理系でも司法試験には合格できる?受験までの流れと理系弁護士の需要を解説
司法試験
【記事のポイント】
- 合格の可能性:理系出身でも司法試験は合格できます。法務省は学部別の合格率を公表しておらず、出題範囲も採点基準も学部で変わらないため、文系と同条件で挑めます。
- 受験資格:受験資格は法科大学院の修了か予備試験の合格で得られます。理系でも既修者コースを選べ、2023年(令和5年)からは在学中受験もできるようになりました。
- ルート別の比較:2025年度の合格率は予備試験ルート90.68%、法科大学院在学中52.66%、全体41.20%です(法務省)。
- 理系の強み:法的三段論法は数式への代入に近く、理系の論理的思考が活きる。知財・IT・医療では理系弁護士が希少で需要が高い分野です。
- 選択科目:論文式の選択科目は、工学・情報系なら知的財産法と専門が直結し、合格後のキャリアにも結びつきます。
司法試験は、理系出身者でも合格できる試験です。司法試験の受験資格を得るための予備試験や法科大学院の受験は、理系出身者でも文系出身者と同じように挑戦できます。
理系の論理式で培ってきた思考方法は法律の学習にも役立ちますし、理系の専門知識は弁護士の実務で活用できる場面もあるでしょう。
今回の記事では、理系出身者が司法試験の受験資格を取得する方法や理系弁護士の需要、理系出身者の勉強法などを解説します。理系出身者が司法試験の挑戦を検討するうえで役立つ情報をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
【目次】
1. 理系出身者でも司法試験には合格できる
結論から言うと、理系出身者でも司法試験は十分に合格可能な試験です。実際、正確な人数は発表されていませんが、理系学部・大学院出身者の司法試験合格者は毎年誕生しています。
【理系出身者の司法試験合格体験談】
理系をバックグラウンドに持つ弁護士が目標。予備試験は、勉強のモチベーションが上がる点がメリット
ここでは、理系出身者でも司法試験への挑戦が不利にはならない理由と、理系出身者が司法試験の受験資格を取得する方法について解説します。
1-1. 法学部の講義は司法試験に直結しない
大学の法学部の講義は、司法試験合格には直結しません。実際、法学部出身でも司法試験に挑戦して法曹の道に進むのはごく僅かです。理系出身者でも研究者とはならずに、文系・理系の関係のない営業職や一般職に就く人も多くいます。
つまり、文系理系を問わず、学部での専攻は卒業後の職業に直結しないことも多いのです。
法学部に在籍している学生も、司法試験受験のためには受験指導校を利用する人がほとんどで、学部の講義をベースに司法試験の対策を行う人はほとんどいません。司法試験に合格するためには、法学部出身者でも自主的な学習が欠かせないのです。
理系出身者でも、受験指導校を利用するなど、自主的に司法試験の学習に取り組むのであれば、法学部出身者と比べて不利になることはありません。
1-2. 理系出身者が司法試験の受験資格を取得するには?
大学の学部が文系、理系どちらであっても、司法試験を受験するには受験資格を取得する必要があります。司法試験の受験資格を取得する方法は、次の2つです。
◉法科大学院(未修者・既修者)を修了する(2023年より法科大学院在学中受験が可能になりました。)
◉予備試験に合格する
法科大学院や予備試験の受験資格は、理系出身者でも文系出身者と同様に認められます。
法科大学院には、3年間で修了する未修者コースと2年間で修了する既修者コースの2つのコースがあります。これは法学部だから既修者コース、法学部以外だから未修者コースというわけではなく、法律の入学試験を行うのが既修者コース、小論文の入学試験を行うのが未修者コースという分け方にすぎません。つまり、理系出身者でも既修者コースを受験することは可能です。
予備試験は、2023年からは毎年7月、9月、1月の3段階で試験が実施され、合格すると翌年以降の司法試験受験資格を取得できます。予備試験の受験でも、法学部出身者が理系出身者に比べて優遇されるということはありません。
理系出身者でも、法律の学習に取り組めば、法学部出身者と同じ条件で法科大学院や予備試験の受験に挑戦できます。
2. 理系弁護士には需要がある
司法制度改革によって弁護士の人数は増加し続けていますが、理系弁護士は現在でも希少な存在です。そのため、理系弁護士には十分な需要があります。
実際、理系出身者の弁護士を増やすために、理系出身者だけが利用できる奨学金を設置している法科大学院や団体もあります。
参考:理系出身者への法科大学院奨学金
ここでは、理系弁護士に需要がある理由を詳しく解説していきます。
2-1. 理系の思考法は法律問題の解釈に応用できる
理系科目の思考法は、法律問題を解釈するのにも応用できます。
法律の学習は、条文や判例などの暗記がメインと想像する方も少なくはないでしょう。しかし、法律問題を解決するためには、法的三段論法と呼ばれる思考法を身に付けなくてはなりません。
法的三段論法とは、条文・規範に具体的な事実をあてはめて結論を導く思考法のことで、公式に数字をあてはめて解答を導く数学の思考法に近いものがあります。
そのため、理系出身者が身に付けている論理的思考力は、法律の学習を進めるうえでも役に立つと言えるでしょう。
2-2. 理系の知識が役立つ分野も多い
法律は、社会生活のあらゆる場面で問題となります。そのため、理系の世界でも、法律が問題となる場面は少なくありません。
たとえば、知的財産権の問題では、電子機器や医薬品、半導体などの最先端のテクノロジーを取り扱うケースも多いです。
ほかにも、IT関連の業務や医療関係の訴訟など理系の専門的知識が役に立つ場面は数多くあります。
理系の専門分野を学んでいる弁護士は少ないため、専門的知識を持つ弁護士は特定の分野では重宝されます。
2-3. 理系弁護士は人数が少なく需要がある
理系の思考法と専門的な知識は、弁護士業務にも活用できます。
実際、弁護士として知的財産権の問題や医療訴訟に携わると、資料の内容を理解できずに苦労するケースも多いです。特定の分野を専攻した理系出身の弁護士であれば、資料の内容を深く理解して、事件を適切に進行させることができるでしょう。
理系弁護士の人数は少ないため、就活の場面でも弁護士業務においても理系出身者であることは大きな武器になります。
3. 理系弁護士におすすめのキャリアプラン
理系弁護士が強く求められるのは、知財関係を専門に扱う法律事務所やIT企業のインハウスローヤーなどです。
3-1. 知財関係の法律事務所
弁護士が扱う問題の中でも、知的財産関係の問題は特に専門性の高い分野です。そのため、知財関係の事件を専門的に取り扱うのは、弁護士と弁理士が両方とも在籍している法律特許事務所と呼ばれる事務所で、一般の事務所では知財関係は取り扱わない事務所も多いです。
知的財産の分野では、理系の専門的な知識を必要とする場面も多く、法律の知識だけでは対処するのが難しい問題が多くあります。知的財産を専門に扱う法律事務所では、理系出身者のみの求人を行うことも珍しくはありません。
理系弁護士を求める知財関係の法律事務所では、理系弁護士である強みを十分に活かすことができるでしょう。
3-2. IT企業のインハウスローヤー
さまざまな技術が発展を続けるITの分野も、理系の専門的知識を活かしやすいです。
近年では、顧問弁護士をつけるだけでなく、インハウスローヤーを雇用するIT企業も珍しくありません。
IT企業の企業法務では、理系の専門的知識を活用できる場面も多いため、理系弁護士の需要は大きいと言えるでしょう。
※インハウスローヤーについて詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
4. 理系出身者の勉強法
ここでは、理系出身者が司法試験合格を目指すための勉強法を解説します。
4-1. ルートを決める
司法試験への挑戦を開始するにあたって最も重要なのは、合格までのルートを決めることです。司法試験合格までには数年単位の期間が必要となるため、闇雲に学習を進めても合格するのは難しいでしょう。
法科大学院を選択するのであれば、2年間もしくは3年間は法科大学院で法律の学習に専念する必要があります。
仕事を続けながら司法試験に挑戦する場合は、予備試験ルートを選ぶ方が多いです。仕事を続けながら予備試験の勉強を続けるのは大変なことで、こちらも合格までに数年間はかかります。
法律の学習を開始する際には、自分の現在の生活状況や将来のキャリアプランから、どちらのルートから何年での合格を目標とするのかを十分に検討してください。
※合格までのルートについて詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
4-2. 受験指導校を利用する
理系出身者の方に限ったことではありませんが、独学で司法試験の合格を目指すのは、現実的ではありません。基礎からしっかりと法律を学習するには、受験指導校の利用をおすすめします。
伊藤塾の入門講座では、基礎から応用まで司法試験合格に必要な力を身に付けられます。全ての講義を通信講座でも受講できるため、働きながらでも自分のペースに合わせた学習が可能です。
司法試験合格までには、理系出身者のみならず法学部出身者でも、ほとんどの合格者が受験指導校を利用しています。まずは無料体験からでも、ぜひご活用ください。
5. 理系の司法試験挑戦に関するよくある質問(FAQ)
-
司法試験の合格率は理系出身者と文系出身者で差がありますか?
-
法務省は司法試験の合格率を出身学部別に公表していないため、理系と文系で公式な差を示すデータはありません。2025年度司法試験の合格率は41.20%、合格者は1,581人、受験者は3,837人でしたが、これは全受験者を対象とした数値で学部別の集計ではありません。 出題範囲や採点基準が出身学部によって変わることはなく、理系出身者でも文系出身者と同じ条件で挑戦できます。論理的思考力という共通点があるため、適切な学習環境を整えれば学部による不利は生じません。
出典:法務省「令和7年司法試験の結果について」
-
予備試験ルートと法科大学院ルートで司法試験の合格率はどれくらい違いますか?
-
2025度司法試験では、予備試験合格者ルートの合格率が90.68%と最も高く、次いで法科大学院在学中受験者が52.66%でした。法科大学院修了者を含む全体は41.20%で、予備試験ルートの合格率が突出している点が目立ちます。これは予備試験自体の最終合格率が3.64%と低く、基礎学力の高い層に絞られているためと考えられます。 理系出身者がどちらを選ぶかは、合格率の数字だけでなく、研究や仕事との両立可否、必要時間も含めて判断するのが現実的です。
出典:法務省「令和7年法科大学院等別合格者数等」,「令和7年司法試験予備試験」
-
司法試験と弁理士試験、理系出身者にはどちらの資格が向いていますか?
-
業務範囲が異なるため、目指したい仕事で選ぶのが基本です。弁護士は法律全般を扱い紛争解決や訴訟対応を中心に担う一方、弁理士は特許・商標・意匠などの権利化手続きに特化した知的財産の専門家です。理系の専門知識を技術分野で直接活かしたいなら弁理士、訴訟や契約交渉まで広く担いたいなら弁護士のほうが業務範囲が広くなります。 弁護士資格を取得すれば、日本弁理士会の所定の実務修習を経て弁理士登録も可能です。両資格の業務を一人で完結させたい理系出身者には、司法試験を起点とするキャリアが選択肢を広げます。
-
法科大学院ルートと予備試験ルート、社会人の理系出身者にはどちらが向いていますか?
-
仕事を続けながら司法試験を目指す場合、予備試験ルートが選ばれることが多くなります。法科大学院ルートでは未修者コースで3年、既修者コースで2年の通学が原則必要で、研究職や技術職を続けながら通うのは負担が大きいためです。予備試験ルートには受験資格がなく、独学や通信講座で柔軟に対応できる利点があります。 ただし予備試験は短答・論文・口述の3段階を通した合格率が低く、複数年の学習が前提です。研究を一時休止して法科大学院に進むか、働きながら予備試験を目指すかは、生活状況と合格目標時期から逆算して決めるのが現実的です。
-
理系学部に在学中でも予備試験は受験できますか?
-
受験できます。司法試験予備試験には受験資格の制限がなく、学部・学年・年齢・職業を問わず誰でも出願できます。法務省の予備試験実施要項でも、受験資格に関する制限事項は定められていません。理系学部の学生でも、出願期間内に申し込めば短答式試験から順に挑戦できます。 予備試験は短答式(例年7月)・論文式(例年9月)・口述(例年翌1月)の3段階で行われ、大学の試験期間や研究室の繁忙期と重なる場合があります。受験するなら年間スケジュールを早めに確認することをおすすめします。
-
理系出身者でも法科大学院の既修者コースは受験できますか?
-
受験できます。法科大学院の既修者コース(標準2年)と未修者コース(標準3年)の区分は出身学部によって決まるものではなく、入試の試験形式の違いです。既修者コースは法律科目の試験、未修者コースは小論文や口述を中心とした試験で、法律学習の進度に応じてどちらでも選択できます。 理系出身者でも、入試までに法律科目を一定水準まで学習していれば既修者コースに挑戦できます。法科大学院の入試科目は学校ごとに異なるため、志望校の最新の募集要項を確認することが重要です。
-
理系出身者は法学部出身者と比べて司法試験で不利になりますか?
-
不利にはなりません。法学部の講義は司法試験の合格に直結する内容ではなく、法学部出身の合格者も多くは受験指導校を利用しています。法律の学習を体系的に進められる環境を整えれば、出身学部による差はほぼ生じません。理系出身者の論理的思考力は、条文や判例と事実を組み合わせて結論を導く法律学習に活きる場面が多くあります。 むしろ知的財産訴訟・医療訴訟・IT分野では理系の専門知識を持つ弁護士が希少で、司法試験合格後のキャリアでは「理系×法律」が差別化要因として働く場面があります。
-
理系出身者は法律の暗記量に圧倒されて挫折しやすいのでしょうか?
-
暗記中心という見方は法律学習の一面しか捉えていません。司法試験では条文・判例に具体的な事実を当てはめて結論を導く「法的三段論法」が中心で、丸暗記ではなく論理構造の理解が問われます。数式に値を代入して解を導く理系の思考プロセスと共通点が多く、理系出身者の思考スタイルが活きる場面があります。 ただし論文式試験では膨大な情報を短時間で整理し答案構成を行う必要があり、論述の型に慣れる練習は必須です。早い段階で過去問演習と答案添削を取り入れる学習法をおすすめします。
-
理系出身者が司法試験で選ぶおすすめの選択科目は何ですか?
-
理系の専門知識を活かしやすいのは知的財産法です。司法試験の論文式試験では選択科目として倒産法・租税法・経済法・知的財産法・労働法・環境法・国際関係法(公法系・私法系)から1科目を選びます。知的財産法は特許・著作権・商標などを扱うため、工学・理学・情報系出身者の専門背景がそのまま読解力に直結します。 医学・薬学系の出身者であれば、医療訴訟と関連する民事法分野で活躍する弁護士もいます。選択科目は合格後のキャリアにも影響するため、現在の専門分野と将来の進路から逆算して選ぶのが現実的です。
-
弁護士資格を取得すれば、別途試験を受けずに弁理士登録もできますか?
-
できます。弁護士資格を有する者は弁理士となる資格があり、弁理士試験を受けることなく、日本弁理士会の所定の実務修習を経て弁理士として登録できます。これにより、特許出願などの権利化業務と、知的財産訴訟・契約交渉などの紛争解決業務の両方を、一人の専門家として担えるようになります。 理系出身の弁護士が弁理士登録を行うと、技術理解・法律実務・権利化手続きの3つを統合できるため、企業の知的財産部門や知財専門の法律事務所で重宝される傾向があります。
6. 理系出身者の司法試験受験の流れと弁護士の需要に関するまとめ
弁護士の数は年々増加していますが、理系弁護士の数はまだまだ少ない状況です。知的財産やITの分野などでは理系弁護士の需要は大きく、司法試験合格後は、理系出身者の強みを活かせる場面は多いでしょう。
司法試験の受験資格を取得する方法は、法学部出身者と理系出身者とで大きく変わりません。理系出身でも臆することなく、司法試験にチャレンジしてみてください。
※司法試験の勉強法について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
伊藤塾では、「盤石な基礎」と「合格後を考える」を指導理念に、司法試験合格はもちろんのこと、合格後の活躍まで見据えたお一人おひとりへの丁寧なサポートで、受講生の皆様を全力で支えています。
無料の体験受講や説明会も実施していますので、司法試験の受験に興味をお持ちの方は、ぜひ一度伊藤塾までお問い合わせください。
2025年 司法試験合格者1,581人中 1,432名(90.6%)※1
2025年 予備試験合格者 452人中406名(89.8%)※2
が伊藤塾有料講座の受講生でした。
※1(講座内訳:入門講座640名、講座・答練321名、模試471名)
※2(講座内訳:入門講座228名、講座・答練131名、模試47名)
なぜ、伊藤塾の受講生は、これほどまでに司法試験・予備試験に強いのか?
その秘密を知りたい方は、ぜひこちらの動画をご覧ください。
