 

大きなお金が動く場面で、業者任せにせず自分の判断で意思決定できるようになる点が、宅建士の知識を持つ最大の意義です。

次節では、こうした知識が就職・転職市場でどう評価されるかを確認します。

5-2. 国家資格としての就職・転職での評価

宅建士は、不動産業界の求人市場で安定した需要がある国家資格です。宅地建物取引業法第31条の3により、宅地建物取引業を営む事務所には「業務に従事する者5人につき1人以上」の専任宅建士を置く義務が課されているためです。 

加えて、宅建業法第35条が定める重要事項説明と、35条書面・37条書面への記名は、宅建士の独占業務として法律で定められています。これらは宅建士資格を持たない人には行えない業務であり、不動産業界では資格保有者の採用ニーズが構造的に発生し続けています。 

採用市場では「宅建士有資格者歓迎」「資格手当あり」といった求人が一般的で、資格手当を支給する企業は不動産業界に広く存在します。実用的な知識が身につくだけでなく、昇進・転職時の評価対象になりやすい点が、宅建士という資格の特徴です。

※宅建士試験や宅建士の仕事内容について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。

5-3. 伊藤塾の宅建士合格講座なら法律知識ゼロでも楽しく学んで合格を目指せる

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6. 退去立ち会いに関するよくある質問(FAQ)

退去立ち会いはいつ行われ、どのくらい時間がかかりますか?

退去立ち会いは、解約日の当日または数日前に行われるのが一般的で、所要時間は10分から30分程度です。荷物をすべて運び出したあとの空室状態で行うため、引っ越し作業が終わってから立ち会うケースが多くなります。
ワンルームや1Kなどの単身向け物件では15分以内で終わることが多く、3LDK以上のファミリー向け物件では30分から1時間程度を見込んでおくと安心です。立ち会い後にすぐ予定がある場合は、想定より長くかかる可能性も考慮しておきましょう。

退去立ち会い当日の流れはどうなりますか?

退去立ち会いは「入室 → 部屋の状態確認 → 修繕箇所の確認 → 鍵の返却 → 書類の確認」という流れで進みます。担当者が借主と一緒に各部屋・水回り・設備をチェックし、傷や汚れごとに貸主負担か借主負担かを確認していきます。
最後に書類へのサインを求められることが多くなりますが、内容に納得できない場合は持ち帰っても問題ありません。書類サインは退去の必須要件ではないためです。

鍵はいつ返せばいいですか?

退去立ち会いがある場合は、立ち会い当日に担当者へ返却します。立ち会いがない場合は、貸主から指定された方法(郵送・管理会社への持参・ポスト投函など)で、解約日までに返却します。
鍵の返却が遅れると、その期間分の家賃を請求される可能性があるため、必ず解約日までに返却します。郵送する場合は、配達記録が残る簡易書留やレターパックを利用すると、返却日の証明になります。

退去立ち会いと退去後の精算書の違いは何ですか?

退去立ち会いは「部屋の状態を貸主・借主双方で確認する場」で、精算書は「立ち会い後に貸主側が確定させた請求書」です。立ち会い当日に金額が確定するわけではなく、後日、敷金から差し引いた残額の通知や追加請求書として精算書が郵送されます。
立ち会い当日の判断材料は限られているため、その場での書類サインを避け、後日届く精算書を契約書・写真と照合して判断する流れが、トラブル回避の基本になります。

退去立ち会いに参加した場合と参加しなかった場合で、何が変わりますか?

立ち会いに参加すると、貸主側と一緒に部屋の状態を確認・記録できるため、後日精算書が届いたときの反論材料が手元に残ります。参加しなかった場合は、貸主側が単独で確認した内容が精算書に反映されるため、借主側に検証の根拠が残りにくくなります。
ただし、参加・不参加のいずれでも退去手続き自体は成立し、精算書は同様に届きます。参加するなら立ち会い時の書類サインは保留、不参加なら後日届く精算書の段階で慎重に確認、というのが対応の基本軸です。

退去立ち会いをしないと退去できないと言われましたが本当ですか?

退去立ち会いをしなくても、退去自体はできます。賃貸借契約は、契約書に定める予告期間に基づく解約の意思表示と、賃借物の返還(鍵の返却を含む)によって終了するため、立ち会いは法律上の必須要件ではありません。
立ち会いの欠席を理由に違約金を請求されたり退去が認められなかったりすることはありません。ただし、立ち会いがないと退去時の部屋の状態を双方で確認した記録が残らないため、後日精算書が届いた段階での反論が難しくなる点は留意が必要です。

退去立ち会いに行けないときはどうすればよいですか?

仕事や引っ越しの都合がつかないと分かった時点で、早めに管理会社や貸主側に連絡し、別日に調整してもらえないか相談します。立ち会い日は契約書に定められた解約日と独立して調整できる場合が多く、早めの連絡で別日設定が可能になります。
やむを得ない事情で立ち会い自体ができない場合は、立ち会いなしで退去する選択肢もあります。その場合、退去前に部屋の状態をスマホで全室撮影しておくと、後日届く精算書を検証する材料になります。

退去前の掃除はどこまでしておけば良いですか?

普段のお掃除レベルで問題ありません。ゴミの撤去、簡単な拭き掃除、水回りの汚れ落としなど、日常的な範囲の清掃で十分です。ハウスクリーニングは、契約書で借主負担と定められていない限り、貸主側が業者に依頼するのが一般的なため、借主が事前に依頼する必要はありません。
ただし、目立つカビ・タバコのヤニ・ペットの汚れなどを放置すると借主負担として請求される可能性があるため、最低限の汚れは落としておきましょう。

退去費用が高額請求された場合、誰に相談できますか?

退去費用の高額請求については、お住まいの自治体の消費生活センターまたは国民生活センター(消費者ホットライン:188)に相談できます。国民生活センターには2024年度に1万3,277件の原状回復トラブル相談が寄せられており、専門の相談員が対応します。
金額が大きい場合や貸主側との交渉が決裂した場合は、法テラス(日本司法支援センター)で弁護士相談を受けることも可能です。法テラスでは、収入要件を満たせば無料法律相談や弁護士費用立替制度を利用できます。

7. 退去立ち会いは参加して記録を残すのがトラブル回避の基本

「退去立ち会いはしないほうがいい」は誤解です。国民生活センターは2024年度に1万3,277件の原状回復トラブル相談を受けており、立ち会いに参加して記録を残し、納得できない書類にはその場でサインしないという対応を推奨しています。 

本記事の要点は以下の通りです。

  • 退去立ち会いは法律上の義務ではありませんが、不参加でも精算書は届くため、トラブル回避には参加して記録を残すことが有効です。
  • 当日は、①契約書の特約条項の確認、②入居時の写真の持参、③内容に納得ができなければ書類サインは保留、④退去時の部屋の撮影の4点を押さえます。

これから退去を控えている方は、まず賃貸借契約書を取り出し、特約条項に目を通すところから始めましょう。退去後にトラブル相談先が必要になった方は、国民生活センター(消費者ホットライン:188)で専門相談員に相談できます。 

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伊藤塾 宅建士試験科

著者:伊藤塾 宅建士試験科

宅地建物取引士資格を保有する講師・合格経験者で構成された専門チームが監修・執筆しています。毎年20万人以上が受験する宅建士試験について、民法改正の実務的影響・科目別の攻略法・効率的な学習スケジュールまで、法律指導のプロが正確にお届けします。