勤務社労士の年収は低い?4割が600万円超の仕事内容とメリット
仕事・年収
社労士の40.0%は勤務社労士で、その約74%が一般企業で活躍しています。年収は600万円超が41.5%、900万円以上の収入を得ている人も16.5%います。(出典:全国社会保険労務士会連合会「2024年度社労士実態調査 詳細版」)
「社労士の40%」という数字に、意外な多さを感じた方も多いはずです。
独立開業のイメージが強い資格ですが、実際には会社員として資格を活かしている社労士は少数派ではありません。
本記事では、連合会の2024年度実態調査をもとに、勤務社労士の仕事内容や年収・メリット・デメリットをまとめました。「独立開業するしかない」と決めつける前に勤務社労士のリアルを押さえておけば、自分に合った働き方を選べます。
【目次】
1. 勤務社労士とは?
勤務社労士とは、一般の企業や社労士事務所に雇用される形で社労士業務に従事する社会保険労務士のことです。
1-1. 勤務社労士の主な仕事
勤務社労士の主な仕事は、勤務先の人事・労務などの実務全般です。
- 社員の入退社に伴う社会保険・雇用保険の手続き
- 毎月の給与計算
- 年に一度の算定基礎届や労働保険の年度更新
- 就業規則の作成・改定
- 育児休業・介護休業に関する社内制度の整備 など
法改正があれば、自社の制度を見直して規程に反映させる役割も担います。企業と従業員の間に入って、労働環境の整備を一貫して担うのが勤務社労士の役割です。
※社労士の仕事内容について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
1-2. 企業内社労士との違い
「企業内社労士」は、勤務社労士のなかでも特に「一般企業で働く人」を指すケースが多いです。ただし、連合会の登録区分上は「企業内社労士」という区分はなく、一般企業で働く人も社労士事務所(法人)に雇用されている人も「勤務社労士」に分類されます。
実務上は、「勤務社労士」の方が広い概念で、そのうち一般企業で働いている人を「企業内社労士」と呼ぶようなイメージです。実際には両者を区別せず同じ意味で使っている場面も多く見られます。
1-3. 開業社労士との違い
自ら事務所を構えて独立して業務を行う社労士を「開業社労士」と呼びます。勤務社労士と開業社労士の最大の違いは、「勤務先以外の業務を受けられるか」どうかです。
開業社労士は企業から直接依頼を受けて業務を行えますが、勤務社労士にはそれが認められていません。そのため、
- 社労士事務所に勤務している勤務社労士が、個人で顧客を持って報酬を得る
- 一般企業で働いている勤務社労士が、勤務先の企業以外で社労士業務を行う
といったことはできません。安定した収入を得られますが自由度は低いため、勤務社労士はよくも悪くも会社員的な働き方といってよいでしょう。
2. 数字で見る勤務社労士のリアル【実態調査】
社労士というと独立開業のイメージが強いかもしれません。ただ、実際には会社員として働きながら資格を活かしている人が数多くいます。
まずは、この章で紹介する内容の全体像をQ&A形式にまとめました。
| Q(よくある疑問) | A(データから分かる実態) |
| 勤務社労士は少ない? | 社労士全体の40.0%を占める |
| 働けるのは社労士事務所だけ? | 74%は一般企業などで働いている |
| 仕事があるのは大企業だけ? | 中小企業勤務が46.2%で最多 |
| 女性でも働きやすい? | 女性社労士の47.9%が勤務等を選択 |
| ずっと勤務で続ける人が多い? | 年数が経つほど独立する人が多くなる |
※出典:2024年度社労士実態調査 概要版および詳細版(全国社会保険労務士会連合会)
連合会の調査データをもとに、勤務社労士のリアルな姿をそれぞれ詳しく解説していきます。
2-1. 勤務社労士は全社労士の40.0%
社労士全体のうち、勤務等社労士は40.0%です。およそ5人に2人が、自分で開業するのではなく、一般企業や社労士事務所などに所属しながら、会社員として働いています。
社労士は独立開業しやすい資格ですが、開業だけが社労士の働き方ではありません。
| 登録種別 | 割合 |
| 開業 | 51.40% |
| 法人の社員 | 8.60% |
| 勤務等 | 40.00% |
出典:2024年度社労士実態調査 概要版 P.2
2-2. 約74%の勤務社労士は一般企業などで働いている
さらに、勤務社労士の約74%は一般企業などで働いています。
「社労士として働く」と聞くと、社労士事務所(法人)で働くイメージがありますよね。ただ、実際には製造業、金融、サービス業、公務など、勤務先の業種は多岐にわたります。
人事・労務の仕事は業種を問わず発生するため、幅広い業界で社労士が活躍していることがデータからも読み取れます。
| 勤務先業種 | 割合 |
| 社労士事務所・社労士法人 | 25.70% |
| 製造業 | 10.70% |
| 金融・保険業 | 9.60% |
| サービス業 | 9.40% |
| 公務 | 6.90% |
| 医療・介護 | 6.20% |
| 卸売・小売業 | 5.60% |
| 情報通信・IT | 5.30% |
| 建設業 | 3.00% |
出典:2024年度社労士実態調査 概要版 P.9
今「社労士法人が急増中」勤務社労士の受け皿が広がっている?
ここ数年、急激に増えているのが社労士法人の設立数です。2015年には960法人だったのが、2024年にはなんと3,103法人にまで増加しました。わずか9年間で約3.2倍です。
| 年 | 社労士法人数 |
| 2015年 | 960法人 |
| 2024年 | 3,103法人 |
出典:社会保険労務士白書 2025年版 P.68
社労士法人が増えれば当然、そこで働く社労士も必要になります。勤務社労士として働きたい人の視点でいえば、社労士法人の求人ニーズが年々高まっているといえます。
2-3. 「企業規模は関係ない」中小企業で活躍する勤務社労士も多い
「社労士が必要なのは大企業だけ」と思われがちですが、実際には中小企業で働く勤務社労士も多くいます。
勤務社労士の勤務先を従業員規模で見ると、最も多いのは99人以下の中小企業です。「従業員30人未満の会社」で働いている人も30%以上おり、企業規模に関わらず社労士が活躍していることが分かります。
| 勤務先規模 | 割合 |
| 29人以下 | 32.30% |
| 30〜99人 | 13.90% |
| 100〜999人 | 28.70% |
| 1,000人以上 | 24.80% |
出典:2024年度社労士実態調査 概要版 P.3
社員数が少ない会社でも、社会保険・雇用保険の手続きや給与計算、就業規則の整備といった労務実務は不可欠です。むしろ、専門の人事部を持てない中小企業ほど、社労士の知識が重宝される場面も多いといえます。
2-4. 勤務社労士の割合は女性が高め
勤務等社労士の比率は男女によって差があり、特に女性で高めです。
社労士全体では40.0%が勤務等ですが、男性では35.7%、女性では47.9%と、女性の方が10ポイント以上高い結果となっています。
| 勤務等の比率 | |
| 全体 | 40% |
| 男性 | 35.7% |
| 女性 | 47.9% |
出典:2024年度社労士実態調査 詳細版 P.15 表7-1をもとに算出
詳細は6章で後述しますが、就職・転職時にメリットを感じている人も女性の方が多い傾向にあります。社労士は専門性が高く、結婚・出産などからのキャリア復帰もしやすいため、女性がメリットを感じやすい資格ともいえるでしょう。
2-5. 登録年数が長くなるほど、勤務社労士の割合は下がる
勤務社労士の割合は、登録年数が長くなるほど低くなります。登録5年未満では55.2%が勤務等社労士ですが、25年以上になると23.1%まで下がります。
| 登録年数 | 勤務等の比率 |
| 5年未満 | 55.20% |
| 5〜9年 | 46.10% |
| 10〜14年 | 40.40% |
| 15〜19年 | 35.30% |
| 20〜24年 | 28.60% |
| 25〜29年 | 23.10% |
| 30〜34年 | 17.50% |
| 35年以上 | 14.00% |
出典:2024年度社労士実態調査 詳細版 P.15 表7-1をもとに算出
これは、勤務社労士として経験を積み、ある程度のキャリアを築いたタイミングで独立開業する人が多いためと考えられます。企業や社労士事務所で実務を学びながら、自分のタイミングで独立を目指す。そんなキャリアを描いている人が多いことが見て取れます。
もちろん、開業が肌に合わないという人は、勤務社労士のまま働き続けることも可能です。
※社労士の独立開業について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
3. 勤務社労士の年収はどのくらい?【実態調査】
勤務社労士の年収のボリュームゾーンは300万〜600万円で、約4割が600万円以上の年収を得ています。(出典:2024年度社労士実態調査)
以下、詳しく見ていきましょう。
3-1. 年収のボリュームゾーンは300万〜600万
連合会の実態調査によると、勤務社労士の年収のボリュームゾーンは「300〜600万円未満」で38.0%を占めています。

出典:2024年度社労士実態調査 詳細版 P.108 図40_1
ちなみに、勤務社労士として経験を積んだ後に開業すると、年収1,000万円を超える人も珍しくありません。安定した収入や福利厚生を重視するなら勤務社労士、働き方の自由度や収入の高さを優先するなら開業社労士というのが、選び方の目安となります。
3-2. 「4割は年収600万円以上」年収1,000万円を超える人もいる
一方で、勤務社労士だからといって、高年収を目指せないわけではありません。
同調査では、約4割(41.5%)の勤務社労士が年収600万円を超えており、900万円以上の人も16.5%と決して少なくありません。特に50代男性では約4人に1人以上が900万円以上の年収を得ています。
最初から高年収を得られるわけではありませんが、経験を積むほどに年収が上がっていく。伸びしろ十分な働き方です。
出典:2024年度社労士実態調査 詳細版 P.109 表40-1
※社労士の年収について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
4. 勤務社労士として働くメリット
勤務社労士として働くメリットは、主に以下の2つです。
- 安定した収入を得られる
- 個人では得られない様々な経験が積める
4-1. 安定した収入を得られる
勤務社労士の最大のメリットは、会社員として安定した収入を得られることです。
毎月決まった給与が支払われるため、収入がゼロになる不安はありません。その他、賞与・退職金・福利厚生なども受けられるため、安定度は開業社労士と比べ物になりません。
さらに、資格手当が給与に上乗せされるケースも多く、勤務社労士の22.0%が「社労士登録により、賃金面でメリットがあった」と感じています。特に20代では41.7%、30代では34.2%と、若手ほど賃金メリットを実感している傾向が強いです。
| 年代 | 賃金面でメリットを 実感している人の割合 |
| 20代 | 41.70% |
| 30代 | 34.20% |
出典:2024年度社労士実態調査 詳細版 P.111 表41-1
4-2. 個人では得られない様々な経験が積める
個人では経験しづらい規模の案件や業務に関われるのも、勤務社労士の魅力です。
たとえば大企業に勤務すれば、数千人規模の従業員を対象とした労務管理や、全社的な制度改定プロジェクトに携わる機会があります。長期的な視点で自社の人事制度を設計したり、他部署と連携して運用していく経験は、組織に属しているからこそ得られるものです。
こういった実務経験は、勤務社労士としてキャリアを続けるうえでも、将来独立する際にも役立ちます。
5. 勤務社労士として働くデメリット
勤務社労士ならではのデメリットもあります。
- 自由度が低い
- 勤務先の配属次第では資格を活かせない
5-1. 自由度が低い
勤務社労士は、開業社労士と比べて働き方の自由度は低めです。
基本的に一般の会社員と同じなので、勤務時間・勤務場所・業務内容は会社の指示に従わなければいけません。受けたい仕事だけを選ぶこともできません。
収入面も、会社の給与制度に沿って決まるため、上限が決まっています。どれだけ成果を出しても、開業社労士のように「頑張っただけ稼げる」仕組みにはなっていません。
自分のペースで働きたい、成果に応じて収入を伸ばしたい、という人にとっては物足りなく感じる場面もあるでしょう。
5-2. 勤務先の配属次第では資格を活かせない
配属先によっては、資格を十分に活かせないケースがあるのもデメリットです。
社労士の資格を持っていても、営業や経理などに配属されれば、社労士業務に直接関わる機会はほとんどありません。社労士事務所でも、担当する顧問先によって任される業務の範囲は変わるため、自分が興味のある分野の仕事に関われない可能性もあります。
良くも悪くも会社の配属次第なので、希望する業務に携われるかどうかは、事前に確認しておきましょう。
6. 社労士登録で「就職・転職しやすくなった」と感じる人も多い
「社労士資格が就職・転職市場での評価につながった」と感じる人も多いです。
連合会が実施した実態調査によれば、勤務等社労士の27.4%が「就職・転職でのメリットがあった」と回答しています。賃金面(22.0%)やキャリア形成(27.3%)と並び、多くの人が社労士登録をして実感しているメリットの1つです。
特に、女性ではこの傾向が強く、勤務社労士として働いている女性の約3人に1人が「就職・転職にメリットがあった」と感じています。
| 就職・転職でメリットが あったと感じている人の割合 | |
| 全体 | 27.4% |
| 男性 | 23.4% |
| 女性 | 32.9% |
出典:2024年度社労士実態調査 詳細版 P.111 表41-1
社労士は専門性が高く、今まさに多くの企業からのニーズが高まっている資格です。
出産や育児でキャリアが中断した女性など、再就職や転職にハードルを感じている人にとっても、心強い武器になるでしょう。今の勤務先で活躍したいと考えている人だけでなく、これから就職や転職を考えている人にとっても、取得するメリットは大きいです。
※社労士の就職について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
7. 勤務社労士に関するよくある質問(FAQ)
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勤務社労士は名刺に「社会保険労務士」と書けますか?
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その企業に勤務登録していれば、名刺に記載できます。ただし、社労士業務を行わない部署に所属している場合は、対外的に「社労士業務ができる」と誤解を与えないよう注意が必要です。なお、開業登録している社労士は、自分の事務所の名刺には記載できますが、勤務先の名刺には記載できません。
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勤務社労士の登録には何が必要ですか?
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社労士試験の合格に加えて、2年以上の実務経験または連合会の事務指定講習の修了が必要です。費用は、登録免許税3万円+登録手数料3万円のほか、各都道府県社労士会への入会金・年会費がかかります。なかには勤務先が費用を負担してくれるケースもあるようです。
※社労士の登録手順について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
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勤務社労士にできること・できないことは?
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勤務社労士にできること・できないことは、以下のとおりです。
【できること】
勤務先の社会保険、労働保険の手続き、就業規則の作成・改定、給与計算、労務相談対応など
【できないこと】
勤務先以外の企業から報酬を得て社労士業務を行うこと
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勤務社労士は副業できますか?
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勤務登録している社労士が、副業で社労士業務を行うことはできません。社労士業務以外の副業については、勤務先の就業規則に従うことになります。
※社労士の副業について詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
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勤務社労士は大企業で働くことが多いですか?
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必ずしも大企業が多いわけではありません。大企業で働く勤務社労士は約25%で、中小企業や社労士事務所で働く人もたくさんいます。企業規模を問わず活躍できる資格といえます。
8. 勤務社労士は安定も年収も手に入る働き方【3つの要点】
勤務社労士は全社労士の40.0%を占め、4割以上が年収600万円を超えています。安定した収入を得ながら実務経験を積み、将来の独立開業にもつなげられる堅実な働き方です。
本記事の要点は次の3つです。
- 勤務社労士は社労士全体の40.0%、約74%が一般企業で活躍している
- 年収600万円超が41.5%、900万円以上も16.5%存在する
- 安定収入と大規模案件の経験を両立でき、独立への土台にもなる
これから社労士を目指す方は、まず試験の全体像をつかむことから始めましょう。すでに合格済みで勤務登録を検討中の方は、登録手続きと費用を確認しておくと安心です。転職を考えている方は、社労士資格が就職市場で評価される点も押さえておいてください。
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