法科大学院には行くべき?法学部や大学院との違いを解説

法科大学院

将来弁護士や検察官、裁判官などの法曹として働くことを夢見ている方にとって、法科大学院に進学すべきかどうかは、とても重大な問題です。

もし、大学の法学部に進学した場合、同じ法律を学ぶ法科大学院に進学する意味はどこにあるのでしょうか。

また、法科大学院(ロースクール)と大学院の法学研究科は、それぞれ何が違うのでしょうか。

この記事では、法学部・法科大学院(ロースクール)・大学院の法学研究科、3つの進学先の違いや、法科大学院に通うメリット、法科大学院進学後のキャリアについて解説していきます。

法科大学院への進学を迷っている方や今後のキャリアについて悩んでいる方の参考になれば幸いです。

1. 大学の法学部と法科大学院(ロースクール)の違いとは?

法科大学院はロースクールとも呼ばれ、法曹三者(弁護士、検察、裁判官)を育成するための専門職大学院(プロフェッショナル・スクール)です。

基礎的な法律知識の習得を目指す大学の法学部とは、学習内容や学習目的が根本的に異なります。

両者のおもな違いは以下の3つになります。

大学の法学部と法科大学院(ロースクール)の3つの違い
✔︎ 法科大学院を修了すれば司法試験を受験できる
(2023年より在学中受験も可能)
✔︎ 法科大学院ではより実践的な知識を学ぶ
✔︎ グループディスカッションや模擬裁判などがあるのも法科大学院の特徴


以下、それぞれ詳しく解説していきます。

1-1. 法科大学院を修了すれば司法試験を受験できる(2023年より在学中受験も可能)

大学の法学部と法科大学院の1番の違いは、司法試験の受験資格を得ることができるかどうかです。

法曹として活躍するためには司法試験を受験する必要があり、司法試験を受験するためには、以下の3つの方法があります。

①法科大学院課程を修了する
②在学中受験の制度を利用して、法科大学院在学中に司法試験を受験する(2023年施行)
③予備試験に合格する

なお、法曹コースを選択された場合、「大学3年・法科大学院2年」の計5年間で法科大学院過程を修了し、司法試験を受験することができます。さらに、法科大学院在学中の受験を利用すれば、最短、大学入学から4年7ヶ月で司法試験合格を手にすることができます。

※法曹コースについて詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。

ご存知の通り、大学の法学部を卒業したとしても、司法試験の受験資格を得ることはできません。

法律家になることを目指すのであれば、法科大学院ルートもしくは予備試験ルートのどちらで司法試験を受験するかを選択することになります。

ただし、法科大学院ルートを選択したとしても、法科大学院在学中に司法試験の合格を目指すならば、入学前に予備試験レベルの勉強を済ませておくことが重要です。

また、司法試験合格率の高い法科大学院には多くの予備試験受験生が志願しますので、法科大学院入試の段階においても、予備試験レベルでの勉強をできているかどうかで合否が決まります。

したがって、法科大学院ルートにせよ、予備試験ルートにせよ、司法試験の早期合格および確実な合格を目指す方は、大学在学中から予備試験の勉強を始めることが必須の時代になったと言ってもよいでしょう。

1-2. 法科大学院ではより実践的な知識を学ぶ

各大学の法学部では、法律に関する基礎的な知識や教養、法的な思考法を学ぶことを目的としています。

一方、法科大学院は、法曹養成に特化した教育をおこなう専門機関のため、法学部よりもより高度で実践的な知識を学ぶことになります。

大学で学んだ法律の基礎的な知識を使って、法律の実務における具体的な事例をどう解決に導くのかを習得していくのが法科大学院です。

司法試験に合格し、実務の世界に出たら、依頼者により千差万別な依頼内容を、あらゆる法律や過去の裁判例を駆使して、依頼者が満足いくような解決に導いていく必要があります。

そのため、学術的な知識だけでなく、実務ですぐに活躍できるように、具体的事案の解決方法をあらかじめ学んでおくことには、大きな意味があるといえるのです。

1-3. グループディスカッションや模擬裁判などがあるのも法科大学院の特徴

各大学の法学部と違い、グループディスカッションや模擬裁判などで法律を学んでいく講義があるのも、法科大学院の特徴になります。

法科大学院では、法律の実務における具体的な法律問題の解決能力を身につけることを主な目的としています。

そのため、法律論や学説などの学術的な知識を学ぶ法学部と異なり、法科大学院では、より具体的な法律問題が与えられ、その問題に対してどうアプローチして問題を解決していくかを、他の学生と話し合いながら模索していくことになります。

また、模擬裁判の授業では、民事事件や刑事事件の具体的な事案が与えられ、裁判官・原告・被告にそれぞれ分かれて、実際の裁判と同様の議論を取り交わします。

実際に検察官や弁護人が提出する書面を書いたり、証人尋問や判決文を書くなど、実務の世界でおこなわれていることを実際に体験することで、より実践的な知識を身につけることができます。

2. 大学院の法学研究科と法科大学院(ロースクール)の違いとは?

大学を卒業し大学院に進学する場合、法科大学院に進学する以外にも、大学院の法学研究科に進学することもできます。

法学研究科は、研究者(将来の大学教授)を養成するための大学院で、修士課程(博士課程前期課程)として、修士号の学位を取得します。その後、博士課程(博士課程後期課程)に進むことにより、博士号の学位を取得します。

対して、法科大学院は、大学により名称はまちまちではありますが、大学院専門職博士課程(法務研究科もしくは法曹養成専攻)というのが正式名称であり、大学院の法学研究科とは別の課程になります。法科大学院を修了すれば専門職博士号の学位を取得します。

法科大学院を修了したとしても、研究者(大学教授)の道に進みたい場合は、法学研究科に再度進学する必要があります。

2-1. 法学研究科では何を学ぶの?

大学院の法学研究科では、大学の法学部で学んだ内容をさらに発展させ、法学やその関連分野に関するより専門性の高い研究をおこないます。

実務で即戦力になる知識をつけることを目的とする法科大学院に比べ、より学術的な研究に重点が置かれた教育がなされるのが法学研究科の特徴であり、卒業後のキャリアとしては、大学の教員(教授)やシンクタンクの研究員などが、おもな就職先として挙げられます。

2-2. 法学研究科に進学する際の注意点

法学研究科に進学する際には、以下の2つの点に注意してください。

①. 法科大学院のような実践的な知識を学ぶことができない

大学院法学研究科では、法学やその関連分野に対する学術的な研究をメインにおこないます。

そのため、法科大学院と比べると、法曹として活躍するための実務的な知識を学んだり、実践的な経験を積むことができないことに注意が必要です。

もちろん、大学院法学研究科で学ぶことができる知識や経験は、実務の世界に出た後でも十分に有用なものとなりますが、実務に即したより実践的な知識を学ぶことができないことは、法曹を目指す方にとって、大きなデメリットになるといえるでしょう。

②. 司法試験の受験資格を得ることができない

大学院の法学研究科は、たとえ卒業したとしても司法試験の受験資格を得ることはできません。

そのため、法曹を目指す学生が大学院の法学研究科に進学した場合には、予備試験に合格して司法試験の受験資格を得る必要があります。

もし、司法試験を受験して法曹になりたいと考えているのであれば、より実践的な経験を積むことができる法科大学院に進学するか、司法試験の合格率が高い予備試験に合格することを目標とすることをお勧めします。

3. 法科大学院(ロースクール)に進学するなら司法試験の合格率が重要

法科大学院への進学を検討する場合、学費や自宅から通える距離かどうか、大学との兼ね合いなど、さまざまな要素を加味して選択することになるかと思いますが、できる限り司法試験の合格率が高い法科大学院を選択することをおすすめします。

法科大学院に進学する目的は、法科大学院を卒業することではなく、最終的に司法試験に合格することです。たとえ、学費が安かったとしても、最終的に司法試験に合格できないのであれば、進学した意味がなくなってしまいます。

できる限り早い段階で司法試験に合格するためにも、「最終的に司法試験に合格することができるかどうか」を常に意識して、進学先を決定するようにしましょう。

※法科大学院について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。

4. 法科大学院(ロースクール)進学後のキャリアとは?

法科大学院を卒業したあとは、司法試験を受験し法曹三者(弁護士、裁判官、検察官)を目指す方が多いですが、そのキャリアプランは多様化しており、さまざまなフィールドで活躍しています。

弁護士として法律事務所に勤務したり、独立・企業するのはもちろん、最近では企業の一社員として法務部門で働くインハウスローヤーという働き方も広まっています。

また、司法試験の勉強で培った法律の知識を使って公務員試験を受験したり、司法書士や行政書士、弁理士などの、法律を扱う士業として活躍するケースもあります。

※なお、法学部の就職先について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。

5. 法科大学院ルートと予備試験ルートどちらがいい?

1章で述べた通り、司法試験の早期合格を目指すのであれば、たとえ法科大学院ルートを選択されたとしても、法科大学院入学前に予備試験の勉強を始めることが必須の時代です。

つまり、大学生の段階では予備試験ルートでの司法試験合格を目指していただきたいのです。

予備試験ルートを目指すべきおもな理由は以下の通りです。

予備試験ルートを目指すべき3つの理由
✔︎ 予備試験合格者の司法試験の合格率が一番高い
✔︎ 大学在学中の合格できれば、法科大学院にかかる学費を節約できる
✔︎ 予備試験合格レベルの勉強をしておけば、上位法科大学院に合格できる実力がつく
✔︎予備試験レベルの勉強をしておけば、法科大学院在学中に司法試験に合格できる実力がつく


予備試験合格者の司法試験合格率は非常に高く、令和7年(2025年)度の短答式試験合格率は99.2%、最終合格率も90.7%と高い合格率を維持しています。
(参考:令和7年司法試験法科大学院等別合格者数等

予備試験は、正しい方法でコツコツと勉強を継続できれば、誰でも合格するチャンスがある試験です。法科大学院ルートと予備試験ルートで迷っているなら、まずは予備試験合格レベルの知識をつけることを目標にして、勉強をいち早く開始することをおすすめします。

※なお、予備試験ルートについて詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。

6. 法科大学院に関するよくある質問(FAQ)

法科大学院の学費はいくらかかりますか?

国立の法科大学院は入学金282,000円・授業料年804,000円が標準額として国立大学等の授業料その他の費用に関する省令で定められています。私立は大学ごとに大きく異なりますが、年間100万円台が多い水準です。 ただし、既修者コース(2年)と未修者コース(3年)で総額が変わり、未修者は授業料1年分が追加される計算になります。給付型奨学金や学費全額・半額免除を設ける大学院もあり、出願前に各校の支援制度を確認することが現実的な負担軽減につながります。

法科大学院修了者の司法試験合格率はどれくらいですか?

法務省が公表した2025年度司法試験の結果によると、法科大学院修了者の合格率は21.91%です。一方、法科大学院在学中受験者は52.66%、予備試験合格者は90.68%でした。 同じ法科大学院ルートでも、在学中に合格できるか修了後に持ち越すかで合格率に2倍以上の差が出ています。修了後に複数回受験となるほど合格率は下がる傾向にあるため、法科大学院ルートを選ぶ場合も在学中合格を視野に入れた準備が重要です。
出典:法務省「令和7年司法試験の結果について

法学既修者コースと法学未修者コースは何が違いますか?

文部科学省によると、法学既修者コース(2年)は法律の基礎知識をすでに修得している人を対象とし、法学未修者コース(3年)は法律の学習をしたことがない人などを対象としています。未修者は1年目に基礎的な法律知識を学び、2年目から既修者と合流して学修します。 未修者コースは法学部以外の出身者や社会人にも門戸が開かれている一方、既修者が大学4年と法科大学院2年の計6年で学ぶ内容を3年で履修するため、学習負荷は相対的に重くなります。
出典:文部科学省「法科大学院について

法科大学院の入試科目はどのような内容ですか?

法科大学院の入試科目は、各大学院が独自に設定しますが、既修者コースは憲法・民法・刑法を中心とする法律科目試験と論文式の試験、未修者コースは小論文や適性試験を中心とする選抜が一般的です。共通して、ステートメントと呼ばれる志望理由書の提出を求める大学院が多くあります。 合格率の高い上位校は出願時点で予備試験合格レベルの法律知識を要求する傾向にあり、大学法学部での学習に加えて司法試験の出題範囲に踏み込んだ学習を進めておくことが、入試突破の現実的な備えになります。

法科大学院の受験資格はどのような条件ですか?

法科大学院に出願するには、原則として大学を卒業して学士の学位を取得していることが条件です。学士相当と認められる場合は、海外の大学卒業者や学位授与機構の認定を受けた者も対象になります。学部の専攻は問われず、法学部以外の出身者でも未修者コースを中心に広く出願できます。 法学部の早期卒業制度や法曹コース修了者を対象とした特別選抜制度を設ける大学院もあり、大学3年で学部を早期卒業し、法科大学院既修者コース2年と合わせた5年で法科大学院修了を目指すルートも整備されています。

法科大学院の修業年限は何年ですか?

文部科学省の規定によると、法科大学院の修了要件は3年以上在学し93単位以上を修得することです。既修者コースの場合は1年・30単位を上限に短縮できるため、既修者は2年・63単位以上で修了できます。 2023年からは在学中受験制度が導入され、学長認定の要件を満たせば修了前に司法試験を受験できるようになりました。修了が前提だった従来制度に比べ、合格までのスケジュールを1年以上前倒しできる選択肢が増えています。
出典:文部科学省「法科大学院について

「法科大学院はやめとけ」と言われるのはなぜですか?

「やめとけ」という意見の背景には、学費負担の重さと修了者の司法試験合格率の低さがあります。2025年度司法試験で法科大学院修了者の合格率は21.91%にとどまり、4人に3人は不合格となる計算です。学費と機会費用を投じても合格に至らない可能性があるという経済的リスクが、否定的な意見の主な根拠になっています。 ただし、合格率は法科大学院別・コース別で大きく異なり、上位校の在学中受験者では合格率が50%を超えるケースもあります。志望校選びと学習計画次第で、リスクの大半は事前にコントロールできる性質のものです。

法科大学院は留年しやすいと聞きますが、実態はどうですか?

法科大学院は厳格な成績評価制度を採用しており、進級要件を満たせなかった場合は原級留置、いわゆる留年となります。文部科学省の法科大学院関係状況調査では、各校の進級率・留年率・修了率が毎年公表されており、平均値は他の専門職大学院よりも高い水準にあります。 具体的な留年率は大学院・年度・コース別に異なるため、志望校の最新調査結果を確認することが重要です。

社会人でも法科大学院に通えますか?

文部科学省は法科大学院入学者選抜について、社会人等の経験を積んだ者を幅広く受け入れる方針を明示しており、社会人の入学は制度的に想定されています。仕事と両立しやすい夜間コースを設ける大学院や、社会人特別選抜枠を持つ大学院もあります。 ただし、修了要件は社会人でも変わらず3年以上の在学と93単位以上の修得が求められます。働きながら通う場合は時間的な負担が大きいため、勤務先の休職・退職制度や教育訓練給付金の利用可否を事前に確認しておくことが現実的な選択になります。

法科大学院の学費を抑える方法はありますか?

主な選択肢は4つあります。①日本学生支援機構の貸与型・給付型奨学金、②各法科大学院独自の入学金・授業料免除制度、③各法科大学院の給付型奨学金、④法科大学院専用の教育ローンの利用です。成績上位合格者を対象に入学金・初年度授業料相当額を給付する制度を設ける大学院もあります。 さらに、既修者コース(2年)を選択することで未修者コースより1年分の授業料を抑えられます。出願前の段階で、志望校の学費総額と支援制度の組み合わせを試算しておくことが、無理のない進学計画につながります。

7. 法学部と法科大学院との違いに関するまとめ

各大学の法学部・法科大学院(ロースクール)・大学院の法学研究科は、それぞれ学習内容や学習目的、学習方法が異なります。

法科大学院(ロースクール)と大学法学部の主な違いは下記の通りです。

  • 法科大学院を修了すれば司法試験を受験できる
    (2023年より在学中受験も可能)
  • 法科大学院ではより実践的な知識を学ぶ
  • グループディスカッションや模擬裁判などがあるのも法科大学院の特徴

また、法科大学院(ロースクール)と大学院法学研究科の主な違いは下記の通りです。

  • 大学院法学研究科では、法学やその関連分野に対する学術的な研究がメイン
  • 大学院法学研究科では、司法試験受験資格を得られない
  • 大学教授になるためには法学研究科に進む必要がある

上記の通り、法学部や大学院法学研究科では、司法試験の受験資格を得ることができないため、もし、司法試験の受験を考えているのであれば、法科大学院に進学するか予備試験を受験する必要があります。

ただし、2023年から法科大学院在学中に司法試験受験が可能となったことにより、法科大学院に進学する場合でも、大学生の段階で予備試験の勉強を進めておくことが重要となってきました。

いかなる進路を選んだとしても、司法試験に合格するためには予備試験の勉強が必須となる時代になったと言えるでしょう。

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