AI時代に中小企業診断士は定年後80歳まで働ける?85歳現役が語る生き残り方

先輩実務家の声

AI時代に中小企業診断士は定年後80歳まで働ける?85歳現役が語る生き残り方

【監修:小林勇治先生 中小企業診断士 / 株式会社ミーコッシュ経営研究所 代表取締役 所長】

「AIに仕事を奪われるのではないか」「この年齢から新しい資格を取って意味があるのか」。生成AIが急速に広がるなか、こうした不安を抱く人は増えています。定年後の長い時間を、何を支えに働けばいいのか。年齢を重ねた人ほど、その問いは切実になります。

本記事は、伊藤塾「明日の中小企業診断士講座第3回」での小林勇治先生(株式会社ミーコッシュ経営研究所 代表取締役 所長・中小企業診断士)の講演と、内閣府や中小企業庁の公的データをもとに、AI時代に診断士が生涯現役で働ける理由を整理します。一般論ではなく、85歳で現役の小林先生が「AIにはできない」と語る現場の発想力と、高齢就業の実態の両面から確かめていきます。

1. AIで中小企業診断士の仕事はなくなるのか

なくなりません。AIは仕事を均質化させますが、前例のない発想や革新は、人にしか生み出せないからです。
生成AIの進化を前に、中小企業診断士の仕事が消えるのではと心配する声があります。小林先生の答えは明快です。AIは答えを平均的なものへ近づけますが、独自の発想までは肩代わりできません。だからこそ、人にしか出せない発想が、これからの中小企業診断士の価値になります。

1-1. 小林勇治先生とはどのような中小企業診断士か

小林先生は、株式会社ミーコッシュ経営研究所の代表取締役 所長を務める中小企業診断士です。1985年(昭和60年)にIT経営の専門家として独立し、85歳の今も土日を中心に研修やコンサルティングを続けています。中小企業診断士に加え、ITコーディネータ、MBA(明治大学)、認定事業再生士(CTP)を持ち、著書は168冊にのぼります。
出典:伊藤塾【YouTubeライブ明日の中小企業診断士】人生100年時代の診断士~あなたは40代・50代・60代のキャリアプランができていますか~

講演の日、小林先生は銀座で東京都小池知事から感謝状を受け取り、その足で会場へ駆けつけたといいます。新しく中小企業診断士になった人を育てるフレッシュ診断士研究会と、そこから生まれたイー・マネージ・コンサルティング協同組合は、能登半島の被災地支援にも携わっています。年齢を重ねても社会に役立つ場がある。その姿が、生涯現役の説得力になっています。

1-2. AIはどこまで進化し、中小企業診断士に何をもたらすのか

小林先生は、AIの進化を三つの段階で説明します。今のAIは、人間の特定の仕事を自動化して実行する段階です。10年から20年後には、複数の異なる仕事を学んでこなすAGI(汎用人工知能)へ進み、やがて人間の知能を超えるASI(人工超知能)に至るといわれています。

小林勇治先生

AIの普及は均質化の源泉になり、革新は人が生むものです。AIに間違ったことを教えると、それを正しいかのように返してくる。そこが、いま非常に問題になっているところなんですね。
出典:伊藤塾YouTube【明日の中小企業診断士講座】第3回 AⅠ時代にあなたは、定年後 80歳まで働けますか?~60代・70代コンサルは働き盛り~

AIエージェントが市場調査から施策の立案までを分担してこなす時代は、すでに始まっています。中小企業でも活用は広がりつつあり、2026年版中小企業白書では、約3割の中小企業が「AI活用に取り組んだ」と回答しました。多くはバックオフィスや営業・販売の場面です。ただし、誰が使っても似た答えにたどり着きやすいのもAIの特徴です。だからこそ、平均から外れた発想を出せる人の価値が際立ちます。
出典:中小企業庁「2026年版中小企業白書・小規模企業白書の概要」

2. なぜ85歳でも現役で働き続けられるのか

年齢そのものより、変化に対応して学び続けられるかどうかが、現役を続けられるかの分かれ目になります。
高齢でも働く人は、もはや特別な存在ではありません。そして中小企業診断士という資格には、そもそも定年がありません。問われるのは年齢ではなく、時代の変化に合わせて自分を更新できるかどうかです。

2-1. 高齢でも働く人はどれだけ増えているか

60代・70代で働く人は、年々増えています。内閣府の令和7年版高齢社会白書によると、65歳以上の就業者数は21年連続で前年を上回りました。就業率は10年前と比べ、65~69歳で13.5ポイント、70~74歳で11.1ポイント伸びています。2024年時点で、男性は65~69歳の62.8%、70~74歳の43.8%が働いています。
出典:内閣府「令和7年版高齢社会白書」

働く意欲も高いままです。同じ白書では、収入のある仕事をしている60歳以上の約8割が、70歳くらいまで、またはそれ以上働きたいと答えています。中小企業診断士は、この「働き続けたい」という思いに、専門性で応えられる職業です。

2-2. 変化に対応できる人が生き残る

小林先生が現役を続けられる理由は、学びを止めない姿勢にあります。69歳で大学院に入り、AIやDXといった新しい言葉も、敬遠せず本を読んで理解してきました。

小林勇治先生

ダーウィンは「最後まで生き残るのは、最も強いものではなく、変化に適応できるものだ」と述べています。資格を取得したら終わりではありません。時代は常に変化しているからこそ、その変化を前向きに受け入れ、自分も成長し続けることが大切だと思いますよ。
出典:伊藤塾YouTube【明日の中小企業診断士講座】第3回 AⅠ時代にあなたは、定年後 80歳まで働けますか?~60代・70代コンサルは働き盛り~

過去の専門性は、磨き続けなければ古びます。AI、DX、かつてのBPR(業務改革)と、時代ごとに新しい言葉は現れますが、食わず嫌いをせず本質を見抜く。その姿勢が、年齢に関係なく現役でいられる条件になります。

3. AIにできない中小企業診断士の仕事とは何か

AIは前例の最適化は得意ですが、前例のない発想は出せません。その発想力こそ、中小企業診断士に残された強みです。
小林先生は、手がけた事例を挙げながら「これはAIには出せない」と語ります。共通するのは、業界の常識を一度疑い、誰もやっていない形に組み替えている点です。三つの現場から見ていきます。

3-1. 在庫を持たない呉服店という発想

ある呉服店では、社長がレンタル事業に反対していました。貸し出し用の在庫を抱えると、資金が眠ってしまうためです。そこで小林先生が示したのは、自社で在庫を持たない仕組みでした。

小林勇治先生

お客さまのタンスに眠っている着物をお借りして、レンタルに回すんです。貸し出した料金の一部を、提供してくださった方にお渡しする。これなら、在庫を持たずにレンタルができます。
出典:伊藤塾YouTube【明日の中小企業診断士講座】第3回 AⅠ時代にあなたは、定年後 80歳まで働けますか?~60代・70代コンサルは働き盛り~

成人式や卒業式で一度使ったきりの着物は、各家庭のタンスに眠っています。それを預かり、温度管理された環境で保ちながら貸し出す。持ち主はスマホで貸し出し状況を確認し、自分が使いたい日は予約できます。ICタグとスマホで管理するこの仕組みは、「持つ」から「使う」への発想の転換でした。当初は反対していた社長の息子は、いま中小企業診断士を目指して勉強しているといいます。

3-2. クリーニング店の生産性を1.8倍にした気づき

あるクリーニング店では、洗濯中にバーコードのタグが取れ、どの服か分からなくなる問題がありました。小林先生が取り入れたのは、レジで打ち込むと名前入りのタグが印字される仕組みです。

「小林勇治・背広・茶」と印字されていれば、タグが取れても持ち主を特定できます。手書きの預かり伝票はくり返し書き直せるリライトカードに変え、納期も明確にしました。結果として紛失が減り、処理にかかる時間は短くなって、生産性は約1.8倍に高まりました。

さらに小林先生は、当時1枚140円ほどだったワイシャツのクリーニングを98円にするよう提案しました。安すぎて儲からないと反対されましたが、客寄せの目玉商品(ロスリーダー)と位置づければ、店全体の売上は伸びます。実際にこの店は売上を大きく伸ばし、20年たった今もこの価格を続け、地域で高いシェアを保っているといいます。

※これらは小林先生が手がけた個別の事例であり、同じ成果を保証するものではありません。

3-3. 物流の二度手間をなくした現場の知恵

沖縄のある企業では、本社から港へ商品を運び、港で積み替えてコンテナに詰めていました。小林先生は、この二度手間に着目します。本社でコンテナまで積んでしまい、そのまま船に載せれば、港での在庫も積み替えも要りません。荷物の破損も減り、コストも下がりました。

船便では、出荷日と到着日が月をまたいでずれ、請求が合わなくなる問題もありました。小林先生は、到着時に伝票へ日時を刻む仕組みを設け、到着日を納品日とするルールに統一して、このずれを解消しました。取引価格についても、買い手と売り手の交渉任せだった慣行を、取引量と決済条件で決まる一覧表に置き換え、誰が買っても同じ条件になる公平な形に整えています。いずれも、業界の常識を疑うところから生まれた発想です。

4. AIに負けない中小企業診断士になるには何が必要か

発想力、気づき、前例を疑う姿勢の三つです。そして、それらを支えるのが学び続ける力と体力です。
AIにできない発想は、どうすれば身につくのか。小林先生は、日々の心がけとして三つを挙げます。

4-1. 前例を疑い、自分の勘を鍛える

小林先生は、行き先が分かる場所では地図アプリを使いません。便利な道具に頼りきると、考える力や勘が鈍るからです。

小林勇治先生

Googleマップや乗換案内に頼りすぎると、人は考えなくなり、脳を使わなくなる。だから私は、地図だけ見て自分で考えながら歩くようにしています。
出典:伊藤塾YouTube【明日の中小企業診断士講座】第3回 AⅠ時代にあなたは、定年後 80歳まで働けますか?~60代・70代コンサルは働き盛り~

前述のようにワイシャツ98円も、名前入りタグも、「そんな店はない」と言われた発想でした。前例がないことは、できない理由になりません。むしろ、誰もやっていないからこそ価値が生まれます。気づきは、「本当にこれでいいのか」と問い直すところから始まります。

4-2. 学び続け、体力と気力を保つ

発想力の土台には、学びと体力があります。小林先生は69歳で大学院に入り、日記を70年間つけ続けています。体力づくりも欠かしません。階段を数えながら上り、腕立て伏せや腹筋、スクワットを日課にしているといいます。

「そんな店はありませんよ」と言われても「やればできる」と言いきるには、相手を動かす気力が要ります。その気力を支えているのが、体力です。中小企業のAI活用がまだ約3割にとどまるいま、現場には、AIをうまく使いこなしながら、人にしかできない発想で経営を変える支援者が求められています。学び続ける中小企業診断士は、その担い手になれます。

※稼ぐ手法や独立後の収入の相場は、こちらをご覧ください。

5. AI時代の中小企業診断士に関するよくある質問(FAQ)

中小企業診断士は何歳まで働けますか。60代・70代でも需要はありますか。

資格に定年はなく、年齢に関係なく働けます。高齢社会白書では、65歳以上の就業者数が21年連続で増え、男性は70~74歳でも43.8%が働いています。経験と人脈が価値になる中小企業診断士は、高齢でも続けやすい職業です。
典:内閣府「令和7年版高齢社会白書」

中小企業でAIの活用はどのくらい進んでいますか。

2026年版中小企業白書では、約3割の中小企業がAI活用に取り組んだと回答しています。多くはバックオフィスや営業・販売の場面です。AIを使いこなしながら経営を変える支援者の役割は、今後も広がると見込まれます。
出典:中小企業庁「2026年版中小企業白書・小規模企業白書の概要」

AIにできなくて、中小企業診断士にできることは何ですか。

前例のない発想です。AIは過去のデータから平均的な答えを出すのは得意ですが、業界の常識を疑って新しい仕組みを作るのは苦手です。在庫を持たない呉服店のレンタルのように、現場ごとの突破口を見つけるのが中小企業診断士の強みです。

定年後に活かすなら、独立と企業内のどちらが向いていますか。

どちらも選べます。働き方や生活設計に合わせて選べるのが、この資格の強みです。独立後の実態はこちらの関連記事で確認できます。

AI時代に、これから中小企業診断士を目指す価値はありますか。

あります。AIが広がるほど、AIを使いこなし、人にしかできない判断で経営を支える専門家の価値は高まります。専門性をどう掛け合わせるかは、別記事で詳しく解説しています。

高齢から資格を取り始めても遅くないですか。

遅くありません。前職の経験を土台にできるため、年齢を重ねてからの挑戦が不利になりにくい職業です。小林先生自身も40代で受験し、45歳で独立しています。

AIが進化すると、中小企業診断士の仕事はなくなりませんか。

なくならない、と小林先生は語ります。AIは答えを均質化させますが、前例のない発想は人にしか生み出せません。AIを脅威ではなく道具として使いこなす中小企業診断士は、むしろ活躍の場を広げられます。

高齢になってから、新しい技術についていけるか不安です。

食わず嫌いをしないことが大切です。小林先生は69歳で大学院に入り、AIも本を読んで理解してきました。最初は分からなくても、向き合えば理解できる。学び続ける姿勢が、技術の変化への備えになります。

AIにできない発想力は、どうすれば身につきますか。

前例を疑う習慣からです。「本当にこれでいいのか」と問い直し、便利な道具に頼りきらず自分の頭で考える。小林先生は地図アプリを使わず勘を鍛えるなど、日々の心がけを重ねています。

高齢でも現役を続けるコツは何ですか。

学び続けることと、体力・気力を保つことです。小林先生は日記を70年つけ、運動を日課にしています。専門性は磨き続ける限り古びず、気力と体力が、相手を動かす説得力につながります。

6. 中小企業診断士はAI時代も生涯現役で働ける

AIが普及しても、中小企業診断士の仕事はなくなりません。AIは答えを均質化させますが、前例を疑い、誰もやっていない形に組み替える発想は、人にしか生み出せないからです。85歳で現役の小林先生が手がけた呉服店やクリーニング店の事例は、その発想力がAIに置き換えられないことを示しています。資格に定年はなく、60代・70代はむしろ働き盛りです。年齢ではなく、変化に対応し学び続ける姿勢が、生涯現役を支えます。

最後に要点をまとめます。

  • AIは仕事を均質化させるが、前例のない発想は人にしか生み出せない
  • 資格に定年はなく、65歳以上の就業者数は21年連続で増えている
  • AIにできない発想力が、中小企業診断士に残された最大の強みになる
  • 前例を疑い、学び続け、体力と気力を保つことが現役を続ける条件
  • AIを脅威ではなく道具として使いこなす中小企業診断士は、活躍の場を広げられる

※伊藤塾【明日の中小企業診断士講座】第3回 AⅠ時代にあなたは、定年後 80歳まで働けますか?~60代・70代コンサルは働き盛り~の動画はこちらをご覧ください。

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中小企業診断士は、AI時代にも自分の発想力で道を切り開きたい人にとって、長く頼れる土台になります。学び直しを考えるなら、今が始めどきです。

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伊藤塾 中小企業診断士試験科

著者:伊藤塾 中小企業診断士試験科

中小企業診断士資格を保有する講師・合格経験者で構成された専門チームが監修・執筆しています。1次試験7科目・2次試験4事例という複合構造を持つ本試験について、ストレート合格率約4〜8%の難関資格を突破するための学習戦略・独立開業の実態・他資格との相性まで、実務経験豊富な専門チームが正確にお届けします。