行政書士試験合格後に登録は必須?登録しないとどうなる?登録料や事務所についても解説
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【記事のポイント】
- 登録の要否:合格しても登録は任意です。ただし登録しなければ、行政書士としての業務はできません(行政書士法6条)。
- 肩書の表記:未登録のまま行政書士を名乗ることはできないため、履歴書には「行政書士試験合格(未登録)」と書きます。
- 登録費用:東京都行政書士会では、登録手数料2万5,000円と入会金20万円などを合わせ、新規登録に合計27万6,000円がかかります。
- 事務所の要件:登録には業務用の事務所が必要で、2か所以上を設けることはできません(行政書士法8条)。
- 登録の時期:登録に期限はないため、合格後すぐに登録しても、数年後に登録しても構いません。
行政書士試験に合格したあと、すぐに登録すべきか迷う人は少なくありません。一般企業で働きながら資格を活かしたい場合や、いずれ独立を考えているものの時期を決めかねている場合は、登録料や事務所の準備を思うと判断に迷うところです。登録しないままでも問題はないのか、あとから登録できるのかは、合格者の多くが最初にぶつかる疑問です。
この記事では、行政書士登録をしない場合のデメリットとメリット、登録の流れと費用、事務所の設置要件までを、行政書士法と各行政書士会の公式案内をもとに整理します。総務省の公表資料によると、2024年度(令和6年度)末の行政書士の登録者数は38,700人、同年度中の新規登録者数は3,298人でした。合格者が毎年数千人生まれる一方で、登録に踏み切る時期は人によって大きく異なります。登録するつもりがなくても資格を取る価値があるのかまで、判断の材料をそろえて解説します。
【目次】
1. 行政書士試験に合格しても登録は必須ではない
行政書士試験に合格しても登録は任意で、登録しなければ行政書士としての業務はできませんが、登録する時期は自分で選べます。
行政書士試験に合格しても、行政書士登録をするかどうかは自分で決められます。行政書士となる資格を持つ人が行政書士として仕事をするには、日本行政書士会連合会が備える行政書士名簿への登録を受けなければなりません(行政書士法6条)。逆にいえば、行政書士として業務を行う予定がないのであれば、合格後すぐに登録する必要はありません。
実際に、合格者の全員がすぐ登録しているわけではありません。総務省の公表資料によると、2024年度に新たに行政書士として登録した人は3,298人でした。一方、行政書士試験研究センターの公表資料では、2023年度の合格者数は6,571人、2024年度の合格者数は6,165人です。新規登録者数は、近い時期に生まれた合格者数を下回っています。
ただし、この2つの数値を割って「登録率」を求めることはできません。新規登録者には、公務員として行政事務に従事した経験によって資格を得た人など、試験合格者以外も含まれます。また登録に期限がないため、何年も前に合格した人がその年に登録することもあり、合格した年度と登録した年度は対応しません。ここから読み取れるのは、合格後すぐには登録しない人が相当数いるという傾向までです。
なお、2025年度の行政書士試験は、受験者50,163人に対して合格者が7,292人、合格率は14.54%でした。この年度の合格者がどれだけ登録するかは、次回の登録状況の公表を待つことになります。
出典:最近10年間における行政書士試験結果の推移|一般財団法人 行政書士試験研究センター
出典:行政書士の登録状況(令和6年度)|総務省
2. 行政書士登録をしないことによる3つのデメリット
行政書士登録をしないことによるおもなデメリットは、次の3つです。
| 行政書士登録をしないことによる3つのデメリット |
| ◉行政書士として活動できない ◉法改正や実務上の重要な情報にアクセスしづらい ◉士業間での交流ができない |
行政書士として登録をすべきかどうかを判断するためにも、行政書士登録をしないことによるデメリットをしっかり把握しておきましょう。
2-1. 行政書士として活動できない
行政書士試験に合格しても、登録をしない限り、行政書士として活動することはできません。行政書士または行政書士法人でない人は、業として行政書士の業務を行うことができず(行政書士法19条1項)、違反すると1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります(同法21条2号)。
また、行政書士でない人は、行政書士またはこれと紛らわしい名称を用いることもできません(同法19条の2第1項)。違反した場合は100万円以下の罰金の対象です(同法22条の4)。そのため、未登録の状態で名刺に「行政書士」と肩書を付けることはできません。
転職の際の履歴書には、後々のトラブルを防ぐためにも、「行政書士試験合格(未登録)」のように登録していないことを明記しておくのが無難です。
出典:行政書士法|e-Gov法令検索
2-2. 法改正や実務上の重要な情報にアクセスしづらい
行政書士登録をしていない場合には、法改正に関する情報や、実務上の注意点・変更点などに関する情報を得る事が難しくなります。
行政書士登録をしている場合、実務上重要な情報については、行政書士会から情報提供を受ける事ができます。しかし、未登録の場合には、行政書士会からの情報や周りの同業者からの情報提供を受けられないため、タイムリーに情報を得る事が難しくなります。
2-3. 士業間での交流ができない
行政書士登録をしていない場合、ほかの士業と交流を持つ機会が少ないため、人脈を広げる事が難しくなります。
行政書士として仕事をする場合、仕事を獲得したり事業を拡大する上で、他士業との協力が不可欠です。近隣の同業者と交流を持ったり、士業交流会に参加する機会が持てないのは、行政書士として仕事をしていく上ではマイナスです。
もし、将来的に行政書士として独立開業を目指しているのであれば、早いうちから他士業との交流を深め、人脈を広げることを意識するようにしましょう。
3. 行政書士登録をしないことによるメリット
行政書士登録をしないことは、デメリットだけではなくメリットもあります。
| 行政書士登録をしないことによる3つのメリット |
| ◉登録料や年会費がかからない ◉登録の手間を省ける ◉自分の好きなタイミングで登録できる |
ここからは、行政書士登録をしないメリットについて詳しく解説していきます。
3-1. 登録料や年会費がかからない
行政書士登録する際には、登録手数料や入会金、年会費等がかかりますが、登録しないのであれば、これらの費用は一切かかりません。かかる費用は所属する都道府県の行政書士会によって異なり、たとえば東京都行政書士会では次のとおりです。
【東京都行政書士会に新規登録・入会する場合の費用】
| 登録手数料 | 2万5,000円 |
| 入会金 | 20万円 |
| 東京都行政書士会会費3ヵ月分 | 1万8,000円 |
| 東京行政書士政治連盟会費3ヵ月分 | 3,000円 |
| 登録免許税 (収入印紙) | 3万円 |
このうち登録手数料と入会金の22万5,000円は事前に振り込み、会費と政治連盟会費の2万1,000円は申請時に現金で持参し、登録免許税3万円は収入印紙を購入して持参します。
さらに、登録後も会費は継続してかかります。東京行政書士政治連盟の会費は月額1,000円です。登録時にまとまった初期費用がかかり、その後も会費が続くため、当面は行政書士として仕事をする予定がない人にとっては負担の大きい支出になります。
3-2. 登録の手間を省ける
行政書士として登録するためには、いくつかの手順を踏む必要があるため、登録しないのであれば、登録に必要な手間を省く事ができます。
行政書士名簿への登録を受けるためには、行政書士事務所を設置する各都道府県の行政書士会を通じて、必要書類を提出する必要があります。新規登録のおおまかな流れは、次の通りです。
【行政書士登録の流れ】
各都道府県の行政書士会に必要書類を提出する
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行政書士会が書類を審査する(審査の結果によっては事務所の現地調査が行われる)
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日本行政書士連合会(日業連)が審査し、行政書士名簿に登録する
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各都道府県の行政書士会から登録・入会完了の通知が届く
東京都行政書士会の案内では、申請から登録・入会の完了までに1か月から1か月半ほどかかるとされています。現地調査は「登録審査の結果によっては行う場合がある」とされており、全員に対して必ず実施されるものではありません。
行政書士登録をするには、業務を行うための事務所を設ける必要があります(行政書士法8条1項)。事務所は2か所以上設けることができません(同条2項)。自宅を事務所として登録することもできますが、各都道府県の行政書士会が設置基準を定めているため確認が必要です。
※後述する下記についても、ぜひ参考にしてください。
3-3. 自分の好きなタイミングで登録できる
行政書士登録に期限はありません。そのため、行政書士試験に合格後すぐに登録をしなくても、自分の好きなタイミングで登録をする事ができます。たとえば、若いうちに行政書士試験に合格しておけば、定年退職後に行政書士登録をして、独立開業する事も可能になります。
行政書士として登録するには、手間もお金もかかるため、時間のあるうちにとりあえず資格だけ取得しておき、独立開業に向けて準備する期間を設けても良いでしょう。
4. 登録しないのに行政書士資格を取得するメリットは?
たとえすぐに行政書士登録をしなかったとしても、時間のあるうちに行政書士資格を取得することは大きなメリットがあります。登録しないのに行政書士資格を取得するメリットは、次の通りです。
| 登録しないのに行政書士資格を取得する3つのメリット |
| ◉法的知識を身につけることができる ◉就職活動や転職活動を優位に進められる ◉いざとなったら独立開業できる |
以下、それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
4-1. 法的知識を身につけることができる
行政書士試験は法律の試験です。行政書士試験に合格するために勉強することで、法的な知識や考え方を身につける事ができます。
社会生活を営む上で、法律の知識は必要不可欠です。行政書士試験では、民法や商法などの法律科目が主な試験科目なので、社会生活において役立つ基本的な法的知識を身につける事ができます。また、専門的な知識を駆使するための法的な考え方を身につける事で、一般企業に就職したとしても法的な観点で物事に対処できるようになります。
4-2. 就職活動や転職活動を優位に進められる
行政書士資格を持っていれば、就職活動や転職活動を優位に進める事ができます。行政書士は、法律系の国家資格です。資格を持っていれば、それだけで法的知識がある事を客観的に証明する事ができます。
また、行政書士試験に合格するだけの努力ができる人間である事もアピールできます。
もちろん、行政書士資格を持っているだけで必ずしも転職活動が上手くいくわけではありません。しかし、今までの職歴も含めて行政書士資格を持っている事をうまくアピールできれば、転職活動をスムーズにかつ有利に進める事ができるでしょう。
4-3. いざとなったら独立開業できる
行政書士事務所の事業が軌道に乗れば、働き方も収入も自分の裁量で決められるようになります。実際の報酬水準は取り扱う業務によって幅があり、日本行政書士会連合会が業務ごとの報酬額の統計を公表しています。開業後の収入を具体的に見積もりたい場合は、この統計で自分が扱おうとする業務の報酬額を確認しておくと、現実的な計画を立てられます。
出典:日本行政書士会連合会「報酬額の統計」
※報酬額統計調査は5年に1度の実施で、最新は令和7年度調査です。
※行政書士の独立開業について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
5. 行政書士の登録に関するよくある質問(FAQ)
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登録だけして業務をしないことはできる?
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他の士業との交流機会を持ったり、いざという時にすぐに業務ができるように、開業はせずに、登録だけしておく事もできないわけではありません。たしかに、登録だけしておけば、士業間での交流を深める交流会に参加できたり、実務上の注意点や法改正に関する情報をいち早くキャッチできます。
しかし、事務所設置にかかる手間や費用、登録の際に必要な登録料を考えるのであれば、行政書士として仕事をしないのに登録だけするのはおすすめできません。
また、行政書士として登録をするのであれば、正当な理由なく依頼を断る事はできません。そのため、登録だけして仕事をしないというのは、厳密な意味では認められていない事になります。
なお、公務員として働きながら行政書士登録をすることは、実際には難しいと考えてください。行政書士法が定める欠格事由に「公務員であること」は含まれていませんが(行政書士法2条の2)、国家公務員法や地方公務員法が営利企業への従事などを制限しているため、任命権者の許可なく行政書士として業務を行うことはできません。在職中の登録の可否は、勤務先の兼業規定と、所属予定の行政書士会の双方に確認してください。また、行政書士は正当な事由がなければ依頼を拒むことができません(同法11条)。この点でも、登録だけして仕事をしないという状態は制度の想定外です。
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事務所なしで登録することはできる?
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行政書士として業務を行うためには事務所を設ける必要があるため(行政書士法8条1項)、事務所なしで登録することはできません。具体的な設置基準は都道府県の行政書士会が定めており、東京都行政書士会の場合は次の内容が求められます。
【東京都行政書士会が求める事務所の条件】
- 事務所の使用権が適正で、会員自身が管理・運営の主体であること
- 業務上の秘密を保持できるよう明確に区分され、他人が容易に侵入できない構造であること
- 事務スペースと接客スペース、電話、パソコン、複合機、鍵のかかる書類保管庫、業務用図書と図書棚があること
- 行政書士事務所であることを示す表札を掲示していること
物理的な実態のないバーチャルオフィスや、パーテーションで簡易に区切っただけのスペースは事務所として認められません。公営住宅や公舎など、建物の使用条件で事務所利用が制限されている場所や、管理規約で認められていない場所も同様です。
登録審査の結果によっては現地調査が行われ、基準を満たしていないと判断された場合には登録が認められない可能性もあります。所属予定の行政書士会の基準を、事務所を決める前に確認してください。
出典:東京都行政書士会「東京都行政書士会行政書士事務所設置指導基準」 「東京都行政書士会 事務所設置等に関する規程」
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行政書士登録を拒まれることはある?
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基本的に行政書士登録を拒否される事はありませんが、例外として、次の事由に該当する場合には、登録を拒否される可能性があります。
【行政書士登録が拒まれるケース】
行政書士法2条の2に規定される
欠格事由に該当する場合未成年者(1号)、破産手続開始の決定を
受けて復権を得ない者(2号)、拘禁刑
以上の刑に処せられ執行を終えてから3年
を経過しない者(3号)など行政書士法6条の2第2項各号に
規定する事由に該当する場合心身の故障により行政書士の業務を行う
ことができない者(1号)、行政書士の信用
または品位を害するおそれがある者その他
行政書士としての適格性を欠く者(2号)
6. 行政書士試験合格後の登録に関するまとめ
行政書士試験に合格しても、行政書士登録は必須ではありません。
登録期限もないので、すぐに行政書士として働く事を考えていないのであれば、手間や金銭面を考えて登録をしない選択を取るのも良いでしょう。
行政書士資格を持っている事で転職活動が上手くいったり、資格を活かして働く事もできるため、早いうちから行政書士試験にチャレンジする事は非常に有用です。
もし、行政書士試験受験を検討しているのであれば、受験指導校の質の高い講義を有効活用し、効率的に勉強する事をおすすめします。
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